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二章
ドラグネット=シズマン、いい子になる
しおりを挟む「ここにいるドラゴンゾンビは、ずっと昔に攻めてきた魔族の将軍のペットのドラゴンが変化したやつらしいの」
「そ、そうなんだ。そいつは厄介だな?」
「うん。でも、きっとカズマのゴーレム……アイン、だっけ? なら大丈夫! なんてったって、あたしのギルバートを何度も倒した凄いゴーレムなんだから!」
「ドラがそういうんじゃ、安心だな……」
「でしょでしょ? へへん!」
「でさ、なんでずっと手繋いでるの?」
一馬がドキドキしつつそう聞くと、ドラグネットは八重歯を覗かせ、にっこりと微笑み、
「だってあたし、カズマ大好きだもん! 大好きになっちゃんたんだもん!」
「なにぃ!?」
一馬の素っ頓狂な大絶叫が響き辺り、ニーヤは眉をピクリと揺らした。
後ろにいる瑠璃は、どんな顔をしているのかよくわからない。
「最初はぁ、いっつも邪魔するし、嫌な奴だって思ってたけどぉ、優しいしぃ、頼りになるしぃ、アインもカッコいいから!」
「突然だな……」
「計算してできる恋なんてない! ってパパが言ってた! ママのこともいきなり好きになったっていってたし、これが恋だよ! 恋ってやつ! カズマぁ~!」
ドラグネットは腕へ身体ごと引っ付いてきた。
そこはかとなく柔らかい胸のなにがしが腕に押し付けられている。
いつもだぼだぼな格好で身体のラインが良くわからず、さらに子供のような見た目なので侮っていた。
「ちなみにドラって、幾つなの?」
「えっと、13……14だったかな?」
「その見た目で13か14ですか。随分と貧相ですね」
ニーヤは鋭くそういうと、ドラグネットは子供じみたアッカンベーをしてみせる。
しかしニーヤのことだから、蹴飛ばすぐらいすると思ったのだが、
「なんかニーヤ大人しいけど、どしたの?」
「まぁ、そうせざるを得ないと言いますか……」
「?」
「敵意をその……感じないのです。今のドラグネットから……マスターへの敵意が無い相手には手出しができない仕様なんです……」
「あは! ニーヤもあたしのこと信じてくれてるんだ! ありがとっ!」
満面の笑みを浮かべるドラグネットをみて、ニーヤの頬がわずかに緩んだ。
「マスターにくっ付いてるんでしたら、ちゃんと御身の防衛を頼みましたよ?」
「わかってるって。カズマぁー!」
「ドラ、そろそろ目的地だ。その状態ではいざという時、一馬君がアインを操るのを阻害してしまう。少し離れてはくれないだろうか?」
瑠璃がいやに冷静な声でそういうと、ドラグネットは「それもそっか! またあとでくっつかせてねぇ!」などと言って、走り出す。
「追います! マスターはごゆっくりと! ドラ! 単独行動はだめですっ! 危険です!」
なんだかんでニーヤはドラグネットを心配しているのか後を追って先行してゆく。
「先輩、ありがとうございました。たすかりました」
「いや……助かったと思ってくれているのなら良かった。先を急ごう」
かくして一馬たちは目的地である"廃都市“を見下ろせる丘の上へ到着した。
かつてはソロシップ州の中心都市だったようだが、十数年前に魔族の襲撃を受けて崩壊したところらしい。
未だ魔族の痕跡が多く危険なところらしい。しかし様々なアイテムなどがそのまま放置されている。特に力のあるものは風化もしないため、ここで獲得できるものの多くは有益なものが多く、冒険者にとっては格好の狩場なのである。
「ここにパパが……」
そう口にしただけで、ドラグネットは赤い瞳に涙を滲ませた。
それだけドラグネットが家族を愛しているのだと、一馬は感じる。
不思議と、現世への想いは少ないが……しかし今は家族ともいえる、瑠璃やニーヤが、同じ状況になったらどう感じるか。
想像しただけで、胸が掻きむしりたくなるほど、痛くなる。
そしてこの気持ちは、今のドラグネットと同じはず。
「行こう、ドラ! お父さんを探そう!」
「うん! ――って! あ――っ!!」
「お、おいドラ!?」
ドラグネットはいきなり大声を上げると、廃都市を目指して丘を駆け下る。
「あたし、もう良い子だから! 一馬の言う通り良い子にするから! だから見ててねっ!」
シークレットブーツを脱いだドラグネットは案外すばしっこい。
どうやら丘の上から見えた、砂埃を目指して進んでいるらしい。
既に目の前にドラグネットの背中は無い。
「あ、あいつ、どこまで……!」
「か、一馬君、待ってくれ……これ以上走るのは……!」
「マスター、こちらです!」
疲れ知らずのホムンクルスであるニーヤは先行し、路地を指さす。
息も絶え絶え、一馬と瑠璃がそこへ進むと、黒く大きな影が二人を覆った。
目前に佇んでいたのは、岩でできた巨人のゴーレム。
その間に堂々と立つドラグネット。更にその後ろには腰を抜かした男の冒険者が二人。
よく見てみれば、先日ドラグネットの依頼書を破り捨てようとした二人である。
「ド、ドラグネット!? どうしてお前が……?」
「パパを探してるんだからいるに決まってるじゃん! 下がってて、ここはあたしが……っと、その前に! すぅー……はぁ……よし……!」
何が良しなのか、ドラグネットは薄い胸を堂々と張って、「ふははは!」と高笑いを上げる。
「我こそは炎の中より生まれし、偉大なゴーレム使い! ドラグネット=シズマン! 主を持たない、可哀そうなゴーレム! このあたしが、地へと還してあげる!」
ゴーレムは音もなく拳を落とした。
対するドラグネットは唇からまるで早送りのような言葉を紡ぎだす。
そしてだぼだぼな袖から腕を出すと、そこは炎のような輝きを宿していた。
「傀儡召喚(サモンゴーレム)!」
ドラグネットが赤い輝きを帯びた石ころは、すぐさま"鳥のような形"に変化し、岩巨人へ襲い掛かった。
巨人は鳥を払い除けようとするが、太い腕はからぶるばかり。
そして一羽の土塊鳥が、巨人への頭へぶつかった。
ドンっ! とまるで爆弾のように破裂し、その爆風はゴーレムの頭を丸ごと吹っ飛ばす。
途端、ゴーレムに罅が入って崩れ出し、ドラグネットの宣言通り、土になって大地へ還る。
ドラグネットはくるりと踵を返して、とことこ冒険者たちのところへ向かってゆく。
「ゴーレム倒してあげたからお願いあるんだけど」
「な、なんだよ? 金なんて払わねぇぞ! だいたい俺たちだってゴーレムくらい」
「そうはみえないなぁ。だったらなんで逃げ回ってたの?」
「ぐっ……」
「まぁ、良いや。お金なんていらないよ! 代わりにさ……あたし、いい子?」
ズズッと迫って、そんなことを聞くドラグネットに、冒険者たちは首を傾げる。
「だから、いい子? 良くやった? ねぇねぇ!」
「あ、ああ、まぁ、確かに助かったわな……」
「それっていい子ってことだよね!?」
「ま、まぁ、言いようによっては……」
「きゃはー! カズマー! あたしいい子だってよぉ! そう言ってもらえたよぉー!」
ドラグネットはその場でぴょんぴょん跳ねながら、身振り手振りで喜びを表す。
そんなドラグネットへ向けて、一馬はアインを突貫させた。
「ヴォォォォー!」
アインはドラグネットの頭上で、拳を突き出し、新たに出現したゴーレムの頭を叩き潰した。
しかしさらに背後から、うじゃうじゃとたくさんのゴーレムが迫ってきている。
「ドラ! ニーヤ! 来るぞ!」
「了解です!」
「おーう!」
アインの左右へニーヤとドラグネットが並び、迫るゴーレム集団の前へ立つ。
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