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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
エトワールの贈り物
緑色の石の玉がルーチェの手の中で淡く光る。
「おまじない、たくさんこめてあげたよ」
「助かった。そういうのは俺には出来ないからな。ルーチェの魔法なら効きそうだ。」
ビーズを受け取り革紐に通して組んでいくと、デイビッドの手元にふわふわと幾つも玉が浮かんで来た。
「なんだこりゃ?」
「ふふふ…みんなきたんだよ、みえないけど、てつだってくれたんだ」
手を出すと玉がひとりでに手の平に集まって来る。
全ての玉を大事に紐へ組み込むと、やがてアミュレットが完成した。
タックに取り付けた一番大きな赤い玉は、燃えるような輝きを放っている。
「ひの、ようせいが、とくべつがんばってくれたよ」
「そっかぁ。お礼には何をしたらいい?」
「うたって!」
「そんなんでいいのか?」
「みんな、まってるよ」
「わかったよ。」
引き出しから例の土笛を取り出し奏でると、明かりの中で何かが集まって動き回っている気配がした。
ルーチェ以外は見えないが、時折光の粒が弾けて消えるので、そこに妖精がいることがわかる。
少しテンポ良く笛を吹いてやると、やがて妖精は輪になりくるくる回り出したようだ。
見ている方も少し楽しくなってくる。
やがて曲が終わると、部屋中にキラキラと光る粉のようなものが波のように広がって消えた。
「みんなたのしかったって、こんやはあかるいから、ぼくもみんなとあそんでくるね」
「ああ、気を付けてな?!」
窓を物ともせずすり抜けてルーチェが仲間達と雪の中へ出て行くと、デイビッドも片付けを始めようとして振り返り、カウチの上で固まっているエリックと目が合った。
「うわ!何してんだ?おどかすなよ!」
「それはこっちのセリフですけど?!何してんだアンタ!!」
「何って…ライラに持たせようと思って革細工してたらルーチェが来て…」
「それ!まさか妖精の呼び笛?!」
「あ、コレか?知らねぇよ。ガキの頃に領地の森の奥で見つけたんだ。ずっと忘れてたけど、最近思い出してたまに吹いてる。」
「よし!吹くな、二度と!!」
「要望に応えただけだぞ?ルーチェが喜ぶんだよ。吹いてやるって約束もしちまったし…」
エリックは頭を抱えて辺りを見回した。
部屋中に漂う、濃い霊力と妖精の気配。
そして外の雪の上を埋め尽くす程の、踊る妖精達。
「異常と言うか非常と言うか、もう手に負えないんで見なかったことにしたい…」
「元々見えねぇもんならいいじゃねぇか。」
「ここを妖精の領域にされたら困るんですよ!人があんまり干渉していい存在じゃないんです本当は!!それなのに…どうするんですかこの御伽話級のアミュレット!!」
「良く出来たとおも…」
「さっき妖精達があの子にまで祝福掛けてったんですよ!?こんな簡単に妖精の愛し子生み出さないで下さい!!」
「そんなん知らなかったし…」
「知らないじゃ済まないんだって!これ以上余計な事する前にさっさと寝ろ!!」
(怒られた……)
ライラは夜泣きもせずすやすや眠っている。
デイビッドも端の方でライラが落ちないよう横になった。
次の朝早く、目が覚めたライラは横にいたデイビッドの頭で遊び始めた。
「あーーう!」
「朝から元気だなぁ…」
顔にかぶりつこうとしてくるライラを躱して、デイビッドはオーブンに火を入れた。
先にライラの腹を満たしてやってから、スープ鍋をかき回しパンと卵を焼いているとエリックがげんなりしながら起きて来る。
「うわぁ…体調がすこぶる良い…」
「今日は出掛けるから手伝えよ?!」
自分の手足で遊ぶライラを構いながら、昨日仕込んだクッキーの生地を天火に入れ、次々と焼き上げていく。
1回目が焼き上がると、丁度ヴィオラが走って来た。
「おはようございます!ライラちゃーん!」
来るなりライラに抱き着いて離さない。
ヴィオラとライラが遊んでいる間に、クッキーを冷めた順に箱に詰めて、昨日のキャラメルの瓶と一緒に袋に入れていく。
「かわいいクッキーですね。星と雪だるまと葉っぱの模様が入ってる。ずいぶん凝りましたね?!」
「親父から引き継いだ事業でやってる養護院に持ってくんだよ。」
「あ、そうか!今日はエトワールの最終日ですもんね!」
エトワールは季節毎に巡る12の星にちなんだ祭で、年明け前日までの12日間、毎日それぞれの星と、神々や精霊などに祈りを捧げて過ごすお祭だ。
最終日には家族や仲間と集まり、焚き火を囲んでご馳走を食べる。
そして夜になると青服の賢者が現れて贈り物を授けてくれるというものだ。
「雪も止んだし、道もそこまで積もらなかったから午前中には出かけられそうだ…だからそんな顔してもなぁ…」
ヴィオラはライラとの別れが悲しくて、早くも目を潤ませている。
「せめてもう少し一緒にいたかった…」
「早く引き渡した方がライラのためだ…時々様子を見に行ってやればいいさ。」
「うえぇぇん!ライラちゃん…」
昼前には道の雪もだいぶ解け、一度商会まで歩いて行く。
モコモコの服を着たヴィオラが、上着の中にライラを入れてデイビッドの隣を歩く。
「重くないか?」
「全然平気です!」
「ライラちゃん、すっかりヴィオラ様に懐きましたね。」
商会に着くと他の荷物が待機していて、馬車に乗り養護院へ。
デイビッドはエリックに青い衣装を渡した。
「なんですかコレ?」
「賢者の衣装だと。エトワールによくいるだろ?」
「デイビッド様着ればいいのに!」
「親父が使ってた奴だから肩すら入らねぇよ!」
着いた養護院では子供達が雪遊びの真っ最中だった。
院長が現れて丁寧に挨拶すると、中へ通され年上の子供達がお茶を淹れてくれる。
「エトワールおめでとうございます。毎年こうして来て頂けて本当に助かります。」
「いえ…俺は親父と方針が違うので、力になれてるかどうか…」
「なんの!デイビッド様がいらしてから施設の質は格段に向上致しました。収入も出来て本当にありがたい事です。」
デイビッドと院長が話をしている間、エリックは子供達を集めてプレゼントを配り始めた。
その間にライラを奥へ連れて行く。
「あと、この子なんですが…」
「まぁ、なんて清浄な気に包まれた子でしょう!」
「昨日、彼女が見つけて連れてきてくれて。こちらにお預けできますか?」
「もちろんですとも!さぁこちらへ…大丈夫ですよお嬢さん。大切にお預かりしますからね。」
ヴィオラは泣きそうになりながらライラを院長に手渡した。
「あぅー…」
「ライラちゃん…元気でね…また会いに来るからね!!」
ヴィオラの指を掴んでいたライラの手が離れ、別室へ連れて行かれるとヴィオラはその場で泣き出した。
「うぅぅ…ライラちゃん…ライラちゃん…」
「少しの間でもライラはヴィオラと居られて嬉しかったはずだ。大丈夫、ライラは見た目よりずっと強い。元気に育ってくれるよ…」
エリックが空の袋を手に戻って来ると、3人は馬車に戻り養護院を後にした。
ヴィオラはすっかり気を落とし元気が無い。
「春になったらまた会いに来よう?な?」
「あれだけ強力な加護を受けた子なんてそういませんから。絶対に幸せになりますよ。」
「……」
ぼんやりして心此処にあらずのヴィオラの手に、デイビッドが何かを差し出した。
「……なんですか…?これ…」
「エトワールの星に倣った魔除けと幸運のアミュレット。ライラとお揃いで作った。何処にいても繋がって居られるようにと思って…」
「デイビッド様…」
アミュレットを握りしめ、デイビッドに寄り掛かかると、ヴィオラはそのまま眠ってしまった。
「おまじない、たくさんこめてあげたよ」
「助かった。そういうのは俺には出来ないからな。ルーチェの魔法なら効きそうだ。」
ビーズを受け取り革紐に通して組んでいくと、デイビッドの手元にふわふわと幾つも玉が浮かんで来た。
「なんだこりゃ?」
「ふふふ…みんなきたんだよ、みえないけど、てつだってくれたんだ」
手を出すと玉がひとりでに手の平に集まって来る。
全ての玉を大事に紐へ組み込むと、やがてアミュレットが完成した。
タックに取り付けた一番大きな赤い玉は、燃えるような輝きを放っている。
「ひの、ようせいが、とくべつがんばってくれたよ」
「そっかぁ。お礼には何をしたらいい?」
「うたって!」
「そんなんでいいのか?」
「みんな、まってるよ」
「わかったよ。」
引き出しから例の土笛を取り出し奏でると、明かりの中で何かが集まって動き回っている気配がした。
ルーチェ以外は見えないが、時折光の粒が弾けて消えるので、そこに妖精がいることがわかる。
少しテンポ良く笛を吹いてやると、やがて妖精は輪になりくるくる回り出したようだ。
見ている方も少し楽しくなってくる。
やがて曲が終わると、部屋中にキラキラと光る粉のようなものが波のように広がって消えた。
「みんなたのしかったって、こんやはあかるいから、ぼくもみんなとあそんでくるね」
「ああ、気を付けてな?!」
窓を物ともせずすり抜けてルーチェが仲間達と雪の中へ出て行くと、デイビッドも片付けを始めようとして振り返り、カウチの上で固まっているエリックと目が合った。
「うわ!何してんだ?おどかすなよ!」
「それはこっちのセリフですけど?!何してんだアンタ!!」
「何って…ライラに持たせようと思って革細工してたらルーチェが来て…」
「それ!まさか妖精の呼び笛?!」
「あ、コレか?知らねぇよ。ガキの頃に領地の森の奥で見つけたんだ。ずっと忘れてたけど、最近思い出してたまに吹いてる。」
「よし!吹くな、二度と!!」
「要望に応えただけだぞ?ルーチェが喜ぶんだよ。吹いてやるって約束もしちまったし…」
エリックは頭を抱えて辺りを見回した。
部屋中に漂う、濃い霊力と妖精の気配。
そして外の雪の上を埋め尽くす程の、踊る妖精達。
「異常と言うか非常と言うか、もう手に負えないんで見なかったことにしたい…」
「元々見えねぇもんならいいじゃねぇか。」
「ここを妖精の領域にされたら困るんですよ!人があんまり干渉していい存在じゃないんです本当は!!それなのに…どうするんですかこの御伽話級のアミュレット!!」
「良く出来たとおも…」
「さっき妖精達があの子にまで祝福掛けてったんですよ!?こんな簡単に妖精の愛し子生み出さないで下さい!!」
「そんなん知らなかったし…」
「知らないじゃ済まないんだって!これ以上余計な事する前にさっさと寝ろ!!」
(怒られた……)
ライラは夜泣きもせずすやすや眠っている。
デイビッドも端の方でライラが落ちないよう横になった。
次の朝早く、目が覚めたライラは横にいたデイビッドの頭で遊び始めた。
「あーーう!」
「朝から元気だなぁ…」
顔にかぶりつこうとしてくるライラを躱して、デイビッドはオーブンに火を入れた。
先にライラの腹を満たしてやってから、スープ鍋をかき回しパンと卵を焼いているとエリックがげんなりしながら起きて来る。
「うわぁ…体調がすこぶる良い…」
「今日は出掛けるから手伝えよ?!」
自分の手足で遊ぶライラを構いながら、昨日仕込んだクッキーの生地を天火に入れ、次々と焼き上げていく。
1回目が焼き上がると、丁度ヴィオラが走って来た。
「おはようございます!ライラちゃーん!」
来るなりライラに抱き着いて離さない。
ヴィオラとライラが遊んでいる間に、クッキーを冷めた順に箱に詰めて、昨日のキャラメルの瓶と一緒に袋に入れていく。
「かわいいクッキーですね。星と雪だるまと葉っぱの模様が入ってる。ずいぶん凝りましたね?!」
「親父から引き継いだ事業でやってる養護院に持ってくんだよ。」
「あ、そうか!今日はエトワールの最終日ですもんね!」
エトワールは季節毎に巡る12の星にちなんだ祭で、年明け前日までの12日間、毎日それぞれの星と、神々や精霊などに祈りを捧げて過ごすお祭だ。
最終日には家族や仲間と集まり、焚き火を囲んでご馳走を食べる。
そして夜になると青服の賢者が現れて贈り物を授けてくれるというものだ。
「雪も止んだし、道もそこまで積もらなかったから午前中には出かけられそうだ…だからそんな顔してもなぁ…」
ヴィオラはライラとの別れが悲しくて、早くも目を潤ませている。
「せめてもう少し一緒にいたかった…」
「早く引き渡した方がライラのためだ…時々様子を見に行ってやればいいさ。」
「うえぇぇん!ライラちゃん…」
昼前には道の雪もだいぶ解け、一度商会まで歩いて行く。
モコモコの服を着たヴィオラが、上着の中にライラを入れてデイビッドの隣を歩く。
「重くないか?」
「全然平気です!」
「ライラちゃん、すっかりヴィオラ様に懐きましたね。」
商会に着くと他の荷物が待機していて、馬車に乗り養護院へ。
デイビッドはエリックに青い衣装を渡した。
「なんですかコレ?」
「賢者の衣装だと。エトワールによくいるだろ?」
「デイビッド様着ればいいのに!」
「親父が使ってた奴だから肩すら入らねぇよ!」
着いた養護院では子供達が雪遊びの真っ最中だった。
院長が現れて丁寧に挨拶すると、中へ通され年上の子供達がお茶を淹れてくれる。
「エトワールおめでとうございます。毎年こうして来て頂けて本当に助かります。」
「いえ…俺は親父と方針が違うので、力になれてるかどうか…」
「なんの!デイビッド様がいらしてから施設の質は格段に向上致しました。収入も出来て本当にありがたい事です。」
デイビッドと院長が話をしている間、エリックは子供達を集めてプレゼントを配り始めた。
その間にライラを奥へ連れて行く。
「あと、この子なんですが…」
「まぁ、なんて清浄な気に包まれた子でしょう!」
「昨日、彼女が見つけて連れてきてくれて。こちらにお預けできますか?」
「もちろんですとも!さぁこちらへ…大丈夫ですよお嬢さん。大切にお預かりしますからね。」
ヴィオラは泣きそうになりながらライラを院長に手渡した。
「あぅー…」
「ライラちゃん…元気でね…また会いに来るからね!!」
ヴィオラの指を掴んでいたライラの手が離れ、別室へ連れて行かれるとヴィオラはその場で泣き出した。
「うぅぅ…ライラちゃん…ライラちゃん…」
「少しの間でもライラはヴィオラと居られて嬉しかったはずだ。大丈夫、ライラは見た目よりずっと強い。元気に育ってくれるよ…」
エリックが空の袋を手に戻って来ると、3人は馬車に戻り養護院を後にした。
ヴィオラはすっかり気を落とし元気が無い。
「春になったらまた会いに来よう?な?」
「あれだけ強力な加護を受けた子なんてそういませんから。絶対に幸せになりますよ。」
「……」
ぼんやりして心此処にあらずのヴィオラの手に、デイビッドが何かを差し出した。
「……なんですか…?これ…」
「エトワールの星に倣った魔除けと幸運のアミュレット。ライラとお揃いで作った。何処にいても繋がって居られるようにと思って…」
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