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第二章 藍と学校
69. ガキの人生で博打をするな、自分の命でやれや、殺すぞボケが。 Don't Gamble with the Kid's Life.
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「……皆!僕の後にさがっていてくれ!!僕が此奴を何とかする……!!」
◇◆◇
声も震え、身体さえビクビクと震えていたが、精一杯の勇気を振り絞って叫ぶ。拳を構えるが見るからにガタガタと震えていて、心すら上手く練れていない。
「当たり前でしょ!?」
「獣神体なんだからアンタがやってよ!!」
「そうだ!いつも獣神体だからって、いい思いしてるだろ!!」
◇◆◇
「……身体が強い性別だから、社会的に責任がある性別だから、パートナーを護らないといけない性別だから、
……そんなクソみたいな理由で塵屑どもに頼られて。
……きっと
『獣神体は泣くもんじゃない。』
と塵みたいな言葉で育てられてきたでしょう。
なのになんで、そんな自分の性別を言い訳にして人を頼ってばかりの塵共を……。
……ふむ……その反応をみるに、こんな“科白”は響いていませんねぇ……?
……そうだ、もっとユーモラスにいきましょうか。人生には“滑稽味”、こころには“愉しみ”、闘いには“楽しさ”が必要ですからね。
……こんな“台詞”はどうですか……?
『獣神体なんだから自分より優先して人間体と子供を優先しろ。』
『獣神体なのにスマートじゃなくて萎えた。』
『獣神体のクセにご飯を奢らないなんてありえない。』
――みたいなことを言いそうな、塵糞共を守るんです?
……すみません……色々と両親……母と母の言葉を思い出してしまって余計な言葉を言いましたかね……?」
震えて涙を流しながら、クレジェンテは言った――
「せっ……性別なんか関係ない、
……僕が此処で逃げたら……きっと自分を許せない。
……他人に
『獣神体らしい人だ。』
なんて言われなくていい。
『獣神体のクセに』
ってずっとイジられてきたけど……!
他人に自分の性別を認めてもらおうなんて思ってない。
――自分がっ、僕が僕を誇れるように生きたいだけだ。獣神体だから闘うんじゃない!
……人間だから、護るんだ……!!
“この世全員”が僕を馬鹿にしてくるから!
アイツラに媚びた笑いを浮かべて
『僕もこんな自分は嫌いだ』
って迎合でもするか?
ちがう!断じてちがう!!
自分だけは誇れる、自分自身を誇れる!!
誰に馬鹿にされても!
自分だけは自分の味方でいるんだ!!
いられるんだ!!
だって自分だけはいつだって一緒にいてくれるんだから!!
だから僕は戦う!
自分の誇れる人間で――!!
――“人間”でいるために!!!」
ローブの男、ジョンウが相手を強敵と認めたように言った。
「――貴方は、うつくしい人間だ。その美に敬意を払い、“実践経験のない学生”としてではなく、“兵”として全力でお相手いたしましょう……!」
◇◆◇
クレジェンテは虐められるぐらいには、獣神体としては強くない。身体能力はあるが、心の量が少ない。
こころが狭いのだ。
どれだけこころの内側で自尊心を育てて精神を保とうとしても、知り合いに毎日毎日コケにされてたら、新緑の葉なんぞ外側から腐る。
イジられキャラとして、周りの人間に
『あぁ、コイツは“馬鹿にしてもいいやつ”なんだ。』
と一度思われたら終わってしまう。
彼の生はそんなものだった。なまじ社会的に、肉体的に、“強いとされている性別”に生まれてしまったのがよくなかった。
◇◆◇
だからクレジェンテは決して自分がイジメられているとは、言わなかった。いじめられていると言った。そうして無意識に自分を守っていたのだ。
『僕は“嫌われているからイジメられている”んじゃない……“愛のあるいじめ”をされていだけだ』と。
そんなわけないことは彼にだって分かっていた、理解ってしまっていた。
だけどそう思わないと頭がおかしくなりそうだったのだ。
――いや、そう思ったところで虐められた人間は……。
◇◆◇
貴族社会や“上級国民”の間では、強い性別は優遇され権力を持ち部下や他人に横柄に振る舞うことができる。しかし、普通の階層や下級の社会では……“弱者獣神体”に対しては、
『獣神体なんだから、雑に扱ってももいいでしょ?』
『強い性別なんだから、ネタにしてもいいだろ?』
『嫌な仕事を、きつい業務を押し付けても、長い時間働かせたとしても、無理をさせても大丈夫でしょう?……だって、獣神体なんだから……。』
「「「人じゃないみたいに雑に扱っても大丈夫でしょう?……だって、獣神体なんだから!!!」」」
という風潮が蔓延っている。
◇◆◇
ジョンウの生も性別に振り回されてきた。
彼の2人の母は両方とも獣神体に捨てられた人間体だった。両親とも子を孕んだから面倒になり捨てられたのだが。
……そうして生まれたのがジョンウだった。彼は獣神体だが両親とも人間体の家庭で育てられるという極めて特異な幼少期を送った。
いや、彼には両親がいたが、“家庭”なんて高尚なものは無かったし、同じ家に住んでいたが“”育てる”などと当たり前な言い方ができる環境にはいなかった。
本来人間体同士がパートナーになるということはありえない。人間体同士で子供を作ると、ほとんど確実に人間体が産まれてしまう。
つまりわざわざ将来の見込みもない、産んでやった恩も返せないであろう、育ててやった金も返せないであろう“劣等種”を、ただの“負債”を抱えることになる。
だから普通の人間体はそんなことはしない、より勝れた獣神体に取り入ってソイツの金を地位を、力を頼りに生きていく道を目指す。
どれだけ優れた、生まれた瞬間に歓喜の歌を聴いた性別に依存して生きていくかしか考えない。
――本人たちは依存しているのではなく、劣った性に生まれたのだから、正当な権利だと主張しているが――。
だが彼の両親は人間体にありがちな、身体を売りながらの極めて貧しい生活を送っていたが、産まれる前に自分たちの子を殺すことを何故か選ばなかった。獣神体の番のいない人間体にとって“子供”など、鬱陶しいそこらに転がっている塵よりも“迷惑な存在”なのに。
つまるところ彼の両親は自分の子供たちに、自分の夢を押しつけたのだ。換言すると、自分たちとは違って“勝れた性別”として、“優れた生物”として生まれてほしかった。
そして社会競争に勝たせて、自分たちを一生養わせようとしたのだ。
だから彼らは獣神体が生まれたら育て、ノーマルが生まれたら捨て、人間体が生まれたら娼館に売ろうと考えていた。
――そして子供が2人生まれ“4人家族”になったあと、すぐに“3人家族”になった。
◇◆◇
「冗談を言ってる間に準備はできましたか?
……心が練れるまでお待ちしますよ。
……貴方を兵と認めたとは言え、心の準備もできていない相手をいたぶる趣味はありません。」
相手を気遣ったようにいうジョンウ、クレジェンテの涙のなかに自身の境遇を見たのかもしれない。
「準備ができたか……だと?
……いつでも来い……!心の準備なら獣神体に生まれた時からできてる……!!」
相変わらず怯えきっているが、心を拳に纏わせてその心で無理矢理震えを押さえつけたクレジェンテが叫ぶ。
「……あぁ、やっぱり貴方はうつくしい方だ。大変申し訳ない。戦士に対して不粋な質問をしましたね。
……では、参ります――!!」
◇◆◇
きっとこのクレジェンテという方は驚いているだろう。傍目から見れば俺が心も捨て去って直線的に走り寄ってくるのだから。戦闘訓練を積んだマンソンジュ軍士官学校の生徒なら馬鹿に見えるだろう。
だがクソみてぇな家で育ったおかげで、俺は心を隠すのが上手い。既に彼の前方に半円を描くように、俺の心が届くギリギリの距離で、5つ光の心を隠している。
つまり少し闘り合って、後ろに引いたところで実践経験のない彼は、焦って追撃をしようと一步、ただ前に踏み込んでくるだろう。
その一步が命取りだ――!!
――!?!?
眩しい――!!
視界が――!!!
なんだ!?何が起こった!?俺の配っていた心が勝手に爆発した……!!……のか――?
クソッ……眼が……!
何故だ!?
アレは何かにぶつからない限り爆発しない!
この生徒の心か!!
でもどうやって……それも俺が気づかないレベルで――!!
なんの心だ――!?
◇◆◇
クレジェンテがとても静かに言った――
「――どうやら、僕だけじゃなく、貴方も怯えているようですね……?」
※前前回のお話で挿絵枚数の上限を超えてしまったので、前半の絵を削除して後半を増やすか、そのままにするか、少し考えます。
一旦、『小説家になろう』の方には“以降の話も全話挿し絵がついて”います。
https://ncode.syosetu.com/n7285kj/
◇◆◇
声も震え、身体さえビクビクと震えていたが、精一杯の勇気を振り絞って叫ぶ。拳を構えるが見るからにガタガタと震えていて、心すら上手く練れていない。
「当たり前でしょ!?」
「獣神体なんだからアンタがやってよ!!」
「そうだ!いつも獣神体だからって、いい思いしてるだろ!!」
◇◆◇
「……身体が強い性別だから、社会的に責任がある性別だから、パートナーを護らないといけない性別だから、
……そんなクソみたいな理由で塵屑どもに頼られて。
……きっと
『獣神体は泣くもんじゃない。』
と塵みたいな言葉で育てられてきたでしょう。
なのになんで、そんな自分の性別を言い訳にして人を頼ってばかりの塵共を……。
……ふむ……その反応をみるに、こんな“科白”は響いていませんねぇ……?
……そうだ、もっとユーモラスにいきましょうか。人生には“滑稽味”、こころには“愉しみ”、闘いには“楽しさ”が必要ですからね。
……こんな“台詞”はどうですか……?
『獣神体なんだから自分より優先して人間体と子供を優先しろ。』
『獣神体なのにスマートじゃなくて萎えた。』
『獣神体のクセにご飯を奢らないなんてありえない。』
――みたいなことを言いそうな、塵糞共を守るんです?
……すみません……色々と両親……母と母の言葉を思い出してしまって余計な言葉を言いましたかね……?」
震えて涙を流しながら、クレジェンテは言った――
「せっ……性別なんか関係ない、
……僕が此処で逃げたら……きっと自分を許せない。
……他人に
『獣神体らしい人だ。』
なんて言われなくていい。
『獣神体のクセに』
ってずっとイジられてきたけど……!
他人に自分の性別を認めてもらおうなんて思ってない。
――自分がっ、僕が僕を誇れるように生きたいだけだ。獣神体だから闘うんじゃない!
……人間だから、護るんだ……!!
“この世全員”が僕を馬鹿にしてくるから!
アイツラに媚びた笑いを浮かべて
『僕もこんな自分は嫌いだ』
って迎合でもするか?
ちがう!断じてちがう!!
自分だけは誇れる、自分自身を誇れる!!
誰に馬鹿にされても!
自分だけは自分の味方でいるんだ!!
いられるんだ!!
だって自分だけはいつだって一緒にいてくれるんだから!!
だから僕は戦う!
自分の誇れる人間で――!!
――“人間”でいるために!!!」
ローブの男、ジョンウが相手を強敵と認めたように言った。
「――貴方は、うつくしい人間だ。その美に敬意を払い、“実践経験のない学生”としてではなく、“兵”として全力でお相手いたしましょう……!」
◇◆◇
クレジェンテは虐められるぐらいには、獣神体としては強くない。身体能力はあるが、心の量が少ない。
こころが狭いのだ。
どれだけこころの内側で自尊心を育てて精神を保とうとしても、知り合いに毎日毎日コケにされてたら、新緑の葉なんぞ外側から腐る。
イジられキャラとして、周りの人間に
『あぁ、コイツは“馬鹿にしてもいいやつ”なんだ。』
と一度思われたら終わってしまう。
彼の生はそんなものだった。なまじ社会的に、肉体的に、“強いとされている性別”に生まれてしまったのがよくなかった。
◇◆◇
だからクレジェンテは決して自分がイジメられているとは、言わなかった。いじめられていると言った。そうして無意識に自分を守っていたのだ。
『僕は“嫌われているからイジメられている”んじゃない……“愛のあるいじめ”をされていだけだ』と。
そんなわけないことは彼にだって分かっていた、理解ってしまっていた。
だけどそう思わないと頭がおかしくなりそうだったのだ。
――いや、そう思ったところで虐められた人間は……。
◇◆◇
貴族社会や“上級国民”の間では、強い性別は優遇され権力を持ち部下や他人に横柄に振る舞うことができる。しかし、普通の階層や下級の社会では……“弱者獣神体”に対しては、
『獣神体なんだから、雑に扱ってももいいでしょ?』
『強い性別なんだから、ネタにしてもいいだろ?』
『嫌な仕事を、きつい業務を押し付けても、長い時間働かせたとしても、無理をさせても大丈夫でしょう?……だって、獣神体なんだから……。』
「「「人じゃないみたいに雑に扱っても大丈夫でしょう?……だって、獣神体なんだから!!!」」」
という風潮が蔓延っている。
◇◆◇
ジョンウの生も性別に振り回されてきた。
彼の2人の母は両方とも獣神体に捨てられた人間体だった。両親とも子を孕んだから面倒になり捨てられたのだが。
……そうして生まれたのがジョンウだった。彼は獣神体だが両親とも人間体の家庭で育てられるという極めて特異な幼少期を送った。
いや、彼には両親がいたが、“家庭”なんて高尚なものは無かったし、同じ家に住んでいたが“”育てる”などと当たり前な言い方ができる環境にはいなかった。
本来人間体同士がパートナーになるということはありえない。人間体同士で子供を作ると、ほとんど確実に人間体が産まれてしまう。
つまりわざわざ将来の見込みもない、産んでやった恩も返せないであろう、育ててやった金も返せないであろう“劣等種”を、ただの“負債”を抱えることになる。
だから普通の人間体はそんなことはしない、より勝れた獣神体に取り入ってソイツの金を地位を、力を頼りに生きていく道を目指す。
どれだけ優れた、生まれた瞬間に歓喜の歌を聴いた性別に依存して生きていくかしか考えない。
――本人たちは依存しているのではなく、劣った性に生まれたのだから、正当な権利だと主張しているが――。
だが彼の両親は人間体にありがちな、身体を売りながらの極めて貧しい生活を送っていたが、産まれる前に自分たちの子を殺すことを何故か選ばなかった。獣神体の番のいない人間体にとって“子供”など、鬱陶しいそこらに転がっている塵よりも“迷惑な存在”なのに。
つまるところ彼の両親は自分の子供たちに、自分の夢を押しつけたのだ。換言すると、自分たちとは違って“勝れた性別”として、“優れた生物”として生まれてほしかった。
そして社会競争に勝たせて、自分たちを一生養わせようとしたのだ。
だから彼らは獣神体が生まれたら育て、ノーマルが生まれたら捨て、人間体が生まれたら娼館に売ろうと考えていた。
――そして子供が2人生まれ“4人家族”になったあと、すぐに“3人家族”になった。
◇◆◇
「冗談を言ってる間に準備はできましたか?
……心が練れるまでお待ちしますよ。
……貴方を兵と認めたとは言え、心の準備もできていない相手をいたぶる趣味はありません。」
相手を気遣ったようにいうジョンウ、クレジェンテの涙のなかに自身の境遇を見たのかもしれない。
「準備ができたか……だと?
……いつでも来い……!心の準備なら獣神体に生まれた時からできてる……!!」
相変わらず怯えきっているが、心を拳に纏わせてその心で無理矢理震えを押さえつけたクレジェンテが叫ぶ。
「……あぁ、やっぱり貴方はうつくしい方だ。大変申し訳ない。戦士に対して不粋な質問をしましたね。
……では、参ります――!!」
◇◆◇
きっとこのクレジェンテという方は驚いているだろう。傍目から見れば俺が心も捨て去って直線的に走り寄ってくるのだから。戦闘訓練を積んだマンソンジュ軍士官学校の生徒なら馬鹿に見えるだろう。
だがクソみてぇな家で育ったおかげで、俺は心を隠すのが上手い。既に彼の前方に半円を描くように、俺の心が届くギリギリの距離で、5つ光の心を隠している。
つまり少し闘り合って、後ろに引いたところで実践経験のない彼は、焦って追撃をしようと一步、ただ前に踏み込んでくるだろう。
その一步が命取りだ――!!
――!?!?
眩しい――!!
視界が――!!!
なんだ!?何が起こった!?俺の配っていた心が勝手に爆発した……!!……のか――?
クソッ……眼が……!
何故だ!?
アレは何かにぶつからない限り爆発しない!
この生徒の心か!!
でもどうやって……それも俺が気づかないレベルで――!!
なんの心だ――!?
◇◆◇
クレジェンテがとても静かに言った――
「――どうやら、僕だけじゃなく、貴方も怯えているようですね……?」
※前前回のお話で挿絵枚数の上限を超えてしまったので、前半の絵を削除して後半を増やすか、そのままにするか、少し考えます。
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