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プロローグ 勇者召喚
第二十九話 才能とダンジョンと⑦
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思わず颯太は扉の前で立ち止まった。
先程の自分の発言に少し反省してしまう。
(この世界にもフラグっていう概念はあるのか?)
颯太はここまでのダンジョンの階数を思い出して、ここが丁度百層目になることに気が付き、思わず苦笑いしてしまった。
ふと彼は、そっと扉に手を掛ける。
(…これもか)
この世界に来て主にダンジョン内で学んだことなのだが、どうやらゲームでいうボス部屋のような場所の扉は、単純に押したり引いたりするのではなく、魔力を流して扉に刻まれた魔法陣を解く必要があるらしい。
つまりは、魔力量が少なすぎたりするとここで詰みなわけだ。
ここに来るまで似たような扉がいくつかあった。
それぞれの魔法陣はどれも微妙に違うが、慣れればどうということはない。
颯太は手慣れた様子で自分の魔力を動かし、さっさと魔法陣を解いて扉を開け放った。
ちなみにこれらの扉についている魔法陣は、かなり複雑でどんなに魔力量が多かろうと、知識とそれなりの頭脳、超精密なコントロールがなければ手動で開けられるものではなく、実は近くの宝箱に鍵がある。
この様子を見て、どこかのとある神様が頭を抱えたまま華麗なブリッジを決めるという奇行に走ってしまっているのだが、それを彼が知る由はない。
扉の先に進むと、そこはレイドナルク城の大広間よりも広くガランとしていた。
見渡す限り何もない。
ただ、ダンジョンに入ってからずっと眺め続けているのと同じ材質であろう壁に囲まれている。
よく目を凝らすと、入ってきた方向とは反対側の壁に、ポツンと似たような扉が取り付けられているのが見えた。
多分あれがゴールだろう。
颯太はスッと目を細めながら、周囲への警戒を強める。
そして、彼がゆったりとした足取りで一歩前へ踏み出したその瞬間、
「!」
肌を刺すような鋭く強い殺気を感じた。
反射的に颯太は腰の長剣を抜きさり身構える。
…ズガァァァァァンッ‼
一拍もしない内に、目の前に見たことのない大きな魔物が落ちてきた。
「上手い話には必ず裏がある」というのは、一般会社の営業部に勤務する父の教えだっただろうか。
漸く現れた、戦いがいがありそうな敵を前に、颯太はニヤリと口の端を動かして微笑し、常人が聞いたら卒倒してしまいそうな程恐ろしい雄叫びを上げている、ボスらしき魔物の観察を始めた。
(…厄介だな、ドラゴンか)
黒光りする鱗、ギラギラと好戦的に輝く金色の瞳、尖そうな白い牙に黒い爪。
ゲームなどでは定番中の定番モンスター、ドラゴン。
ここも異世界ならいるんだろうなぁ、とどこか他人事のように考えていた時もあったが、実際に遭遇したのはこれが初めてだ。
ゲームでの認識をそのまま持ってくると、ドラゴンはかなり強い部類に入る魔物だ。
大きく立派な羽があり、上から降ってきた所を見ると飛ぶのだと容易に想像出来る。
これでは劣勢時の退却は困難だろう。
入ってきた扉から逃げるという選択肢は、最初から彼の頭にはないらしい。
そうしている内に、ドラゴンのその恐ろしい眼が颯太の姿を捉え、その四肢が戦闘態勢に入る。
「やっと出て来た手強そうな相手だ。存分に暴れさせてもらおう」
ドラゴンが自身の足に力を溜め、その魔力がある一点に集中している。
颯太はすぐさま大きく横に飛んだ。
次の瞬間、先程まで彼が居た場所が業火に焼き払われた。
ドラゴンのブレスだ。
回避したにも関わらず、颯太の身体には熱風と余波が伝わってくる。
「うお、凄ぇ」
それでも焦る様子もなく、颯太は反撃に出た。
横に飛びながらすぐ近くの壁を思い切り蹴り、一気にドラゴンの足元に踏み込んで持っている長剣で足の腱を斬りつけた。
「はあぁ!」
ガキィン!
「!」
手応えに違和感を感じ、素早くドラゴンと距離を取る。
長剣を見ると上から半分の刃が折れていた。
「…マジか」
流石にドラゴンの皮膚がここまで硬いとは予想していなかった颯太は目を丸くした。
ドラゴンだし柔らかくはないだろうと思ってかなりの力で斬りつけたのだが、どうやら剣の方が保たなかったらしい。
尤も、単なる鉄で作られた長剣でドラゴンと戦おうというのが自殺行為に等しいのだが、生憎颯太はこれしか持っていなかった上にそんな事知らない。
(どうすっかな…)
武器を失った颯太は、迫りくるドラゴンの猛攻を躱し、時には折れた剣で往なしながら考える。
魔法で押し切ることも出来なくはないが、それではつまらない。
しかし武器は、残りあと鉄の短剣しかない。
これでは敵に一発ダメージを入れられれば良い方だ。
素早くマジックバッグから短剣を取り出して、颯太はドラゴンの懐へ飛び込んだ。
狙いは、生き物にとって封じられればかなりのハンデとなる部位。
颯太は一瞬でドラゴンとの距離を詰め、大形な身体を駆け上がると顔に登り、その左の眼に短剣を突き立てた。
『グアァァァァァァァァァァ‼』
ドラゴンは痛みに悶え、顔の上に乗る忌々しい物を振り落とそうと懸命に藻掻く。
颯太は振り落とされる前に、魔法で氷の刃を作り出し今度は右の眼に刃を突き立てる。
またしても雄叫びを上げるドラゴン。
さっきよりも激しく暴れるので、今度こそ振り落とされた颯太。
衝撃を受けないよう上手く着地して、バックステップで距離を取る。
怒り狂ったドラゴンは、真っ暗になった視界の中自分の両眼を潰した敵の気配を探るが、颯太は気配を消している。
気配も辿れないことが更にドラゴンの怒りに拍車をかけ、ドラゴンはもう見境なくブレスを連発し始めた。
だが、狙いも定まっていない単調な攻撃では、この世界に来てすぐ【人類最強】の称号をつけられた颯太を仕留めることは不可能だ。
颯太は先程より大きめの氷の刃を作り出し、ブレスを掻い潜ってドラゴンの真上に飛び上がる。
「終わりだ」
思い切り振り下ろした氷の刃は、ドラゴンの心臓を正確に貫く。
途端にその身体からは力が抜け、魔力の流れも経ち消えた。
「結構楽しめたよ」
ドォォォォォン!
ドラゴンの身体が崩れ落ちた。
颯太は氷の刃から手を離して、ドラゴンの大形な身体から飛び降りた。
そして振り返りもせず、出口らしき扉に向かおうとした時、誰かに呼び止められた。
『少年や、そこの少年』
「?」
声がした方に振り返るが、そこには先程倒したドラゴンの死体以外、何も誰も居ない。
気のせいかとまた歩き出した。
『待っておくれ、少年』
さっきと同じ声が焦った様子で、より明確に聞こえてきた。
颯太は、今度は振り返らずに答えた。
「さっきから誰だ?俺を呼ぶのは」
『おお、良かった。聞こえておったのか』
声は颯太に聞こえていると分かって安堵したのか嬉しそうだ。
だが颯太はあくまで素っ気なく対応する。
「用がないならもう行くぞ」
『ああ、待っておくれ少年!我ならお主の後ろにいるドラゴンじゃよ!』
「はぁ?」
思わず振り返ったが、絶命したドラゴンが動いた様子はない。
首を傾げていると、ドラゴンの死体が輝きだした。
何事かと身構えるが、その光はやがて収まり死体は跡形もなく消え去っていた。
代わりに人の良さそうな青年が立っていた。
「人間…じゃなさそう、だな」
よく見ると少し透けている青年はにこやかに言った。
『まあな。我の肉体は先程お主に倒されたことで消え去ったしの』
どうやら先程のドラゴンらしい。
「人間だったのか?」
『いや、我は龍神と呼ばれるものでな。人化することなぞお手の物じゃよ』
「…神様だったのか…」
颯太は予想の斜め上をいく回答に、しばし頭を抱えてしまう。
自分神様倒したのか、と。
一方、全く気にしていない様子の龍神は、カッカと笑いながら颯太の様子を眺めていた。
先程の自分の発言に少し反省してしまう。
(この世界にもフラグっていう概念はあるのか?)
颯太はここまでのダンジョンの階数を思い出して、ここが丁度百層目になることに気が付き、思わず苦笑いしてしまった。
ふと彼は、そっと扉に手を掛ける。
(…これもか)
この世界に来て主にダンジョン内で学んだことなのだが、どうやらゲームでいうボス部屋のような場所の扉は、単純に押したり引いたりするのではなく、魔力を流して扉に刻まれた魔法陣を解く必要があるらしい。
つまりは、魔力量が少なすぎたりするとここで詰みなわけだ。
ここに来るまで似たような扉がいくつかあった。
それぞれの魔法陣はどれも微妙に違うが、慣れればどうということはない。
颯太は手慣れた様子で自分の魔力を動かし、さっさと魔法陣を解いて扉を開け放った。
ちなみにこれらの扉についている魔法陣は、かなり複雑でどんなに魔力量が多かろうと、知識とそれなりの頭脳、超精密なコントロールがなければ手動で開けられるものではなく、実は近くの宝箱に鍵がある。
この様子を見て、どこかのとある神様が頭を抱えたまま華麗なブリッジを決めるという奇行に走ってしまっているのだが、それを彼が知る由はない。
扉の先に進むと、そこはレイドナルク城の大広間よりも広くガランとしていた。
見渡す限り何もない。
ただ、ダンジョンに入ってからずっと眺め続けているのと同じ材質であろう壁に囲まれている。
よく目を凝らすと、入ってきた方向とは反対側の壁に、ポツンと似たような扉が取り付けられているのが見えた。
多分あれがゴールだろう。
颯太はスッと目を細めながら、周囲への警戒を強める。
そして、彼がゆったりとした足取りで一歩前へ踏み出したその瞬間、
「!」
肌を刺すような鋭く強い殺気を感じた。
反射的に颯太は腰の長剣を抜きさり身構える。
…ズガァァァァァンッ‼
一拍もしない内に、目の前に見たことのない大きな魔物が落ちてきた。
「上手い話には必ず裏がある」というのは、一般会社の営業部に勤務する父の教えだっただろうか。
漸く現れた、戦いがいがありそうな敵を前に、颯太はニヤリと口の端を動かして微笑し、常人が聞いたら卒倒してしまいそうな程恐ろしい雄叫びを上げている、ボスらしき魔物の観察を始めた。
(…厄介だな、ドラゴンか)
黒光りする鱗、ギラギラと好戦的に輝く金色の瞳、尖そうな白い牙に黒い爪。
ゲームなどでは定番中の定番モンスター、ドラゴン。
ここも異世界ならいるんだろうなぁ、とどこか他人事のように考えていた時もあったが、実際に遭遇したのはこれが初めてだ。
ゲームでの認識をそのまま持ってくると、ドラゴンはかなり強い部類に入る魔物だ。
大きく立派な羽があり、上から降ってきた所を見ると飛ぶのだと容易に想像出来る。
これでは劣勢時の退却は困難だろう。
入ってきた扉から逃げるという選択肢は、最初から彼の頭にはないらしい。
そうしている内に、ドラゴンのその恐ろしい眼が颯太の姿を捉え、その四肢が戦闘態勢に入る。
「やっと出て来た手強そうな相手だ。存分に暴れさせてもらおう」
ドラゴンが自身の足に力を溜め、その魔力がある一点に集中している。
颯太はすぐさま大きく横に飛んだ。
次の瞬間、先程まで彼が居た場所が業火に焼き払われた。
ドラゴンのブレスだ。
回避したにも関わらず、颯太の身体には熱風と余波が伝わってくる。
「うお、凄ぇ」
それでも焦る様子もなく、颯太は反撃に出た。
横に飛びながらすぐ近くの壁を思い切り蹴り、一気にドラゴンの足元に踏み込んで持っている長剣で足の腱を斬りつけた。
「はあぁ!」
ガキィン!
「!」
手応えに違和感を感じ、素早くドラゴンと距離を取る。
長剣を見ると上から半分の刃が折れていた。
「…マジか」
流石にドラゴンの皮膚がここまで硬いとは予想していなかった颯太は目を丸くした。
ドラゴンだし柔らかくはないだろうと思ってかなりの力で斬りつけたのだが、どうやら剣の方が保たなかったらしい。
尤も、単なる鉄で作られた長剣でドラゴンと戦おうというのが自殺行為に等しいのだが、生憎颯太はこれしか持っていなかった上にそんな事知らない。
(どうすっかな…)
武器を失った颯太は、迫りくるドラゴンの猛攻を躱し、時には折れた剣で往なしながら考える。
魔法で押し切ることも出来なくはないが、それではつまらない。
しかし武器は、残りあと鉄の短剣しかない。
これでは敵に一発ダメージを入れられれば良い方だ。
素早くマジックバッグから短剣を取り出して、颯太はドラゴンの懐へ飛び込んだ。
狙いは、生き物にとって封じられればかなりのハンデとなる部位。
颯太は一瞬でドラゴンとの距離を詰め、大形な身体を駆け上がると顔に登り、その左の眼に短剣を突き立てた。
『グアァァァァァァァァァァ‼』
ドラゴンは痛みに悶え、顔の上に乗る忌々しい物を振り落とそうと懸命に藻掻く。
颯太は振り落とされる前に、魔法で氷の刃を作り出し今度は右の眼に刃を突き立てる。
またしても雄叫びを上げるドラゴン。
さっきよりも激しく暴れるので、今度こそ振り落とされた颯太。
衝撃を受けないよう上手く着地して、バックステップで距離を取る。
怒り狂ったドラゴンは、真っ暗になった視界の中自分の両眼を潰した敵の気配を探るが、颯太は気配を消している。
気配も辿れないことが更にドラゴンの怒りに拍車をかけ、ドラゴンはもう見境なくブレスを連発し始めた。
だが、狙いも定まっていない単調な攻撃では、この世界に来てすぐ【人類最強】の称号をつけられた颯太を仕留めることは不可能だ。
颯太は先程より大きめの氷の刃を作り出し、ブレスを掻い潜ってドラゴンの真上に飛び上がる。
「終わりだ」
思い切り振り下ろした氷の刃は、ドラゴンの心臓を正確に貫く。
途端にその身体からは力が抜け、魔力の流れも経ち消えた。
「結構楽しめたよ」
ドォォォォォン!
ドラゴンの身体が崩れ落ちた。
颯太は氷の刃から手を離して、ドラゴンの大形な身体から飛び降りた。
そして振り返りもせず、出口らしき扉に向かおうとした時、誰かに呼び止められた。
『少年や、そこの少年』
「?」
声がした方に振り返るが、そこには先程倒したドラゴンの死体以外、何も誰も居ない。
気のせいかとまた歩き出した。
『待っておくれ、少年』
さっきと同じ声が焦った様子で、より明確に聞こえてきた。
颯太は、今度は振り返らずに答えた。
「さっきから誰だ?俺を呼ぶのは」
『おお、良かった。聞こえておったのか』
声は颯太に聞こえていると分かって安堵したのか嬉しそうだ。
だが颯太はあくまで素っ気なく対応する。
「用がないならもう行くぞ」
『ああ、待っておくれ少年!我ならお主の後ろにいるドラゴンじゃよ!』
「はぁ?」
思わず振り返ったが、絶命したドラゴンが動いた様子はない。
首を傾げていると、ドラゴンの死体が輝きだした。
何事かと身構えるが、その光はやがて収まり死体は跡形もなく消え去っていた。
代わりに人の良さそうな青年が立っていた。
「人間…じゃなさそう、だな」
よく見ると少し透けている青年はにこやかに言った。
『まあな。我の肉体は先程お主に倒されたことで消え去ったしの』
どうやら先程のドラゴンらしい。
「人間だったのか?」
『いや、我は龍神と呼ばれるものでな。人化することなぞお手の物じゃよ』
「…神様だったのか…」
颯太は予想の斜め上をいく回答に、しばし頭を抱えてしまう。
自分神様倒したのか、と。
一方、全く気にしていない様子の龍神は、カッカと笑いながら颯太の様子を眺めていた。
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皆様ありがとうございます😘
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めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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