15 / 15
第十四話 荒野にて
しおりを挟む
「……火ぃ消えたか」
キリはゆっくりとアスカラーたちを閉じ込めた氷の隣まで歩いてきた。
「解」
氷が消えて、どさっ、とキースとアスカラーがその場に倒れた。
「キ……リ……」
「うわっ、ひっでぇ火傷……つぅか」
ぼこっ、とキリは倒れているキースの腹を殴った。
「てめぇはまだ炎出してんじゃねぇよ」
キースの右手のグローブから、チリチリと火があがっていた。キリはそれを見て、手のひらサイズの氷を作りその手の上に載せた。
「……キリ」
ゆっくりとアスカラーが起き上がった。火傷は少しずつ治っていっている。
「助かった」
アスカラーは大きく息を吐いた。
「それよりどういうことだぁ?わっけわかんねェ」
「っていうかキリ、さっき俺たちが本部出た時には傷残ってたのに、もう傷治ってる……誰かの治癒?」
「俺ァ昔から回復はえぇんだ。俺が起きた時には本部の中に副隊長しかいねえし、副隊長には今すぐ行けとか言われるし……どうなってんだよ。しかもあいつ」
キリはものすごく嫌そうな顔でバリルを指さした。バリルは四肢をバラバラにされており、また首から体を再生しているところだった。
「あれは……リースがやったんやろな」
バリルはニヤニヤした顔のまま再生を続けていた。
「って、本部に副隊長以外いなかったって?何で?」
「だから俺がお前にそれを聞いてんだろうが」
呆れたようにキリが言うが、アスカラーは首を傾げる。
「……とりあえずキースを治癒するけど」
アスカラーがキースの胸に手を当てた。
「教えてやるよー」
そう言ったのは、バリルだった。
「てめぇ……」
キリがピストルをバリルに向けようとすると、
「いやいや、あのさぁ。俺にきみらを襲うメリットなんてないんだから、黙って聞けよ。距離保っててやるし」
(……俺たちを襲うメリットの有無は知らんけど、今の状況を聞かせるメリットの方がないやろ)
「簡単に言うと、俺を含めて四人の征連幹部のアジトが特殲に特定されてさぁ。他の隊員や十要なんかはそっちに向かってるんじゃねぇかなあ」
アスカラーが目を見開いた。
(アジトを特定……俺たちが本部に、アジトは街の中に数箇所あって征連幹部がおるって伝えたら……特殲はすぐに特定できたんやな……いや、でも……十要が総出でアジトを押さえようとしてて……でも征連幹部の一人はここにおって)
アスカラーは、はっ、とした顔になった。
(狙いは……どさくさに紛れてトウヤを拉致すること!?じゃあ……ブレイくんの特殲アジトの情報はブラフで……やっぱりブレイくんは……いや、今はそんなこと考える時じゃない)
「ひとつ質問があるんだけど」
バリルは友達に話しかけるように言った。
「トウヤくんとカルレリアってどういう関係なんだろー?普通の隊員とより、仲良かったって」
(そうや……!隊長に知らせたらトウヤを守れるかもしれへん)
アスカラーはそう思って先程まで近くで戦っていたソキを探すが、いない。
『隊長はブレイって人とやり合いながら、アジトとやらにどんどん近づいてる』
無線でリースから連絡があった。視界が開けていて高い場所にいるから分かるのだろう。
「知ってるって顔した」
バリルはニヤリと笑って、アスカラーにしつこく話しかける。
「なーあ、どういう関係なのかなあ」
「……知らんわ、どうでもいいやろそんなん」
「きみは知っ……」
バリルがアスカラーからキリに目線を移して、それから首を傾げた。
「……ん?」
ズカズカとキリに歩み寄るバリルに、キリは怖気付かずにその場で仁王立ちして対応した。
「……あらら、お前……」
そんなキリの目をバリルが近距離で覗き込む。
「んだよ」
「いや……っははは」
バリルは非常に愉快そうに笑う。
「決めた」
「?何を」
プシュゥ!!!と妙なガスを、バリルはキリの顔に吹きかけた。いつの間にか手に持っていた缶の中に何らかのガスが入っていたのだろう、キリは呆気なく倒れ込んだ。
バリルはキリを担いで、アスカラーを見る。
キン!!と地面に銃弾が当たる音がした。
(避けられた)
リースの射撃が、初めてバリルに避けられたのだ。
(……今までのも避けれたのか)
「こいつも連れてく」
「キリ!!!」
アスカラーがバリルに殴りかかった。
「お……思ったより速い、治癒だけじゃないのか」
バリルはにっこりと笑ってその場から消えた。
「まあ俺に誰が何しても、同じ結果にしかならないけど」
「くそ!!!リース、トウヤは!!」
『さっき荒野に着いたのは見た。今場所を確認してる』
(くそ、どうする……っ)
アスカラーは拳を握りしめた。
『発見、荒野のど真ん中だ。飛ぶか?』
「と……?ああ、そうか!!飛ぶ!!」
ブン!!とアスカラーの身体が宙へ投げ出された。
「うわあああああああ」
『着地はそっちでやれよ』
「トウヤああああああ受け止めてえええええええ」
風によってすぐに荒野へ飛ばされたアスカラーは、地上を走っていたトウヤに叫んだ。
「アスカ!?……リースの能力か!」
トウヤはアスカラーの真下へ行き、アスカラーの落下を待ち、どさっ!とアスカラーをキャッチした。
「おお……っトウヤ、キリが捕らえられた!!なんでか分からへんけど、今まで狙いは明らかにトウヤやったはずやからまずあんなとこで暴れたら被害が凄いやろからトウヤに荒野へ来てもらったけど、キリが捕まるとは思わんやん!!しかもなんかガスを……生きてるとは思うけどっ」
「分かった、落ち着いて、大丈夫。キースは?」
「キースは、大火傷してて……治癒はしたけど動けそうになくて、」
『特殲本部の副隊長がいるとこに一発撃ったら、外にいるキースに気づいて中へ入れてた』
(撃っ……)
トウヤは若干驚きつつ、頷いた。
「キリはバリル・ノースに連れ去られたんだよね?じゃあもう無線を奪われて聞かれてるかも、」
「そんな面倒な真似はしないよ」
その場に、バリルが現れた。どさっ、とキリが地面に倒れる。
(……どうする)
「……なんで僕を狙うのかはもう聞かない。今回はなんでキリを?」
「いやいや、予定外なんだよこれは。つまり、ボスのもとへトウヤくんを連れていくって目的はまだ遂行できてないわけで。だから今ここにいる」
トウヤはちらっ、とキリを見た。腹が動いているため呼吸をしていることが分かった。
「キリを連れ去って、僕みたいに征連に勧誘するの?」
「いや?念の為許可をとってから殺す」
笑顔で言い切ったバリルとは裏腹に、トウヤは表情が変わった。
「じゃあ行かせられないな」
「あー、そういえば人間って仲間を殺されたら怒っちゃうんだっけぇ」
バリルは口角をつりあげて言った。
「そこの治のやつと、ずっとこっちにライフルを構えてるあの男は今すぐ殺せるけど、そうしたらトウヤくんは怒って俺とは仲間になってくれないかな?」
「……もとから征連に入る気はないけど、そんなことしたら余計ありえなくなる」
トウヤは言葉を選んだ。トウヤの言葉によっては、それは有り得るかもしれなかった。
「やっぱりぃ?まだ彼は殺せないけど、ほかは別に良いもんなあ。……きみを殺したらボスにすごく怒られそうだ。トウヤくん」
「……今から何をするつもりかだけ教えてほしい」
トウヤは双剣を握り、バリルを睨みつけた。
「うーん、あんまり乱暴なことはしたくないんだけど?」
「じゃあどうやって連れていくんだよ」
「うーん……こうやってかなあ」
ドン!!と大きな音がして、バリルの腹を何かが貫通した。
『どうせ人質を取る。そうなったら戦わざるを得ない。それならもう逃げ隠れせず、ここで決着をつけた方がいい』
リースの声だった。
(……たしかに今……俺を狙ってた)
アスカラーは悔しげな表情を浮かべた。
(リースのサポートがなくても、俺は人質になってなかったか?)
「……うん。戦おう」
トウヤは覚悟を決めた顔をした。
「あははは……っ、戦うか、そっかぁ」
リースの銃弾の傷は既に無く、バリルは楽しそうに笑った。
「じゃあこうしようよ」
パン!とバリルが手を叩くと、バリルの隣に何かが現れる。
(角が生えてる……それにたぶん……2メートル半くらいはある身長、そして両頬の痣)
トウヤはそれを睨みつけた。
(第四階級の悪魔……!!)
その悪魔は一つ目で、指先からは木の枝が生えており、人間ではないことはすぐに分かった。
「この悪魔に、さらに俺の魔気を与える。普段は監視用の悪魔として発現させてるけど、今はちょうどいい強さにしたいだけだ」
「……ちょうどいい?」
トウヤが聞き返した。
(第四階級、偵察の悪魔……つまり、僕とキリが2人がかりで死にかけたがら倒した悪魔だ)
「トウヤくんは俺と戦おう。俺がきみを戦闘不能にしたら勝手に俺たちの本部へ連れていかせてもらう。で、その勝負を邪魔されたら嫌だし、そこの男にはこいつと戦ってもらうけど」
「俺がこの悪魔に勝ったらトウヤがあんたに勝つ前にトウヤから手ぇ引くってことやな?」
アスカラーは真剣な顔で言った。
(普通に考えて、トウヤが征連の幹部と戦うより俺が第四階級と戦う方が……現実的や、俺はトウヤが負ける前に悪魔を倒さなあかんけど、あの不死身の男に勝つ方法も分からんよりそっちの方が勝算はある)
バリルは、少し考えて、
「……まあいっか。それならそれで、もう少しだけ魔気で悪魔を強化しておくよ」
バリルが言うと、悪魔の雰囲気が少し変わった。
『バリル・ノースは何を言ってる?無線じゃ聞こえない』
「今から戦う。援護はアスカの方だけでお願い」
『は?』
トウヤはリースにそれ以上なにも言わず、無線を切った。すると、ボスっ、という音がしてトウヤの足元の地面に銃弾がめり込んだ。
(……意外と子供っぽいよな……)
トウヤは少し呆れながらリースの「ふざけるな」という怒りを伝える手段を汲み取った。
「はは……っ、話は終わった?そろそろやろうか」
バリルは愉快そうに笑った。トウヤは何も言わず、双剣を力強く握る。
「……トウヤ」
アスカラーがぐいっ、と顔を上げてトウヤを呼んだ。
「俺がどうなってようが、俺が生きてる間は俺に治癒を求めてくれていいから」
その言葉にトウヤは頷かなかった。
「……治癒は全部終わってからでいいよ」
頷く代わりに、眉をひそめてトウヤが言った。アスカラーはそれに、呆れたように笑った。
「はいはい、そうやんな」
「なんだよ、腹立つな」
トウヤは怒った顔をして、言葉を続けた。
「僕、さっきアスカが言ったこと根に持ち続けるから」
「え、何?」
「生きてる間はっていうの。ああいうのほんとに嫌い」
(温厚そうに見えて実は我が強いな。はは……っ、そういうやつに実力が伴えば、それは人望に繋がる。あんまり厄介なことにならない内に、トウヤくんを奪取しないと)
バリルはずっと同じ笑みの裏でそんなことを考えていた。
「生きてトウヤ班に帰ろう。五人のトウヤ班に」
「……せやな」
アスカラーは少し楽になったような顔をして、第四階級悪魔を睨んだ。
(勝たないとあかんねやった)
トウヤも気合を入れ直し、思考を巡らせ始めた。
(どうする……相手に効く攻撃を考えないと、僕はすぐに負けてしまう。ソキさんが言ってたこの人を倒す方法って何なんだ!?ダメだ、何も思いつかない……アスカがあれを倒すか倒さないかに関係なく、僕はいつかはこの人を倒さなきゃ、いつまでも僕が追い回されてみんなに迷惑がかかる。現にキリが何故か狙われ始めてるし)
「どうしたの?やらないのかな」
バリルは終始余裕の笑みを浮かべてトウヤを見ていた。
「……いろいろ考えてるんだ」
(それにもし……僕が征連側に連れ去られるようなことが起きたらどうする?僕は現時点でこれほど抵抗してる、なのにこの人たちは僕を征連に連れ去ってメンバーにしようとしている。つまり、僕を連れ去ったら僕の意志に関係なく、僕を征連のメンバーにできるってことかも。それならすごく危険だし、前にこの人に言ったみたいに、本当に僕自ら命を絶った方が特殲にとってはいいんじゃないかと思う……でも、連れ去られてからではそんな隙はないだろうから今にでも……)
トウヤの頭に先程ソキに言われた言葉が過ぎる。
(だめだ……死ぬなって言われてる。それにさっきアスカに言ったばかりだ、生きて、五人で帰るって。まだ諦めるのは早い)
トウヤが、自死という選択肢を捨てたところで、アスカラーと悪魔との戦闘が始まった。
「ふんっ……!!」
アスカラーが強く地面を蹴り、バン!!と強い蹴りを悪魔に与えるが、悪魔は片腕でその脚を掴み、アスカラーを投げた。
「オソ……ぷくくっ……オソイナ……ぷくくっ」
妙な声でアスカラーを指さして笑う悪魔に、アスカラーはイラッとした顔をした。
(第四階級……それも偵察なんか初めて相手にする。正直強さもどんかもんか分からん……第三階級は多少苦労した程度で倒したことあるけど、正直に言うと勝てる自信はない)
アスカラーは上手く地面に着地して、ぐっ、と拳を握った。
(でもそんなんで負けられへん。言い訳にもならん)
「偉そうに言ってるけどあんたの笑い方も十分ひどいで」
「あ?」
その言葉は悪魔の癪に触れたようだった。
「おまエ……ぶっこロス」
ザクッ……!!!
アスカラーの近くの地面が突然形を変え、先の尖った刃物のような形状になり、それがアスカラーの右の腰あたりから左肩あたりまでを貫いた。
「ぷくくくく……っしンだ」
地面はすぐに平坦に戻り、アスカラーはその場に倒れこむ。
「アスカ……!?」
トウヤはその光景に衝撃を受けて、思わずそう言った。
「はは……っ、向こうの勝負は一瞬だったな」
バリルは楽しそうに笑うが、その笑みはすぐに驚いた顔に変わった。
「さて」
バリルがニヤリと笑った。
「振り出しやな」
アスカラーは余裕の笑みで立ち上がった。悪魔は顔をしかめる。
「治……初めて見たがこれほど治癒に特化しているとは」
そのバリルの言葉は間違っておらず、それはアスカラー自身も自覚していた。
(治はすごい能力や……能力を極めた人は、その人がどんな能力であっても軽い治癒は使える。でも治はそんなんとは比べ物にならへん。相手が死んでへん限り、一瞬で、どんな傷でも治す)
「終わったと思ったか?」
悪魔はギリギリギリ……と歯ぎしりをする。
(でも、それだけや。治の能力が出来ることは治癒だけ。じゃあ俺は人の治癒だけして生きていくんか?)
「何回でもやり直そうや、盛り上がってきたしなあ!!」
アスカラーは悪魔に殴りかかった。
(そんなん俺じゃない。俺はそんなんじゃない。戦いたい。倒したい。俺にしか出来ひんことをしたい)
それはアスカラーの中にある最大の目標であり、アスカラーだけの個性だった。
「ははは……っ、この男といいあの治といい、イカれた炎の男といい……類は友を呼ぶってやつかな、トウヤくんの周囲は面白い」
バリルは非常に楽しそうな顔をした。一方トウヤも少し誇らしげだった。
「僕らのうちの誰かが次世代の最強だ。誰もあんたたちに奪われたりしない」
その言葉に、バリルが笑った。
「あははは……っ、黒の戦士でこんなに健気なのは初めて見たな。誰が最強になるかってそんなのトウヤくんに決まってる、とは自分で思わないもんなの?」
「僕のことも僕の周囲のことも何も知らないからそんなこと言ってられるんだ」
トウヤは少し、むっとした顔をした。
「ああ、そう?怒ったなら謝るよ。別に侮辱とかそんな意味で言ったわけじゃなかったんだけど。人間って難しい」
肩を竦めたバリル。
「さあ、時間稼ぎにもそろそろ付き合ってられないな。始めようか?トウヤくん」
「……ああ」
トウヤは目を閉じた。
「あ、忘れてた。そういえば、カルレリアとトウヤくんって、何か関係あるの?」
そのトウヤの集中を遮るように、バリルが口を開く。
「隊長と隊員って関係なら」
トウヤはすぐにそう答えるが、バリルは首を傾げた。
「そうは感じなかったらしいけど……いや、トウヤくんがどうとかじゃなくて、カルレリアが普通の隊員に接するのと違うように見えたらしい」
「らしいって……誰からそんなこと聞いたんだよ」
「誰でもいいでしょ?」
そのバリルの言葉にトウヤは、
「それなら僕と隊長の関係だって何でもいいだろ」
むっとした顔で言った。
「ふーん。なんだろ、血縁関係はないでしょさすがに」
何も言わないトウヤに、バリルは少し笑った。
「まあ、あれは今でこそ最強だと言われてるけどそれは本当の最強が死んだからだし、俺たちとしては、別にカルレリアは眼中に無いけどさ」
「ならもう放っとけばいいだろ」
「いや?俺はトウヤくんに興味があるんだ。そこにちょっと強い奴が絡んでるかもって、気になるでしょ」
「僕は僕で、隊長は隊長だから。どんな関係を予想したとしても、それは何にもならない」
トウヤがハッキリと言うと、バリルはくすっ、と笑った。
「そんなに言いたくないならいいよ。どうせ知ることになるわけだし」
(……あんまりこの人の言ってることを気にしないで戦おう。勝ち方の一つの例もあがらないくらいの相手だから、雑念ばかりでは尚更勝てない)
ぐっ、と集中したトウヤはふぅ、と浅く息を吐いた。
「……本気でかかってきてみな」
わくわくした顔で言ったバリルに対して、トウヤは何も答えずに目を閉じた。
「俺はナイフで相手しようかな」
バリルがナイフを右手で握ったところで、トウヤはダン!と地面を蹴った。
(魔気をできるだけ解放する)
トウヤがその意志を持つとすぐに、ズン……!と荒野全体の雰囲気が変わった。
(僕の能力は詳細がよく分かっていない。なんとなく、消すとか生み出すとかそういう能力だっていうのはビルさんに教えてもらったけど、具体的にどうなるのかはまだ分からない。だから能力以外を消したことはなかった。今も、バリル・ノースを闇の能力で消すのが得策とはとても思えない。生物を消してどうなるか分からないのに、やるべきではない。だから)
「おお」
(能力無しで!!)
「さすがに速いな」
バリルは、一瞬も経たない内に目の前に現れた黒い刀に呆れたように笑う。
「まあ俺に速さなんて関係ないけど」
ビュン!と、バリルが手に持っていたナイフがトウヤを襲う。
「ん゛」
トウヤは唸りながらそれを避け、着用していた黒い隊服の両袖の部分が刀に切られる。それが風に靡いてひらひらと邪魔だったために、トウヤは一度バリルから距離をとり、袖を握って地面に捨てた。トウヤの白い手首が露わになり、バリルはにっこりと笑った。
「からだを切りつけたと思ったけど、やるねえ」
「……」
バリルの左手にもどこからかナイフが現れ、トウヤは少し考える。
(見えない結界か何かを近くに置いて武器を取り出してる……んだろうか、魔気の感知がびっくりするくらい出来ないから、どこにあるかは分からない。でも……)
トウヤは白龍を消し、黒龍を両手で握る。
(バリル・ノースの周りにあることは間違いない)
「お?気分転換?」
一刀流になったトウヤを見て、茶化すようにバリルが言うが、トウヤはそれに対して返事をしない。
「……何をブツブツ呟いてるのかなあ」
バリルが何か不気味なものを見るような目でトウヤを見る。
「……黒龍……場所……分かるよね……そうか……そうだ……あそこだ」
ブワッ!!と、勢いよく黒龍から黒いもやが吹き出した。
(やはりこの気配、気分が悪い!!)
バリルが顔を顰めた。しかし次の瞬間、何かに気がついたかのような表情に変わった。
(なんだ……あれは!!)
そのバリルの表情は、何かとても恐ろしいものを見たかのような、それでいてすごく嬉しそうな、少年のような表情であった。
「お前は一体……何なんだ!!!」
「一刀流第二剣技」
トウヤは、勢いよく地面を蹴った。
「神威黒龍一閃」
ザン!!!
トウヤは、バリル自身ではなく、バリルの周りの何も無い場所を斬ったはずなのに、なにか大きな手応えを感じていた。トウヤが斬った何も無い場所から、大量の武器……ナイフや刀が地面にぶちまけられた。
(よし……っえ!?)
喜んだのも束の間、トウヤはぎょっとした。バリルに、トウヤの両手首を片手でしっかりと掴まれていたのだ。
(掴まれる動作なんて見えなかった!じゃあ僕が武器結界を斬れたのは、バリル・ノースがそれを阻止しなかったからだろう)
トウヤは必死に手を振り払おうとするが、バリルはそれを許さなかった。
「……やはり」
バリルはトウヤの手首を見て言った。
「天上の印だな」
(てんじょうの……?)
不思議に思い、トウヤが自分の手首を見た。すると一瞬、手首に斜方形の痣が見えて、すぐに消えた。
(なんだ……今の!!右手は黒色の、左手は白色のダイヤ形!あの形は、悪魔が身に宿しているものと同じ形だった。今、能力を使ったから現れたのか?でも、他の人の体にこんなのは見たことない。それに今バリル・ノースは僕のあれを見て不審な顔をしてた……つまり普通の人には現れないってことだ)
「……トウヤくん。やはり今、ここで、話をしないか?」
「ああ、しないね!!」
トウヤはバリルの誘いに応じなかった。話す、ということは時間稼ぎにはなっただろうが、トウヤはそれを選択しなかった。
(アスカはずっと、勝つために戦ってる!なのに僕だけ、生き残ればいい戦いなんてできない!)
「トウヤくんは、何故今更出てきた?その歳になるまで何をしてた?」
「黒龍白龍、今は何の能力もいらない。ただの刀になっていい。バリル・ノースを斬る!!」
先程消した白龍が左手に現れて、トウヤはそれを強く握った。
(バリル・ノースに武器はない。このまま斬って、)
「無視しないでよ」
バン!!!
トウヤは、何が起きたのか理解できなかった。ライと木刀で戦った時と同様に、音がして、地面に叩きつけられてから、痛みが走って何をされたのかを悟る。
(頬に拳を叩きつけられて、地面に倒れさせられた……っ立ち上がらないと、)
「ねーえ」
バン!!!また、同じところを殴られた。トウヤの口からかなりの量の血が流れ出した。
(なんて力だ……っ意識を失いそうだった!!むしろ殴り続けられれば痛みで意識を保てるのに、間隔をあけて殴られると更にきつい……っ)
「聞いてんの?」
ガン!!!次はトウヤの頭を勢いよく蹴ったバリル。一発の蹴りだけで、危うく致命傷になるような一撃だった。
「トウヤ……っ」
一方的にやられ始めたトウヤを目視したアスカラーは、トウヤの身を案じていた。
「ヨソミ……!!」
ザシュッ!!もう一度、地面がアスカラーを刺した。
(くそ……っ、俺の魔気ももうすぐ限界や、でもトウヤも治癒がいるかもしれんから、俺は攻撃を受けてられへんのに!!)
アスカラーは治癒を繰り返しているため、一切の傷を負っていないが、明らかに体力と魔気は残りわずかであった。悪魔もそれを悟って攻撃を続けているようだった。
「早く、勝たないと……っトウヤが!!」
『落ち着け。待たせたが勝ち筋が見えた』
リースの声が、アスカラーに届いた。
「リース……!遅いわ!!!!!」
忘れていたかのように、アスカラーは言う。
「勝ち筋って!?」
『その悪魔は俺の狙撃を完全に警戒している』
無線連絡機から、ドン!という発砲音が聞こえて、アスカラーが驚いた顔をするが、悪魔は全く気にもとめずに地面を変形させ、弾をそこに着弾させた。
『できるだけ意識を近距離に集めてくれ。俺が仕留める』
「了解ぃ!」
アスカラーが、走り出した。悪魔はすぐにアスカラーを追う。
「ニゲルトハ……ッぷくくっ」
「逃げてへんわ、あほ!!!」
次に立ち止まったアスカラーの手には、短刀があった。先程、バリルの武器庫をトウヤが破壊した際に地面に散乱した武器を拾うために走っていたのだ。
「ぷくくっ……ソンナモノ……っぷぷ、モッテモ、ムダ!!」
地面が変形して、またアスカラーを刺そうとするが、アスカラーはそれをかわして悪魔へと近づく。
ザシュッ!!かわしたはずのそれは背後からアスカラーを刺すが、それでもアスカラーは止まらない。
(できるだけ近づく……!遠距離を忘れさせるために!)
「ムダ!!!!」
ザシュザシュッ!!アスカラーは何度も治癒を繰り返しながら、悪魔との距離を詰める。しかし、アスカラーは何度もよろけていた。倒れそうになりながら、全力で走っていた。
(倒れるな!!!俺は……っこれぐらいしか……っ)
何度も何度も治癒を繰り返し、アスカラーはとうとう短剣を悪魔へと振りかざす距離までに到達した。
「あああああああ!!!!」
アスカラーの短剣が、悪魔の肩に刺さった。
「……ぷくくっ」
悪魔は笑いを止めなかった。ザシュッ!!アスカラーの腹に、鋭い地面が貫通した。
「ははっ……」
しかし、アスカラーも笑った。悪魔が不審がっているような表情を浮かべた。
「俺らのスナイパーのこと……忘れてるで!!!」
「ナニ……!?ずット……長きょリは警戒しテ……」
悪魔が確認するかのように、リースがずっと悪魔を狙っていた場所を見た瞬間、
「だから負けるんだ」
ダァン……!!!
荒野に大きな発砲音が響いた。リースはいつの間にかアスカラーのすぐ隣に立っており、悪魔の首にライフルを突きつけて発砲し、首を飛ばした。
悪魔は完全に全身を失い、消滅した。
「おい、早く治癒をして立……」
リースが、アスカラーへの言葉を止めた。アスカラーは、うつぶせに地面に倒れていて、腹には直径十センチほどの穴があいていた。
「……おい」
治の能力は、生きている限り、どんな傷でも治るのである。
「今すぐ治癒をしないと、死……」
リースは何も言わなかった。いや、何も言えなかった。アスカラーは、既に治癒する魔気も残っていない状態で悪魔に腹部に穴を開けられていたのだった。
「あ、すかは……っ」
その声は、トウヤだった。仰向けに倒れているトウヤのすぐ隣にはバリル・ノースが無傷の状態で立っていた。
「アスカ……は……?」
弱々しい声でアスカの状態を聞くトウヤだが、リースは何も答えない。
「あー……あれは死んでるわ、残念だなぁ」
バリルは特にいつもと変わらぬ調子でそう言った。
「あれが悪魔を倒したらって約束だったけど、それも叶わなかったし、ね。どう?トウヤくん。一発殴られて気を失ってから行くか、抵抗せずに俺たちと行くか」
「イミル!!撃ち抜けゴルァ!!!」
キリはゆっくりとアスカラーたちを閉じ込めた氷の隣まで歩いてきた。
「解」
氷が消えて、どさっ、とキースとアスカラーがその場に倒れた。
「キ……リ……」
「うわっ、ひっでぇ火傷……つぅか」
ぼこっ、とキリは倒れているキースの腹を殴った。
「てめぇはまだ炎出してんじゃねぇよ」
キースの右手のグローブから、チリチリと火があがっていた。キリはそれを見て、手のひらサイズの氷を作りその手の上に載せた。
「……キリ」
ゆっくりとアスカラーが起き上がった。火傷は少しずつ治っていっている。
「助かった」
アスカラーは大きく息を吐いた。
「それよりどういうことだぁ?わっけわかんねェ」
「っていうかキリ、さっき俺たちが本部出た時には傷残ってたのに、もう傷治ってる……誰かの治癒?」
「俺ァ昔から回復はえぇんだ。俺が起きた時には本部の中に副隊長しかいねえし、副隊長には今すぐ行けとか言われるし……どうなってんだよ。しかもあいつ」
キリはものすごく嫌そうな顔でバリルを指さした。バリルは四肢をバラバラにされており、また首から体を再生しているところだった。
「あれは……リースがやったんやろな」
バリルはニヤニヤした顔のまま再生を続けていた。
「って、本部に副隊長以外いなかったって?何で?」
「だから俺がお前にそれを聞いてんだろうが」
呆れたようにキリが言うが、アスカラーは首を傾げる。
「……とりあえずキースを治癒するけど」
アスカラーがキースの胸に手を当てた。
「教えてやるよー」
そう言ったのは、バリルだった。
「てめぇ……」
キリがピストルをバリルに向けようとすると、
「いやいや、あのさぁ。俺にきみらを襲うメリットなんてないんだから、黙って聞けよ。距離保っててやるし」
(……俺たちを襲うメリットの有無は知らんけど、今の状況を聞かせるメリットの方がないやろ)
「簡単に言うと、俺を含めて四人の征連幹部のアジトが特殲に特定されてさぁ。他の隊員や十要なんかはそっちに向かってるんじゃねぇかなあ」
アスカラーが目を見開いた。
(アジトを特定……俺たちが本部に、アジトは街の中に数箇所あって征連幹部がおるって伝えたら……特殲はすぐに特定できたんやな……いや、でも……十要が総出でアジトを押さえようとしてて……でも征連幹部の一人はここにおって)
アスカラーは、はっ、とした顔になった。
(狙いは……どさくさに紛れてトウヤを拉致すること!?じゃあ……ブレイくんの特殲アジトの情報はブラフで……やっぱりブレイくんは……いや、今はそんなこと考える時じゃない)
「ひとつ質問があるんだけど」
バリルは友達に話しかけるように言った。
「トウヤくんとカルレリアってどういう関係なんだろー?普通の隊員とより、仲良かったって」
(そうや……!隊長に知らせたらトウヤを守れるかもしれへん)
アスカラーはそう思って先程まで近くで戦っていたソキを探すが、いない。
『隊長はブレイって人とやり合いながら、アジトとやらにどんどん近づいてる』
無線でリースから連絡があった。視界が開けていて高い場所にいるから分かるのだろう。
「知ってるって顔した」
バリルはニヤリと笑って、アスカラーにしつこく話しかける。
「なーあ、どういう関係なのかなあ」
「……知らんわ、どうでもいいやろそんなん」
「きみは知っ……」
バリルがアスカラーからキリに目線を移して、それから首を傾げた。
「……ん?」
ズカズカとキリに歩み寄るバリルに、キリは怖気付かずにその場で仁王立ちして対応した。
「……あらら、お前……」
そんなキリの目をバリルが近距離で覗き込む。
「んだよ」
「いや……っははは」
バリルは非常に愉快そうに笑う。
「決めた」
「?何を」
プシュゥ!!!と妙なガスを、バリルはキリの顔に吹きかけた。いつの間にか手に持っていた缶の中に何らかのガスが入っていたのだろう、キリは呆気なく倒れ込んだ。
バリルはキリを担いで、アスカラーを見る。
キン!!と地面に銃弾が当たる音がした。
(避けられた)
リースの射撃が、初めてバリルに避けられたのだ。
(……今までのも避けれたのか)
「こいつも連れてく」
「キリ!!!」
アスカラーがバリルに殴りかかった。
「お……思ったより速い、治癒だけじゃないのか」
バリルはにっこりと笑ってその場から消えた。
「まあ俺に誰が何しても、同じ結果にしかならないけど」
「くそ!!!リース、トウヤは!!」
『さっき荒野に着いたのは見た。今場所を確認してる』
(くそ、どうする……っ)
アスカラーは拳を握りしめた。
『発見、荒野のど真ん中だ。飛ぶか?』
「と……?ああ、そうか!!飛ぶ!!」
ブン!!とアスカラーの身体が宙へ投げ出された。
「うわあああああああ」
『着地はそっちでやれよ』
「トウヤああああああ受け止めてえええええええ」
風によってすぐに荒野へ飛ばされたアスカラーは、地上を走っていたトウヤに叫んだ。
「アスカ!?……リースの能力か!」
トウヤはアスカラーの真下へ行き、アスカラーの落下を待ち、どさっ!とアスカラーをキャッチした。
「おお……っトウヤ、キリが捕らえられた!!なんでか分からへんけど、今まで狙いは明らかにトウヤやったはずやからまずあんなとこで暴れたら被害が凄いやろからトウヤに荒野へ来てもらったけど、キリが捕まるとは思わんやん!!しかもなんかガスを……生きてるとは思うけどっ」
「分かった、落ち着いて、大丈夫。キースは?」
「キースは、大火傷してて……治癒はしたけど動けそうになくて、」
『特殲本部の副隊長がいるとこに一発撃ったら、外にいるキースに気づいて中へ入れてた』
(撃っ……)
トウヤは若干驚きつつ、頷いた。
「キリはバリル・ノースに連れ去られたんだよね?じゃあもう無線を奪われて聞かれてるかも、」
「そんな面倒な真似はしないよ」
その場に、バリルが現れた。どさっ、とキリが地面に倒れる。
(……どうする)
「……なんで僕を狙うのかはもう聞かない。今回はなんでキリを?」
「いやいや、予定外なんだよこれは。つまり、ボスのもとへトウヤくんを連れていくって目的はまだ遂行できてないわけで。だから今ここにいる」
トウヤはちらっ、とキリを見た。腹が動いているため呼吸をしていることが分かった。
「キリを連れ去って、僕みたいに征連に勧誘するの?」
「いや?念の為許可をとってから殺す」
笑顔で言い切ったバリルとは裏腹に、トウヤは表情が変わった。
「じゃあ行かせられないな」
「あー、そういえば人間って仲間を殺されたら怒っちゃうんだっけぇ」
バリルは口角をつりあげて言った。
「そこの治のやつと、ずっとこっちにライフルを構えてるあの男は今すぐ殺せるけど、そうしたらトウヤくんは怒って俺とは仲間になってくれないかな?」
「……もとから征連に入る気はないけど、そんなことしたら余計ありえなくなる」
トウヤは言葉を選んだ。トウヤの言葉によっては、それは有り得るかもしれなかった。
「やっぱりぃ?まだ彼は殺せないけど、ほかは別に良いもんなあ。……きみを殺したらボスにすごく怒られそうだ。トウヤくん」
「……今から何をするつもりかだけ教えてほしい」
トウヤは双剣を握り、バリルを睨みつけた。
「うーん、あんまり乱暴なことはしたくないんだけど?」
「じゃあどうやって連れていくんだよ」
「うーん……こうやってかなあ」
ドン!!と大きな音がして、バリルの腹を何かが貫通した。
『どうせ人質を取る。そうなったら戦わざるを得ない。それならもう逃げ隠れせず、ここで決着をつけた方がいい』
リースの声だった。
(……たしかに今……俺を狙ってた)
アスカラーは悔しげな表情を浮かべた。
(リースのサポートがなくても、俺は人質になってなかったか?)
「……うん。戦おう」
トウヤは覚悟を決めた顔をした。
「あははは……っ、戦うか、そっかぁ」
リースの銃弾の傷は既に無く、バリルは楽しそうに笑った。
「じゃあこうしようよ」
パン!とバリルが手を叩くと、バリルの隣に何かが現れる。
(角が生えてる……それにたぶん……2メートル半くらいはある身長、そして両頬の痣)
トウヤはそれを睨みつけた。
(第四階級の悪魔……!!)
その悪魔は一つ目で、指先からは木の枝が生えており、人間ではないことはすぐに分かった。
「この悪魔に、さらに俺の魔気を与える。普段は監視用の悪魔として発現させてるけど、今はちょうどいい強さにしたいだけだ」
「……ちょうどいい?」
トウヤが聞き返した。
(第四階級、偵察の悪魔……つまり、僕とキリが2人がかりで死にかけたがら倒した悪魔だ)
「トウヤくんは俺と戦おう。俺がきみを戦闘不能にしたら勝手に俺たちの本部へ連れていかせてもらう。で、その勝負を邪魔されたら嫌だし、そこの男にはこいつと戦ってもらうけど」
「俺がこの悪魔に勝ったらトウヤがあんたに勝つ前にトウヤから手ぇ引くってことやな?」
アスカラーは真剣な顔で言った。
(普通に考えて、トウヤが征連の幹部と戦うより俺が第四階級と戦う方が……現実的や、俺はトウヤが負ける前に悪魔を倒さなあかんけど、あの不死身の男に勝つ方法も分からんよりそっちの方が勝算はある)
バリルは、少し考えて、
「……まあいっか。それならそれで、もう少しだけ魔気で悪魔を強化しておくよ」
バリルが言うと、悪魔の雰囲気が少し変わった。
『バリル・ノースは何を言ってる?無線じゃ聞こえない』
「今から戦う。援護はアスカの方だけでお願い」
『は?』
トウヤはリースにそれ以上なにも言わず、無線を切った。すると、ボスっ、という音がしてトウヤの足元の地面に銃弾がめり込んだ。
(……意外と子供っぽいよな……)
トウヤは少し呆れながらリースの「ふざけるな」という怒りを伝える手段を汲み取った。
「はは……っ、話は終わった?そろそろやろうか」
バリルは愉快そうに笑った。トウヤは何も言わず、双剣を力強く握る。
「……トウヤ」
アスカラーがぐいっ、と顔を上げてトウヤを呼んだ。
「俺がどうなってようが、俺が生きてる間は俺に治癒を求めてくれていいから」
その言葉にトウヤは頷かなかった。
「……治癒は全部終わってからでいいよ」
頷く代わりに、眉をひそめてトウヤが言った。アスカラーはそれに、呆れたように笑った。
「はいはい、そうやんな」
「なんだよ、腹立つな」
トウヤは怒った顔をして、言葉を続けた。
「僕、さっきアスカが言ったこと根に持ち続けるから」
「え、何?」
「生きてる間はっていうの。ああいうのほんとに嫌い」
(温厚そうに見えて実は我が強いな。はは……っ、そういうやつに実力が伴えば、それは人望に繋がる。あんまり厄介なことにならない内に、トウヤくんを奪取しないと)
バリルはずっと同じ笑みの裏でそんなことを考えていた。
「生きてトウヤ班に帰ろう。五人のトウヤ班に」
「……せやな」
アスカラーは少し楽になったような顔をして、第四階級悪魔を睨んだ。
(勝たないとあかんねやった)
トウヤも気合を入れ直し、思考を巡らせ始めた。
(どうする……相手に効く攻撃を考えないと、僕はすぐに負けてしまう。ソキさんが言ってたこの人を倒す方法って何なんだ!?ダメだ、何も思いつかない……アスカがあれを倒すか倒さないかに関係なく、僕はいつかはこの人を倒さなきゃ、いつまでも僕が追い回されてみんなに迷惑がかかる。現にキリが何故か狙われ始めてるし)
「どうしたの?やらないのかな」
バリルは終始余裕の笑みを浮かべてトウヤを見ていた。
「……いろいろ考えてるんだ」
(それにもし……僕が征連側に連れ去られるようなことが起きたらどうする?僕は現時点でこれほど抵抗してる、なのにこの人たちは僕を征連に連れ去ってメンバーにしようとしている。つまり、僕を連れ去ったら僕の意志に関係なく、僕を征連のメンバーにできるってことかも。それならすごく危険だし、前にこの人に言ったみたいに、本当に僕自ら命を絶った方が特殲にとってはいいんじゃないかと思う……でも、連れ去られてからではそんな隙はないだろうから今にでも……)
トウヤの頭に先程ソキに言われた言葉が過ぎる。
(だめだ……死ぬなって言われてる。それにさっきアスカに言ったばかりだ、生きて、五人で帰るって。まだ諦めるのは早い)
トウヤが、自死という選択肢を捨てたところで、アスカラーと悪魔との戦闘が始まった。
「ふんっ……!!」
アスカラーが強く地面を蹴り、バン!!と強い蹴りを悪魔に与えるが、悪魔は片腕でその脚を掴み、アスカラーを投げた。
「オソ……ぷくくっ……オソイナ……ぷくくっ」
妙な声でアスカラーを指さして笑う悪魔に、アスカラーはイラッとした顔をした。
(第四階級……それも偵察なんか初めて相手にする。正直強さもどんかもんか分からん……第三階級は多少苦労した程度で倒したことあるけど、正直に言うと勝てる自信はない)
アスカラーは上手く地面に着地して、ぐっ、と拳を握った。
(でもそんなんで負けられへん。言い訳にもならん)
「偉そうに言ってるけどあんたの笑い方も十分ひどいで」
「あ?」
その言葉は悪魔の癪に触れたようだった。
「おまエ……ぶっこロス」
ザクッ……!!!
アスカラーの近くの地面が突然形を変え、先の尖った刃物のような形状になり、それがアスカラーの右の腰あたりから左肩あたりまでを貫いた。
「ぷくくくく……っしンだ」
地面はすぐに平坦に戻り、アスカラーはその場に倒れこむ。
「アスカ……!?」
トウヤはその光景に衝撃を受けて、思わずそう言った。
「はは……っ、向こうの勝負は一瞬だったな」
バリルは楽しそうに笑うが、その笑みはすぐに驚いた顔に変わった。
「さて」
バリルがニヤリと笑った。
「振り出しやな」
アスカラーは余裕の笑みで立ち上がった。悪魔は顔をしかめる。
「治……初めて見たがこれほど治癒に特化しているとは」
そのバリルの言葉は間違っておらず、それはアスカラー自身も自覚していた。
(治はすごい能力や……能力を極めた人は、その人がどんな能力であっても軽い治癒は使える。でも治はそんなんとは比べ物にならへん。相手が死んでへん限り、一瞬で、どんな傷でも治す)
「終わったと思ったか?」
悪魔はギリギリギリ……と歯ぎしりをする。
(でも、それだけや。治の能力が出来ることは治癒だけ。じゃあ俺は人の治癒だけして生きていくんか?)
「何回でもやり直そうや、盛り上がってきたしなあ!!」
アスカラーは悪魔に殴りかかった。
(そんなん俺じゃない。俺はそんなんじゃない。戦いたい。倒したい。俺にしか出来ひんことをしたい)
それはアスカラーの中にある最大の目標であり、アスカラーだけの個性だった。
「ははは……っ、この男といいあの治といい、イカれた炎の男といい……類は友を呼ぶってやつかな、トウヤくんの周囲は面白い」
バリルは非常に楽しそうな顔をした。一方トウヤも少し誇らしげだった。
「僕らのうちの誰かが次世代の最強だ。誰もあんたたちに奪われたりしない」
その言葉に、バリルが笑った。
「あははは……っ、黒の戦士でこんなに健気なのは初めて見たな。誰が最強になるかってそんなのトウヤくんに決まってる、とは自分で思わないもんなの?」
「僕のことも僕の周囲のことも何も知らないからそんなこと言ってられるんだ」
トウヤは少し、むっとした顔をした。
「ああ、そう?怒ったなら謝るよ。別に侮辱とかそんな意味で言ったわけじゃなかったんだけど。人間って難しい」
肩を竦めたバリル。
「さあ、時間稼ぎにもそろそろ付き合ってられないな。始めようか?トウヤくん」
「……ああ」
トウヤは目を閉じた。
「あ、忘れてた。そういえば、カルレリアとトウヤくんって、何か関係あるの?」
そのトウヤの集中を遮るように、バリルが口を開く。
「隊長と隊員って関係なら」
トウヤはすぐにそう答えるが、バリルは首を傾げた。
「そうは感じなかったらしいけど……いや、トウヤくんがどうとかじゃなくて、カルレリアが普通の隊員に接するのと違うように見えたらしい」
「らしいって……誰からそんなこと聞いたんだよ」
「誰でもいいでしょ?」
そのバリルの言葉にトウヤは、
「それなら僕と隊長の関係だって何でもいいだろ」
むっとした顔で言った。
「ふーん。なんだろ、血縁関係はないでしょさすがに」
何も言わないトウヤに、バリルは少し笑った。
「まあ、あれは今でこそ最強だと言われてるけどそれは本当の最強が死んだからだし、俺たちとしては、別にカルレリアは眼中に無いけどさ」
「ならもう放っとけばいいだろ」
「いや?俺はトウヤくんに興味があるんだ。そこにちょっと強い奴が絡んでるかもって、気になるでしょ」
「僕は僕で、隊長は隊長だから。どんな関係を予想したとしても、それは何にもならない」
トウヤがハッキリと言うと、バリルはくすっ、と笑った。
「そんなに言いたくないならいいよ。どうせ知ることになるわけだし」
(……あんまりこの人の言ってることを気にしないで戦おう。勝ち方の一つの例もあがらないくらいの相手だから、雑念ばかりでは尚更勝てない)
ぐっ、と集中したトウヤはふぅ、と浅く息を吐いた。
「……本気でかかってきてみな」
わくわくした顔で言ったバリルに対して、トウヤは何も答えずに目を閉じた。
「俺はナイフで相手しようかな」
バリルがナイフを右手で握ったところで、トウヤはダン!と地面を蹴った。
(魔気をできるだけ解放する)
トウヤがその意志を持つとすぐに、ズン……!と荒野全体の雰囲気が変わった。
(僕の能力は詳細がよく分かっていない。なんとなく、消すとか生み出すとかそういう能力だっていうのはビルさんに教えてもらったけど、具体的にどうなるのかはまだ分からない。だから能力以外を消したことはなかった。今も、バリル・ノースを闇の能力で消すのが得策とはとても思えない。生物を消してどうなるか分からないのに、やるべきではない。だから)
「おお」
(能力無しで!!)
「さすがに速いな」
バリルは、一瞬も経たない内に目の前に現れた黒い刀に呆れたように笑う。
「まあ俺に速さなんて関係ないけど」
ビュン!と、バリルが手に持っていたナイフがトウヤを襲う。
「ん゛」
トウヤは唸りながらそれを避け、着用していた黒い隊服の両袖の部分が刀に切られる。それが風に靡いてひらひらと邪魔だったために、トウヤは一度バリルから距離をとり、袖を握って地面に捨てた。トウヤの白い手首が露わになり、バリルはにっこりと笑った。
「からだを切りつけたと思ったけど、やるねえ」
「……」
バリルの左手にもどこからかナイフが現れ、トウヤは少し考える。
(見えない結界か何かを近くに置いて武器を取り出してる……んだろうか、魔気の感知がびっくりするくらい出来ないから、どこにあるかは分からない。でも……)
トウヤは白龍を消し、黒龍を両手で握る。
(バリル・ノースの周りにあることは間違いない)
「お?気分転換?」
一刀流になったトウヤを見て、茶化すようにバリルが言うが、トウヤはそれに対して返事をしない。
「……何をブツブツ呟いてるのかなあ」
バリルが何か不気味なものを見るような目でトウヤを見る。
「……黒龍……場所……分かるよね……そうか……そうだ……あそこだ」
ブワッ!!と、勢いよく黒龍から黒いもやが吹き出した。
(やはりこの気配、気分が悪い!!)
バリルが顔を顰めた。しかし次の瞬間、何かに気がついたかのような表情に変わった。
(なんだ……あれは!!)
そのバリルの表情は、何かとても恐ろしいものを見たかのような、それでいてすごく嬉しそうな、少年のような表情であった。
「お前は一体……何なんだ!!!」
「一刀流第二剣技」
トウヤは、勢いよく地面を蹴った。
「神威黒龍一閃」
ザン!!!
トウヤは、バリル自身ではなく、バリルの周りの何も無い場所を斬ったはずなのに、なにか大きな手応えを感じていた。トウヤが斬った何も無い場所から、大量の武器……ナイフや刀が地面にぶちまけられた。
(よし……っえ!?)
喜んだのも束の間、トウヤはぎょっとした。バリルに、トウヤの両手首を片手でしっかりと掴まれていたのだ。
(掴まれる動作なんて見えなかった!じゃあ僕が武器結界を斬れたのは、バリル・ノースがそれを阻止しなかったからだろう)
トウヤは必死に手を振り払おうとするが、バリルはそれを許さなかった。
「……やはり」
バリルはトウヤの手首を見て言った。
「天上の印だな」
(てんじょうの……?)
不思議に思い、トウヤが自分の手首を見た。すると一瞬、手首に斜方形の痣が見えて、すぐに消えた。
(なんだ……今の!!右手は黒色の、左手は白色のダイヤ形!あの形は、悪魔が身に宿しているものと同じ形だった。今、能力を使ったから現れたのか?でも、他の人の体にこんなのは見たことない。それに今バリル・ノースは僕のあれを見て不審な顔をしてた……つまり普通の人には現れないってことだ)
「……トウヤくん。やはり今、ここで、話をしないか?」
「ああ、しないね!!」
トウヤはバリルの誘いに応じなかった。話す、ということは時間稼ぎにはなっただろうが、トウヤはそれを選択しなかった。
(アスカはずっと、勝つために戦ってる!なのに僕だけ、生き残ればいい戦いなんてできない!)
「トウヤくんは、何故今更出てきた?その歳になるまで何をしてた?」
「黒龍白龍、今は何の能力もいらない。ただの刀になっていい。バリル・ノースを斬る!!」
先程消した白龍が左手に現れて、トウヤはそれを強く握った。
(バリル・ノースに武器はない。このまま斬って、)
「無視しないでよ」
バン!!!
トウヤは、何が起きたのか理解できなかった。ライと木刀で戦った時と同様に、音がして、地面に叩きつけられてから、痛みが走って何をされたのかを悟る。
(頬に拳を叩きつけられて、地面に倒れさせられた……っ立ち上がらないと、)
「ねーえ」
バン!!!また、同じところを殴られた。トウヤの口からかなりの量の血が流れ出した。
(なんて力だ……っ意識を失いそうだった!!むしろ殴り続けられれば痛みで意識を保てるのに、間隔をあけて殴られると更にきつい……っ)
「聞いてんの?」
ガン!!!次はトウヤの頭を勢いよく蹴ったバリル。一発の蹴りだけで、危うく致命傷になるような一撃だった。
「トウヤ……っ」
一方的にやられ始めたトウヤを目視したアスカラーは、トウヤの身を案じていた。
「ヨソミ……!!」
ザシュッ!!もう一度、地面がアスカラーを刺した。
(くそ……っ、俺の魔気ももうすぐ限界や、でもトウヤも治癒がいるかもしれんから、俺は攻撃を受けてられへんのに!!)
アスカラーは治癒を繰り返しているため、一切の傷を負っていないが、明らかに体力と魔気は残りわずかであった。悪魔もそれを悟って攻撃を続けているようだった。
「早く、勝たないと……っトウヤが!!」
『落ち着け。待たせたが勝ち筋が見えた』
リースの声が、アスカラーに届いた。
「リース……!遅いわ!!!!!」
忘れていたかのように、アスカラーは言う。
「勝ち筋って!?」
『その悪魔は俺の狙撃を完全に警戒している』
無線連絡機から、ドン!という発砲音が聞こえて、アスカラーが驚いた顔をするが、悪魔は全く気にもとめずに地面を変形させ、弾をそこに着弾させた。
『できるだけ意識を近距離に集めてくれ。俺が仕留める』
「了解ぃ!」
アスカラーが、走り出した。悪魔はすぐにアスカラーを追う。
「ニゲルトハ……ッぷくくっ」
「逃げてへんわ、あほ!!!」
次に立ち止まったアスカラーの手には、短刀があった。先程、バリルの武器庫をトウヤが破壊した際に地面に散乱した武器を拾うために走っていたのだ。
「ぷくくっ……ソンナモノ……っぷぷ、モッテモ、ムダ!!」
地面が変形して、またアスカラーを刺そうとするが、アスカラーはそれをかわして悪魔へと近づく。
ザシュッ!!かわしたはずのそれは背後からアスカラーを刺すが、それでもアスカラーは止まらない。
(できるだけ近づく……!遠距離を忘れさせるために!)
「ムダ!!!!」
ザシュザシュッ!!アスカラーは何度も治癒を繰り返しながら、悪魔との距離を詰める。しかし、アスカラーは何度もよろけていた。倒れそうになりながら、全力で走っていた。
(倒れるな!!!俺は……っこれぐらいしか……っ)
何度も何度も治癒を繰り返し、アスカラーはとうとう短剣を悪魔へと振りかざす距離までに到達した。
「あああああああ!!!!」
アスカラーの短剣が、悪魔の肩に刺さった。
「……ぷくくっ」
悪魔は笑いを止めなかった。ザシュッ!!アスカラーの腹に、鋭い地面が貫通した。
「ははっ……」
しかし、アスカラーも笑った。悪魔が不審がっているような表情を浮かべた。
「俺らのスナイパーのこと……忘れてるで!!!」
「ナニ……!?ずット……長きょリは警戒しテ……」
悪魔が確認するかのように、リースがずっと悪魔を狙っていた場所を見た瞬間、
「だから負けるんだ」
ダァン……!!!
荒野に大きな発砲音が響いた。リースはいつの間にかアスカラーのすぐ隣に立っており、悪魔の首にライフルを突きつけて発砲し、首を飛ばした。
悪魔は完全に全身を失い、消滅した。
「おい、早く治癒をして立……」
リースが、アスカラーへの言葉を止めた。アスカラーは、うつぶせに地面に倒れていて、腹には直径十センチほどの穴があいていた。
「……おい」
治の能力は、生きている限り、どんな傷でも治るのである。
「今すぐ治癒をしないと、死……」
リースは何も言わなかった。いや、何も言えなかった。アスカラーは、既に治癒する魔気も残っていない状態で悪魔に腹部に穴を開けられていたのだった。
「あ、すかは……っ」
その声は、トウヤだった。仰向けに倒れているトウヤのすぐ隣にはバリル・ノースが無傷の状態で立っていた。
「アスカ……は……?」
弱々しい声でアスカの状態を聞くトウヤだが、リースは何も答えない。
「あー……あれは死んでるわ、残念だなぁ」
バリルは特にいつもと変わらぬ調子でそう言った。
「あれが悪魔を倒したらって約束だったけど、それも叶わなかったし、ね。どう?トウヤくん。一発殴られて気を失ってから行くか、抵抗せずに俺たちと行くか」
「イミル!!撃ち抜けゴルァ!!!」
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
続き待ってます。
ありがとうございます、近いうちに必ず投稿します!