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婚約破棄
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「リリー・アークライト。すまないが私には他に愛する人が出来た。だから婚約破棄してくれ。」
本日学園の会場で行われていたパーティーを静止させた私の婚約者、ディオン国第2王子のシーザー・コリン様の言葉に、私は意識が遠のくのを感じた。しかしなんとか足に力を入れて、その場にふらつくだけに留める。
「……かしこまりました。」
我が国の第2王子であるシーザー様からの申し出を断れるはずもなく、私は力なく微笑んでそう言った。
シーザー様と私の婚約は12歳から今日まで5年間続いていた。まだ幼さが残っていたシーザー様も、今では見違えるほど端正な男らしい容貌になっている。青みがかった髪に切れ長な力強い黄金な瞳。幼少の頃から王族として恥じぬ教育を受けてきたシーザー様は、容姿頭脳共に素晴らしいお方だった。
恵まれた才能がありながらさらに高みを目指すその精神に、私は自然と惹かれていた。
決して仲が悪いわけではなかった。どちらかと言うと、お互いを尊重しあった私達の関係は良好だった筈なのに。
私は努めて微笑んで、シーザー様が肩を抱くピンク髪の可愛らしい少女を見つめた。
彼女は勝ち誇った顔をして…私を睨んだ。
そして、
「やぁだ、マリンのことそんなに睨まないでくださいッ…。」
なんて庇護欲をそそる女性なのだろう。思わず撫でてしまいたくなる。そう考えると、私にはああいうか弱い女性らしさが足りなかった気がする。
「リリー。私達の愛は本物なんだ。邪魔はしないでくれ。君とのお話もリラックス出来て楽しかったけれど…その、素顔が分からないと私は君がどういう女性なのか分からない。」
私は空気中の汚れに敏感な体質らしく、空気をそのまま取り込まないように常にフェイスベールをつけていた。シーザー様は決して人を見た目で判断する様な方では無いが、きっと隣にいる…男爵令嬢のマリン様にあることないこと吹き込まれたのだろう。
確かに、私の素顔はマリン様のように可愛らしくも、美しくもない。
「邪魔は…致しませんわ。」
婚約破棄を宣言された今、私が邪魔したところでなんの得もない。それよりも、私の心は信じていた人の裏切りによって憔悴していた。
──私達の間にあったものは、本物の愛ではないのね。
シーザー様は私に向かって申し訳なさそうに謝った。しかし私は何も言わずに首を振る。謝られるなんて逆効果でしかない。
「お二人の幸せを願っておりますわ。」
負け惜しみのような発言だが、私は実際に負けたのだ。
私は2人に向かってカーテシーをすると、同情的な視線が刺さる程向けられた会場を後にしようと出口へと向かった……はずだった。
「リリー!」
誰かの声が、まるで壁を一枚隔てたかのような遠くから聞こえて、私の意識は闇に包まれた。
◇◆◇
「お二人の幸せを願っておりますわ。」
最後まで気高く慈愛の微笑みを向けて、指先まで精練されたカーテシーをすると、リリーはその場に崩れ落ちた。
「リリー!」
間一髪でリリーの体を抱きとめ、そのまま彼女を横抱きにする。
呼吸はしているようだ。
ただ、彼女の純情な心はこの仕打ちに耐えられなかったのだ。
ふつふつとどす黒いものが体の中を蠢き、僕の頭は氷点下まで下がった。
まるで会場もそうであるかのように、皆動くことが出来ないでいる。
それ程までに僕の怒りは限界を超えていた。
「アラン・ブラックバーク様…。」
僕の名を呼ぶ声の主──ピンク髪の女はこちらをキラキラした瞳で見つめていた。
見慣れた、恋する女の羨望と自分を見て欲しいという気持ち悪い瞳だ。
「僕達はこれで失礼します。」
「あ、あぁ…。」
僕の口から出た声は思っていた以上に低く、第2王子も気圧されている。しかしそんな事に気づかない馬鹿な女がいた。
「まってください!アラン様!そんな女置いといて、私達と3人で楽しみませんか?」
──嗚呼、確かにリリーはこういう庇護欲をそそる女が好きそうだ。
先程この女を見ていたリリーの瞳を思い出し、思わず頬が緩みそうになる。しかしそれはリリーのことを思い出したからであって、この女は物置の隅のホコリくらいにしか思えない。それにこの女は今、リリーを''そんな女''呼ばわりをした。仮にも男爵令嬢でありながら、公爵令嬢であるリリーを''そんな女''呼ばわりとは。
「どうやら我が国の王室は我がブラックバーク公爵家とアークライト公爵家と敵対なさりたいようだ。」
僕の発言に、その場にいる誰もが青ざめ、息を飲んだ。しかし声は漏らせない。この絶対零度にまで冷えきった会場で声が出せる者などいなかったのだ。
この国の公爵家は僕のブラックバーク家とリリーのアークライト家の2つであり、堅実で仲の良い2つの公爵家が手を組めば、王国に謀反を翻すことなど容易い。だから王室は2つの公爵家を特別優遇している。決して機嫌を損ねることがないようにと。
しかし今、この第2王子は自身の不貞を理由に一方的な婚約破棄をして、アークライト家の大切な一人娘、リリーを傷つけたのである。それは僕達公爵家にとって、到底許される行為ではない。
「待ってくれ!…アラン・ブラックバーク。私の不貞で大変申し訳ない。更になんの罪もない彼女に一男爵令嬢であるマリンが彼女の品位を貶める発言をしたこと、我がディオン国の第2王子である私が謝罪する。マリンの処罰は私に任せてくれ。…どうか穏便に頼む。」
殿下はそう言って深々とお辞儀をした。リリーにはしなかった行為だ。しかし元々第2王子はこうして真摯な性格なのだ。それが今、冷静に考えれば許されないであろう愚行をこうして観衆に晒している。
明日からは見世物以外の何物でもないだろう。
同情するつもりは全くない。だからと言って、ここで事を荒らげるつもりもない。
「私の処罰って…なんのことですか?!私はただアラン様とお話したかっただけなのに!」
たった今、リリーから婚約者を奪った女の発言とは思えない。周囲の人達の視線は既に、この女と殿下に対し軽蔑し批判的なものになっていた。女は気付いていないようだが、殿下は気づいているようで、肩身の狭い思いをしていることだろう。そしてその視線から一刻も早く逃れようと、周りにいる衛兵に女を捕らえるように片手を上げて指示を出した。
僕は女を静かに睨む。
女は息を飲み、そして何を勘違いしたのか頬を赤らめた。
「気色悪い。」
「…え?」
思った時には既に、口に出ていた。
女はその言葉が理解できないのか、フリーズする。
そして女の背後から衛兵が彼女を捕らえるが、僕は目もくれずにリリーを抱いて会場を後にした。
「別邸へ。」
御者にそう伝え、馬車を走らせた。
「リリー。約束は果たしてもらうよ。」
彼女の月のように白い額に口付け、僕は微笑んだ。
本日学園の会場で行われていたパーティーを静止させた私の婚約者、ディオン国第2王子のシーザー・コリン様の言葉に、私は意識が遠のくのを感じた。しかしなんとか足に力を入れて、その場にふらつくだけに留める。
「……かしこまりました。」
我が国の第2王子であるシーザー様からの申し出を断れるはずもなく、私は力なく微笑んでそう言った。
シーザー様と私の婚約は12歳から今日まで5年間続いていた。まだ幼さが残っていたシーザー様も、今では見違えるほど端正な男らしい容貌になっている。青みがかった髪に切れ長な力強い黄金な瞳。幼少の頃から王族として恥じぬ教育を受けてきたシーザー様は、容姿頭脳共に素晴らしいお方だった。
恵まれた才能がありながらさらに高みを目指すその精神に、私は自然と惹かれていた。
決して仲が悪いわけではなかった。どちらかと言うと、お互いを尊重しあった私達の関係は良好だった筈なのに。
私は努めて微笑んで、シーザー様が肩を抱くピンク髪の可愛らしい少女を見つめた。
彼女は勝ち誇った顔をして…私を睨んだ。
そして、
「やぁだ、マリンのことそんなに睨まないでくださいッ…。」
なんて庇護欲をそそる女性なのだろう。思わず撫でてしまいたくなる。そう考えると、私にはああいうか弱い女性らしさが足りなかった気がする。
「リリー。私達の愛は本物なんだ。邪魔はしないでくれ。君とのお話もリラックス出来て楽しかったけれど…その、素顔が分からないと私は君がどういう女性なのか分からない。」
私は空気中の汚れに敏感な体質らしく、空気をそのまま取り込まないように常にフェイスベールをつけていた。シーザー様は決して人を見た目で判断する様な方では無いが、きっと隣にいる…男爵令嬢のマリン様にあることないこと吹き込まれたのだろう。
確かに、私の素顔はマリン様のように可愛らしくも、美しくもない。
「邪魔は…致しませんわ。」
婚約破棄を宣言された今、私が邪魔したところでなんの得もない。それよりも、私の心は信じていた人の裏切りによって憔悴していた。
──私達の間にあったものは、本物の愛ではないのね。
シーザー様は私に向かって申し訳なさそうに謝った。しかし私は何も言わずに首を振る。謝られるなんて逆効果でしかない。
「お二人の幸せを願っておりますわ。」
負け惜しみのような発言だが、私は実際に負けたのだ。
私は2人に向かってカーテシーをすると、同情的な視線が刺さる程向けられた会場を後にしようと出口へと向かった……はずだった。
「リリー!」
誰かの声が、まるで壁を一枚隔てたかのような遠くから聞こえて、私の意識は闇に包まれた。
◇◆◇
「お二人の幸せを願っておりますわ。」
最後まで気高く慈愛の微笑みを向けて、指先まで精練されたカーテシーをすると、リリーはその場に崩れ落ちた。
「リリー!」
間一髪でリリーの体を抱きとめ、そのまま彼女を横抱きにする。
呼吸はしているようだ。
ただ、彼女の純情な心はこの仕打ちに耐えられなかったのだ。
ふつふつとどす黒いものが体の中を蠢き、僕の頭は氷点下まで下がった。
まるで会場もそうであるかのように、皆動くことが出来ないでいる。
それ程までに僕の怒りは限界を超えていた。
「アラン・ブラックバーク様…。」
僕の名を呼ぶ声の主──ピンク髪の女はこちらをキラキラした瞳で見つめていた。
見慣れた、恋する女の羨望と自分を見て欲しいという気持ち悪い瞳だ。
「僕達はこれで失礼します。」
「あ、あぁ…。」
僕の口から出た声は思っていた以上に低く、第2王子も気圧されている。しかしそんな事に気づかない馬鹿な女がいた。
「まってください!アラン様!そんな女置いといて、私達と3人で楽しみませんか?」
──嗚呼、確かにリリーはこういう庇護欲をそそる女が好きそうだ。
先程この女を見ていたリリーの瞳を思い出し、思わず頬が緩みそうになる。しかしそれはリリーのことを思い出したからであって、この女は物置の隅のホコリくらいにしか思えない。それにこの女は今、リリーを''そんな女''呼ばわりをした。仮にも男爵令嬢でありながら、公爵令嬢であるリリーを''そんな女''呼ばわりとは。
「どうやら我が国の王室は我がブラックバーク公爵家とアークライト公爵家と敵対なさりたいようだ。」
僕の発言に、その場にいる誰もが青ざめ、息を飲んだ。しかし声は漏らせない。この絶対零度にまで冷えきった会場で声が出せる者などいなかったのだ。
この国の公爵家は僕のブラックバーク家とリリーのアークライト家の2つであり、堅実で仲の良い2つの公爵家が手を組めば、王国に謀反を翻すことなど容易い。だから王室は2つの公爵家を特別優遇している。決して機嫌を損ねることがないようにと。
しかし今、この第2王子は自身の不貞を理由に一方的な婚約破棄をして、アークライト家の大切な一人娘、リリーを傷つけたのである。それは僕達公爵家にとって、到底許される行為ではない。
「待ってくれ!…アラン・ブラックバーク。私の不貞で大変申し訳ない。更になんの罪もない彼女に一男爵令嬢であるマリンが彼女の品位を貶める発言をしたこと、我がディオン国の第2王子である私が謝罪する。マリンの処罰は私に任せてくれ。…どうか穏便に頼む。」
殿下はそう言って深々とお辞儀をした。リリーにはしなかった行為だ。しかし元々第2王子はこうして真摯な性格なのだ。それが今、冷静に考えれば許されないであろう愚行をこうして観衆に晒している。
明日からは見世物以外の何物でもないだろう。
同情するつもりは全くない。だからと言って、ここで事を荒らげるつもりもない。
「私の処罰って…なんのことですか?!私はただアラン様とお話したかっただけなのに!」
たった今、リリーから婚約者を奪った女の発言とは思えない。周囲の人達の視線は既に、この女と殿下に対し軽蔑し批判的なものになっていた。女は気付いていないようだが、殿下は気づいているようで、肩身の狭い思いをしていることだろう。そしてその視線から一刻も早く逃れようと、周りにいる衛兵に女を捕らえるように片手を上げて指示を出した。
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「…え?」
思った時には既に、口に出ていた。
女はその言葉が理解できないのか、フリーズする。
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