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第二章 藍と学校

100. こころはじまり Beginning of the World

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「殺すのはいい……戦いだからな……だが……。
 ……誰だ?彼奴あいつは……俺の部下は……ジョンウは……誰にはずかしめめられた……?」

「……ミルヒシュトラーセ家の人間……!!
 アイ――」

 うずくまったハナシュが顔から手を離すと……その口角はつり上がり、目はニヤニヤとギラついていた。
 
「――“アイ・ミルヒシュトラーセ”でございます……!!」

 ◇◆◇

「主犯は“アイ・ミルヒシュトラーセ”!!共犯は“クレジェンテ・カタルシス”です……!!

 ウチが見たのは、アイ・ミルヒシュトラーセが、わらいながら、ソンジュの死体を……!!弄んで……!!
 
 クレジェンテ・カタルシスはそれをヘラヘラわらいながら見ていたんです……!!
 あまりにも恐ろしゅう光景で……まるで地球人じごくじんのようでした……!!」

 地蔵のように押し黙って聞いていたザミールが問う。

「資料によるとアイ・ミルヒシュトラーセは……
 “この世のものとは思えないほどうつくしい顔”に、“大きく青い目”、“長い黒髪”だったな。
 ……もう一人の特徴は?」

「青い髪の獣神体アニムスの男です!
 音のヘルツ使いで、蝙蝠コウモリの髪飾りをつけています……。」

「分かった。」

 それだけ言うと、ザミールはしっかりとした足取りで野営地のテントを出ていった。

 ハナシュが後ろでほくそ笑んでいるとは知らずに――。

 ザミールは激情を吐き出す。

「アイ・ミルヒシュトラーセ……!!」

 ◇◆◇

「――アイちゃん!!危ない……!!」

 アイに迫った憎しみの矢を、クレジェンテが音波で弾く。

「あ……あり、がとう。……クレくん。」

 ラアルが言う。

「アイ!貴女周りの皆のことばかりじゃなくて、自分のことももっと気にかけなさい!!
 皆を援護することや癒やすことに、こころを裂きすぎよ!
 
 ――もっと自分も大事にして!!」

 アイはそれはこの戦闘のことだけを言っていると受け取ったが、ラアルはアイの生き方にもそう言いたかった。

 ――ラアルは、この“世界には私が”必要であるという確かな足取りで生きていた。
 
 ……アイは、“私にはこの世界が”必要であるという不確かな足取りで生きていた。

 ◇◆◇

 突如今までの物とは比にならないほど強いヘルツの光線がアイたちの領域に侵入してきた。それを悟ったのは、音波でエコーロケーションをしていたクレジェンテと心を配っていたアイだった。

 そして、クレジェンテ目がけて一直線に飛んできたそれに、反応できたのはアイただ一人だった。

「――クレくん!!」

 バットクレジェンテに飛びつき、押し倒す。

 先刻さっきまでクレジェンテがいた場所の地面がえぐれている。

 アイは考える。

 ――ここまで強力なヘルツ……!!
 それに何より……明らかに殺す気だ……!!

「……クレくん!!……無事!?」

 クレジェンテは驚愕した様子で答える。

「あ、あぁ……なんとかね、ありがとうアイちゃん……。」

 激情のヘルツによって増幅された叫び声が、襲撃者たちが来た方から聞こえた。

「“クレジェンテ・カタルシス”!
 そして……“アイ・ミルヒシュトラーセ”!!!」

 アイの瞳には夜の暗闇の奥に微かに人影が見えた。ザミールが叫ぶ。

「――オマエらを……殺す!!必ず殺す!!!」

 ◇◆◇

 まずい、どうする?わたくしはどうすれば!?
 あの明らかに他の敵とは違うレベルの手練れは、ロイヤルの騎士ナイト!?
 
 ……いや、そんな事よりクレくんとわたくしが狙われている。わたくしはどうでもいいが、クレくんが狙われているのはまずい。しかも殺意のヘルツを向けられている。

 このままじゃあみんなも巻き込まれる――!!

 どうする!?どうすればクレくんを……皆を逃がせる!?どうすればいい!?どうする!?
 考えろ!!考えろ考えろ考えろ!!!

 ――!!――そうだ――!

 ◇◆◇
 
 アイは喉に手をやって自分の首を絞めるような格好をとった。そしてヘルツを喉に流し込み叫ぶ。

「キサマ!!狙いはわたくしだろう!?
 我が名は“アイ・ミルヒシュトラーセ”!!!
 わたくしが狙いなら、追いかけてこい!!」

 アイが脚にヘルツをこめ、脆弱な身体で速い移動に耐え為に、身体中にヘルツの白い煙を纏う。そして、地面を蹴り飛ばし大地を置き去りにする。

 丁度ナウチチェルカが引いた緑の左側を、皆に危険が及ばぬように、皆の逃げ道の逆方向へ一筋の煙となり跳んでいく。

 かげろうたちが皆焦ってアイを止めようとするが、目の前の敵でそれどころではない。

「アイ様!おやめください!!」

「アイくん!!帰ってきて!!」

「「アイちゃん!?」」

「アイ様!?」

 かげろうとはるひ、アルタークとクレジェンテ、そしてイダがアイを止めようと叫ぶ。

 ……が、王女だけはそのルビーの瞳とアイのサファイアの瞳でアイコンタクトを交わしていた。

「はぁ……本当に貴女って娘は……。
 皆!!冷静になりなさい!!アイは私たちを逃がすために強者つわものを引き付けてくれたわ!!
 
 ならアイのその想いに報いるために、さっさと目の前の敵雑魚どもを蹴散らして、逃げなさい!!救援を呼んでアイを助けに戻るの!!

 ――《これは“王女の命令”よ》!!!」

 ――……わたしは逃げずに、ここのかたがついたら直ぐにアイの向かった方へ飛び出していくけどね……。

 そのラアルの言葉で皆が眼の前の闘いへの集中力を取り戻した。

「……死んだら許さないからね……アイ……。」

 ◇◆◇

 白い煙が地面を跳躍しながら幾つも半円を描くようにドォンドォンと地面を蹴散らしながら進んでいく。

 後方から黒い煙ゴォォォと音を立て、空に一本の黒い線を引くように飛びながらアイに迫る。

 “地面を蹴って”跳躍する白い煙の線に、“空を”最短距離で黒い煙が追いすがる。

 そして追いついた時には、その二つの煙の線はあざなえる縄のようにグルグルとお互いの周りを回りながらドォンという雷撃が落ちたような轟音とともに地面に墜落する。

 黒い煙は地面を滑りながらその勢いを殺し、完全に止まった時には煙の中からザミール・カマラードが現れた。

 ――黒い煙は決して空にほどけることはなく、黒い砂のような形となり、彼の周り揺蕩っていた。

 白い煙が衝突した大岩には大きな穴が空き、そこからしばらくチラチラと残煙が出てきていた。

 その穴から突然バッと右手が突き出てきて、岩の壁を摑む。こちらの白煙は消え去っていき、次第にアイがその姿を現した。

 影と白い煙の中から白い肌、花の顔、うるしの黒髪が流れいでるその“うつくしさ”は、この世のものとは思えないほどだった――。

 並大抵の人間ならこの時点でアイにこころから心酔していただろう、しかしザミールの“誠実さ”はアイの“うつくしさ”と引けを取らないほどだった。特にその仲間を、部下を愛する気持ちは――。

 ◇◆◇

「――何故、わたくしの友を狙う……?貴方がたの狙いがパンドラ公国の……ミルヒシュトラーセ家の没落なら、このわたくし……アイ・“ミルヒシュトラーセ”だけを狙えばいいだろう……?」

 黒い砂がザミールの周りでバチバチと音を立てて暴れる。

「……黙れ。オマエとクレジェンテ・カタルシスは殺す。何があってもだ……!!」

 ピクッとアイの眉毛が動く。
 アイの後ろに大きく丸い、白い硝子のようなものが現れる。まるでアイに後光が差しているかのようだ。

「貴方がわたくしを殺して下さってもいいです。
 ……そうしたほうがみんな喜ぶ。
 この世のためにもなりましょう……。
 ですが――」

 ビキビキと音を立てて白い硝子にヒビが入り、
 ビキビキとアイの白い顔に血管が浮き立つ。

「――おれの友を殺すっつうんなら話は別だ。
 “善良でやさしいクレジェンテ”を殺そうとするような塵糞ゴミクソは。
 ……テメェみてぇなゲロカス野郎は……おれが殺す。」

「――黙れ、“誠実で実直なソンジュ”を……オマエらは……オマエは……!!」

 同じように自分の大事な人を思う、お互いの瞳が同じように、憎しみで黒く染まる。

「テメェ……その白い髪に、黒い砂……。
 ……“ザミール・カマラード”だな。
 パンドラ公国の反政府組織レジスタンスのリーダー、通称――

 ――砂漠の黒死病デシエルト・ペスト

「……そらぁオマエら権力側の人間が勝手につけた汚名だろうが……!
 俺にはがある……。
 
 ――テメェみてぇな“地球人あくま野郎”には名乗る名はねぇがな……。」

「そうかよ……おれにもオマエみたいな……。

 ――“人間野郎”に名乗る名はねぇよ……。」

「そうかよ……。この文学界リテラチュアで“誓い”を破ったらどうなるか……もう知ってるな?」

「あ゙ぁ゙……!?……んだ急に……あぁ、そういうことかよ……。いいぜぇ……のってやるよ。
 この世界で誓いを破った人間は、“心をうしなう”――」

「――あぁ……つまり、“散華”する。これは名乗りじゃあねぇぞ、誓いだ……テメェなんぞに名乗る名はねぇからな。」

「おれもだよボケが。」

「……この俺、“ザミール・カマラード”はここに誓う――」

「……このおれ、“アイ・ミルヒシュトラーセ”はここに誓う――」

「「――《眼の前の敵を、夜明けまでに》!!」」

 お互いが左腕を前に伸ばし、ヘルツを敵に向ける。
 
「「……じゃあ、まぁ――」」

 ……文学界リテラチュアの夜の闇の底で。
 
「「――死ね!!!」」

 ……こうして、今夜、二人の“人間”のうち、どちらか一人が必ず、心を散らす運命となった――。
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