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第二章 藍と学校
28. 恋をしたのはナナメ45°の横顔に Your profile is everything in my world.
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「えっと、あの……?聞こえてる、かな?」
目は離せない、だが口は開けない。クレジェンテも多くの生徒と同様に、密かにアイ憧れていたからだ。いつもアイたちがきゃいきゃいと話す言葉を、教室の隅で盗み聞きしていたし、机に突っ伏して頭を乗せた腕から微かに頭をもたげ、いつもちらちらとその表情を盗み見ていた。それだけで幸せだった。
つらいことが待っている学園に向かう朝、寮からでる重い足取りをいつも軽くしてくれるのは、天使に会えるからだった。まだ寝ぼけ眼で暗い寮の部屋の玄関から、眩い太陽の光の下に一歩踏み出させるのは、いつも思い返した斜め45度から見たお姫様の横顔だった。
その学園の天使お姫様が、その憧れの人が、今クレジェンテの眼の前にたち、真正面からこちらを見ている。あまつさえ言葉をかけてくれている。
「あ、あのー、おじゃま、だった……かな?」
――ハッ、天使の顔が曇っている!まだ何も話していなかった!何か話さないと!でも何を?僕なんかが学園の天使お姫様に?何を?いい天気ですね?いや、はじめまして?自己紹介からか?やばい!とりあえず何か言わないと!
「あっ、……こん……にちわ。ゲホッ……あっ……いい……天気……ですね……ゴホッ。」
――やばい人と話すのが久しぶりすぎて、声がうまく出せなかった。絶対に気持ち悪いと思われた。終わった……。
「はい、こんにちは!」
――ま、まぶしいー。笑顔が眩しすぎてもはや発光してるまである。
「でも……いい……てんき?……かなぁ?」
――はっ、今日土砂降りじゃん!終わったコミュニケーション能力の低さがバレた!一番バレたくない人に。おわった……。
「でも、こんなに雨が降ってると、逆にいい天気!みたいな!ことありますよね!」
――てんしぃー。性格が良すぎてもはや菩薩まである。
「それでそれで、カタルシスくん!」
「えっ……なんで俺の名前……。」
「?……だってクラスメイトじゃないですか!自己紹介もちゃーんと聞いてましたよ~。クレジェンテ・カタルシスくん!好きなものは地獄小説!ですよね?」
――学園のマドンナが僕なんかの自己紹介を!?やばい、変なこと言ってなかったか?てかあんなの誰も聞いてないと思ってた。声超小さかったし。ん……?なんか教室が静かだ。……おわっ!ヤバイヤバイヤバイ……クラスのみんなこっち見てる!そりゃそうだよな。なんで天使姫がこんなヤツとってなるわ。僕だって見るわ。
「それで、ですね……カタルシスくん……。その、あの……。」
――天使姫がモジモジと恥ずかしがっておられる!……かわいい。なんだ?暗すぎてクラスの雰囲気乱してるから学校辞めろとか!?かわいいな。この子にそんなこと言われたら泣く自信しかないがかわいい。できだけ平静を装って答えようかわいすぎる。
「は……はい、なんでしょう?」
「あの……そのですね、一緒に!お昼どうでしょうか……!」
――?一大決心をしたように、天使が言う。イッショニ、オヒルドウデショウ……一緒に?お昼!?
「あの……。」
「は、はい……!」
「アイ様と僕が一緒にお昼を食べるということは。もしかして。」
「はい……?」
「アイ様と僕が一緒にお昼を食べるって……コト?」
「は、はい。」
――なんで?こんなクラスでも浮いてる出来損ないの獣神体なんかと一緒にいてなんのメリットがあるんだ?やばい……何か裏がある。
そうかっ!いつもイジってくるあいつらが、天使を唆したんだ。それで僕がオッケーしたらみんなで、そんなわけないだろって僕を馬鹿にするんだ。いつもみたいに。きっとそうだ。あぶないあぶない見えてる地雷に突っ込むとこだった。断ろう。
「あの……僕は、一人で……。」
「だめ……ですか……?」
ふるえる上目遣い。
「いけまぁす!!食べましょう食べましょう。」
「わぁぁ、ありがとうございます!」
――やっちまった……でも断れるわけねぇよなぁ!!天使にあんな表情されちゃあよぉ!!獣神体が廃るってもんだ。あぁー、嬉しそうな顔かわいいー。かわいすぎて、魔性の女まであるで……いや何いってんだ相手は天使だそ、ふざけたこと抜かしやがって、ぶっ飛ばすぞ。
嬉しさのあまりクレジェンテの机に顎を乗せて、ニコニコするアイ。
――ぎゃわいい!てかなんかいい匂いする……。いや、嗅ぐな僕!キモいぞ!でもいい匂いだ……。
「じゃあ、さっそく食べましょう。」
アイがクレジェンテの前の席の人が居ないことを確認してから、その席を後に向け、正面に座る。
――ちかい!かわいい!てか真正面!何時も何時も斜め40度から盗み見るしかできなかったお顔が、真正面に……!
「カタルシス……あっ、クレジェンテくんって呼んでいい?あっ、ちょっと長いから……クレくんとか?」
――距離感んんん!!バグってないか?距離感が!敬語じゃなくなったし!
「は……い、そのように。アイ様」
「あっ、クレくんも!様付けなんてやめてよ!敬語も禁止ですっ!学園じゃわたくしは1学生のただのアイ、なんだから!いいですかー?」
――顔が近い近い近いいい匂いする――!!
「は、い。ではアイ……ちゃん?」
「よくできました!」
クレジェンテは知らなかったが、生来の性別が男であるアイにとっては自分が両性具有者となったあとでも、男子相手の方が気楽に話せるのだった。つまり、アイは男同士の友情に少し憧れがあって暴走している節がある。
「それで、クレくん!」
「おひぃっ!」
――手!握られた!ちっちゃい……かわいい……。落ち着けクールにいけクレジェンテ……。Be cool……クールジェンテ…だ。
「はい、どうされ……どうしたの、アイちゃん?」
「自己紹介で言ったよね!地獄文学が好きだと!実はわたくしもなんです!誰が好き?どの本が好き?」
――アァ~大きなおめめがキラキラしてる、アイ様の眼の輝きでで夜の闇すらも裸足で逃げ出しますわ。
「そう、だね。えっと……僕は日系地獄人の小説が好きかな。」
「日本人!いいね!誰々?!川端康成?谷崎潤一郎?紫式部?……梶井基次郎!?……それかそれかもしかして……賢治?!……いやいや、丸谷才一って線もあるなぁ……!」
「……いちばんすきなのは、太宰治です。」
「!……太宰!いいよね~。何が好き!?わたくしわね~『駈込み訴え』と『女生徒』!」
「おひょ……かわいぃ……、僕は『人間失格』ですかね、逆に『駈込み訴え』はあまり理解できなくて……。」
「『人間失格』いいよね~。“いえ、お酒を呑んでいても――」
――アイちゃんが名シーンを諳んじ始めた!
「!」
「「“私にとっては天使みたいな人でした。”」」
ふたりで好きな場面をハモって笑いあう。
「いいよね~!あそこ!」
「いいんだよね~!あそこ!」
――腕を触られた!?この子僕のことが好きなのか?!いやいや、落ち着け、クレジェンテ。Stay cool…だ。というか、やばい、好きな人と好きな物の話ができるのがこんなに楽しいなんて!
「『駈込み訴え』はね~、誰か信奉してる人に裏切られた経験があれば、よく理解できると思うんだよね。」
「……?アイちゃんにもそういう経験が?」
「えっ……えへへ~、内緒!」
――くそっいちいちかわいいな。
2人はそれから楽しく話し込んだ。そして、アイと仲のいいクレジェンテを馬鹿にするものは次第に居なくなり、クレジェンテはアイが自分を救ってくれた天使だとおもった。
アイの裏の顔を知り、彼女を嫌悪するようになるまでは……。
目は離せない、だが口は開けない。クレジェンテも多くの生徒と同様に、密かにアイ憧れていたからだ。いつもアイたちがきゃいきゃいと話す言葉を、教室の隅で盗み聞きしていたし、机に突っ伏して頭を乗せた腕から微かに頭をもたげ、いつもちらちらとその表情を盗み見ていた。それだけで幸せだった。
つらいことが待っている学園に向かう朝、寮からでる重い足取りをいつも軽くしてくれるのは、天使に会えるからだった。まだ寝ぼけ眼で暗い寮の部屋の玄関から、眩い太陽の光の下に一歩踏み出させるのは、いつも思い返した斜め45度から見たお姫様の横顔だった。
その学園の天使お姫様が、その憧れの人が、今クレジェンテの眼の前にたち、真正面からこちらを見ている。あまつさえ言葉をかけてくれている。
「あ、あのー、おじゃま、だった……かな?」
――ハッ、天使の顔が曇っている!まだ何も話していなかった!何か話さないと!でも何を?僕なんかが学園の天使お姫様に?何を?いい天気ですね?いや、はじめまして?自己紹介からか?やばい!とりあえず何か言わないと!
「あっ、……こん……にちわ。ゲホッ……あっ……いい……天気……ですね……ゴホッ。」
――やばい人と話すのが久しぶりすぎて、声がうまく出せなかった。絶対に気持ち悪いと思われた。終わった……。
「はい、こんにちは!」
――ま、まぶしいー。笑顔が眩しすぎてもはや発光してるまである。
「でも……いい……てんき?……かなぁ?」
――はっ、今日土砂降りじゃん!終わったコミュニケーション能力の低さがバレた!一番バレたくない人に。おわった……。
「でも、こんなに雨が降ってると、逆にいい天気!みたいな!ことありますよね!」
――てんしぃー。性格が良すぎてもはや菩薩まである。
「それでそれで、カタルシスくん!」
「えっ……なんで俺の名前……。」
「?……だってクラスメイトじゃないですか!自己紹介もちゃーんと聞いてましたよ~。クレジェンテ・カタルシスくん!好きなものは地獄小説!ですよね?」
――学園のマドンナが僕なんかの自己紹介を!?やばい、変なこと言ってなかったか?てかあんなの誰も聞いてないと思ってた。声超小さかったし。ん……?なんか教室が静かだ。……おわっ!ヤバイヤバイヤバイ……クラスのみんなこっち見てる!そりゃそうだよな。なんで天使姫がこんなヤツとってなるわ。僕だって見るわ。
「それで、ですね……カタルシスくん……。その、あの……。」
――天使姫がモジモジと恥ずかしがっておられる!……かわいい。なんだ?暗すぎてクラスの雰囲気乱してるから学校辞めろとか!?かわいいな。この子にそんなこと言われたら泣く自信しかないがかわいい。できだけ平静を装って答えようかわいすぎる。
「は……はい、なんでしょう?」
「あの……そのですね、一緒に!お昼どうでしょうか……!」
――?一大決心をしたように、天使が言う。イッショニ、オヒルドウデショウ……一緒に?お昼!?
「あの……。」
「は、はい……!」
「アイ様と僕が一緒にお昼を食べるということは。もしかして。」
「はい……?」
「アイ様と僕が一緒にお昼を食べるって……コト?」
「は、はい。」
――なんで?こんなクラスでも浮いてる出来損ないの獣神体なんかと一緒にいてなんのメリットがあるんだ?やばい……何か裏がある。
そうかっ!いつもイジってくるあいつらが、天使を唆したんだ。それで僕がオッケーしたらみんなで、そんなわけないだろって僕を馬鹿にするんだ。いつもみたいに。きっとそうだ。あぶないあぶない見えてる地雷に突っ込むとこだった。断ろう。
「あの……僕は、一人で……。」
「だめ……ですか……?」
ふるえる上目遣い。
「いけまぁす!!食べましょう食べましょう。」
「わぁぁ、ありがとうございます!」
――やっちまった……でも断れるわけねぇよなぁ!!天使にあんな表情されちゃあよぉ!!獣神体が廃るってもんだ。あぁー、嬉しそうな顔かわいいー。かわいすぎて、魔性の女まであるで……いや何いってんだ相手は天使だそ、ふざけたこと抜かしやがって、ぶっ飛ばすぞ。
嬉しさのあまりクレジェンテの机に顎を乗せて、ニコニコするアイ。
――ぎゃわいい!てかなんかいい匂いする……。いや、嗅ぐな僕!キモいぞ!でもいい匂いだ……。
「じゃあ、さっそく食べましょう。」
アイがクレジェンテの前の席の人が居ないことを確認してから、その席を後に向け、正面に座る。
――ちかい!かわいい!てか真正面!何時も何時も斜め40度から盗み見るしかできなかったお顔が、真正面に……!
「カタルシス……あっ、クレジェンテくんって呼んでいい?あっ、ちょっと長いから……クレくんとか?」
――距離感んんん!!バグってないか?距離感が!敬語じゃなくなったし!
「は……い、そのように。アイ様」
「あっ、クレくんも!様付けなんてやめてよ!敬語も禁止ですっ!学園じゃわたくしは1学生のただのアイ、なんだから!いいですかー?」
――顔が近い近い近いいい匂いする――!!
「は、い。ではアイ……ちゃん?」
「よくできました!」
クレジェンテは知らなかったが、生来の性別が男であるアイにとっては自分が両性具有者となったあとでも、男子相手の方が気楽に話せるのだった。つまり、アイは男同士の友情に少し憧れがあって暴走している節がある。
「それで、クレくん!」
「おひぃっ!」
――手!握られた!ちっちゃい……かわいい……。落ち着けクールにいけクレジェンテ……。Be cool……クールジェンテ…だ。
「はい、どうされ……どうしたの、アイちゃん?」
「自己紹介で言ったよね!地獄文学が好きだと!実はわたくしもなんです!誰が好き?どの本が好き?」
――アァ~大きなおめめがキラキラしてる、アイ様の眼の輝きでで夜の闇すらも裸足で逃げ出しますわ。
「そう、だね。えっと……僕は日系地獄人の小説が好きかな。」
「日本人!いいね!誰々?!川端康成?谷崎潤一郎?紫式部?……梶井基次郎!?……それかそれかもしかして……賢治?!……いやいや、丸谷才一って線もあるなぁ……!」
「……いちばんすきなのは、太宰治です。」
「!……太宰!いいよね~。何が好き!?わたくしわね~『駈込み訴え』と『女生徒』!」
「おひょ……かわいぃ……、僕は『人間失格』ですかね、逆に『駈込み訴え』はあまり理解できなくて……。」
「『人間失格』いいよね~。“いえ、お酒を呑んでいても――」
――アイちゃんが名シーンを諳んじ始めた!
「!」
「「“私にとっては天使みたいな人でした。”」」
ふたりで好きな場面をハモって笑いあう。
「いいよね~!あそこ!」
「いいんだよね~!あそこ!」
――腕を触られた!?この子僕のことが好きなのか?!いやいや、落ち着け、クレジェンテ。Stay cool…だ。というか、やばい、好きな人と好きな物の話ができるのがこんなに楽しいなんて!
「『駈込み訴え』はね~、誰か信奉してる人に裏切られた経験があれば、よく理解できると思うんだよね。」
「……?アイちゃんにもそういう経験が?」
「えっ……えへへ~、内緒!」
――くそっいちいちかわいいな。
2人はそれから楽しく話し込んだ。そして、アイと仲のいいクレジェンテを馬鹿にするものは次第に居なくなり、クレジェンテはアイが自分を救ってくれた天使だとおもった。
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