地底人が来た

ケンナンバワン

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地底人が来た

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「お前を標本にする。」と言ってそいつは祐樹の前に立っていた。

祐樹は部屋に入るといきなりこの状況に置かれていた。

これは色々ツッコムところが満載だが何からツッコムか迷って、

出た言葉が「なぜ標本にならなければいけないのだ。」だった。
 
そいつは「卒業するための課題で地上人の生態を調べる。」

「そして観察して地底の研究所に連れて行って標本にするのだ。」

標本にするのは当然だと言わんばかりの返事だった。

続けて「ここでしばらく観察するからよろしく。」と言うと椅子に座った。
 
祐樹は「なに勝手な事を言っているのだ!」

「俺がはい、そうですか分かりました、標本になります。

と、でも言うとでも思ったか?断る!」

するとそいつは「だめなのか?」と小さな声で言った。

祐樹は「当たり前だ。だめに決まっている。」
 
そして「この状況について聞きたいことが山ほどあるからそれを一つずつ解決していこう。」

続けて「お前は一体何者なのか最初に自己紹介するのが筋と言うものだろう?」

と、言うと祐樹はベッド端に座りそいつと向き合いそして「お前は誰なのかまず話せ。」
 
するとそいつは「あたいは地底人で名前はクミで女だ。」

地底人「なぜここに来たのかは、さっき言った通りだ。」

「卒業するために地上人の事をレポートしなければいけないのだよ。」

祐樹は“地底人というのは、いったいなんなのだ”と思ったが、

次に出たセリフが「どうやってここに来たのだ?」だった。

地底人「地上に出るために穴をあけていたらここに出た。」

「そうしたらお前が居たので丁度いいから観察対象をお前に決めただけだ。」
 
祐樹「観察対象は誰でもいいのか?」

地底人「もうお前に決めた。変更はできない。」

祐樹「変更できないならそれは勝手だが、俺は協力しないからな。」
 
「聞きたいことはまだ有る。」

「お前は地底人と言うがどの地底から来たのだ?」

そして祐樹は相手の答えを待たず、

「これは質問ではない、今すぐに地底に帰れ!」と言い放った。

地底人は悲しそうな顔をして「お前はあたいのことが嫌いか?」と訊いてきた。
 
祐樹「好きとか嫌いとかは今会ったばかりでそんなのではない。」

「たださっきも言ったが俺はお前に協力は出来ない。」

「それは分かってほしいしそしてもう帰ってくれ。」

と、言うと地底人に背を向けて部屋を出ていこうとした。

すると地底人は泣き出した。
 
祐樹は慌てて「バカ泣くな。親に知られてしまう。」と言った。

その時一階から母親が「祐樹誰か来ているの?」と声を掛けてきた。

「やばい、隠れろ!」と言うと、地底人をクローゼットに押し入れた。

それと同時に母親がドアをノックして「入るわよ。」と言うと部屋に入ってきた。
 
祐樹は椅子に座っていて「なにか用?」と言って母親を見た。

母親「声が聞こえた気がしたのだけど・・」と言って部屋を見回した。

祐樹は「テレビの音だよ。」と、ごまかそうとした。

しかし母親は「そう・・ちょっとクローゼットを見せてもらうね。」

そう言うとクローゼットに手を掛けた。
 
祐樹はそれを制しようとしたが、母親はそれより早くクローゼットを開いた。

しかしクローゼットの中は服が掛けてあるだけで誰もいなかった。

祐樹は“地底人はどこに行ったのだ”と思った。

しかし平気な顔をして「ねっ・・誰もいないでしょ。」

と言いそして「もう出て行って。」と言った。

母親は“おかしいな”と思ったが誰もいないので仕方なく一階に下りて行った。

その時に「お風呂が沸いているから入ってしまって。」

祐樹「わかった」と返事をした。

母親が下に行ったのを確認してクローゼットを開くと地底人がいた。
 
祐樹「さっきはどうしたのだ?」と訊いた。

地底人「危なくなったら肩に付いているこのボタンを押せと言われていた。」

「そうしたら相手は気づかずにやり過ごせると言われていたのでこれを押した。」

「そうしたらその通りになった。」

祐樹はなんでそうなるのか分からなかった。

しかしやり過ごせたので、それでいいと納得した。

祐樹「今から風呂に入るから戻って来るまでに帰っていろよ。」

と、言うと下に降りて行った。
 
祐樹は風呂に入り食事をして部屋に戻った。

「居るのか?」と声を掛けたがなんの返事も返って来なかった。

祐樹は帰ったのだなと思いほっとしてスマホを見だした。

11時になったのでベッドに入り電気を消して寝た。

それをクローゼットの隙間から地底人が覗いていた。
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