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第四話「実行」
「実行」(12)
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「ミコ!?」
いきなり時間の縛りから解放され、ヒデトは振り向いた。
かすかな苛立ちに目を細めて、おなじ方向をにらむのはメネスだ。
木と羽の破片が舞う中、ミコはすでに一機のフィアを仕留めて踏みつけている。だがミコには刀剣衛星のバックアップもなく、刀の一本も持っていない。では、立ち上がったミコの両手で光芒をはなつあの機械剣は?
思わず、ヒデトは声をあげた。
「その剣は〝妖術師の牙〟!? 生きてたのか、パーテ!?」
どすのきいた胴間声で、剣は答えた。
「いやヒデト、ほんとすまんかった。事情はぜんぶミコから聞いたよ。ホームセンターでどっさり買い漁った間に合わせの材料で、一糸まとわぬ姿でお互いを修理しあい、直接接続しながら」
「やめてください、その言い方! 妹の前ですよ!」
さえぎったのはミコだった。両手の機械剣を握り直すと、油断なく身構える。
「来ます! 兄さん!」
「さっきのお返しだ! 行くぜ!」
左右のフィアの動力部をふたつの剣で貫くや、ミコはその柄を手放した。ステンドグラスを突き破って飛来したのは、新たな二本の機械剣だ。柄と柄で連結されたそれは、ミコの手の中で両刃の大剣へと変じる。宙返りして逆立ちの姿勢になるや、そのままコマのように回転。あらゆる方位から襲った鋼線を、真っ赤に灼熱する刃が焼き斬る。手放した両刃の剣を足場にし、ミコはすかさず跳躍した。跳躍したその場所を、時間停止の呪力が包み込む。さらに外から飛来した機械剣二本を掴むと、ミコは着地する勢いを生かしてもう二機のフィアを串刺しにした。
「がらくた同然だったはずなのに、やるじゃないか、組織の人形たち」
かすかな舌打ちは、メネスのものだった。
片手を上へ向けるのを合図に、天井の魔法陣から召喚されたのはおびただしい武器の輝きだ。剣、槍、矢、斧、その他。メネスが片手を振ると同時に、武器の雨はいっせいにミコめがけて降り注いだ。が、ミコの背後に現れた人影の前で、異世界の凶器は光の粒子と化して消し飛ばされる。
両手に呪力の光をともしたまま、ヒデトはささやいた。
「〝黒の手〟」
ミコと背中合わせになった一瞬に、ヒデトは語りかけた。
「さいきんのホームセンターには、マタドールの部品まで売ってるのか?」
「工夫さえすれば、作れないものはありません。さっきちらっと聞こえましたよ。じぶんはなにもかも奪われた、ですって?」
「なんもなしの捨て身だが、文句でも?」
「大有りです。だって、ヒデトも奪ったままじゃないですか」
推進の炎を残して現れた七本めの大剣を、ミコは勢いよく掴み取った。
ミコはフィアの群れへ。ヒデトはメネスへ。
それぞれの標的へ駆け出す寸前、思いの続きを言い放ったのはミコだ。
「あなたに奪われました……私の心!」
十字架の真下で、はでな火花が散った。メネスの召喚した剣と、ヒデトの盾が激突したのだ。渾身の力で鍔迫り合いながら、ヒデトはメネスへうなった。
「こんどこそ、お互いなんの縛りもなしだ。本気でいくぜ」
「いいや。どうしようもないほど絡まり合ってしまっているぞ、きみたち。過去の経験則から言わせてもらえば、きみたちにはかならず悲しい運命が待ち受けている」
ヒデトの足もとが稲妻を発するや、針の山のごとく召喚されたのは無数の武器だ。
だが、ヒデトは大胆に刃の絨毯へ踏み込んでいる。蹴り足の盾で剣を砕き、両手の盾で斧を左右へ弾くと、追加の槍を黒の手でまとめて消去。力強いコンビネーションで放たれるヒデトの盾の拳を、メネスは鮮やかに弾いていなした。だが、ひときわ重い一撃で後退ったときには、その頬には浅い切り傷ができている。
拳を引き戻すと、ヒデトはフットワークを刻みながら答えた。
「過去? 運命? やっぱり縛られちまってるな、おまえ」
「見えない糸に縛られ、操られるのがぼくたち人の形をした生物だ」
頬の血をぬぐうなり、メネスの腕はひるがえった。ナイフを避けて身をかがめたヒデトのみぞおちを、左から放たれたメネスの拳がえぐる。体をくの字に折り、ヒデトは血の混じった胃液を吐いた。メネスの左拳を覆うのは、召喚された金属の籠手だ。
こんどは、メネスが側方へ身を投げる番だった。腕に巻きつくように仕掛けた関節技をフェイントに、ヒデトが唐突に銃を撃ったのだ。銃弾も関節技も外され、こちらも転がって体勢を立て直しながら、ヒデトは答えた。
「それでもいい。人形劇なら、楽しくやらせてもらうぜ。俺とミコ、ふたりで!」
一方、フィアたちへ向かったミコの手には、もっとも長大な剣を核として、残り六本の剣がひとりでに集まっていた。剣と剣を手早く連結。完成したのは、ミコの身長をゆうに超える大剣だ。刀身そのものに内蔵されたブースターで加速し、木の枝のごとく軽々旋回して鋼線の束を打ち払う。時間停止の呪力を充填する暇も与えない。超高熱の煌めきをまとった返す刃で、ミコはいっきに三機のフィアを両断した。ミコの剣技と、パーテの切断力をかけ合わせた掟破りの戦闘方法だ。
大砲の直撃でも浴びたように、ミコが吹き飛ばされたのは次の瞬間だった。
同時に、ばらばらになって床に散らばったのは〝妖術師の牙〟の部品だ。
なんだろう、これは?
教会の扉もくぐれないほど巨大な拳は、ミコを殴り飛ばした勢いで建物の壁に刺さっている。原因は直後にわかった。あちこちに転がるフィアの残骸が、教会の中央、一機のフィアに集まり始めたではないか。巨大な腕に体、脚、おぞましい金属音をあげて頭部におりる仮面。呪力と電力の走る鋼線にそれぞれ牽引されたフィアのパーツが、一機を核としてひとつに合体したのだ。
長椅子を何列もぶちやぶって止まったときには、ミコの全身は故障の漏電と煙に包まれている。弾け飛んだパーテも同じく、機体の限界は近い。
地鳴りをあげて闊歩しながら、金属の巨人はフィアの声で吼えた。
「TカスタムのTは、捕縛と時間、そして巨人の頭文字だ!」
「ミコ!」
叫んだのが、ヒデトの油断だった。気をそらした一瞬に、メネスの蹴りをまともに浴びて吹き飛ぶ。メネスの蹴り足にまとわれるのは、これも召喚した金属製の具足だ。
追い詰められる形で、ミコとヒデトはふたたび背中合わせの格好になった。
まえからはメネスが、うしろからは巨人と化したフィアが迫ってくる。
邪悪な魔法陣を両手にまたたかせながら、メネスは告げた。
「さて、異なったふたつの世界にも、共通して曲げられないことがある」
酷薄な笑みを浮かべ、メネスはささやいた。
「それは〝現実〟だ」
手足の盾の充電は切れ、ヒデトにもう武器はない。ヒデトは背後のミコへたずねた。
「ミコ」
「はい」
「まだあるよな、秘密兵器? 出し惜しみはやめてくれよ?」
「はい。にわか仕立てですが、ひとつ。呪力の充電と照準のため、時間稼ぎを行います」
煙と電光をひいて、ミコは決然と立ち上がった。
「刀剣衛星への実行稟議が決裁されました。予備武器の一斉投下を行います」
「え?」
ヒデトはぽかんとなった。
「いまなんて言った!? オンラインになったのか!? それじゃおまえの記憶が……」
「十秒でけっこうです、パーテ?」
「ああ、計画どおりだな。ヒデトの防御はまかせろ。また会おう、ミコ」
教会の屋根を突き破り、ミコの目の前に刺さったのは鞘に入った〝闇の彷徨者〟だった。
いや、それだけではない。こんどは鞘に入っていない抜き身の刀が五本、十本、二十本と、立て続けに屋根を貫いて落ちてくる。刃の驟雨に打たれ、前進をとめたのは巨大なフィアだ。そして、ああ。投下される銀光は、ミコ自身をも切り裂いていくではないか。頭上に盾を召喚して身を防ぎながら、怒鳴ったのはメネスだった。
「そんなバカな! マタドールが自害を選ぶだと!? 組織の許可はあるのか!?」
無言で、ミコは長刀を手にとった。
刀剣衛星へのアクセスとひきかえに、人間の感情が、大切な記憶が、どんどんネットの海に流されて消えていく。悲愴な顔つきで、ヒデトは制止した。
「やめろ、ミコ。行くな、行かないでくれ……いっしょにいるって、約束したろ?」
「私は約束を破りません」
ミコの横顔は、一瞬だけほほえんだように見えた。
「私はただの機械ではなく、あなたのミコですから。電磁加速射出刀鞘〝闇の彷徨者〟起動。斬撃段階、ステージ(4)……」
優雅に、ミコはフィアへ歩みを進めた。
フィアの放った巨大な拳は、刀の降り注ぐ勢いに殺されてミコに届かない。かわりに無作為に投下される刃は、つぎつぎとミコの機体をも貫いていく。ほとんどゼロ距離になった地点で、ミコと巨人は止まった。
刀の刺さる衝撃になんども揺さぶられ、ミコの唇からは疑似血液が流れている。腰を落として脚を開き、背中側へねじった長刀の柄にそっと手をおいて、ミコはささやいた。
「ステージ(4)……〝海淵〟」
戛然……
組織が解明した召喚士と世変装置の仕組みを、Tカスタムと同じく、ミコは急ごしらえで自分自身に組み込んだ。その機能は限定的ながら空間をゆがめ、ミコの斬撃に、こことは別の並行世界のミコの斬撃をいくつも呼び寄せて重ねる。つまりこの居合いには、可能性の数だけ切れ味がこもっているのだ。その数は、百か、千か、万か。
鞘に納められた刀が鍔鳴りを残すと同時に、巨人はまっぷたつになって大爆発した。
いきなり時間の縛りから解放され、ヒデトは振り向いた。
かすかな苛立ちに目を細めて、おなじ方向をにらむのはメネスだ。
木と羽の破片が舞う中、ミコはすでに一機のフィアを仕留めて踏みつけている。だがミコには刀剣衛星のバックアップもなく、刀の一本も持っていない。では、立ち上がったミコの両手で光芒をはなつあの機械剣は?
思わず、ヒデトは声をあげた。
「その剣は〝妖術師の牙〟!? 生きてたのか、パーテ!?」
どすのきいた胴間声で、剣は答えた。
「いやヒデト、ほんとすまんかった。事情はぜんぶミコから聞いたよ。ホームセンターでどっさり買い漁った間に合わせの材料で、一糸まとわぬ姿でお互いを修理しあい、直接接続しながら」
「やめてください、その言い方! 妹の前ですよ!」
さえぎったのはミコだった。両手の機械剣を握り直すと、油断なく身構える。
「来ます! 兄さん!」
「さっきのお返しだ! 行くぜ!」
左右のフィアの動力部をふたつの剣で貫くや、ミコはその柄を手放した。ステンドグラスを突き破って飛来したのは、新たな二本の機械剣だ。柄と柄で連結されたそれは、ミコの手の中で両刃の大剣へと変じる。宙返りして逆立ちの姿勢になるや、そのままコマのように回転。あらゆる方位から襲った鋼線を、真っ赤に灼熱する刃が焼き斬る。手放した両刃の剣を足場にし、ミコはすかさず跳躍した。跳躍したその場所を、時間停止の呪力が包み込む。さらに外から飛来した機械剣二本を掴むと、ミコは着地する勢いを生かしてもう二機のフィアを串刺しにした。
「がらくた同然だったはずなのに、やるじゃないか、組織の人形たち」
かすかな舌打ちは、メネスのものだった。
片手を上へ向けるのを合図に、天井の魔法陣から召喚されたのはおびただしい武器の輝きだ。剣、槍、矢、斧、その他。メネスが片手を振ると同時に、武器の雨はいっせいにミコめがけて降り注いだ。が、ミコの背後に現れた人影の前で、異世界の凶器は光の粒子と化して消し飛ばされる。
両手に呪力の光をともしたまま、ヒデトはささやいた。
「〝黒の手〟」
ミコと背中合わせになった一瞬に、ヒデトは語りかけた。
「さいきんのホームセンターには、マタドールの部品まで売ってるのか?」
「工夫さえすれば、作れないものはありません。さっきちらっと聞こえましたよ。じぶんはなにもかも奪われた、ですって?」
「なんもなしの捨て身だが、文句でも?」
「大有りです。だって、ヒデトも奪ったままじゃないですか」
推進の炎を残して現れた七本めの大剣を、ミコは勢いよく掴み取った。
ミコはフィアの群れへ。ヒデトはメネスへ。
それぞれの標的へ駆け出す寸前、思いの続きを言い放ったのはミコだ。
「あなたに奪われました……私の心!」
十字架の真下で、はでな火花が散った。メネスの召喚した剣と、ヒデトの盾が激突したのだ。渾身の力で鍔迫り合いながら、ヒデトはメネスへうなった。
「こんどこそ、お互いなんの縛りもなしだ。本気でいくぜ」
「いいや。どうしようもないほど絡まり合ってしまっているぞ、きみたち。過去の経験則から言わせてもらえば、きみたちにはかならず悲しい運命が待ち受けている」
ヒデトの足もとが稲妻を発するや、針の山のごとく召喚されたのは無数の武器だ。
だが、ヒデトは大胆に刃の絨毯へ踏み込んでいる。蹴り足の盾で剣を砕き、両手の盾で斧を左右へ弾くと、追加の槍を黒の手でまとめて消去。力強いコンビネーションで放たれるヒデトの盾の拳を、メネスは鮮やかに弾いていなした。だが、ひときわ重い一撃で後退ったときには、その頬には浅い切り傷ができている。
拳を引き戻すと、ヒデトはフットワークを刻みながら答えた。
「過去? 運命? やっぱり縛られちまってるな、おまえ」
「見えない糸に縛られ、操られるのがぼくたち人の形をした生物だ」
頬の血をぬぐうなり、メネスの腕はひるがえった。ナイフを避けて身をかがめたヒデトのみぞおちを、左から放たれたメネスの拳がえぐる。体をくの字に折り、ヒデトは血の混じった胃液を吐いた。メネスの左拳を覆うのは、召喚された金属の籠手だ。
こんどは、メネスが側方へ身を投げる番だった。腕に巻きつくように仕掛けた関節技をフェイントに、ヒデトが唐突に銃を撃ったのだ。銃弾も関節技も外され、こちらも転がって体勢を立て直しながら、ヒデトは答えた。
「それでもいい。人形劇なら、楽しくやらせてもらうぜ。俺とミコ、ふたりで!」
一方、フィアたちへ向かったミコの手には、もっとも長大な剣を核として、残り六本の剣がひとりでに集まっていた。剣と剣を手早く連結。完成したのは、ミコの身長をゆうに超える大剣だ。刀身そのものに内蔵されたブースターで加速し、木の枝のごとく軽々旋回して鋼線の束を打ち払う。時間停止の呪力を充填する暇も与えない。超高熱の煌めきをまとった返す刃で、ミコはいっきに三機のフィアを両断した。ミコの剣技と、パーテの切断力をかけ合わせた掟破りの戦闘方法だ。
大砲の直撃でも浴びたように、ミコが吹き飛ばされたのは次の瞬間だった。
同時に、ばらばらになって床に散らばったのは〝妖術師の牙〟の部品だ。
なんだろう、これは?
教会の扉もくぐれないほど巨大な拳は、ミコを殴り飛ばした勢いで建物の壁に刺さっている。原因は直後にわかった。あちこちに転がるフィアの残骸が、教会の中央、一機のフィアに集まり始めたではないか。巨大な腕に体、脚、おぞましい金属音をあげて頭部におりる仮面。呪力と電力の走る鋼線にそれぞれ牽引されたフィアのパーツが、一機を核としてひとつに合体したのだ。
長椅子を何列もぶちやぶって止まったときには、ミコの全身は故障の漏電と煙に包まれている。弾け飛んだパーテも同じく、機体の限界は近い。
地鳴りをあげて闊歩しながら、金属の巨人はフィアの声で吼えた。
「TカスタムのTは、捕縛と時間、そして巨人の頭文字だ!」
「ミコ!」
叫んだのが、ヒデトの油断だった。気をそらした一瞬に、メネスの蹴りをまともに浴びて吹き飛ぶ。メネスの蹴り足にまとわれるのは、これも召喚した金属製の具足だ。
追い詰められる形で、ミコとヒデトはふたたび背中合わせの格好になった。
まえからはメネスが、うしろからは巨人と化したフィアが迫ってくる。
邪悪な魔法陣を両手にまたたかせながら、メネスは告げた。
「さて、異なったふたつの世界にも、共通して曲げられないことがある」
酷薄な笑みを浮かべ、メネスはささやいた。
「それは〝現実〟だ」
手足の盾の充電は切れ、ヒデトにもう武器はない。ヒデトは背後のミコへたずねた。
「ミコ」
「はい」
「まだあるよな、秘密兵器? 出し惜しみはやめてくれよ?」
「はい。にわか仕立てですが、ひとつ。呪力の充電と照準のため、時間稼ぎを行います」
煙と電光をひいて、ミコは決然と立ち上がった。
「刀剣衛星への実行稟議が決裁されました。予備武器の一斉投下を行います」
「え?」
ヒデトはぽかんとなった。
「いまなんて言った!? オンラインになったのか!? それじゃおまえの記憶が……」
「十秒でけっこうです、パーテ?」
「ああ、計画どおりだな。ヒデトの防御はまかせろ。また会おう、ミコ」
教会の屋根を突き破り、ミコの目の前に刺さったのは鞘に入った〝闇の彷徨者〟だった。
いや、それだけではない。こんどは鞘に入っていない抜き身の刀が五本、十本、二十本と、立て続けに屋根を貫いて落ちてくる。刃の驟雨に打たれ、前進をとめたのは巨大なフィアだ。そして、ああ。投下される銀光は、ミコ自身をも切り裂いていくではないか。頭上に盾を召喚して身を防ぎながら、怒鳴ったのはメネスだった。
「そんなバカな! マタドールが自害を選ぶだと!? 組織の許可はあるのか!?」
無言で、ミコは長刀を手にとった。
刀剣衛星へのアクセスとひきかえに、人間の感情が、大切な記憶が、どんどんネットの海に流されて消えていく。悲愴な顔つきで、ヒデトは制止した。
「やめろ、ミコ。行くな、行かないでくれ……いっしょにいるって、約束したろ?」
「私は約束を破りません」
ミコの横顔は、一瞬だけほほえんだように見えた。
「私はただの機械ではなく、あなたのミコですから。電磁加速射出刀鞘〝闇の彷徨者〟起動。斬撃段階、ステージ(4)……」
優雅に、ミコはフィアへ歩みを進めた。
フィアの放った巨大な拳は、刀の降り注ぐ勢いに殺されてミコに届かない。かわりに無作為に投下される刃は、つぎつぎとミコの機体をも貫いていく。ほとんどゼロ距離になった地点で、ミコと巨人は止まった。
刀の刺さる衝撃になんども揺さぶられ、ミコの唇からは疑似血液が流れている。腰を落として脚を開き、背中側へねじった長刀の柄にそっと手をおいて、ミコはささやいた。
「ステージ(4)……〝海淵〟」
戛然……
組織が解明した召喚士と世変装置の仕組みを、Tカスタムと同じく、ミコは急ごしらえで自分自身に組み込んだ。その機能は限定的ながら空間をゆがめ、ミコの斬撃に、こことは別の並行世界のミコの斬撃をいくつも呼び寄せて重ねる。つまりこの居合いには、可能性の数だけ切れ味がこもっているのだ。その数は、百か、千か、万か。
鞘に納められた刀が鍔鳴りを残すと同時に、巨人はまっぷたつになって大爆発した。
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