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黒豚令息の領地開拓編
帰り支度
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無事鹿肉を卸し、人が動き始める前にキャンプへ帰ると、背中から差す朝日に行く手が照らされ、あれだけ嫌だった自分の領地がなんだか少し良いモノに見えて来た。
(色々あり過ぎて追いつけねぇけど、ま、そんな悪いもんじゃなかったな…)
ムスタを離し、ファルコと大砂鳥の餌を足して、すっかり居着いたグランドシェーブルの様子を見て、鹿の内臓の下処理をしていると、森の方からベルダがリディアを連れてやって来る。
「やぁさっき振り!リディアがデイビッド君がどうも今日明日には帰るようだって教えてくれてね。そうなのかい?」
「隠し事なんかできねぇな。明日辺り研究室に帰ろうと思ってんだ。」
「それがいいよ、あっちも支度して置かないと、みんな待ってるからね。」
「待たれる様な人柄じゃねぇよ。」
「そんな事ないさ。少なくとも君の教え子達は首を長くしてあの部屋が開くのを楽しみにしているよ。」
「あー…色々買い足さねぇと、あの部屋なんもねぇからなぁ…」
パンが焼け、鹿出汁のキノコスープが煮え、マスは素揚げのマリネと塩焼き、エビは生のまま粉を付けてバターソテーと、よく叩いて小麦粉の薄皮で包み、蒸し焼きにしてダンプリングにしてみた。
(上手くいくといいな…)
内臓の下処理はまだかかるため、夜の煮込み料理に使う予定だ。
「デイビッド様ぁっ!お腹空きました!!」
「おはようヴィオラ。良かったな、今朝はエビも捕って来たぞ?!」
「エビだぁぁっ!!」
明日からはヴィオラも特待生としてまた姿勢を正して生活せねばならない。束の間の自由が許されるのも明日まで。
その間、思い切り甘やかしてやりたいとデイビッドは思っていた。
「食べ終わったら、またトレントの木まで行ってみようか?帰る前にはセミを回収してやらないと本気で枯れちまうから、今日辺り解放してやろう。」
「そしたらまた次来た時に収穫できますか!?」
「そうだな、時間が経てば経つほど美味くなるらしいから、楽しみが増えるな。」
ヴィオラがエビのソテーを噛み締め、ダンプリングに感動している間に、昼食用に鹿肉をローストし、薄切りにして卵入りのサラダと丸パンをバスケットに詰めたら瓶のソーダ水を添えてファルコに荷物と共に乗せていく。
「このダンプリング、エビ入りかぁ!プリプリしてて美味しいね!」
「はぁ…エビ…幸せのエビ…」
「こんな大きくて新鮮なエビが内地で食べられるとか、本当に信じられないよ。人に知られたら大変だろうね。王家に献上しろとか言われそうで…」
「秘密です!!絶対に秘密にして下さいベルダ先生!!」
エリック達が起き出す頃、再びトレントの収穫に向かったヴィオラは、道中で薬草についてデイビッドの指導を受けながら、虫型の魔物の対処や倒し方について話を聞きながら森の奥までやって来た。
トレントは更に木肌の溝が増え、腰を曲げた様な姿になってしまっているが、木の実は先日の倍程実っていた。
「あんなにたくさん実がなってますよ!?」
「植物の限界栽培みたいなもんだよ。危機に陥ると本能でああして実を付けるんだ。そうなると、どっかに核を植えられた生き物がいるかも知れない。身体から木の枝が生えた動物がいたら気を付けろよ?」
「デイビッド様…あ、あれ…」
ヴィオラが指差す方には、頭から木の芽が突き出た異様な姿に変えられた大きなネズミがヨロヨロと歩いていた。
「力がなくてあんなのしか狙えなかったんだな。よし、アレも採って行こう。」
そう言うとデイビッドは木の生えたネズミに袋を被せ他の木の枝に吊るしてしまった。
「いいかファルコ、コレは食うなよ?!」
「クォルルルル…」
その間に、ヴィオラはあまりにも萎れたトレントの木が哀れになり、根元のセミを掘り返し、土を戻してほんの少しだけ自分の魔力を分け与えた。
(酷いことしてごめんね、美味しい木の実をありがとう…)
デイビッドが収穫できる果実を採り切ると、ヴィオラはこちらをじっと見ているトレントの木に手を振ってデイビッドについて行った。
森の浅層にある泉でひと休みし、昼食のバスケットを広げるとヴィオラがデイビッドにもたれ掛かってパンを手に嬉しそうにしていた。
「おいひぃでふ!」
「ヴィオラは…なんでそう俺にくっつきたがるんだ…?」
「なんでって、好きだからですよ?好きな人には触れていたいって思いませんか?」
「理屈はわかる…でも実感ができなくて…むしろ、直ぐにでも離れなきゃいけない気がして落ち着かない。」
「デイビッド様…」
「いや、自分が変な事はわかってる!ただ、どうしても納得出来なくて、昔からの癖に引っ張られちまうんだ。特に女性には触れない、近づかない、声を掛けないってそれがずっと当たり前だったから…ごめんな…その辺はどう頑張ってもマトモじゃない。」
「だったら、私は気にせずくっつきますね!デイビッド様の都合とか知りません。私がくっつきたいのでくっつきます!」
「ヴィオラ……わかったよ、しばらくはそうしててくれ。俺も慣れたら…慣れる…か?わかんねぇけど、ヴィオラに寄り添えるよう努力はしてみるよ。」
「楽しみにしてますね、デイビッド様!」
婚約者として、少しずつ歩み寄ろうとするデイビッドもまた、とてつもなくのろのろとだが成長していた。
その帰り道。
「そういやヴィオラには言ってなかったけど、明日、学園へ帰るから支度しといてくれ。」
「えっ!!??」
「えって…ヴィオラだってまだ課題が残ってんだろ?テスト勉強だってあるだろうし…」
「ええっ!!???」
「そんな驚くなよ、半月の休暇なんだからそろそろ戻って休み明けからの支度もあるしよ。」
「そんな…私の天国が…なんでそんな急に帰るなんていうんですか!?」
「でないとなんかしら理由付けて先延ばしにされちまう可能性があるからだよ!帰るったら明日帰るからな!?」
「せめてお昼過ぎ…いや、夕方にして下さい!」
「明るい内に帰って掃除するよ。ホコリだらけだろうからな。」
「ぐぅぅぅ……」
いきなり絶望の縁に立たされたような顔をするヴィオラとキャンプへ戻ると、そこにも希望を絶たれたような顔のシェルリアーナが待っていた。
「なんで帰るなんて言うのよ!?」
「休暇なんだから、いずれ帰るだろ?」
「やり残したことまだいっぱいあるのに!!」
「そんな遠くねぇし、また来りゃいいだろ?」
「簡易の転移門は維持管理が必要なの!誰もいなくなったら1日で消えちゃうのよ!」
「そう言われても…」
そう言われても、そろそろ帰り時なのは本当で、ヴィオラもシェルリアーナも、それは理解している。
こうしてはいられないとばかりに、シェルリアーナは採取道具を手に森へ向かって行った。
「帰るまでに、ベリーのパイとジャガイモのガレットとオムレツと魚のムニエルと鹿肉のワイン煮込み作って!あと果実酒の果物凍らせてソルベにしといて!じゃあね!」
「私も一緒に行ってきまーす!!」
バタバタ出かける2人をデイビッドは怪訝な目で見送った。
「アイツ…俺をなんだと思ってんだろうなぁ…」
「下僕…?」
「んじゃ、お前は俺をなんだと思ってんだよ?」
「もちろん主人ですよ!」
「揃いも揃って人をなんだと思ってんだ!?」
デイビッドが言われたものをせっせと作っている間、ヴィオラとシェルリアーナは2人で湖の奥の森まで来ていた。
「よく考えたら、世界樹の生えた森にある薬草が貴重じゃないはずないのよ!持って帰って効能の違いとか検証しなくちゃ!あと、滅多に採れない魔草も普通に生えてるから、なるべく摘んでいきたいの!」
「あ、ブローチビートル!」
ヴィオラがキラキラ光る虫を追ってシェルリアーナから少し離れると、途端大きな蜂が後ろからヴィオラを付け回し始めた。
気が付かないヴィオラが青緑色に輝く甲虫を捕まえようと、手を伸ばしかけた時、蜂はヴィオラの背中を狙って針を突き立てようと勢い良く飛んで来た。
しかし同時に大きな唸り声が辺りに響き、ハチは驚いて直ぐに逃げて行った。
オ゙オオォォーーンンン!!!
「わぁっ!びっくりした!!この声、トレント?!」
ヴィオラが驚いて上げかけた頭の上を、巨大な蜂が鋭い羽音をさせながら飛んでいく。
「キャァァッ!!今のはリオパホネット!こんな近くに?!まさか…助けてくれたの…?」
ヴィオラはまだ枝がしなって元気の無いトレントの方を見た。
(色々あり過ぎて追いつけねぇけど、ま、そんな悪いもんじゃなかったな…)
ムスタを離し、ファルコと大砂鳥の餌を足して、すっかり居着いたグランドシェーブルの様子を見て、鹿の内臓の下処理をしていると、森の方からベルダがリディアを連れてやって来る。
「やぁさっき振り!リディアがデイビッド君がどうも今日明日には帰るようだって教えてくれてね。そうなのかい?」
「隠し事なんかできねぇな。明日辺り研究室に帰ろうと思ってんだ。」
「それがいいよ、あっちも支度して置かないと、みんな待ってるからね。」
「待たれる様な人柄じゃねぇよ。」
「そんな事ないさ。少なくとも君の教え子達は首を長くしてあの部屋が開くのを楽しみにしているよ。」
「あー…色々買い足さねぇと、あの部屋なんもねぇからなぁ…」
パンが焼け、鹿出汁のキノコスープが煮え、マスは素揚げのマリネと塩焼き、エビは生のまま粉を付けてバターソテーと、よく叩いて小麦粉の薄皮で包み、蒸し焼きにしてダンプリングにしてみた。
(上手くいくといいな…)
内臓の下処理はまだかかるため、夜の煮込み料理に使う予定だ。
「デイビッド様ぁっ!お腹空きました!!」
「おはようヴィオラ。良かったな、今朝はエビも捕って来たぞ?!」
「エビだぁぁっ!!」
明日からはヴィオラも特待生としてまた姿勢を正して生活せねばならない。束の間の自由が許されるのも明日まで。
その間、思い切り甘やかしてやりたいとデイビッドは思っていた。
「食べ終わったら、またトレントの木まで行ってみようか?帰る前にはセミを回収してやらないと本気で枯れちまうから、今日辺り解放してやろう。」
「そしたらまた次来た時に収穫できますか!?」
「そうだな、時間が経てば経つほど美味くなるらしいから、楽しみが増えるな。」
ヴィオラがエビのソテーを噛み締め、ダンプリングに感動している間に、昼食用に鹿肉をローストし、薄切りにして卵入りのサラダと丸パンをバスケットに詰めたら瓶のソーダ水を添えてファルコに荷物と共に乗せていく。
「このダンプリング、エビ入りかぁ!プリプリしてて美味しいね!」
「はぁ…エビ…幸せのエビ…」
「こんな大きくて新鮮なエビが内地で食べられるとか、本当に信じられないよ。人に知られたら大変だろうね。王家に献上しろとか言われそうで…」
「秘密です!!絶対に秘密にして下さいベルダ先生!!」
エリック達が起き出す頃、再びトレントの収穫に向かったヴィオラは、道中で薬草についてデイビッドの指導を受けながら、虫型の魔物の対処や倒し方について話を聞きながら森の奥までやって来た。
トレントは更に木肌の溝が増え、腰を曲げた様な姿になってしまっているが、木の実は先日の倍程実っていた。
「あんなにたくさん実がなってますよ!?」
「植物の限界栽培みたいなもんだよ。危機に陥ると本能でああして実を付けるんだ。そうなると、どっかに核を植えられた生き物がいるかも知れない。身体から木の枝が生えた動物がいたら気を付けろよ?」
「デイビッド様…あ、あれ…」
ヴィオラが指差す方には、頭から木の芽が突き出た異様な姿に変えられた大きなネズミがヨロヨロと歩いていた。
「力がなくてあんなのしか狙えなかったんだな。よし、アレも採って行こう。」
そう言うとデイビッドは木の生えたネズミに袋を被せ他の木の枝に吊るしてしまった。
「いいかファルコ、コレは食うなよ?!」
「クォルルルル…」
その間に、ヴィオラはあまりにも萎れたトレントの木が哀れになり、根元のセミを掘り返し、土を戻してほんの少しだけ自分の魔力を分け与えた。
(酷いことしてごめんね、美味しい木の実をありがとう…)
デイビッドが収穫できる果実を採り切ると、ヴィオラはこちらをじっと見ているトレントの木に手を振ってデイビッドについて行った。
森の浅層にある泉でひと休みし、昼食のバスケットを広げるとヴィオラがデイビッドにもたれ掛かってパンを手に嬉しそうにしていた。
「おいひぃでふ!」
「ヴィオラは…なんでそう俺にくっつきたがるんだ…?」
「なんでって、好きだからですよ?好きな人には触れていたいって思いませんか?」
「理屈はわかる…でも実感ができなくて…むしろ、直ぐにでも離れなきゃいけない気がして落ち着かない。」
「デイビッド様…」
「いや、自分が変な事はわかってる!ただ、どうしても納得出来なくて、昔からの癖に引っ張られちまうんだ。特に女性には触れない、近づかない、声を掛けないってそれがずっと当たり前だったから…ごめんな…その辺はどう頑張ってもマトモじゃない。」
「だったら、私は気にせずくっつきますね!デイビッド様の都合とか知りません。私がくっつきたいのでくっつきます!」
「ヴィオラ……わかったよ、しばらくはそうしててくれ。俺も慣れたら…慣れる…か?わかんねぇけど、ヴィオラに寄り添えるよう努力はしてみるよ。」
「楽しみにしてますね、デイビッド様!」
婚約者として、少しずつ歩み寄ろうとするデイビッドもまた、とてつもなくのろのろとだが成長していた。
その帰り道。
「そういやヴィオラには言ってなかったけど、明日、学園へ帰るから支度しといてくれ。」
「えっ!!??」
「えって…ヴィオラだってまだ課題が残ってんだろ?テスト勉強だってあるだろうし…」
「ええっ!!???」
「そんな驚くなよ、半月の休暇なんだからそろそろ戻って休み明けからの支度もあるしよ。」
「そんな…私の天国が…なんでそんな急に帰るなんていうんですか!?」
「でないとなんかしら理由付けて先延ばしにされちまう可能性があるからだよ!帰るったら明日帰るからな!?」
「せめてお昼過ぎ…いや、夕方にして下さい!」
「明るい内に帰って掃除するよ。ホコリだらけだろうからな。」
「ぐぅぅぅ……」
いきなり絶望の縁に立たされたような顔をするヴィオラとキャンプへ戻ると、そこにも希望を絶たれたような顔のシェルリアーナが待っていた。
「なんで帰るなんて言うのよ!?」
「休暇なんだから、いずれ帰るだろ?」
「やり残したことまだいっぱいあるのに!!」
「そんな遠くねぇし、また来りゃいいだろ?」
「簡易の転移門は維持管理が必要なの!誰もいなくなったら1日で消えちゃうのよ!」
「そう言われても…」
そう言われても、そろそろ帰り時なのは本当で、ヴィオラもシェルリアーナも、それは理解している。
こうしてはいられないとばかりに、シェルリアーナは採取道具を手に森へ向かって行った。
「帰るまでに、ベリーのパイとジャガイモのガレットとオムレツと魚のムニエルと鹿肉のワイン煮込み作って!あと果実酒の果物凍らせてソルベにしといて!じゃあね!」
「私も一緒に行ってきまーす!!」
バタバタ出かける2人をデイビッドは怪訝な目で見送った。
「アイツ…俺をなんだと思ってんだろうなぁ…」
「下僕…?」
「んじゃ、お前は俺をなんだと思ってんだよ?」
「もちろん主人ですよ!」
「揃いも揃って人をなんだと思ってんだ!?」
デイビッドが言われたものをせっせと作っている間、ヴィオラとシェルリアーナは2人で湖の奥の森まで来ていた。
「よく考えたら、世界樹の生えた森にある薬草が貴重じゃないはずないのよ!持って帰って効能の違いとか検証しなくちゃ!あと、滅多に採れない魔草も普通に生えてるから、なるべく摘んでいきたいの!」
「あ、ブローチビートル!」
ヴィオラがキラキラ光る虫を追ってシェルリアーナから少し離れると、途端大きな蜂が後ろからヴィオラを付け回し始めた。
気が付かないヴィオラが青緑色に輝く甲虫を捕まえようと、手を伸ばしかけた時、蜂はヴィオラの背中を狙って針を突き立てようと勢い良く飛んで来た。
しかし同時に大きな唸り声が辺りに響き、ハチは驚いて直ぐに逃げて行った。
オ゙オオォォーーンンン!!!
「わぁっ!びっくりした!!この声、トレント?!」
ヴィオラが驚いて上げかけた頭の上を、巨大な蜂が鋭い羽音をさせながら飛んでいく。
「キャァァッ!!今のはリオパホネット!こんな近くに?!まさか…助けてくれたの…?」
ヴィオラはまだ枝がしなって元気の無いトレントの方を見た。
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