柔らかな愛に触れるまで ~冷酷な御曹司は政略結婚から愛を知る~

上乃凛子

文字の大きさ
27 / 91
第八章 決断

選択した道(修史side)①

藤城の娘と顔合わせを終えたあと、俺は真壁と一緒にバーで酒を飲んでいた。
あのまま真っ直ぐ家に帰る気にはなれず、ひとりで飲み直そうかと考えていたところ、タイミングよくかかってきた真壁からの電話で、すかさずバーに呼び出したのだ。
俺から話を聞きたかった真壁は、二つ返事で出てきてくれた。
ただ、呼び出したまでは良かったのだが──。

「いやぁ、彼女なかなかやるよな。世間知らずのお嬢さんかと思ったら、修史相手にそんな条件を突きつけてくるなんて……」

さっきからこいつは何度も俺の顔を見ながら、涙を浮かべて楽しそうに肩を震わせている。
こんな話ができるのは真壁しかいないので仕方なく我慢しているが、はっきり言って居心地は最悪だ。
隣で大笑いしながら美味そうに酒を飲む姿に若干苛つきつつも、俺は無言のまま静かにビールを口に運んだ。

「不機嫌な態度を改めろ、外で子どもを作るなって……。その条件、最高すぎないか!」

これで何度目だろう。
あの女の出した条件のどこに褒め称える要素があるのか、真壁は絶賛し続けている。

「何が最高なんだよ!」

「だって普通はさ、お前に気に入られようと自分を売り込んできたり、お前の言葉に素直に従おうとするだろ? それが条件を突きつけてきて、しかもその条件が……ぷぷぷっ。これを笑わずにいられるかよ」

俺の事情を唯一知る人物だけに、全く遠慮する様子は微塵もない。
そんな真壁を俺は冷めた表情で睨みつけた。

「そんなに睨むなよ。俺はお前の結婚を祝福してるんだから」

「その顔のどこが祝福なんだよ?」

「こんなに嬉しい顔してるのにわからないのか?」

酒の影響もあってか、ニヤニヤしながら俺の顔を覗きこんでくる。そして、大きく頷きながら勢いよく俺の肩に手を置いた。

「修史、これでお前の結婚生活も安泰だな」

「どこをどう解釈したら安泰なんだよ? あんな気が強い女、破綻する未来しか待ってねえよ」

「破綻する未来? 言いにくいことをストレートに伝えてくるなんて、本音で向き合おうとしている証拠じゃないか。俺は彼女を気に入った。これはお前が彼女を溺愛する日も近そうだな」

テンションの高い真壁を尻目に、ふとこの決断で間違いなかったのだろうかと、正解のない答えを求めてしまう。
自分で決めた以上、もう後戻りすることはできないが、自分の、そして会社の未来がこれからどう変わっていくのかと思案せずにはいられない。

藤城から合併の話を聞かされた翌日、俺は真壁に相談したあと、もう一人恭輔義兄さんにも意見を聞いてみた。
雅紀叔父さんに尋ねなかったのは、藤城が父を裏切っていたことを知っているからだ。相談したところで、有無も言わさず「裏切り者なんて信用できない」と反対されるだろう。
俺は先入観のない公平な視点での意見が聞きたかった。

仕事が終わって実家を訪ねると、姉さんが快く出迎えてくれた。父が亡くなった後、実家には姉さんの家族が住んでいる。最初は俺が住むように言われたのだが、この家の広さだと俺一人では持て余してしまうため、姉さんにお願いしたのだ。
姉さん自身は会社には一切関わっていないが、ここ数年の間に続けて両親を亡くした俺にとって、唯一の家族である姉さんの存在は有り難くもあり、とても大きかった。

「姉さん悪いな、こんな時間に。恭輔義兄さんは?」

「書斎で待ってるわよ。話が終わったら一緒に夕飯食べていくでしょ? 用意しておくから」

経営者である父を見てきたせいか、それとも母の教えなのか、これから何の話をするのかといった詮索は全くしてこない。そういうところも大いに助かっている。

「ありがとう。じゃあちょっと義兄さんと話をしてくるよ」

俺はそう言って義兄さんがいる書斎に向かった。
部屋の前に着くと、俺の到着を待っていたかのように既にドアが開けられていて、中からは子どもたちの笑い声が聞こえてきた。
感想 788

あなたにおすすめの小説

契約彼女は冷徹エリートの甘く過激な恋に溺れたい

白石さよ
恋愛
職場の上司・東条に失恋した奈都は、ヤケになって入ったバーで出会った男性・佑人と一夜を過ごしてしまう。数日後、職場で彼とまさかの再会。なんと佑人は、組織改革のために赴任してきた人事コンサルタントだった! 佑人を避けているのに、なぜか行く先々で彼と遭遇してしまう奈都。ついには彼から、東条を振り向かせるために期間限定で恋人のふりをすることを提案され――その日から、佑人の恋愛指南が始まる。揶揄われているだけと思っていたのに、佑人は意外にも甘く迫ってきて…!? 白石さよの名作『さよならの代わりに』が新たな形で蘇る!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。