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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
魔法の使い方
デイビッドが洗い物をしている間、後ろでヴィオラとシェルリアーナは手をつないで、魔力の流れの確認をしていた。
「まずは私の魔力を手から流しますわ…ゆっくり何かが流れ込む感覚を覚えて…」
「あっ!指先に、なにかぞわぞわした感じがします。」
「それを全身に巡らせるイメージを持って!」
「うう~…体の内側を撫でられているような感じがします…」
「あら、魔力感覚が意外と鋭いですのね?それを纏めて体外に放出するイメージを掴んで!…一気に出すような感じよ?!」
「お腹の下が…熱くなってきました!」
「それが魔力を体内で練る感覚よ!詠唱を…私に続いて。汝、我を照らし給え。」
「なんじ、われをてらしたまえ…」
「光よ!」
「光よ!」
途端、ヴィオラの手の平に眩い光の玉が現れ、辺りが何も見えなくなってしまった。
「キャァァッ!!」
「眩しいっ!!これは強すぎますわ!消してヴィオラ!?」
「消すって!どうしたら…」
「魔力を中断するの…手の平に流れる魔力を断ち切らないと…」
「ううう…駄目です!魔力がどんどん、吸い取られるみたいに流れて…」
光の玉はどんどん大きくなってしまう。
その時、パチンと大きな音がして光が一瞬で霧散した。
「大丈夫か?!2人とも!!」
「ハァ…ハァ…驚きました…でも、大丈夫です…」
「すごい魔力を持ってるなぁヴィオラは!初めてなのにあんなにデカい光の玉が出せるなんて!」
「でも…コントロールが全く効きませんでした…」
「そのための訓練だろ?魔力持ちはみんなここで制御方を覚えるらしいぞ?ヴィオラにも絶対できる!大丈夫だ!」
「まさかアレを一瞬で叩き消すなんて…ああ、貴方には例の魔道具がありましたもの…ね…?」
シェルリアーナは、デイビッドが光の玉に手をかざし、ひと叩きで消してしまったのを確かに見た。
しかし、
(ベストを…着ていない…?)
デイビッドは今、服の上にエプロンしか付けていない。
(気の所為だったのかしら…?)
シェルリアーナが考えていると、ヴィオラが泣きそうな顔で寄ってきた。
「シェル先輩!大丈夫ですか?!ごめんなさい、私うまくできなくて…」
「あ!いいえ?!そんなことありませんわ!?むしろ初めてでこんなに大きな光の玉が出せるなんて、凄い素質がありましてよ?!大丈夫、制御も私が教えますわ!」
その後も特訓は続き、ヴィオラは4回もデカい玉に振り回されながら、なんとか通常サイズの玉のコントロールに成功した。
「できました!!デイビッド様見て下さい!!手の平の上で光の玉を維持できてます!!」
「流石だなぁヴィオラ!!これでどんなに暗い道でも歩けるぞ?!」
「今日は疲れましたわね…ヴィオラも、少し早めに戻って、部屋で休みましょう?」
「はい、そうします。」
珍しく素直に言うことを聞く辺り、やはり魔力を使って疲れたのだろう。
2人はいつもより少し早めに寮へ帰って行った。
「はぁ~。しかし、魔力ねぇ。感覚が全く分からん!」
「でも、デイビッド様も魔法陣や魔術言語はいくつかわかるんでしょ?」
今日は特別授業のため、ほぼ1日掛けで出ていたエリックが、戻るなりカウチポテトになって昼の残り物を食べている。
その隣で、デイビッドは昼間に触れた光の玉の感触を思い出していた。
触れた手に、じわっと温かいような、若干痺れるような、不思議な感覚が走ったのを覚えている。
「魔術言語は楽譜みたいなもんだ。音がわからなきゃ読めても意味がない。音だけでも正しくは奏でられない。更に楽器の使い方が分からなければ演奏もできない。俺は楽器も無く音もわからないまま、ただ音符を追ってるだけと同じなんだよ。」
「例えがちょっとお洒落でイラッとしますね。」
「わかりやすいだろが!!」
「魔力の感覚、味わってみます?」
そう言うなり、エリックはデイビッドの背中から、自分の魔力を流し込んだ。
「うわっ!なんだこれ!やめろ!!気持ち悪ぃ!!身体がゾワッとす……あ…あれ…なんだ?…目が…回って……」
途端、デイビッドの視界がぐるぐる回り、ソファに倒れ込んでしまう。
「あちゃー!よっぽど魔力と相性悪いんですね。まさかこんなになるとは…」
「あたまが…ぐらぐらして……からだが…うごか…な…」
「それ、魔力酔いですよ。すぐ治りますけど、しばらくはそのままじっとしてて下さいね?!」
「いや…だから……うごけ…ないって……」
「あれ?おかしいな…全然戻らない?」
「てめ…あとで……かくご…しとけよ………」
「え?ちょっと!デイビッド様?!待って待って?!」
意識がだんだん遠ざかり、身体が沈んで行くような浮遊感に包まれ、デイビッドはそのまま気を失ってしまった。
(ここはどこだ…?)
気がつくと、デイビッドの周りは真っ暗で、自分の身体すら見えない闇が続いていた。
歩き出すと、足に何かがまとわりついてうまく進めず、次第に身体が重くなる。
遥か遠くに光が見えるが、なかなかたどり着くことができない。
(誰かいる?!)
光の中に人影が見えるが、みんな背中を向けていてこちらに気が付かない。
(あれは…エリック?)
他にも、アーネスト、シェルリアーナ、両親に、仕事の関係者、学園の教員、たくさんいるが誰もこちらを向いてはくれない。
呼びかけようにも声も出ず、懸命に近寄ろうとしても離されてしまう。
そして最後の人影だけが、ゆっくりデイビッドの方へ顔を向けた。
(ヴィオラ…)
氷の様に冷たい蔑んだ目がデイビッドを一瞥すると、すぐに顔を背けて皆と同じ方へ行ってしまう。
心臓を握り潰されるような苦しみに襲われ、糸が切れたように身体が闇に飲み込まれて、息がうまくできなくなった。
(いや…だ……)
手を伸ばしかけた次の瞬間、頭に鈍器で殴られたような衝撃が走り、その痛みがこれは夢だと教えてくれた。
(いってぇぇ……誰だ!?)
振り向くと、闇の中、見えない弱々しい力が腕を引いてくる。
今にも消えてしまいそうな、その小さな力に導かれて、デイビッドの意識は少しずつ明るい方へ戻って行った。
「まずは私の魔力を手から流しますわ…ゆっくり何かが流れ込む感覚を覚えて…」
「あっ!指先に、なにかぞわぞわした感じがします。」
「それを全身に巡らせるイメージを持って!」
「うう~…体の内側を撫でられているような感じがします…」
「あら、魔力感覚が意外と鋭いですのね?それを纏めて体外に放出するイメージを掴んで!…一気に出すような感じよ?!」
「お腹の下が…熱くなってきました!」
「それが魔力を体内で練る感覚よ!詠唱を…私に続いて。汝、我を照らし給え。」
「なんじ、われをてらしたまえ…」
「光よ!」
「光よ!」
途端、ヴィオラの手の平に眩い光の玉が現れ、辺りが何も見えなくなってしまった。
「キャァァッ!!」
「眩しいっ!!これは強すぎますわ!消してヴィオラ!?」
「消すって!どうしたら…」
「魔力を中断するの…手の平に流れる魔力を断ち切らないと…」
「ううう…駄目です!魔力がどんどん、吸い取られるみたいに流れて…」
光の玉はどんどん大きくなってしまう。
その時、パチンと大きな音がして光が一瞬で霧散した。
「大丈夫か?!2人とも!!」
「ハァ…ハァ…驚きました…でも、大丈夫です…」
「すごい魔力を持ってるなぁヴィオラは!初めてなのにあんなにデカい光の玉が出せるなんて!」
「でも…コントロールが全く効きませんでした…」
「そのための訓練だろ?魔力持ちはみんなここで制御方を覚えるらしいぞ?ヴィオラにも絶対できる!大丈夫だ!」
「まさかアレを一瞬で叩き消すなんて…ああ、貴方には例の魔道具がありましたもの…ね…?」
シェルリアーナは、デイビッドが光の玉に手をかざし、ひと叩きで消してしまったのを確かに見た。
しかし、
(ベストを…着ていない…?)
デイビッドは今、服の上にエプロンしか付けていない。
(気の所為だったのかしら…?)
シェルリアーナが考えていると、ヴィオラが泣きそうな顔で寄ってきた。
「シェル先輩!大丈夫ですか?!ごめんなさい、私うまくできなくて…」
「あ!いいえ?!そんなことありませんわ!?むしろ初めてでこんなに大きな光の玉が出せるなんて、凄い素質がありましてよ?!大丈夫、制御も私が教えますわ!」
その後も特訓は続き、ヴィオラは4回もデカい玉に振り回されながら、なんとか通常サイズの玉のコントロールに成功した。
「できました!!デイビッド様見て下さい!!手の平の上で光の玉を維持できてます!!」
「流石だなぁヴィオラ!!これでどんなに暗い道でも歩けるぞ?!」
「今日は疲れましたわね…ヴィオラも、少し早めに戻って、部屋で休みましょう?」
「はい、そうします。」
珍しく素直に言うことを聞く辺り、やはり魔力を使って疲れたのだろう。
2人はいつもより少し早めに寮へ帰って行った。
「はぁ~。しかし、魔力ねぇ。感覚が全く分からん!」
「でも、デイビッド様も魔法陣や魔術言語はいくつかわかるんでしょ?」
今日は特別授業のため、ほぼ1日掛けで出ていたエリックが、戻るなりカウチポテトになって昼の残り物を食べている。
その隣で、デイビッドは昼間に触れた光の玉の感触を思い出していた。
触れた手に、じわっと温かいような、若干痺れるような、不思議な感覚が走ったのを覚えている。
「魔術言語は楽譜みたいなもんだ。音がわからなきゃ読めても意味がない。音だけでも正しくは奏でられない。更に楽器の使い方が分からなければ演奏もできない。俺は楽器も無く音もわからないまま、ただ音符を追ってるだけと同じなんだよ。」
「例えがちょっとお洒落でイラッとしますね。」
「わかりやすいだろが!!」
「魔力の感覚、味わってみます?」
そう言うなり、エリックはデイビッドの背中から、自分の魔力を流し込んだ。
「うわっ!なんだこれ!やめろ!!気持ち悪ぃ!!身体がゾワッとす……あ…あれ…なんだ?…目が…回って……」
途端、デイビッドの視界がぐるぐる回り、ソファに倒れ込んでしまう。
「あちゃー!よっぽど魔力と相性悪いんですね。まさかこんなになるとは…」
「あたまが…ぐらぐらして……からだが…うごか…な…」
「それ、魔力酔いですよ。すぐ治りますけど、しばらくはそのままじっとしてて下さいね?!」
「いや…だから……うごけ…ないって……」
「あれ?おかしいな…全然戻らない?」
「てめ…あとで……かくご…しとけよ………」
「え?ちょっと!デイビッド様?!待って待って?!」
意識がだんだん遠ざかり、身体が沈んで行くような浮遊感に包まれ、デイビッドはそのまま気を失ってしまった。
(ここはどこだ…?)
気がつくと、デイビッドの周りは真っ暗で、自分の身体すら見えない闇が続いていた。
歩き出すと、足に何かがまとわりついてうまく進めず、次第に身体が重くなる。
遥か遠くに光が見えるが、なかなかたどり着くことができない。
(誰かいる?!)
光の中に人影が見えるが、みんな背中を向けていてこちらに気が付かない。
(あれは…エリック?)
他にも、アーネスト、シェルリアーナ、両親に、仕事の関係者、学園の教員、たくさんいるが誰もこちらを向いてはくれない。
呼びかけようにも声も出ず、懸命に近寄ろうとしても離されてしまう。
そして最後の人影だけが、ゆっくりデイビッドの方へ顔を向けた。
(ヴィオラ…)
氷の様に冷たい蔑んだ目がデイビッドを一瞥すると、すぐに顔を背けて皆と同じ方へ行ってしまう。
心臓を握り潰されるような苦しみに襲われ、糸が切れたように身体が闇に飲み込まれて、息がうまくできなくなった。
(いや…だ……)
手を伸ばしかけた次の瞬間、頭に鈍器で殴られたような衝撃が走り、その痛みがこれは夢だと教えてくれた。
(いってぇぇ……誰だ!?)
振り向くと、闇の中、見えない弱々しい力が腕を引いてくる。
今にも消えてしまいそうな、その小さな力に導かれて、デイビッドの意識は少しずつ明るい方へ戻って行った。
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