300 / 411
黒豚令息の領地開拓編
ガロ帝国
しおりを挟む
師の声がすると途端シェルリアーナが殊勝な声を出した。
「し、師匠!お恥ずかしいところを…お忙しい時間に申し訳ありません!」
[ なに、構わんよ。どうせ暇な年寄りひとりだ、そちらは元気そうでなにより。今日はどうしたのかね。この時間に通信を寄越すのは珍しいじゃないか。 ]
「師匠、それが…その…」
まずはシェルリアーナが昨日の失態と、己の勉強不足を謝ると、快活な笑い声が響いた。
[ ハッハッハッハッ!そうかそうか!なぁにワシは何も気にせんから安心しなさい。間違えるのも若いうちの特権。多いに誤り、失して敗して、成長していくと良い ]
「うぅ…温かいお言葉ありがとうございます…」
[ それで?珍しいどころではないな、デイビィボーイ。お前さんがワシに何の用だ? ]
「もうボーイなんて歳じゃねぇよ!爺さんに少し聞きたいことがある。」
[ ほほぉ、一体何かね? ]
そこで今度はデイビッドが真面目な声で話を始める。
「王都の中枢でガロの遺物が見つかった。巨大な結界を張る装置だ。爺さんなんか知らねぇか?」
[ ガロの結界装置だと!?……それは…もしや巨大な魔石に組み込まれた… ]
「人ひとり分はあるデケェ魔石の周りを歯車が回ってる。恐らくただの人間には扱えない。」
[ まさか… ]
「石に何かの文言が彫り込まれてて…汝、安寧を求める者…」
[ 穢れ無き魂にて我に祈らん… ]
「やっぱ何か知ってんのか!?」
[ そんな…まさか…この時代になって見つかるとは…その装置はどこで…? ]
「“創世の女神”信仰の教会が隠し持ってた…」
通信陣の向こうから深いため息が聞こえる。
[ デイビィ、シェルリアーナも、よく聞いて欲しい。これから私が話すのは、この国とこの大陸を去った古きガロ帝国の話だ… ]
息を呑む2人に、遥か遠くの地よりギディオンが語り始めた。
ガロ帝国とは、今から200年程前今に栄え、そしてこの地から消えた大国の名だ。
かつてはエルム帝国の二倍の国土を誇る大国だったが、亜人や獣人を含む魔族や、特殊な血筋を持つ者達を多く抱えた大国は、人間の差別と迫害を受けやがて衰退し、王の決断でこの地を去ることになったそうだ。
聞けばこの大陸を囲う海の向こうには、ガロ帝国と同じ様な魔族の住まう大地が広がっているそうで、そこへ国の民共々移り住むという壮大な大移動が行われた。
所が、長くこの地に住まう内に情やしがらみ、人間との絆や家族のため残ると言い出した者も大勢いた。
ガロの王はそんな同胞達の声を聞き入れ、今度こそ人間や他種族からの迫害や虐待が起こらないよう、彼等に逃げ場と居場所を確保するため、特別な結界を張る装置を用意した。
装置は国土の一部と共に装置の守護者を添えて、当時隣国で友好国であったラムダの王へ預けられ、ガロの遺留民による領地をラムダ国内に確保すると、ガロの王は大陸を去った。
しかし、残る者達は新たな領地での穏やかな生活を夢見ていたが、待てど暮らせど装置は届かず守護者も消え去り、ラムダ国も王を筆頭に国中を探したが見つからず、何者かに盗まれてしまったのか、それともあれはガロ国王の虚言であったのかと様々な憶測が飛び交う中、ラムダ国は黒の森の崩壊で魔物と魔獣に蹂躙され、それどころではなくなった。
魔力の豊富なガロ国民達はラムダ人達に力を貸し、数十年掛けてなんとか黒の森の暴走を抑え、その地に住まうことを許された。
これが今から約200年前の出来事だ。
その後、大陸の情勢も落ち着きを取り戻した頃、二度目の悲劇がガロの遺留民達を襲った。
戦いにより散り散りになってしまったガロの同胞達が、各地で討伐や奴隷の対象になっていると知らせが入ったのだ。
国は幾度も止めるようにと喚起を行ったが、当時力を持ち始めた女神信仰の教会の、耳障りの良い教えの方が戦いに疲弊した国民の心を動かし、犠牲者は後を絶たなくなった。
更に教会は王都に特別な結界を張り、人間にまでも格差を付け奢り出したが、多くの人心を掴んだ教会相手では、もう国の力では抑えが効かず、王も国の民の声に圧され、致し方なく教会に結界を張る上での特別な権限を与えるより他無かったという。
そんな中、人里を離れ山奥でひっそりと生き延びる同胞達のため、黒の森の跡地に住まう事になった元ガロの民達は、協力的な人間の手を借りて各地へ散った同胞をかき集め、人間の国の領内にやっと心落ち着ける楽園を築き上げ今に至るという。
「待って…黒の森…って、まさか…」
「 そう、現デュロックのサウラリース領が正にそれだ 」
「それでは…結界の装置は元々ガロ帝国が国民を護るために贈った物だったと言うのですか…?」
[ その通り、長年どれだけ探しても見つからなかった訳だ…我等を迫害し、虫けらの様に殺し回った教会が、まさか我等が作った魔道具を所有していたなどと誰が思うか… ]
「師匠…あの…それでは、装置の守護者というのはどうなったのでしょうか…?」
[ わからない…ただ、その方はこの地に残るガロ国民を護るために民と共に残られたかつての領主の奥方でな。行方不明になったと聞かされ、その絶望たるや言い表すこともできないほどだった… ]
そこで、しばらく黙っていたデイビッドが口を開いた。
「なぁ爺さん、石に彫られた文字は、文言の他に後付けに誰かが彫った様なのもあったんだ。「汝、安寧を望む者…」これの他にも字が彫られてた。「択ばれし魂の現る御代に悠久の誓い果たされん事を」続きにこう書いてあったんだけどよ、あの字はどうも女性の字みたいだった。線が細くて、道具は使わず、釘か何かで引っかいたみたいな彫り込みで…」
[ 択ばれし魂……悠久の誓い…そうか…あのお方は最後までデュランディオ様をお慕いになられていたのだな… ]
「デュランディオ?」
[ ガロ帝国将軍にしてラムダ国のガロ自治区領主、デュランディオ・デイビッド・デュロック。奥方の名はエルスラ・ファイルヒェン・デュロック。私が唯一この世で忠心を捧げたお方達だ。 ]
とんでもない所で同じ名を聞くことになり、デイビッドは固まってしまった。
(やっぱコイツ魔王かなんかの血が入ってんのかしら…?)
[ 我等は魂の生まれ変わりというものを信じていてな、現世で結ばれた魂は、来世でもまた巡り会えると言われておる。婚儀の際に魂が潰えたその先の悠久の時にまで、互いを探し巡り合い続けようと誓うのだ。択ばれた魂と言うのは恐らくデュランディオ様の事を言っているのだろう。後の世でまた巡り合いましょうと、囚われた先でそれを心の支えにされていたのだろうなぁ… ]
昔々の話に現世の2人はどうしたものかと気まずい思いをしていると、少し低い声でギディオンが話を続けた。
[ その魔道具、いずれ我等にお返し願いたいものだが、国は何と言っている? ]
「今はなんとも。でもいきなり返せと言われたら断られると思う…なんせ200年前から頼りっ切りだもんで、今の王都には攻防に関する基盤が全くない。せめてその挿げ替えが済むまでは貸しといて欲しいと言ってくるだろうな。」
[ 王都の結界だろうに、そんなものワケなかろう! ]
「爺さんにはそうでも人間はそうもいかねぇよ!とんでもなくデカい装置に魔術式から魔法陣からややこしいもん複雑に組み込んで…」
そこまで言いかけると、再びカラカラと笑う声がする。
[ ハッハッハ!そんな旧式のやり方では重かろうな。シェルリアーナ、先月から教えている魔術式の縮小の定義と式はもう覚えたね? ]
「はっ、はい!覚えましたわ!もう完璧に使えます!」
[ よろしい、では1ヘクタールに必要な結界の魔術式の軽量化をどこまでできるかやってみなさい。目標は10分の1。それができたら王家の筆頭魔術師達と一度話し合ってみるといい。王家も自身の力で民を守れる方が何かと都合がよかろう。今度は結界の有無で人を差別する様なことのないようにしてもらいたいものだがね。 ]
「や、やってみます師匠!!」
「つってもよ爺さん。あの装置、現状誰も使えねぇんだぜ?どんどん結界は崩れてるし、どうしたらいいんだ?」
[ ただの魔力では作動せんだろうな。維持は簡単だが一度瓦解すると立て直しには鍵がいる。本来は守護者であったエルスラ様の魔力を鍵に作動していたものを、人間が大量の魔力を継ぎ足すことで稼働させていたものと考えられるな。それが途切れたと言うことは…恐らくエルスラ様の魔力に近い存在が現れたに違いない。 ]
「し、師匠!お恥ずかしいところを…お忙しい時間に申し訳ありません!」
[ なに、構わんよ。どうせ暇な年寄りひとりだ、そちらは元気そうでなにより。今日はどうしたのかね。この時間に通信を寄越すのは珍しいじゃないか。 ]
「師匠、それが…その…」
まずはシェルリアーナが昨日の失態と、己の勉強不足を謝ると、快活な笑い声が響いた。
[ ハッハッハッハッ!そうかそうか!なぁにワシは何も気にせんから安心しなさい。間違えるのも若いうちの特権。多いに誤り、失して敗して、成長していくと良い ]
「うぅ…温かいお言葉ありがとうございます…」
[ それで?珍しいどころではないな、デイビィボーイ。お前さんがワシに何の用だ? ]
「もうボーイなんて歳じゃねぇよ!爺さんに少し聞きたいことがある。」
[ ほほぉ、一体何かね? ]
そこで今度はデイビッドが真面目な声で話を始める。
「王都の中枢でガロの遺物が見つかった。巨大な結界を張る装置だ。爺さんなんか知らねぇか?」
[ ガロの結界装置だと!?……それは…もしや巨大な魔石に組み込まれた… ]
「人ひとり分はあるデケェ魔石の周りを歯車が回ってる。恐らくただの人間には扱えない。」
[ まさか… ]
「石に何かの文言が彫り込まれてて…汝、安寧を求める者…」
[ 穢れ無き魂にて我に祈らん… ]
「やっぱ何か知ってんのか!?」
[ そんな…まさか…この時代になって見つかるとは…その装置はどこで…? ]
「“創世の女神”信仰の教会が隠し持ってた…」
通信陣の向こうから深いため息が聞こえる。
[ デイビィ、シェルリアーナも、よく聞いて欲しい。これから私が話すのは、この国とこの大陸を去った古きガロ帝国の話だ… ]
息を呑む2人に、遥か遠くの地よりギディオンが語り始めた。
ガロ帝国とは、今から200年程前今に栄え、そしてこの地から消えた大国の名だ。
かつてはエルム帝国の二倍の国土を誇る大国だったが、亜人や獣人を含む魔族や、特殊な血筋を持つ者達を多く抱えた大国は、人間の差別と迫害を受けやがて衰退し、王の決断でこの地を去ることになったそうだ。
聞けばこの大陸を囲う海の向こうには、ガロ帝国と同じ様な魔族の住まう大地が広がっているそうで、そこへ国の民共々移り住むという壮大な大移動が行われた。
所が、長くこの地に住まう内に情やしがらみ、人間との絆や家族のため残ると言い出した者も大勢いた。
ガロの王はそんな同胞達の声を聞き入れ、今度こそ人間や他種族からの迫害や虐待が起こらないよう、彼等に逃げ場と居場所を確保するため、特別な結界を張る装置を用意した。
装置は国土の一部と共に装置の守護者を添えて、当時隣国で友好国であったラムダの王へ預けられ、ガロの遺留民による領地をラムダ国内に確保すると、ガロの王は大陸を去った。
しかし、残る者達は新たな領地での穏やかな生活を夢見ていたが、待てど暮らせど装置は届かず守護者も消え去り、ラムダ国も王を筆頭に国中を探したが見つからず、何者かに盗まれてしまったのか、それともあれはガロ国王の虚言であったのかと様々な憶測が飛び交う中、ラムダ国は黒の森の崩壊で魔物と魔獣に蹂躙され、それどころではなくなった。
魔力の豊富なガロ国民達はラムダ人達に力を貸し、数十年掛けてなんとか黒の森の暴走を抑え、その地に住まうことを許された。
これが今から約200年前の出来事だ。
その後、大陸の情勢も落ち着きを取り戻した頃、二度目の悲劇がガロの遺留民達を襲った。
戦いにより散り散りになってしまったガロの同胞達が、各地で討伐や奴隷の対象になっていると知らせが入ったのだ。
国は幾度も止めるようにと喚起を行ったが、当時力を持ち始めた女神信仰の教会の、耳障りの良い教えの方が戦いに疲弊した国民の心を動かし、犠牲者は後を絶たなくなった。
更に教会は王都に特別な結界を張り、人間にまでも格差を付け奢り出したが、多くの人心を掴んだ教会相手では、もう国の力では抑えが効かず、王も国の民の声に圧され、致し方なく教会に結界を張る上での特別な権限を与えるより他無かったという。
そんな中、人里を離れ山奥でひっそりと生き延びる同胞達のため、黒の森の跡地に住まう事になった元ガロの民達は、協力的な人間の手を借りて各地へ散った同胞をかき集め、人間の国の領内にやっと心落ち着ける楽園を築き上げ今に至るという。
「待って…黒の森…って、まさか…」
「 そう、現デュロックのサウラリース領が正にそれだ 」
「それでは…結界の装置は元々ガロ帝国が国民を護るために贈った物だったと言うのですか…?」
[ その通り、長年どれだけ探しても見つからなかった訳だ…我等を迫害し、虫けらの様に殺し回った教会が、まさか我等が作った魔道具を所有していたなどと誰が思うか… ]
「師匠…あの…それでは、装置の守護者というのはどうなったのでしょうか…?」
[ わからない…ただ、その方はこの地に残るガロ国民を護るために民と共に残られたかつての領主の奥方でな。行方不明になったと聞かされ、その絶望たるや言い表すこともできないほどだった… ]
そこで、しばらく黙っていたデイビッドが口を開いた。
「なぁ爺さん、石に彫られた文字は、文言の他に後付けに誰かが彫った様なのもあったんだ。「汝、安寧を望む者…」これの他にも字が彫られてた。「択ばれし魂の現る御代に悠久の誓い果たされん事を」続きにこう書いてあったんだけどよ、あの字はどうも女性の字みたいだった。線が細くて、道具は使わず、釘か何かで引っかいたみたいな彫り込みで…」
[ 択ばれし魂……悠久の誓い…そうか…あのお方は最後までデュランディオ様をお慕いになられていたのだな… ]
「デュランディオ?」
[ ガロ帝国将軍にしてラムダ国のガロ自治区領主、デュランディオ・デイビッド・デュロック。奥方の名はエルスラ・ファイルヒェン・デュロック。私が唯一この世で忠心を捧げたお方達だ。 ]
とんでもない所で同じ名を聞くことになり、デイビッドは固まってしまった。
(やっぱコイツ魔王かなんかの血が入ってんのかしら…?)
[ 我等は魂の生まれ変わりというものを信じていてな、現世で結ばれた魂は、来世でもまた巡り会えると言われておる。婚儀の際に魂が潰えたその先の悠久の時にまで、互いを探し巡り合い続けようと誓うのだ。択ばれた魂と言うのは恐らくデュランディオ様の事を言っているのだろう。後の世でまた巡り合いましょうと、囚われた先でそれを心の支えにされていたのだろうなぁ… ]
昔々の話に現世の2人はどうしたものかと気まずい思いをしていると、少し低い声でギディオンが話を続けた。
[ その魔道具、いずれ我等にお返し願いたいものだが、国は何と言っている? ]
「今はなんとも。でもいきなり返せと言われたら断られると思う…なんせ200年前から頼りっ切りだもんで、今の王都には攻防に関する基盤が全くない。せめてその挿げ替えが済むまでは貸しといて欲しいと言ってくるだろうな。」
[ 王都の結界だろうに、そんなものワケなかろう! ]
「爺さんにはそうでも人間はそうもいかねぇよ!とんでもなくデカい装置に魔術式から魔法陣からややこしいもん複雑に組み込んで…」
そこまで言いかけると、再びカラカラと笑う声がする。
[ ハッハッハ!そんな旧式のやり方では重かろうな。シェルリアーナ、先月から教えている魔術式の縮小の定義と式はもう覚えたね? ]
「はっ、はい!覚えましたわ!もう完璧に使えます!」
[ よろしい、では1ヘクタールに必要な結界の魔術式の軽量化をどこまでできるかやってみなさい。目標は10分の1。それができたら王家の筆頭魔術師達と一度話し合ってみるといい。王家も自身の力で民を守れる方が何かと都合がよかろう。今度は結界の有無で人を差別する様なことのないようにしてもらいたいものだがね。 ]
「や、やってみます師匠!!」
「つってもよ爺さん。あの装置、現状誰も使えねぇんだぜ?どんどん結界は崩れてるし、どうしたらいいんだ?」
[ ただの魔力では作動せんだろうな。維持は簡単だが一度瓦解すると立て直しには鍵がいる。本来は守護者であったエルスラ様の魔力を鍵に作動していたものを、人間が大量の魔力を継ぎ足すことで稼働させていたものと考えられるな。それが途切れたと言うことは…恐らくエルスラ様の魔力に近い存在が現れたに違いない。 ]
75
あなたにおすすめの小説
国王一家は堅実です
satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。
その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。
国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。
外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。
国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる