🔴全話挿絵あり《堕胎告知》「オマエみたいなゴミ、産むんじゃなかった。」「テメェが勝手に産んだんだろ、ころすぞ。」🔵毎日更新18時‼️

ADPh.D.

文字の大きさ
48 / 190
第二章 藍と学校

44. 性別と聖別 Sex and Separation

しおりを挟む
 はるひは後ろ手に空き教室の扉を閉め、アイを逃さないように、扉と彼の間に陣取る。いつもの行動だった。

 両性具有者セラフィタとなってから、アイもはるひも普段は女性体で過ごすことが多かった。これは、両方の性の姿を見せるのは、親しい間柄に限るという暗黙の了解があるからだ。アイはそんなことは気にせず、気ままに男性体でも学校に通っているが。





 しかし、はるひとアイが二人で会うときには、はるひはアイを男性体でいさせたがった。



アイは両性具有者セラフィタとしては珍しいタイプで、アニマ・アニマなこともあり、両性ともとても女性的な見た目をしていた。(はるひは逆に、両方とも男性的だった。) 違うのは女性体のアイの大きく発達した乳房にゅうぼうと、体つきぐらいのものだ。それを意識するたびにアイは思うのだ。やっぱり自分は、きっと似てしまったのは、“産みの親”の――。

 それなのにはるひが第一の性別なんかにこだわる理由がアイには分からなかったが、はるひはあの日のアイの面影を見ていたのかもしれない。男女性偏重へんちょう主義者をいちばん嫌っていたのは、両性具有者セラフィタになるまでは、春日家の一人娘が息子だったらと、やっかみを言われて育ったはるひのはずなのに。

 ◇◆◇

「それで?話って何かな?アイくん。それも2人きりでなんてさぁ?……かげろうのヤツの顔……愉快ゆかいだったなぁ。カンチガイ騎士道振りかざしてるからあぁなるんだよ……ね?アイくん。」

 はるひは心底楽しそうに言った。その態度はアイの発言で180度くつがえることになる。

「はるひちゃん……お願いがあるんです。」

「何々?水臭いなぁ……わざわざそんなにかしこまっちゃってさぁ。私達つがいでしょ?それに今は気分がいいからさ、何でも聞いてあげるよ。」

 さも愉快げにニコニコと嗤いながら、アイの全身を値踏みするように見やる。

「……わたくしたち、お友だちに戻りませんか……?聖別の儀セパレーション前の、ちいさかったあの頃みたいに――」

 アイは二の句を告げなかった。教卓の上に力任せに押し倒されたからだ。

「きゃっ!」

 はるひは黙っている。ただ怒りのヘルツで染まった瞳で、アイを見下ろしている。犬歯をむき出しにした口から、獣神体アニムス特有の獣のようなうなり声が聞こえる。



「……、今、なんつった?もう一度言ってみろ……!!」

 アイがプレッシャーにさらされ、何も言えないでいると、はるひの態度が急変する。
 
「……聞き間違いかなぁ?……いや~ごめんごめん!急にありえない言葉が聞こえたからさ。」

 急に明るい声を出して話し始める、聖別の儀セパレーション以降、こんなふうに突然機嫌が良くなったり悪くなったりするのが、アイにはこわかった。エレクトラのように常に怒っている方が、アイにはまだ理解ができた。でも、アルタークにもらった勇気をふるいたたせ、親友のやさしさにむくいるためにも、ハッキリと言った。

「わたくしたち、お友だちに戻りませんか?昔みたいに、莫迦なことを言って笑いあう、。」

 はるひの身体が打ち震える。悲しみではなく、怒りによって。そして、いつかエレクトラと対峙したしゅんじつのように、その瞳が燃え盛っている……ように見える。

「“ただのお友だち”?そんなの無理に決まってるよね?今さら。アイくんはどこまで莫迦ばかなのかな?から、そんなこと言える立場じゃないんだよ、アイくんは。」

「わ……わたくしは、しゅんじつさんとひまりさんを奪ってなどは――」

「黙れ、人間体アニマ分際ぶんざい獣神体アニムスに口答えするなって何度言わせる気?ほんとうに莫迦なんだから。あぁ、莫迦すぎて苛々いらいらするなぁ……!それに、奪ったんだよ。私から。あの日。あの聖別の儀セパレーションの日に。あの日からは変わっちゃった……。」

「どういう、ことですか?教えてください。」

「なんで私が、獣神体アニムスの私が、か弱~いアイくんの命令なんか聞くと思ったの?お偉いミルヒシュトラーセってのはやっぱ違うねぇ?」

「これは命令ではなく……お願いです。。」

 お友だちという言葉にはるひがピクリと反応する。
 
「“お友だちの”お願い?じゃあ尚更なおさら聞けないねぇ。だって私とアイくんは、“お友だち”、じゃあないもんねぇ?私たちはたくさんいる有象無象オトモダチじゃあなくて、お互いの、唯一の、“つがい”だもんねぇ?」

「わたくしは、はるひちゃんと番になった覚えはありません。“番契約”とは本来双方の合意があって結ばれるもののはずです。だから――」

「――そんなの誰も守ってないルールじゃん。この国で、とくに差別意識の強い辺境伯派のアイちゃんなら嫌と言うほど知ってるでしょ?実際は獣神体アニムスの意思で勝手に結ばれて飽きたら勝手に捨てられる……そんなもんなんだよ人間体アニマなんてのは。」

「それは現実であって理想ではありません。醜悪な現実が蔓延はびこっているのなら、信念を持った理想によって打ち砕かれるべきです。」

「あーあーでたよ。アイちゃんの、理想主義者アイディアリスト楽天主義者ポリアンナ。現実に差別があるんだから、それは理想じゃなくて妄想って言うの。現実を無視して、理想を語るなら、夢想家むそうかにでもなればぁ?

 ……私はお母さんがどれだけ差別されてきたか知ってる。見てきた、いちばん近くで、この目で。地獄パンドラ本が大好きで、本の中を、“にはわかんないだろうねぇ?」

「じゃあ何故ひまりさんを傷つけてきた人たちと同じことをするのです?小さい頃の貴女は、差別を憎んでいた。あの頃の――」

「うるっさいなぁ……!もう黙れよ。すぐに『あの頃は――』ってさ。何も知らなかったガキの頃になんか戻れないんだよ。いつまでも思い出にすがってみっともない。あの頃には戻れないし、あの頃の関係にも戻れない。話は終わりだね、人間体アニマならただ黙って身体を差し出してりゃあいいんだよ。」

 アイの服に乱暴に手をかけるはるひ。

「まって!まって……!ください……!一度しっかりと対話しましょう。それこそがお互いを分かり合う手段だと、貴女のお父さんにわたくしは教わりました。春日さんはまだ幼かったわたくしと、対等に話して下さいました。一人の大人と話すように……!」



「チッ……お父さんの話をだすなよ……!うざったいなぁ!なんだよ。であるアイくんにはできないの。それに番をやめたいやめたいってさぁ……。……?それとも他の獣神体アニムスに誑かさられた?」

 自分が嫌いかと問う声だけが、いつもの馬鹿にしたようなものではなく、震えていた。アイはどんなに馬鹿にされても、酷いことをされても、決して――

「嫌いじゃありませんよ。絶対に。わたくしがはるひちゃんを嫌うなんて、そんなのありえません。」

 そして、あの頃の言葉遣いにかえるアイ。

 「……すきだよ?今でもずっと。」

 はるひはその言葉を受けて、押し倒していたアイを引き起こし、教壇に座らせた。今でははるひのほうが遥かに背が高くなっていたが、アイが教壇に座っているので、昔みたいに――あの頃みたいに――2人の目が近い。一瞬無邪気なあの頃に戻ったような錯覚を2人は覚える。

「じゃあ……なんで?なんで番をやめたいだなんて言うの……?私は、酷いことばかり言うけど、酷いことばかりするけど、ほんとうは、私も、アイくんが、アイくんのことが――」

 アイは、慈愛に満ち、親愛にふち取られた、でも決して恋愛の光の差さない、幼げなかわいらしい笑顔で言った。



「――だってはるひちゃんは、わたくしの、たいせつな、だいすきな……“お友だち”だから……!」

 その光に全身を貫かれたはるひは、雷に撃たれた騎士のように、目から鱗が落ちた。たが、決してしなかった。

「そう……そう、なんだね……!アハハッ!やっと分かったよ!じゃあもう絶対に逃がしてやんない……!アイくんは、私だけの人間体オスだ……!誰にも渡さない。私のものだ……!」

 ――アイくんのこころに入れないのなら、無理やり突き破ってやればいいんだ。そうして、消えないきずをつけて、それをみるたびに私のことを思い出せばいい。そうして一生彼のこころのなかに、永遠に――

 ◇◆◇

 そうしてはるひは、アイの服を力任せに破いて脱がせ……その身体を――

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...