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二章
鋼の龍は、赤い魔力で撃ち貫くのみ!
しおりを挟むいくつも岩つ数珠繋ぎにしたような巨大な龍が一馬たちを見下ろしていた。
「情報確認! 危険度Sミスリルスネークですっ!」
ニーヤの不穏な言葉に一馬を始め、一同が息をのんだ。
しかもミスリルスネークはやる気満々なのかトグロを巻いて、咆哮をあげている。
走って逃げても足場は悪いし、おそらく長い体を使って一方的に攻撃を仕掛けてくるはず。
もはや戦うしかない。一馬はアインへアクスカリバーを握らせた。
「先輩とドラは錬成壁の裏へ! いくぞニーヤ!」
「了解ですっ!」
アインは大剣を、ニーヤは両腕から光の剣を発生させて、ミスリルスネークへ突っ込んでゆく。
対するミスリルスネークはトグロを解き、大口を開いて、まるで嵐のように石礫を吐き出す。
巨大なアインは盾を構えて防御し、小さなニーヤは器用に石の嵐をくぐり抜け、接敵する。
「殲滅っ!」
ブンっ! と光の剣が空を切る。
曇りも迷いもない鮮烈な一撃。しかし刃は鈍色の体表に触れた途端、ガラスのように砕け散る。
「純度の高い魔法上金属(ミスリル)……厄介です!」
ニーヤは忌々しげに言葉を吐き出す。
すると、ミスリルスネークは石のブレスを止めて動き出し、ニーヤを激しく突き飛ばす。
「ニーヤっ! このぉっ!」
一馬はアインへアクスカリバーを振らせる。
意外にすばしっこしミスリルスネークは鈍重なアインの斬撃をひらりとくぐり抜ける。
一馬はなんとかミスリルスネークを捉えようと、アインへ大剣を降らせ続ける。
時には刃が敵を打ち据える。
だが、刃は文字通り歯が立たず、弾かれるのみ。
やはり、魔法上金属は硬い。ならば同じミスリル製のギルバートmark 6を倒した時のように、エアスラッシュを使うか。
その前に、この状況で魔力を充填させる暇があるのかーーいや、そんな暇はない。
「なら、これでどうだぁ!」
一馬は突っ込んでくるミスリルスネークを真正面へ捉える。
オーガパワーを発動させ、アインのアコーパールが壮絶な輝きを放つ。
そして相手の突進力と、アインの膂力を重ね合わせて、左腕の虹の盾に装備した、鋭いバンカーを突き出す。
ドンっ! と激しい破砕音が響き、バンカーがミスリルスネークの頭へ叩きつけられた。
しかし、頭へバンカーを叩きつけられても尚、相手の体はうねり続けている。
「ニーヤ、魔力を!」
「りょ、了解っ!」
ニーヤはうつ伏せのまま青白い魔力を放った。
瞬間、アインの盾の裏から同種の輝きが迸る。
更に大きな破砕音が響き渡り、バンカーを伝って流し込まれた魔力がミスリルスネークの頭を吹き飛ばした。
ずっと動き続けていた長い体が動きを鈍らせる。
「や、やった……っ!?」
しかし勝利の安堵は訪れなかった。
数珠繋ぎになっていた鉱石が素早く変形し、吹き飛ばした筈の頭部が瞬時に再生を果たす。
一馬は咄嗟にバンカーを引き抜き、右手のアクスカリバーを叩き落す。
「MSYAAA!!」
ミスリルスネークの咆哮が採石場に響き渡った。
アクスカリバーがアインの右腕ごと宙を舞う。
更に衝撃はアインを突き飛ばし、岩壁へ叩きつけられる。
「嘘、だろ……?」
これまで負けなしだったアインが倒れ、激しい喪失感にさいなまれた一馬は思わず地面へ膝を突く。
そんな一馬を見下ろしたミスリルスネークは、大口を開き石礫の嵐を吐き出す。
「術式変更(モードチェンジ)――拳闘(ファイター)! ふん!」
光の剣を小さな拳にまとったニーヤは一馬の前へ立ち、降り注ぐ石礫を叩き割る。
「マスター、ここは退避を!」
「アインが……くそっ……!」
「マスター!!」
「悪魔鬼畜変態ロリコンゴーレム使いカズマ立てぇっ!! お前とアインを倒すのはこの超天才ゴーレム使いのドラグネット=シズマン様なんだぞぉ!」
その時、背後から強い語気が一馬の背中を叩く。
瑠璃の静止を振り切り、赤いゴーレム使いドラグネットが飛び出してくる。
彼女はたぼだぼの袖から宙へ向けて鈍色に輝く、魔法上金属の欠片をばらまく。
「傀儡召喚(サモンゴーレム)!」
ドラグネットの赤い魔力を受け、鍵たる言葉を受けた鉱石はすぐさま変幻を成す。
宙に現れたのは、翼で空を切り、鋭い嘴を向けて飛ぶ無数の岩の鳥。
岩の鳥たちは躊躇うことなくミスリルスネークへ特攻を仕掛け砕け散る。
ダメージは見て取れず。しかし、一馬から注意を逸らすことはできたらしい。
「おい、ドチビ! 考えがあるから、ちょっと一人で頑張れ!」
「了解っ! しかしダメだったらぶん殴ります! 覚悟していてください!」
なんだかんだと言いつつもニーヤは素直に一人でミスリルスネークへ立ち向かてゆく。
その隙に、ドラグネットが駆け寄ってきた。
「助かった、ドラ」
「べ、別にカズマの命のためじゃないんだから! か、勘違いしないでよねっ!」
まるでどっかで聞いたことにあるようなセリフに、気持ちが和らぎ、再び活力を取り戻させる。
「で、ドラの考えてってなんだ? 教えてくれ!」
「もう一回ミスリルスネークへ盾の角を叩き込んで! そしたら勝ち確だよ!」
「それだけか?」
「うん、それだけ!」
「了解だ! 信じてるぞ! 立て、アイン!」
一馬の命を受けて、アインが岩をガラガラと払いつつ立ち上がる。
右腕を失った以外は特に目立った損害は無い。
「ニーヤ! お前のタイミングで構わない! 拘束魔法を!」
ひゅんひゅんとミスリルスネークの周囲を飛ぶニーヤへ叫ぶ。
するとニーヤは青白く輝く足で、ミスリルスネークの頭を蹴飛ばすと、断崖の上へ降り立った。
「拘束魔法照射っ!」
ニーヤの声が降り注ぎ、現出した青い魔法陣がミスリルスネークへ飛んで行く。
距離が縮まるたびに拡大する魔法陣は鋼の蛇へぶつかり、紫電を発生させながら、その場へ釘付けた。
「やって、カズマ!」
「ヴォォォォ!!」
駆け出したアインは唸りを上げて、拘束したミスリルスネークの胴へバンカーを叩きつける。
ここまでは先ほどと一緒。
すると隣に立つドラグネットから赤い輝きが迸った。
桜色の唇が震えだし、祈りの言葉を紡ぎだす。
「時に厄災を、時に叡智を授けし偉大なる炎の力! 我の力を贄に、鍵たる言葉を持って力を貸してたもう! 燃え立つ炎の前に、汝ら暗黒、影残さず! 余さず消しとべぇ! ――ファイヤエクスプロージョン!」
叩きつけたバンカーが赤く輝いた。
ミスリルスネークが奇声を上げ、内側から輝きが漏れ出す。
「これでジ エンド」
ドラグネットがダボダボの袖から丸い手を出して指を鳴らす。
同時に巨大なミスリルスネークが木っ端みじんに吹き飛び、爆風が砂塵を巻き上げる。
強敵は細かな魔法上金属の欠片となって、雪のように降り注ぐのだった。
「なーっははは! どーだ、ドチビにカズマ! この超天才ゴーレム使いであり、魔法使いである、ドラグネット=シズマン様の実力を!」
「確かに凄い。ありがとう。助かった」
「でしょでしょ? なははは!!」
「だけどな……」
「ん?」
敵は倒したものの、地面には新しい大きな穴が空いていた。
坑道は再び瓦礫で塞がれ作業はすべて振り出しに戻る、である。
「ミスリルスネークを倒したことは称賛しましょう。ですが、もっと威力を抑えることもできたはずです」
「い、良いじゃん! 倒せたんだからぁ!!」
降り立ったニーヤが冷ややかにそういうと、ドラグネットは眉間に皺を寄せて対抗を始める。
喧々囂々のもうだいぶ慣れたニーヤとドラグネットのじゃれあい。
それをみてほっこりした気分の一馬は、キャンキャン吠え続けている二人の頭へポンと手を添える。
「まっ、やっちまったもんは仕方がない。作業再開するぞ。頼りにしてるぜ、ドラ!」
「やってやろうじゃない! この超天才ドラグネット様のゴーレムがちょちょいのちょいで、片付けぐらいしてやるもん!」
案外ドラグネットはいい奴なのかもしれない、と思うカズマなのだった。
●●●
とりあえず、瑠璃とドラグネットから右腕の応急処置を受けたアインは、鉱山での瓦礫撤去作業を再開した。
依頼主も、ミスリルスネークが現れてしまったらばと、開けてしまった大穴や、更に崩れた坑道は、綺麗にするという条件で許してもらえた。
「ニーヤ邪魔だぁー!」
「うわっ! ドラ! 危ないじゃないですか! もっと落ち着いて作業してくださいっ!」
「へへーん」
なんだかんだで、すっかり打ち解けたドラグネットは積極的に作業をこなしている。
「みんな、食事にしよう!」
「待ってましたぁ! 瑠璃のお肉美味しいんだよねぇ!」
「こら、ドラ! 走っちゃダメですっ!」
「ニーヤも、足元気をつけろよぉ」
もちろん食事も一緒である。なんとなく、父親とか、ペットの飼い主とかの気持ちが今ならわかるような気がする。
ニーヤも、ドラグネットへの態度がそこはかとなく柔らかくなっているのは、心を許したためか。
作業は夜通しで、しかし楽しく続いて行く。
そうして朝日が鉱山の向こうから昇った頃、最後のがれき撤去が完了した。
「たはー! つっかれたぁー! ねむぃー!」
元気なドラグネットもさすがに疲れたのか、ぺたりと地面へ座り込む。
そんな彼女へ一馬は歩みより、ポケットへ手を忍ばせる。
「お疲れ、ドラ。ほんと色々助かったよ」
「ふふん! ドラグネット様の偉大さを思い知ったか!」
「ああ、思い知った思い知った。で、だな……」
一馬はポケットの中身をドラグネットへ差しだす。
それをみて、彼女は真っ赤な瞳を丸く見開いた。
「えっ!? 金貨!? しかも2枚!? なんで!?」
アルトア〇ゼンw
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