地底人が来た

ケンナンバワン

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山に向かう

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 地底人「あたいにも地図を見せて。」と言って祐樹から地図を取った。

それを見て地底人は「今どこにいるか分かるか?」と訊いてきた。

祐樹「たぶんこの辺だと思うだから地図上では鬼が居る所は山の頂上にある。」

「多分ここから山に入って行かなければいけない。」

と、言って森に入って行った。

地底人も祐樹の後を付いて行った。

「なにか冒険をしているみたいで楽しいな。」と能天気にはしゃいでいた。

祐樹は“気楽なものだな”と思った。

しかしそういう気楽さで自分も楽になっている事に気づいた。

そして地底人をまじまじと見ていた。

地底人「なんだよ、あたいの顔に何かついているのか?」

祐樹「何でもない。チョット見ていただけだ。」

「これから鬼と対峙しなければいけないかもしれないが怖くないのか?」

地底人「別に。」と言っただけで元気よく歩いて行った。

そんな話をしながら進んでいると分かれ道に着いた。

地底人「どちらに行く?」と言って祐樹を見た。

祐樹「地図には何も書いてない。」

「お前ならどちらに行く?」と逆に訊いた。

地底人「そんなことは決められない、お前に任せた。」と言って黙った。

祐樹「それじゃあどちらに行くか一緒に指を指そう。」

地底人「それならいいか。」と言って祐樹の合図を待っていた。

祐樹「それでは“せーの”で指を指そう。」

そして「せーの。」と合図を言って指を指した。

二人とも右に行く道を指した。

祐樹「それじゃあ、こちらに行こう。」

地底人「OK」と言って二人で右の道を進んでいった。

そしてしばらく歩くと川みたいな所へ出た。

二人は川べりに立ってそれを見ていた。

それほど流れも速くなく深さもそんなに深そうではなかった。

祐樹「そのまま渡ろう。」

地底人「あたいは嫌だ、おんぶしろ。」と、駄々をこね始めた。

祐樹「手を引いてやるから渡ろう。」と言ったが、

地底人は「おんぶがいい。」と譲らなかった。

祐樹は仕方ないなと地底人をおんぶして川を渡った。

川を渡って先に進んでいたら段々道幅が狭くなってきて歩きづらくなった。

祐樹は地底人を気遣いながら歩いていた。

しばらく歩くと狭い道から少しひらけた場所に出た。

目を凝らして向こう側を見ると頂上に建物みたいなものが見えた。

それを見て祐樹は“しまった!鬼が居るのは向こう側の頂上だ。”

二人はあの分かれ道で反対側に進んでしまった。

祐樹はこれからどうしようか考えた。

地底人もそのことに気づき「鬼は反対側だ。どうする?」

そう言うと祐樹を見た。

祐樹「今考えている。慌てることはない。」

と、言って自分を落ち着かせようとした。

そして今から戻って反対側に行っていたら夜になってしまう。

そうすると遭難するかもしれない。

それは何としても避けなければいけないと考えた。

そして周りを注意深く見ると少し先に吊り橋が見えた。

祐樹「あそこに吊り橋があるあそこから向こうに行こう。」

と、地底人を見た。

地底人「あたいは高い所は得意じゃない。できれば吊り橋は渡りたくない。」

そう言うと座り込んでしまった。

祐樹は困惑してどうしようかと考えたがいい考えが浮かばない。

仕方なく「そんなこと言ったって他に方法はないから我慢して吊り橋を渡ろう。」

と、地底人を説得したが地底人は力なく首を振った。

祐樹はどうしたものかと思った。

その時、王様から貰った弁当のことを思い出し弁当を出した。

祐樹「これでも食べるか?」と渡した。

地底人「食べる。」と言って弁当を食べ始めた。

祐樹も自分も食べようと地面に座り弁当を食べ始めた。
 
二人とも黙って弁当を食べていた。

祐樹はこれから王様の娘を助けるためにどうしたらいいかを考えることにした。

鬼も単独で暮らしていたらいいが仲間と一緒だったら自分と地底人では勝算は低い気がした。

何かいい作戦はないか思案したが何も思いつかなかった。

そんなことを考えていたら地底人が「何困った顔しているのだ?」と訊いてきた。

祐樹「どうやって王様の娘を助け出すか考えていた。」

「いい作戦が思いつかない。」

地底人「正面から行くしかない。」

と、言って「さあ行こう。」と立ち上がった。

祐樹「吊り橋は大丈夫なのか?」と訊くと

地底人「弁当を食べたら元気が出た。」

「今ならいけそうな気がするからさっさと渡ってしまうぞ。」

と、言って祐樹を引っ張って立ち上がらせた。

祐樹「分かった、分かった。」と言って立ち上がり吊り橋に向かった。

吊り橋は思っていたより頑丈そうに見えた。

祐樹は先に渡ろうとしたら地底人は吊り橋から下を見て怖気づいていた。

祐樹「下を見るな。上を向いてゆっくり歩くのだ。」

と、言うと手を取って誘導した。

地底人は上を向いて目をつぶった。

そして吊り橋の中間についた時少し強い風がふいて吊り橋が揺れた。

すると地底人が抱き着いてきた。

祐樹「危ない。」と言ってバランスが崩れかけたのを立て直した。

そして風が弱くなるのを待ってゆっくり歩き吊り橋を渡り切った。

反対側に着くと地底人は「こんな怖いのは初めてだ。」

と、言って放心状態になっていた。

祐樹「大丈夫か?」と声を掛けた。

地底人「気にするな。早くしないと陽が暮れるぞ。」

と、口では言っているが目がうつろな感じだった。

祐樹はあまり時間がないけど地底人を落ち着かして行こうと思った。
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