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第二章 藍と学校
118. おれたちは、あいいれない。We Never share Our Love.
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アイは哀しそうに、眼では好敵手をみながら、口では家族への思いをこぼす。
「……“家族だから”……だから、わたくしは貴方が大好きですけど、反政府組織に与することはできないのです。
“家族だから”……だからわたくしは大好きな貴方と戦わないといけないんです。だって……彼らはわたくしの“家族だから”。」
アイは確かな信念と共に、言葉より雄弁な瞳で好敵手をみながら言う。
「……それだけで、たったそれだけでわたくしには“命をかけるに値する理由”なのです。
……“大好きな貴方と戦う理由”になるのです。」
◇◆◇
ザミールは哀しそうな、でも納得がいったようにゆっくりと立ち上がる。
「……確かになぁ……俺も未だ眠り続けてるお母様を守るためだったら、誰が相手でも、其奴のことをどんなに好きでも、戦うだろうな……。
あぁ……どうにもこの世は生きにくい。」
「『智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。』
……とわたくしが読んだ日系地獄文学者も言ってましたよ。」
「……地球人もたまにはいいこと言うなぁ……。
――だがそれも……“原罪”の一部だ……。
俺は認めない……!」
アイがとても徐に立ち上がる、立っているというには、背も縮こまり、膝に手をつき、頭も下がり、前髪がその瞳を隠すぐらいに垂れ下がっている。
しかし、その髪の間から覗くサファイアの瞳からは、闘志は失われていなかった。
「んじゃあ……まぁ、“夜明けまでにテメェを殺す”っつう誓いもあるし……やるかぁ……。」
「あぁ……“夜明けまでにお前を殺す”って誓いがな。」
「……死ぬのはお前だぜ?ザミール。」
「ふふっ……どうかな?アイ。」
◇◆◇
アイは動かない……。
いや、動けなかった、立っているのがやっとだったからだ。
視界も霞み、自分が立っているのかどうかもよくわかっていなかった。上から垂らした蜘蛛の糸のような心で自分の背中を引き上げて、無理やり姿勢を保っていた。
そうして、両腕も無理やり心の糸で引っ張り上げてファイティングポーズをとる。
奇しくもその格好は、他人の思惑にに操られて生きてきた、アイをの人生を表すような、傀儡人形のような……そんな姿だった。
「……こい……。」
ザミールがなんとか立っているアイを早く楽にしてやろうと、砂塵を纏い一直線にアイに突撃する――!
……アイの心臓をめがけて、一直線に……そしてザミールの手刀は、アイの胸を貫いた……。
「じゃあな、アイ・ミルヒシュトラーセ……類稀なる……“戦士”よ――。」
◇◆◇
アイの心が洞窟の天井に向かってほどけていく、ザミールがアイの胸から手を引き抜くと、心の糸の支えを失ったアイの身体は、前に倒れる。
アイはなんだかふわふわと揺蕩うような心地だった。そうしてふわふわと思った。
――死ぬときってこんな感じなのかなぁ……。
こうして、ザミールの《夜明けまでにアイを殺す》という誓いは達成され――
――アイ・ミルヒシュトラーセは死んだ。
◇◆◇
アイが引き付けてくれたザミール・カマラード以外の敵、その残党たちと戦っていたかげろう、はるひ……そしてラアルは何か胸騒ぎがした。
目の前の敵から決して視線は離さなかったが、視界の端で誰かの心が空にほどけていくのがみえた。
「アイ様……!」
「アイくん……?」
「……アイ……。」
3人は直ぐに目の前の戦闘に集中したが、頭の片隅では、何かこころが欠けたような喪失感があった。
◇◆◇
ザミールは斃れたアイの身体を前に、黙祷を捧げていた。
強敵を打ち倒したはずなのに……こころからの友を亡ったような心持ちだった。
心で顕現させた彼岸花を、アイの亡骸の横に添える。
そして徐に立ち上がり、ゆっくりと振り返り、自分を待っているであろう部下のために歩き出す。
――その後ろで誰かが立っていた。
◇◆◇
かなりの数の残党を倒したラアルとかげろうは……獣神体の感で、
――今しかないっ!!
っと思った。
ラアルが毒の道を作るように、心を撒き散らしながら叫ぶ。
「アルターク!イダ!クレジェンテ!走りなさい!この毒に沿って!私の心は射程距離が短いから長さは期待しないで!!
とにかく、三人のうちの誰かがこの惨状を国に伝えるのよ!
……走って!!」
ラアルがこの三人を名指ししたのには理由があった。まずアルタークが明らかに戦闘で後れを取っているからだ。これは彼女が人間体であることに起因するが、ラアルはその事を知らなかった。
そしてイダはアイと
“アイがいない間はアルタークを護る”
という誓いを結んでいるから、決して裏切れないので伝達役に。
そしてクレジェンテは明らかなに誰よりも疲弊しているからだった。……これはソンジュとの戦闘とハナシュになぶられたことがその原因だった。いくら愛の心で癒したといっても限度がある。
「でも……!」
クレジェンテがパンドラ公国の王女を気遣うが、ラアルは一蹴する。
「あぁ、もう!これは“王女の命令”よ!
拒否権はないわ!早く走って!!」
王女に“命令”されては仕方がないと、アルタークとクレジェンテはとてもアイのことが気がかりだったが、その場を離れた。
そしてイダも、新生ロイヤル帝国の連中に、
『我々は決してアイ・ミルヒシュトラーセを傷つけるつもりはない、ただミルヒシュトラーセ辺境伯爵に虐げられている彼に、仲間になってほしいだけだ。』
と聞かされていたし、アイとのアルタークを護る“誓い”もあったので、渋々2人について行く。
◇◆◇
「ふぅ……。で?残った私たちはどーすんの?
……オウジョサマ!!」
はるひは敵と闘いながら、喋る余裕があるようだ。敵の数が減ったということと、マンソンジュ軍士官学校での教練以外にも、不知火陽炎連合で特別な戦闘訓練を受けているということ……そして何より、“最強の性別”であるアニムス・アニムスであるということが大きかった。
「とにかくこの下賤の者たちを倒す!そして、貴女と陽炎は彼女たちのあと追って逃げなさい!
……アルターク達が無事に一番近い街へたどり着けるとは限らないし、私にはここでやることがあるからね!」
ラアルは冷静にアルターク達が追っ手によって全員が散華させられる……若しくは殺される可能性を考えていた。
「貴女達の連携はかなりのものよ!アルターク達よりは街へ辿り着ける可能性が高いわ!
とにかくっ!誰か一人でも街へ辿りいて救援を呼べば……こっちの勝ちよ!!」
救援が来るまでに自分たちが生きていたらの話だが……とラアルは思ったが士気を悪戯に下げてしまうと思い、自分の心に留めておいた。
「取り敢えず迫り来ている新生ロイヤル帝国の騎士……“忠実なる騎士”が来る前に離脱するわよ……!!」
かげろうが冷静に言う。
「ええ……彼らが来たら終わりですね。彼らの“強さ”は敵対国の僕たちにも否定できません。」
三人は奇しくも同じ事を考えていた。
――残りの2人を逃がしたあとに、アイを助けに向かうのは自分だ――!と。
◇◆◇
「――その必要はないよ……。」
ラアルたちの後から声が聞こえた。それは静かな声だったが、何者をも寄せ付けぬ冷たさを持っていた。
「先生が来たからね……もう安心だよ。」
誰も自分たちの領域に入れまいと気を張り、心を巡らせていたラアルとはるひ、かげろうの間に、いつの間にかナウチチェルカが立っていた。
「「「――!!」」」
どうやって?いつの間に?……と三人は考えていたが、ナウチチェルカはなんてことのないように、何時ものように……気怠げに呟く。
「……こいつらはボクが全員殺すからね。」
ナウチチェルカが中指と親指を使って指をパチンと鳴らす。その音は夜の暗闇に響きわたった。
3人が苦戦して、何とか、それでも少しずつ倒していた敵の残党達が一瞬にして消し飛ぶ。
文字通り……消し飛んだ。
「……“家族だから”……だから、わたくしは貴方が大好きですけど、反政府組織に与することはできないのです。
“家族だから”……だからわたくしは大好きな貴方と戦わないといけないんです。だって……彼らはわたくしの“家族だから”。」
アイは確かな信念と共に、言葉より雄弁な瞳で好敵手をみながら言う。
「……それだけで、たったそれだけでわたくしには“命をかけるに値する理由”なのです。
……“大好きな貴方と戦う理由”になるのです。」
◇◆◇
ザミールは哀しそうな、でも納得がいったようにゆっくりと立ち上がる。
「……確かになぁ……俺も未だ眠り続けてるお母様を守るためだったら、誰が相手でも、其奴のことをどんなに好きでも、戦うだろうな……。
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……とわたくしが読んだ日系地獄文学者も言ってましたよ。」
「……地球人もたまにはいいこと言うなぁ……。
――だがそれも……“原罪”の一部だ……。
俺は認めない……!」
アイがとても徐に立ち上がる、立っているというには、背も縮こまり、膝に手をつき、頭も下がり、前髪がその瞳を隠すぐらいに垂れ下がっている。
しかし、その髪の間から覗くサファイアの瞳からは、闘志は失われていなかった。
「んじゃあ……まぁ、“夜明けまでにテメェを殺す”っつう誓いもあるし……やるかぁ……。」
「あぁ……“夜明けまでにお前を殺す”って誓いがな。」
「……死ぬのはお前だぜ?ザミール。」
「ふふっ……どうかな?アイ。」
◇◆◇
アイは動かない……。
いや、動けなかった、立っているのがやっとだったからだ。
視界も霞み、自分が立っているのかどうかもよくわかっていなかった。上から垂らした蜘蛛の糸のような心で自分の背中を引き上げて、無理やり姿勢を保っていた。
そうして、両腕も無理やり心の糸で引っ張り上げてファイティングポーズをとる。
奇しくもその格好は、他人の思惑にに操られて生きてきた、アイをの人生を表すような、傀儡人形のような……そんな姿だった。
「……こい……。」
ザミールがなんとか立っているアイを早く楽にしてやろうと、砂塵を纏い一直線にアイに突撃する――!
……アイの心臓をめがけて、一直線に……そしてザミールの手刀は、アイの胸を貫いた……。
「じゃあな、アイ・ミルヒシュトラーセ……類稀なる……“戦士”よ――。」
◇◆◇
アイの心が洞窟の天井に向かってほどけていく、ザミールがアイの胸から手を引き抜くと、心の糸の支えを失ったアイの身体は、前に倒れる。
アイはなんだかふわふわと揺蕩うような心地だった。そうしてふわふわと思った。
――死ぬときってこんな感じなのかなぁ……。
こうして、ザミールの《夜明けまでにアイを殺す》という誓いは達成され――
――アイ・ミルヒシュトラーセは死んだ。
◇◆◇
アイが引き付けてくれたザミール・カマラード以外の敵、その残党たちと戦っていたかげろう、はるひ……そしてラアルは何か胸騒ぎがした。
目の前の敵から決して視線は離さなかったが、視界の端で誰かの心が空にほどけていくのがみえた。
「アイ様……!」
「アイくん……?」
「……アイ……。」
3人は直ぐに目の前の戦闘に集中したが、頭の片隅では、何かこころが欠けたような喪失感があった。
◇◆◇
ザミールは斃れたアイの身体を前に、黙祷を捧げていた。
強敵を打ち倒したはずなのに……こころからの友を亡ったような心持ちだった。
心で顕現させた彼岸花を、アイの亡骸の横に添える。
そして徐に立ち上がり、ゆっくりと振り返り、自分を待っているであろう部下のために歩き出す。
――その後ろで誰かが立っていた。
◇◆◇
かなりの数の残党を倒したラアルとかげろうは……獣神体の感で、
――今しかないっ!!
っと思った。
ラアルが毒の道を作るように、心を撒き散らしながら叫ぶ。
「アルターク!イダ!クレジェンテ!走りなさい!この毒に沿って!私の心は射程距離が短いから長さは期待しないで!!
とにかく、三人のうちの誰かがこの惨状を国に伝えるのよ!
……走って!!」
ラアルがこの三人を名指ししたのには理由があった。まずアルタークが明らかに戦闘で後れを取っているからだ。これは彼女が人間体であることに起因するが、ラアルはその事を知らなかった。
そしてイダはアイと
“アイがいない間はアルタークを護る”
という誓いを結んでいるから、決して裏切れないので伝達役に。
そしてクレジェンテは明らかなに誰よりも疲弊しているからだった。……これはソンジュとの戦闘とハナシュになぶられたことがその原因だった。いくら愛の心で癒したといっても限度がある。
「でも……!」
クレジェンテがパンドラ公国の王女を気遣うが、ラアルは一蹴する。
「あぁ、もう!これは“王女の命令”よ!
拒否権はないわ!早く走って!!」
王女に“命令”されては仕方がないと、アルタークとクレジェンテはとてもアイのことが気がかりだったが、その場を離れた。
そしてイダも、新生ロイヤル帝国の連中に、
『我々は決してアイ・ミルヒシュトラーセを傷つけるつもりはない、ただミルヒシュトラーセ辺境伯爵に虐げられている彼に、仲間になってほしいだけだ。』
と聞かされていたし、アイとのアルタークを護る“誓い”もあったので、渋々2人について行く。
◇◆◇
「ふぅ……。で?残った私たちはどーすんの?
……オウジョサマ!!」
はるひは敵と闘いながら、喋る余裕があるようだ。敵の数が減ったということと、マンソンジュ軍士官学校での教練以外にも、不知火陽炎連合で特別な戦闘訓練を受けているということ……そして何より、“最強の性別”であるアニムス・アニムスであるということが大きかった。
「とにかくこの下賤の者たちを倒す!そして、貴女と陽炎は彼女たちのあと追って逃げなさい!
……アルターク達が無事に一番近い街へたどり着けるとは限らないし、私にはここでやることがあるからね!」
ラアルは冷静にアルターク達が追っ手によって全員が散華させられる……若しくは殺される可能性を考えていた。
「貴女達の連携はかなりのものよ!アルターク達よりは街へ辿り着ける可能性が高いわ!
とにかくっ!誰か一人でも街へ辿りいて救援を呼べば……こっちの勝ちよ!!」
救援が来るまでに自分たちが生きていたらの話だが……とラアルは思ったが士気を悪戯に下げてしまうと思い、自分の心に留めておいた。
「取り敢えず迫り来ている新生ロイヤル帝国の騎士……“忠実なる騎士”が来る前に離脱するわよ……!!」
かげろうが冷静に言う。
「ええ……彼らが来たら終わりですね。彼らの“強さ”は敵対国の僕たちにも否定できません。」
三人は奇しくも同じ事を考えていた。
――残りの2人を逃がしたあとに、アイを助けに向かうのは自分だ――!と。
◇◆◇
「――その必要はないよ……。」
ラアルたちの後から声が聞こえた。それは静かな声だったが、何者をも寄せ付けぬ冷たさを持っていた。
「先生が来たからね……もう安心だよ。」
誰も自分たちの領域に入れまいと気を張り、心を巡らせていたラアルとはるひ、かげろうの間に、いつの間にかナウチチェルカが立っていた。
「「「――!!」」」
どうやって?いつの間に?……と三人は考えていたが、ナウチチェルカはなんてことのないように、何時ものように……気怠げに呟く。
「……こいつらはボクが全員殺すからね。」
ナウチチェルカが中指と親指を使って指をパチンと鳴らす。その音は夜の暗闇に響きわたった。
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