ジョウギョウ

ケンナンバワン

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お姫様とお城へ

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 泉に向かってすぐは、陽は上り切ってなく薄暗さが残っていたが、泉に着く時には陽は上り切っていた。
 泉に着いてはみたが “どうすればいいんだ?”と周りを見渡した。しかしどうすることも出来ず、ぼんやり周りを見ていたら虹が出た。
 “雨も降っていないのにどうしてだ?”と思ったが、なぜかそれを目指して歩き出した。
 


 少し歩くとネコがこちらを見ていた。その猫は付いて来い、みたいに歩き出した。ジョウギョウはつられて歩き出すとネコは脇道に入って行った。そこには誰かうずくまっていた。
 彼は近づき「どうしました?」と声を掛けた。
 その人物は女性で「大丈夫です。少し休んでいただけです。ごめんなさいこれからお城に向かわなければいけません。」と言うと立ち上がりお城に向かおうとした。
 


 ジョウギョウは「ちょっと待ってください。少し話をさせてください。」と引き留めた。そして「自分はこの世界に迷い込んでしまいました。ここから抜け出す方法を探しています。この世界に付いて訊かせてもらえませんか?」
 女性は「今は急いでいるのでお話は出来ません。しかし王様との話が終わったらあなたの話を聞くことが出来ます。一緒にきますか?」
「ついて行っていいのなら行きます。」そう言うと二人はお城に向かった。
 


 お城に着くと門番がジョウギョウを止めた。するとその女性が私の知り合いだと説明した。
門番は「失礼しました王女さま。」と言い通してくれた。
 ジョウギョウは “この人は王女様だったのか”と驚き少し引き気味になったが、動揺を隠して中に入って行った。
 中に入ると客間に通されて王様が来るのを待った。そこに王様が入ってきて「マヤどうした?」と話しかけた。ジョウギョウは “この人はマヤと言うのか”と思った。



マヤは「王様、ラメラが人柱になるというのは本当ですか?」と詰め寄った。
「誰からそれを聞いた?」
「村で噂になっています。」
「確かにその話はある。しかしまだ決まったわけではない。」
「それではラメラを人柱にはしないのですね?」
「そうではない、正式に決まってないだけで今日の六老衆の諮問委員会にかけて正式に決定することになっている。」
「それは変えることは出来ないのですか?」
「この決まりは変えられない。」
 そのやり取りを聞いていたジョウギョウは「僭越ですが、それはどういうことですか?」
「君は誰だ?」
「私はジョウギョウと言います。この世界に迷い込んだものです。私の説明の前に人柱を立てるというのはただ事ではないです。その理由を聞かせてください。」
王様はぶぜんとしたが説明を始めた。



「百年前にこの国に災いが起こった。それにより飢饉が村を襲い村人は苦しんだ。それを打開する為に予言者を呼んで予言をしてもらった。
 その予言者が言うにはこの国を救うためには人柱を立てるしかないとの結果が出た。村人はそんなことは出来ないと反対したがミーウが人柱になると申し出た。
 両親は反対したがミーウはその日の夜、司祭に頼んで人柱になってしまった。それによって災いは無くなりこの国はすくわれた。それが百年前の事だ。
 今またこの国に災いが降りかかろうとしている。予言者が言うには百年前と同じことをしなければこの国は亡びるとの予言が出た。その事を知ったミーウの子孫のラメラが人柱になると名乗り出たのだよ。」
 


 その話を聞いていたマヤは
「ラメラはわたしの幼馴染だ、その人柱を取り消して欲しい。」と懇願した。
王様は「この話はこれで止めよう。」と言った時
「王様!」と予言者が入ってきた。
「いきなり入って来るとは何事だ!」
「非礼はお詫びいたします。至急お伝えする事があります。災いの原因が分かりました。」
「どういう事だ?」
「南の沼で竜神が暴れているのです。それによって災いが起こっています。その竜神を鎮める事により災いは収められます。」
「竜神を鎮めるとは、どういうことだ?」
「勇者が来てそれを鎮めると出ました。」
「勇者とは?」
「彼です。」とジョウギョウを見た。
続けて「彼はこの世界の人物ではありません。彼が勇者になります。」
ジョウギョウは驚き「自分が竜神というのと戦うのですか?」
 予言者はジョウギョウを見つめ「そうです。」と言い、ジョウギョウは困惑して言葉を失った。
 
 
 
 王様は「それで災いは防げるのか?」
「いえそれは確実なものではありません。私の予言では未来が幾つかあります。」
「未来が幾つかあるとはどういう事だ?」
「初めの予言では未来は一つでした。しかし彼が来たことにより未来が複数になりました。その未来の一つが、彼が竜神を鎮める事によって災いを収めるのです。」
「もしそれが失敗したら?」
「闇が広がります。成功すれば希望が広がります。もう一つ回避する方法として最初の通り人柱を立てるのです。」
「闇と希望は何を意味する?」
「私の見解では闇はこの国が無くなります。希望はこの国に平和が訪れます。」
王様は「その希望はこの客人によってもたらされるのか?」



「何度も申し上げますが、それは確実なものではありません。考えたくは無いのですが彼が失敗したら・・・。確実なものを望むならば人柱を立てる事です。それにより災いは避けられます。彼にこの国の運命を託すのは大きな賭けになります。この判断は王様にかかっています。」
王様は「その判断はいつ迄にすればいい?」
「今すぐに決断しないとチャンスは無くなります。」
 


マヤ「ラメラを助けて。」
 ジョウギョウ「チョット待ってください‥僕はまだ何も言って・・・」と言い掛けたが王様、マヤ、予言者を見るとその先の言葉が出なくなった。
 王様はジョウギョウに近づき
「お願いできるか?」
 ジョウギョウは躊躇したが弱弱しい声で
「分かりました・・やります。」と引き受けた。
 予言者は「王様アナンと、テンジンを一緒に行かせてください。きっと役に立つと思います。」
「分かった二人を呼びなさい。」
アナンとテンジンが呼ばれて客間に入ってきた。そして二人にこれまでの事を説明した。
 予言者は「一刻も早く出発したほうがいい。」と言い、三人は準備をしてお城を出ようとした時マヤが「自分も行かせてほしい」と言ったが王様はそれを許さなかった。マヤは不服そうな顔をしたがその指示に従った。
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