ジョウギョウ

ケンナンバワン

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これまでの事を考える

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 しかしジョウギョウは眠る事ができず、ここに来ることになったきっかけの人物の事を考えた。
 それは小包が届いたことから始まった。
 “この小包は一体何なのだろう?”と思ったがそのまま机の引き出しにしまい込んだ。そしてそのままほったらかした。
 


 それからジョウギョウは変わらぬ日々を過ごしていたが、又謎の手紙が届いた。手紙を見ると“27日に貝殻を持って港に来て”と書いてあった。“貝殻とは何だ?”と思ったが小包の事を思い出した。
 慌ててそれを開けてみると指輪箱に貝殻の片側だけが入っていた。“だれがこれを送ってきたのだ?“と差出人を見たら”あかね“と書いてあったが、その名前に心当たりが無かった。
 


 27日は文化祭の当日でもし行くならその後になるだろうが一人で行くのは心細いので荻野に話して一緒に行ってもらおうと思った。
 次の日学校に行って教室に入ったが荻野はまだ来ていなかった。仕方なく待っていたが始業のチャイムが鳴りそれと同時に先生と一緒に入ってきた。仕方なく授業が終わるのを待った。
 終了のチャイムが鳴り荻野に話しかけたが「ちょっと待て、部室にジャージを置いてあるので取って来る。」と言うと部室に向かった。
 ジョウギョウは体育館で待っていると委員長が「今日の体育は自習になったので各自、自分で練習するように。」と言ってきた。
 


 この間に荻野と話が出来ると待っていると荻野が入って来て話しかけてきた。
「何か用事が有るのか?」と訊いてきた、ジョウギョウは今までの事を説明して
「一緒に行ってくれないか?」と訊いた。
 荻野は「その手紙の人物に心当たりはないのか?」と逆に訊いてきた。
「分からない全然覚えが無いんだよ。」
「そうか・・」と荻野は言い
「行けないのか?」と訊くと、
「いや何もないから行っていいよ。」
「そうか、よろしく。」と言うと練習を始めた。
 その日の放課後は文化祭の準備をジョウギョウ、荻野、女子の渚、結芽ですることになっていた。
 


 ジョウギョウがテントに着くと渚が試食用の焼きそばを作っていた。彼に気づいた渚は
「焼きそばが出来たから試食してみて。」と紙皿に取り分けてそこに居た三人に渡した。
ジョウギョウは「うん、いい感じ。」
結芽も「美味しいよ。」
荻野は「なんというか・・・」と言うと
渚は「その続きは?」と荻野を見た。
荻野は「いい、いい、上出来。」と言った。
「でしょ、私はアルバイトで作っているから。」と言い荻野を見た。
 荻野はジョウギョウを見て苦笑いをした。
荻野「結芽は何をしているの?」
「私は美味しくなれと、愛情を入れているの。」
荻野「あ、そう」
そんなたわいもない話をしているうち準備が終わり帰る事になった。
 荻野と結芽は帰り道が一緒なので二人で帰って行った。
 


 渚が「あの二人仲が良さそうだから付き合えばいいのに・・。」と誰に言うでもなく呟いた。
 ジョウギョウも「荻野は結芽の事が気にはなっているようだが・・」と独り言のように言った。
 27日文化祭当日になったが、ジョウギョウは寝過ごして学校に着いたら文化祭は始まっていた。テントに着くとお客さんも少し来ていた。
 


 ジョウギョウは「悪い、悪い、遅れた。僕は何をすればいい?」と言うと
 荻野は「これから呼び込みに行くから一緒に行こう。」と言い二人は呼び込みに行った。
 暫く呼び込みをしているとお昼のチャイムが鳴ったのでテントに戻った。
 そこではお客さんが結構来ていて忙しそうに渚が焼きそばを作っていた。二人は「手伝うよ」と言って皿に焼きそばを盛った。
 


 そんな時間が1時間ぐらい続いたが次第に落ち着いてきた。
 そこで荻野がジョウギョウに
「他のクラスの出し物を見に行かないか?」と誘い、渚たちに
「ここを離れて大丈夫かな?」と、訊くと
結芽が「大丈夫よ、行って来たら。ね、渚。」
「OK,OK,さっさと行って。」と言った。
荻野「悪い、チョット行ってくる。」と言うと二人は校舎に向かった。
 校舎では教室をカフェにしたり、お化け屋敷にしたり、日ごろの研究発表を展示したり、あげくはジェットコースターを作っているクラスもあった。一通り見ると今年も隣の男子校の生徒が来ていた。
 


 その男子校の生徒はこの文化祭を楽しみにしているところがあった。文化祭は今年も晴天に恵まれ盛況のうちに終わろうとしていた。二人は一通り見終わるとテントに戻った。
 そこでは渚、結芽が後片づけをしていた。戻ってきた彼らも手伝い40分くらいで終わった。
 そしてジョウギョウたちが港に行こうとすると渚が「何か変な手紙が来て今から港に行くのでしょ私たちも行く。」と言われ、ジョウギョウは荻野を見た。



荻野は目をそらして
「別に隠す事ではないのかと・・」
渚「いいでしょ?」
 ジョウギョウは「仕方ないな・・・いいよ。」
と言い四人で港に向かった。
 港に着くと陽が沈みかけていて辺りは暗くなり始めていた。しかしそこには誰も居なかった。
彼らはあかねが来るのを待っていると倉庫の影から人が見えてこちらに近づいてきた。
 その人物は迷わずにジョウギョウの前に来て「私の事覚えている?」と訊いてきた。
 ジョウギョウは驚きただ彼女を見ていた。
 その人物は「貝殻は持ってきてくれた?」と言った。ジョウギョウはポケットから貝殻を取り出し「これか?」と見せた。



 彼女もカバンから貝殻を取り出して「これ。」とジョウギョウに見せた。それを見たジョウギョウは驚いた。その貝殻には子供の時に好きだったアニメのキャラクターのシールが貼ってあった。
 ジョウギョウが戸惑っていると、荻野が
「思い出した。こいつは幼稚園で一緒だった“あかね”だ。」と叫んだ。
 それでジョウギョウもあかねの事を思い出した。あかねは彼が幼稚園の時好きになった子だった。そんな子を忘れている自分が情けなくなったが、なぜ今頃会いに来たのか不思議だった。



 それを察したのかあかねが
「私来月イギリスに移住するの、その前に会いたくなって、チョットした演出をしたけど・・・貝殻で思い出してくれるかと思ったけどダメだったみたいね・・・。」
 ジョウギョウはなんて言っていいか分からずただあかねを見ていた。
あかねは「でもこうして会えてよかった。・・迷惑だった?」
「いや、そんなこと無いけど。」
「そう、よかったじゃあこれでイギリス行くね。元気でね、バイバイ。」と言うと来た方向へ戻って行った。



 ジョウギョウはそんな事を思い出しながら学校の帰りに見た女性は確かにあかねだと思い、イギリスに行ったはずなのになぜあんな所に居たのか考えていると、テンジンが話しかけてきた。
「眠れないのか?」
「大丈夫、もう、寝る」
「明日は早い、早く寝ろ。」ジョウギョウは黙っていた。
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