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【最終章:ベルナデットの記憶】
★ゼラEND 【家族と共に】
しおりを挟む「クルス先輩……」
涙で霞んだ視界の中にはゼラがいた。
今では素直に愛情を向けてくれている彼女は、今のクルスにとって、ありがたい存在だった。
「辛いなら良いっす。ウチの胸を貸すっす」
ゼラは彼をそっと抱き寄せた。クルスもまたゼラへ身を委ねる。
夕日が水平線の向こうへ沈み、夜が訪れる。
クルス達は絶海の孤島へロナを手厚く葬ると、そこを後にするのだった。
⚫️⚫️⚫️
東の魔女は滅び、聖王国には再び平穏な日々が訪れた。
誓いを交わしたクルス達だったが、ロナを失ったことにより、それぞれの気持ちに隔絶が生じる。
セシリーはフェアと、悲しみに暮れるベラを連れて、別れの言葉もなく樹海へ帰ってゆく。
「ゼラ、先輩のことをよろしくね……」
ビギナもまた寂しそうにそう言って、故郷へ帰ってゆく。
「クルス先輩、よかったらウチと一緒にビムガン自治区へ行かないっすか? とと様もきっと快く迎えてくれると思うっす。ウチも先輩のために頑張るっすから」
ゼラがそっとクルスの手を握り締めてくる。
クルスはゼラに連れられて、心の傷を癒すためにビムガン自治区へ向かってゆく。
そして5年の月日が流れた――
「ぱぱーたすけてぇ! ままがおにー!!」
畑で根菜の収穫をしていたクルスへ、そろそろ三歳を迎える、娘が飛びついてきた。
「くおぉら、セシリー! パパに助けを求めようたってそうはいかないっす!!」
出産間近で大きく膨らんだお腹を抱えながらも、ゼラは現役だったころと変わらずの速度で畑にやってくる。
「今回はなんだ? 事情を聞こう」
「えっとね、ままがね、べんきょうべんきょうばっかりいうの! でもね、今日はとーってもお天気いいからセシリーおそとであそびたいのぉ!」
「なんだそんなことか……いいじゃないかゼラ、たまには」
クルスがそういうと、ゼラは眉間にシワを寄せて、
「そうやってパパはいっつもセシリーに甘々! そんなのダメに決まってるっす! 」
「あまり大声を出すな。ベラの出産に響くだろ?」
「大きな声を出させるパパが悪いっす! お腹のベラもきっとそう思ってるっす!」
「そうか……」
ゼラは長い耳を持っているくせに、聞き耳は立ててくれらないらしい。
ならばできること、すべきことはただ一つ。
「ママから逃げるぞ、セシリー!」
「おー!」
「あ、ちょっと待つっす!!」
クルスは娘のセシリーを小脇に抱えて走り出した。
そうして始まった追いかけっこ。今ではすっかり日常となった、クルスと妻のゼラ、そして長女のセシリーとのやりとりである。
婚姻の契りを交わしてゼラは少し口煩くはなった。昔ほど可愛げはなくなった。
それでも今のクルスにとって大事な人であるのは今も変わりはない。何故ならばゼラは一番辛い時に、ずっとそばにいて、癒してくれたから。彼女のおかげで今のクルスがあった。
ゼラにはこれからも一生頭が上がらないことだろう。
ロナを失った傷跡はまだ時々クルスを苦しめている。
しかしいつまでも立ち止まっている訳には行かない。
自分を立ち直らせるために、家族になってくれた、ゼラのためにも。
「ちぇすとー!」
「がふっ!」
「わー!!」
ゼラのドロップキックがクルスの背中に炸裂し、娘のセシリーは宙を舞う。
クルスは二度と自治区を離れることなく、妻のゼラと娘のセシリー、後に産まれる次女のベラと共に過ごし、生涯をこの地で終えるのだった。
ゼラEND
*次の更新がトゥルーエンドです。お楽しみに。
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