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第二話「発光」
「発光」(4)
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放課後……
セラがおとずれたのは、いつもの上糸総合病院だった。
頭に包帯を巻いたその女性は、ベッドに座ったまま、どこかさみしげに窓の雨を見つめている。病室に響いたのは、ひかえめなノックの音だ。
「失礼しま~す」
「だれ?」
「井踊といいます」
「いおど、いおど……知り合いだったかしら?」
「はい。入ってもいいですか、二合さん?」
うろんげな顔つきで、メグルの母親……二合理乃は答えた。
「どうぞ」
「お邪魔します」
入ってきた制服姿の少女に、リノは目を丸くした。
「あんたはたしか……セラちゃん?」
「はい、井踊静良です。ちょっとお話いいですか、お母さん?」
いきなりキラーパスでも放られたように硬直して、リノはその単語を反すうした。
「お、おかあ、さん?」
カタコトになったリノへ、セラは困惑気味に首をかしげた。
「失礼しました。メグルくんからの呼び方は違いましたか?」
「いえ……母親と呼ばれるのが何年ぶりかわからなくてね。あ、どうぞ、座って」
「ありがとうございます」
かたわらの席についたセラへ、リノは窮屈そうにつぶやいた。
「きょうは突然どうしたの、セラちゃん?」
「お母さんのお見舞いです」
「お見舞い? こんなダメ人間の?」
リノの自虐に首を振ると、セラは抱えた果物の詰め合わせを示した。
「これ、つまらないものですが、ぼくの父からです。苦手なものはありますか?」
「いえ、ないわ。なんで見ず知らずのあたしなんかのために、あんたのお父さんが?」
「仲のいい同級生のお母さんが入院中なんです。友達として当然ですよ」
流し台で手を洗うと、セラはさっそく果物ナイフを取り出した。なんの縁か、セラがこの親子にフルーツを振る舞う機会は多い。
とれたての和梨をていねいに剥き始めたセラへ、リノは聞いた。
「なに? 話って?」
「メグルくんのことです」
「そう。うちの家庭事情は聞いてる?」
「すこしだけ。それより、お怪我の具合はいかがです?」
「まだちょっと目まいは残ってるけど、だいぶマシになったよ」
「それはなによりです」
「鎧武者っていうの? へんてこりんな幻覚を見たあげく病院送りになるなんて、アル中もここに極まれりだわ。ちょっと冷静になって振り返ると、いままでのじぶんのトチ狂いかげんに恥ずかしくなる」
「お好きなんですか、時代劇? お酒はほどほどに、ですよ」
すっかりアルコールも抜け、リノはずいぶん人間らしい表情を取り戻している。側頭部をさすってケガの原因を思いあぐねるリノへ、セラはたずねた。
「メグルくんはお見舞いに?」
「来るわけないよ。あんな仕打ちを受けたんだ、もう親とも思ってないだろうさ」
「そんなことはないと思いますが……そうですか、ここにも来ていないと」
表情をにごらせたセラへ、リノもふと察するところがあったらしい。一抹の不安を浮かべて問いかける。
「あいつは元気?」
「それが……」
事の次第を、セラは打ち明けた。目を瞠ったのはリノだ。
「消えただって? メグルが? ここ数日、学校にも行ってないと?」
「はい……」
あごに手をあて、リノは真剣な面持ちになった。
「いじめに耐えかねて、とかではなさそうだね。あいつはそんなに弱いタマじゃない」
「同感です。ここだけの話、彼、ケンカはかなり強いはずですよ。そんなメグルがきゅうに失踪する理由に関して、お母さん、なにか心当たりはありませんか?」
「可能性は……考えれば考えるほどある。なにせ普通の家庭環境じゃないから」
ひとしきり悩み苦しんだすえ、リノはうつむいた。
「ごめんね、こんなダメ母で。見当もつかない。生真面目ぶったあいつが他の女なんかの家にしけ込むとはとても思えないし、第一、メグルはたぶんセラちゃんのことが……携帯電話には?」
「かけてみました。ですが何コールしても応答はありません。機敏な彼が、なぜとつぜん音信不通に?」
几帳面に洗ってケースに納めた果物ナイフを、セラは険しい眼差しで見据えた。
「これはどこかの段階で、警察に相談する必要がありそうですね。どうぞ」
きれいにカットした和梨を、セラはかわいく小皿に盛って差し出した。無下にするわけにもいかず、刺されたつま楊枝におずおずと手を伸ばしたのはリノだ。
期待もせずにひと噛みした口の中には、おどろくほど爽やかな味が広がった。
「おいしい……」
「あの、お母さん?」
心配げなセラの言葉を、リノは落ち込んだ声でさえぎった。
「母親なんて呼ばれる資格はないわ、あたしには。こんな緊急事態に、だいじな一人息子の居場所ひとつ思い当たりゃしない」
自然と頬を伝う涙に、リノ自身も気づいていなかった。嗚咽に震えるその薄い肩に、やさしく添えられたのはセラの手だ。
「母親は〝資格〟などではありません。子どもが得た〝事実〟そのものだと思います」
「ほんとにいい彼女に出会えたわ、あのひねくれ坊主は」
「いえ、彼とぼくはそういう関係では……」
「セラちゃん」
まっすぐセラを見返すリノの視線は、決然としていた。
「セラちゃん、まだまともに歩けないあたしに代わって、ひとつお願いしていい?」
「はい、なんでしょう?」
戸棚からつまみあげた輝きを、リノはそっとセラに手渡した。
「これは……」
「うちのカギよ」
膝元をおおう布団を親の仇のように睨みながら、リノは頼んだ。
「面倒かけるけど、家にあいつがいないか見てくれない? もしかしたら風呂場で足を滑らせでもして、頭を打って倒れてるかもしれないわ」
「かまいませんけど、こんな大切なものを預かっていいんですか? 素性の知れないぼくなんかが?」
手のひらにカギを置いたままのセラへ、リノは苦笑してみせた。
「セラちゃんは正真正銘、いい子よ。それに盗られて困るものなんて、家には息子の命ぐらいしかいないわ」
「わかりました」
イスから腰をあげると、セラはぺこりと頭を下げた。
「結果はまた、報告にきます」
すみやかにドアノブに手をかけるセラを、リノは祈るような声で見送った。
「よろしくお願いします、メグルのこと……」
その一部始終を眺める人影は、もよりのビルの屋上にあった。
「まだ〝墳丘の松明〟が生きているとでも?」
残念げに肩をすくめると、カサをさした人物はきびすを返した。
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頭に包帯を巻いたその女性は、ベッドに座ったまま、どこかさみしげに窓の雨を見つめている。病室に響いたのは、ひかえめなノックの音だ。
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「だれ?」
「井踊といいます」
「いおど、いおど……知り合いだったかしら?」
「はい。入ってもいいですか、二合さん?」
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「どうぞ」
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「失礼しました。メグルくんからの呼び方は違いましたか?」
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「ありがとうございます」
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「きょうは突然どうしたの、セラちゃん?」
「お母さんのお見舞いです」
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リノの自虐に首を振ると、セラは抱えた果物の詰め合わせを示した。
「これ、つまらないものですが、ぼくの父からです。苦手なものはありますか?」
「いえ、ないわ。なんで見ず知らずのあたしなんかのために、あんたのお父さんが?」
「仲のいい同級生のお母さんが入院中なんです。友達として当然ですよ」
流し台で手を洗うと、セラはさっそく果物ナイフを取り出した。なんの縁か、セラがこの親子にフルーツを振る舞う機会は多い。
とれたての和梨をていねいに剥き始めたセラへ、リノは聞いた。
「なに? 話って?」
「メグルくんのことです」
「そう。うちの家庭事情は聞いてる?」
「すこしだけ。それより、お怪我の具合はいかがです?」
「まだちょっと目まいは残ってるけど、だいぶマシになったよ」
「それはなによりです」
「鎧武者っていうの? へんてこりんな幻覚を見たあげく病院送りになるなんて、アル中もここに極まれりだわ。ちょっと冷静になって振り返ると、いままでのじぶんのトチ狂いかげんに恥ずかしくなる」
「お好きなんですか、時代劇? お酒はほどほどに、ですよ」
すっかりアルコールも抜け、リノはずいぶん人間らしい表情を取り戻している。側頭部をさすってケガの原因を思いあぐねるリノへ、セラはたずねた。
「メグルくんはお見舞いに?」
「来るわけないよ。あんな仕打ちを受けたんだ、もう親とも思ってないだろうさ」
「そんなことはないと思いますが……そうですか、ここにも来ていないと」
表情をにごらせたセラへ、リノもふと察するところがあったらしい。一抹の不安を浮かべて問いかける。
「あいつは元気?」
「それが……」
事の次第を、セラは打ち明けた。目を瞠ったのはリノだ。
「消えただって? メグルが? ここ数日、学校にも行ってないと?」
「はい……」
あごに手をあて、リノは真剣な面持ちになった。
「いじめに耐えかねて、とかではなさそうだね。あいつはそんなに弱いタマじゃない」
「同感です。ここだけの話、彼、ケンカはかなり強いはずですよ。そんなメグルがきゅうに失踪する理由に関して、お母さん、なにか心当たりはありませんか?」
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「ごめんね、こんなダメ母で。見当もつかない。生真面目ぶったあいつが他の女なんかの家にしけ込むとはとても思えないし、第一、メグルはたぶんセラちゃんのことが……携帯電話には?」
「かけてみました。ですが何コールしても応答はありません。機敏な彼が、なぜとつぜん音信不通に?」
几帳面に洗ってケースに納めた果物ナイフを、セラは険しい眼差しで見据えた。
「これはどこかの段階で、警察に相談する必要がありそうですね。どうぞ」
きれいにカットした和梨を、セラはかわいく小皿に盛って差し出した。無下にするわけにもいかず、刺されたつま楊枝におずおずと手を伸ばしたのはリノだ。
期待もせずにひと噛みした口の中には、おどろくほど爽やかな味が広がった。
「おいしい……」
「あの、お母さん?」
心配げなセラの言葉を、リノは落ち込んだ声でさえぎった。
「母親なんて呼ばれる資格はないわ、あたしには。こんな緊急事態に、だいじな一人息子の居場所ひとつ思い当たりゃしない」
自然と頬を伝う涙に、リノ自身も気づいていなかった。嗚咽に震えるその薄い肩に、やさしく添えられたのはセラの手だ。
「母親は〝資格〟などではありません。子どもが得た〝事実〟そのものだと思います」
「ほんとにいい彼女に出会えたわ、あのひねくれ坊主は」
「いえ、彼とぼくはそういう関係では……」
「セラちゃん」
まっすぐセラを見返すリノの視線は、決然としていた。
「セラちゃん、まだまともに歩けないあたしに代わって、ひとつお願いしていい?」
「はい、なんでしょう?」
戸棚からつまみあげた輝きを、リノはそっとセラに手渡した。
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「わかりました」
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