一生騙せばそれもまた真実になるはずよ、私は自分を騙し続けます

メッタン

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一生騙せばそれもまた真実になるはずよ、私は自分を騙し続けます

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 私は公爵家に生まれ、父も母も美男美女のはずなのに、私だけ何故か冴えない容姿であった。

 兄弟達はみな父や母に似て、美男美女だと言うのに。


 それで虐待されるほど酷い家では無いのだが、どこか私の存在は無かったことにされがちなのであった……


 私は小さい頃から心底傷ついた。

 さらに公爵令嬢なので面と向かってそんなことを言う馬鹿貴族は存在しないが、

 身分の低い貴族共が男も女も、もっと言えば女のほうが私の容姿の陰口をしているのを何度も聞いたことがある。


 私はそのたびに泣いていたのであった……




 そして私がデビュタントをした時もダンスパーティーで明らかに腫物扱いにされたことで、何もかも嫌になったのであった……



 私は絶望して引きこもりそうになったが、その時に、丁度大好きだった祖母が亡くなり、祖母は私のことを最後まで心配していたのであった……




「ナタリーや、よくお聞き、お前は自分の容姿について悩んでいるのだろう?」



「……その通りですおばあ様……」



「……いいかい、そんなことを気にするな何て言っても、泣き虫のお前には無理だろうね……」




「……そうなんです、おばあ様を心配させてごめんなさい!」



「……大丈夫、なら一生自分を騙しなさい、何を何と言われようと、いや自分が自分で私って醜いのでは?って思っても、ずっと自分はキレイであると、死ぬまで騙しなさい、そうすればそれもいつかきっと真実になるから……」



 祖母の遺言だった、私はこれを聞いて、大好きな祖母の言いつけを守ろうと誓ったのであった……



 まずは私は見たくもなかったけどつい見てしまう鏡の前でつぶやく……



「いい?私は世界一美しいの、誰が何といおうと美しいの!」


 おばあ様は言った、自分を騙し続けろと……


 やってやる!自分が少しでも不細工と思っても、徹底的に上書きをしてやる!


 もちろん頭の中では、でも目元が、鼻が、口が、全体のバランスが、髪の毛が……

 あらゆる不満が沸いてくる!自分を否定する!


 でも負けるものか!大好きなおばあ様が言ったんだ、私は絶対にそれを守る!

 そうじゃないとあの世で心配させちゃうからね!


 ってことでそう言った言葉が浮かぶたびに、私は自分は世界一美しいんだと言い聞かせるのであった……




 そして世界一美しい私がダンスパーティーを欠席するわけにはいかない!

 そう思うと自然と嫌だったダンスパーティーにも堂々と行く気持ちになったのであった……


 相変わらず腫物扱いされているが、私は開き直った……


 きっと私が美しすぎて誰も声をかけられないのね!

 そう思って私は中央で堂々とリラックスして会食することにした。


 誘われれば応じますけど、それがないのでしたら楽しまなければ損ですからね!


 世界一美しいってのは孤独なものなのよ!そう思えば何か気持ちまで高揚してくるのであった……



 そんなことが何回か続いた後、ある日のダンスパーティーで男同士がヒソヒソ話しているのが聞こえてきた。


 下品なことに誰が無理かとかを男目線で言いたい放題している……


 そして私の名ナタリーを上げる愚か者がいるでは無いか!


 やっぱり私は……一瞬だけ怯んだが、負けるものか!私は世界一美しいんだ!
 と自らを立て直そうとしたら、男の1人がこんなことを言うではないか!



「え?ナタリー公爵令嬢って言うほど不細工か?」


「お前マジで言ってるの?」



「そりゃキレイかって言われると全然だけど、何かウジウジしてる令嬢を思えばマシじゃね?」



「うーん確かに卑屈な女ってそれだけで魅力無いもんな」



 などと下品でさらにキレイじゃないなんてムカつくことを言ってますけど、
 以前よりも私の評判がマシになっているのでは?


 以前ならば絶対に無理だの、あれは一生結婚できないだの、もうそれこそ、信じられないレベルの陰口を言われていたのだから……




 おばあ様ありがとう……


 別にこれが広まったわけじゃないだろうけど、気のせいかもしれないけど、殿方の私を見る目が、以前よりも冷たくない気がする……


 誘われるかと言えば誘われないのは変わらないけど、分かりやすく避けようとしていない気がしてきた……


 もしかして、自分で自分を美しいと思っていることが良い結果を生んでいる?

 おばあ様はこれを見切っていた!?



 私は鏡に向かってつぶやく「私は世界一美しいけど、美しすぎてみんなまだ認識できていないだけ、どんどん変わっていくわ!」



 私はきっとうまく行く、おばあ様が私を騙すわけが無いし、私はおばあ様をもっと信じて、もっと徹底的に自分を騙すことを誓ったのであった……




 するとある日……ついに殿方から「踊っていただけないだろうか?」などと声をかけられるではないか!


 相手は伯爵家のものだから、もちろん公爵家と繋がりが持ちたいみたいな下心があるに違いないが、それでも以前はナタリーなんかに声をかけるほうが恥ずかしいって雰囲気だったせいで誰もいなかったのに……


 踊っている間、相手はちゃんと私を淑女として扱い、失礼な振る舞いは一切しなかった……


 まあ声をかけた以上当然なのですが、上手く初めて踊ることができた……

 無駄に練習をするだけで肥しとなるダンスのスキルが、まさか役に立つ日が来るなんて……


 ……別にこの方が好きになったとかは無い、社交辞令なのも分かっている。


 でも今まではその社交の土俵すらまともに立てたことが無かったことを思えば、
 私は家に帰って泣いたのであった……



 でも一夜明けて、開き直る、馬鹿ねこんなことで満足してどうするの!


 私は世界一美しい女で、やっとそれが気づかれただけに過ぎないのだから!


 それでいいんだよね?おばあ様……


 こうして私は今日も鏡に誓うのであった!



 昨日の伯爵令息がきっかけになったのか、人気令嬢ほどではないが、私も声をかけられて踊る機会が増えてきた。


 もちろん私個人に魅力を感じたとかではなく、公爵令嬢だからってことなのだろうけど、以前は私と関わることが恥って扱いだったことを思えば劇的な変化である。


 やっと普通な令嬢に近い扱いをされるようになったってことである。


 おばあ様はきっとこれを読み切っていたのだろう!



 だが安心してはいけはいけない、もっと慢心せずに、私は世界一美しいと思い続けないといけない!

 だってこれをやめたらきっとまた元に戻ってしまうのだから!



 私はこんなことを思っていると、事件が起きたのであった……




 何と貴族の男の中でももっとも美男でモテ男と名高い、侯爵令息が私に声をかけてきたのである!



「ナタリー公爵令嬢様、私と踊っていただけないだろうか?」


 ……正直評判は知っている、次々と美女をものにしているなんていう遊び人ではあるが、貴族の社交界では圧倒的に上に君臨する男の1人なのである。


 彼に声をかけられるのはステータスなんて感じている令嬢もいるくらいだ。


 私も初めて近くで見たが、確かにこりゃ凄いイケメンだと、流石に動揺した。


 しかし怯むな!私は世界一の美女!狼狽えるな!私は自分を鼓舞して答える。



「喜んでお受けしますわ!」


 当然圧倒的に慣れているからか、彼は紳士だった。

 ただし私を口説こうと言う感じよりは、まさに社交、ようは公爵家との繋がりを求め、貴族男子としての役割に徹してのことなのだろう……

 ただのモテ男というだけでなく、その方面も流石というか、私を一切不快にさせないのであった……



「今日はありがとうナタリー様、私にお付き合いして頂いて……」



 こういうなり去って行ったが、私も流石に疲れと緊張と、やはりイケメン過ぎてボーってしてしまい、その後は椅子に座り込んでしまったのであった……


 オーバーヒートしてしまったのね……



 私は少し休んだ後、少し風に当たろうと思ってバルコニーに出ようとすると、女の集団が噂話を聞いているのが聞こえてしまった!



「……信じられませんわ、ナタリー公爵令嬢、あんな不細工なくせに、あの方に声をかけられるなんて!」



「本当ですわ!何であんなブスに声をかけたのだか!」



「そんなことよりも腹立たしいのはあんなブスがいい気になっている点よ」


「本当にそうね、最低よ、分からせてあげたいですわ」



「どうせ公爵令嬢ってだけの女のくせに、なんて厚かましいにもほどがありますわ!」




 ……以前の私ならば身分が低い令嬢に陰口を言われただけで泣いたかもしれない。


 でも私は違った、いい気になっていると思われたってかまうものですか、それに身分差ではなく、自分の力でこいつらに文句を言ってやりますわ!


 私は闘志が湧いてきた、きっと色々なことがあって少しずつ自信がついてきたから、こんな情けない女なんかに負けるわけ無いし負けるものかって思ったに違いない!


 自分でも心境の変化に驚いたのであった……



「あら惨めな負け犬の不細工令嬢達が群れて何をしているのかしら?」


 自分でも信じられない暴言が出たと思った……だが怒りが止まらない!



 私に気づいてぎょっとして明らかに困惑と恐怖の顔をしているが、それでも生意気な態度を崩さない馬鹿女達に私はさらに追撃をかける。



「貴女達が声をかけられないのは不細工だから、身の程を知りなさい、私は世界一美しいのだから!」


 ああ……勢いのあまりつい言ってしまった!自分で暴走してるかもと思うが、もうかまうものか!おばあ様を信じるだけだ!



「な……なんですって!ナタリー様のどこがお美しいんですかね!」


 不敬だけどこうやって怒るのは分かる、私も自分で言ってることおかしいって思うから、でももう怯まないよ!



「あら?私が美しいことは私が決めたの、文句あります?」



 私のあまりの言動に固まっている馬鹿女共!



「……では文句が無いのなら去らせて頂きますわ、ごきげんよう!」



 私は完全に勝利したと思った。ざまぁみなさい!

 いつまでもメソメソ泣いているナタリーでは無いのよ!



 しかし家に帰ったら強気も消し飛んだ……


 まずい今日の事が噂になったら私は勘違い令嬢になってしまうのでは?


 いや負けるものか!そんな時こそ、自分で自分を騙し続けるのよ!


 私は世界一美しい令嬢なんだから、自分だけは疑ったら駄目なの!

 そうですよね?おばあ様……!



 翌日、最初に声をかけてきた伯爵令息が私に声をかけてくる。

 彼とは何度かダンスしたおかげで、少しだけ打ち解けた感じはある。


「……世界一美しいナタリー様、本日も私と踊っていただけないだろうか?」


 ……やはり噂になっているのか!私が明らかに動揺した顔を見て、彼は答える。



「……やはり噂は本当だったみたいですね、でもいいじゃないですか、そんなことよりも実際にどうであるかです」


 彼はなんていうか男らしいというかあっさりした性格なので(そうでなければ最初に声をかけるなんて大胆なことはできないでしょう)、全然気にしてないみたいだ。


「……本当にそういうの嫌な気持ちにならないんですか?」



「……美しい私に従えとか言われたら嫌ですけど、ナタリー様そういうタイプでもないので、私からしたら、特になんですよ……」



 ということで意外にも噂になっても、気にしてないようだ。

 そしてまたしても、伯爵令息のおかげかは知らないが、噂を知っても、案外殿方の態度は変わらないのであった。


 多分ムカついて嫌っている人もいるかもしれないが、そういう人はどうせそもそも私に声をかけてきていないから、案外平気なんだなと驚いたのであった……


 おばあ様はかつて賢者とまで言われて、母の母にも拘らず、義理の息子であるお父様ですら相談するような方だったので、ここまで見切っていた!?


 流石おばあ様だなぁと思うのであった……



 そんなこんなで少し変な令嬢扱いはされていますが、意外と踊ってくれる相手は相変わらず困るわけではなく、私は自信を持って自分は世界一美しいんだ!と思って勘違いなんかじゃない!ってますます思うようになった……



 そしてある日……


 何と第七王子様が珍しく貴族のパーティーに現れたのであった!

 彼はカッコいいのだけどどこか変わっていると有名で、さらに後継者の類とは無縁だからか奔放な方だが、それが魅力的であると令嬢の間で有名な人である。


 第七王子様が仲の良いイケメンの侯爵令息と話しているのだが、

 突然みんなに宣言をしだしたのであった!



「おいおいレディー達はみんな着飾っているわけだが、我こそは美しいと宣言できる女はいるか!?」


 圧倒的挑発に横にいる侯爵令息すら焦っているが、圧倒的王族の貫禄なのか、皆シーンとなってしまった……



 ……私もビビってしまったが、おかしくないかしら?

 私は世界一美しい女なのよ!別に第七王子様が好きとか結婚したいとかなくても、ここは立候補しないと矛盾じゃないかしら!


 正直ビビりまくったし、恥ずかしかったけど、私はおばあ様と誓ったはずよ!

 ここで逃げたら一生自分を騙せたことになれないわ!


 そう思って、第七王子様の元で歩いていき、


「ナタリーです、私は自分のことを世界一美しいと思っています!」


 と皆の前で宣言をしてしまったのであった!



 第七王子様ですら一瞬唖然とした顔をしたが、すぐに王子様の尊大な顔に戻り、


「なるほど、君が世界一美しいと言ったと噂のナタリー嬢か!素晴らしい、今もひるまずに矛盾なく立候補するとは、まさに美しい女では無いか!」


 などと突然感動しだす……


 うん変わった方なのは知ってるけど、ここまでぶっ飛んでいるとは……


 私が驚いていると、他の美人と有名な公爵令嬢が、取り巻きを連れて、しかも取り巻きは私の陰口を言ってた奴ら!抗議しにきたのであった!



「第七王子様、美しさなら私のほうが素晴らしいのでなくて?」


 しかし第七王子様は冷たかった……



「あん?寝ぼけるな、お前はさっき立候補できなかった時点で負けなんだよ、ナタリー嬢のほうが美しい!」



「そんな!あまりにあまりじゃないですか!ナタリーのどこが美しいと言うのです!そんなこと誰も認めませんわ!」


「黙れ!私が美しいと決めたのだ、それとも貴様は私の判断が間違いだと言うのか!」


 第七王子様の迫力の前に、公爵令嬢一派はスゴスゴと立ち去るしか無かったのであった……


 そして「よしナタリー嬢、君さえ嫌じゃなければ私と結婚をしよう!」


 何て言う出すでは無いか……


 あまりなことに、「ど……どういうことですか!いきなりですよ!」と私が顔を真っ赤にして動じると、第七王子様は自分なりの意見を堂々と言うのであった……!



「私は第七王子だから兄上達がいる手前、後継者になることなど無い、だから普段はフラフラしているような扱いだが、それでも王族である、王族と言うのは強烈な自負がなければならない!周りに評価されるから偉いのではなく、自ら価値を決めないといけない。そこでさっき私は問うた、どうせ誰も出ないと思ったが、自分で自分を美しいと言える女がいるかと思ったら出てきたのは君だ。評判で自分のことを自画自賛したと言う噂は聞いたことがあるが、まさか私の前でも怯まなかった!それでこそ王族の女に相応しいし、その姿勢こそ私は美しいと思うのである!」




 ……なるほど、何て言うか貴族とは違う突き抜けた価値観であり、正直カッコいいと思ってしまった……

 ハッキリ言えば私もこの方に魅了されたのであった……

 それに私を本気で評価して下さったのも嬉しいですからね!



 こうしてまさかの公爵家のいなかった扱いに近かった私が、一番の良縁をゲットしたことで、お父様とお母様も唖然とするしか無かった……

 兄弟達も二の句も告げずに、恐れ入ったという顔をしている……


 ちょっと無視気味な扱いこそされていたが、虐待するほど酷い人達じゃないので、見なおしたってことなのだろう……




 そして結婚式の少し前に、最近は最早友達みたいになっている伯爵令息に言われる……


「まさかナタリー様がそこまで凄い方とは思わなかった。でも最初に声をかけた見る目があるのは私ですよ!だから私と伯爵家の事はお忘れなく!」


 ちゃっかりしていて清々しいものである(笑)



 侯爵令息も「まさかナタリー様がそこまでとは思わなかった……私もまだまだ女を見る目が足らなかったようだ!、第七王子様の事よろしく頼むよ!」

 などと友人枠として祝ってくれる……



 おばあ様ありがとう、流石のおばあ様もここまでなるなんて分かってなかったと思うけど、おばあ様ならもしかして見切っていたのかなぁ……


 私はおばあ様の言いつけだけは一生守って行こうと思います!
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