烙印騎士と四十四番目の神・Ⅰ 転生者と英雄編 

赤星 治

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一章 遺跡の魔獣

Ⅰ 転生者のあれこれ

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【神の昇格試練】
 数多いる神の中から適性のある四十四柱の神が集い、あらゆる世界の中から候補となる人間の魂をこの世界の死者の肉体に宿し、『転生者』と呼ばれる人間にして共に試練を乗り越える。
 昇格の条件は神力の総量。最後まで生き残れば昇格出来るのではなく、試練終了時まで集まった神力で昇格が決まる。
 尚、五つの条件達成時に得られる神力の量はかなり多い。

 1 四十四組中、たった一組が生き残る
 2 転生者を殺めて神力を回収
 3 レベル80到達時に提示される、転生者専用試練の達成(個々により内容は異なる)
 4 特定警戒魔獣を十体以上殲滅。
 5 この世界で人徳・人望ある人物となる。


「ってな感じ。あんたが元の世界へ戻って恨みの相手と勝負したいなら、神力を必死になって集めなければならないって事。まぁ、どの試練もかなり困難だからやれる時にやれる事をすれば良いの」
 近くの町は目と鼻の先にある平地でジェイクは説明を受けている。町中で人目を気にして説明を受けるより、こういった場所の方が気安い。
 説明の最中、ジェイクは何気なく季節を感じた。木々の葉の色づきや枯れ具合、気温や匂いなどから秋と思われる。前世の秋の雰囲気と遜色そんしょくなかった。
「その、転生者っつーのか? どういう奴らが選ばれるんだ?」
「色々よ。けして強いとか頭がいいからとかで選ばれる訳じゃないの。あんたにも分かりやすく言うなら、商人でも農民でも、悪人でもなる可能性があるわ。けど、誰でも転生出来る訳じゃないから、まさしく”運”次第ってね」

 さらにベルメアは転生候補となった者達の世界と転生した世界の説明へと進めた。

 転生した世界では、ジェイクがいた世界とは異なる文明や法律、技術や知識、生物や力が存在する。しかし言語は通じるので会話に支障はなく転生者同士も同様である。とはいえ、違う世界の専門用語が翻訳される訳ではないので、会話の途中で単語の意味が通じない場面に遭遇する時もある。
 また、転生先の世界で使われている名称と、元の世界で使わてる名称が同じものもある。
「例えば武器や食料とかぁ……」
 ベルメアは思い出している。
「通貨は違うけど、王様とか兵とか騎士とか、あんたに馴染みあるのも一緒よ。違いとかは旅の道中で知るしかないわね」

 説明が長く、ジェイクは半分程聞き流していた。それよりも、慣れない身体から感じる僅かな違和感が不快であった。”もっと筋力のある肉体なら”と、意識はそこに向いていた。
「なあ、もっといい身体なかったのか? まだ慣れねぇ」
「簡単に言わないでくれる。転生相手に選んだ人間の魂とこの世界の条件に見合った死体同士を結び付けるのがどれだけ奇跡みたいなものか知らないでしょ。さっき川で自分の顔見て、あまり違う感じがしなかったでしょ? 肉体の屈強さとか合わせるのは無理だけど、主に顔が合わなければ成り立たないのよ」
「何でツラなんだ? 死んだ者同士なんだろ?」
「この世界の死者の身体に、別世界の人間の魂を馴染ませるには顔が合うほうが良いの、人相までは無理だけど。転生者が馴染安いと今みたいに急な戦闘でも動きやすい。逆に、まるで違う顔や、性別違いに転生させると、身体が長期間はかなり動かしにくいの。前の身体の体感と違い過ぎるからよ。あと、””死んだ者同士”がどうかって話だけど、正確には縁が切れた者同士ね」
「縁?」
「そ。あんたは前の世界との縁が”死んだ事”によって切れた。その肉体の持ち主も魔獣に襲われて絶命して切れた。あんた達の場合は死んで縁が切れた事になってるけど、他にも禁術に手を出した挙句切れたとか。天涯孤独の果て、多くの人に存在を忘れ去られ、自らが生きてるのを知るのは自身のみ。みたいな奴も縁が切れた類ね」
「けどよ、だったらこのツラでこいつの身内に会ったらどうなるんだ?」
「心配無用よ。転生を果たした時点で本体の人間が生きた存在は一時的に無いモノとなってるから。母親に会おうと、誰か知らない人扱いよ」

 何か言いたげなジェイクにベルメアは補足説明を加えた。
「もっぺん言うけど、”一時的”よ」
 近寄って強調された。
「”この試練中”って解釈してよ。全てが終われば死体も元あった場所に戻るし身内の記憶も戻る。まあ、死者の記憶だから、悲しい事に変わりないけどね」
「生き返らせることは無理なのか?」
「あんたが勝利して願えば可能よ。ただ、あんたの本願は成就されないし、何より、どういう生き方してるか分からない奴の為に、たった一度の奇跡を棒に振るのは愚かな事よ」

 なんとも言えない感情を抱かせながらも、そんな思いは他所に説明は続く。

 転生者には階層が存在する。それは、理解力や備わった特性が基準となり、全五階層まで存在する。
 一階層 この世界の住人同士の転生。元々の宗教上、神に選ばれた者と扱われ、与えられた試練を乗り越えれば願いが叶うと言い伝えられている。扱いやすい。
 二階層 『転生』『転移』という言葉を曖昧であっても理解している者の転生。宗教ではなく、日常生活に置いて、転生・転移の概念が備わっている為、そこそこ扱いやすい。
 三階層 転生・転移の概念は無くとも、魔力の扱い、術の知識、技や武芸など、戦に活用できる習慣を日常に取り入れてる者の転生。世界が変わっても順応しやすい。
 四階層 魔力や術の知識などとは無縁な生き方をしてきた者の転生。順応と転生の理解をさせるのに苦労する。
 五階層 特殊な死に方をした者の転生。部類では四階層とほぼ変わりない。特殊な死に方により、流転憑依を生じさせやすく、試練も過酷なものが多くなる。

「で、俺が五階層ってか……。散々だな。こんな動きにくい状態で過酷な試練ってのを乗り越えれって言ってんだろ?」
「そうよ。着実にレベル……って言っても分かんないよね。つまりは動かしやすくなったり、力が入りやすくなるって事よ。レベル上げて試練を熟すしかないでしょ」
「レベル上げって、どうやるんだよ」
「地道に魔獣や野獣を倒すとか、誰かの弟子になって修業するとかよ」
「はぁ!? 走りこんだり、剣術鍛錬とかじゃねぇのかよ!」
「今の身体では無理ね。特定条件下のみでしか強くなれないんだから」
「おい、もっとまともな身体になんねぇのかよ!」

 ベルメアはジェイクの周りをゆっくり旋回しながら考えた。
 二周して一つの結論を導きだすも、悩ましい表情である。
「なんだ? 何か手はあんのか?」懇願は必死である。
「あまりお勧めできない。やればあんたの身体は確実に戻るけど、危険度が増すわ」
「いいじゃねぇか。どの道、なにしたって過酷な試練しかねぇんだろ?」
 少し間を置いて、観念したベルメアは溜息を吐いて説明した。
「何回かある経過報告時に、主神様へ特典を授かるの。『転生者を受肉させてください』って」
 ジェイクは喜びの表情となった。
「それで万事解決だろ」
「しかし条件が厳しいわ」
「何が厳しいんだ?」

 受肉条件
 1 転生者のレベル20到達。
 2 経過報告時でなければ出来ない。
 3 主神からの特典授与の際、他の神に特典内容が気付かれる場合がある。
 4 受肉後、筋力向上方法は一般世界同様だが、レベル上げより容易ではない。
 5 受肉した者の身体は、一年鍛錬を怠けた状態に匹敵する。

「大まかな説明はこんな所だけど、今詳しく話してもついてこれないでしょ。だから端的に言うと、他の転生者から狙われやすくなるの。分かったら、地道にレベルを」
「よし! 俺を受肉させてくれ!」
 言うだろうと思い驚きは少ないが、ベルメアはより一層脱力した。
「転生体の方が効率的でしょうが!」
「受肉した方が強くなれる! 俺は鍛錬に事欠かねぇ生き方してんだよ!」
「んな根性論どうでもいいわ! 魔獣倒せば強くなれんのよ! あの烙印に慣れてコツコツ倒した方が、一番の近道だって言ってんの!」
「あんな危険物に頼ったら、何が起きっか分かんねぇだろ! 俺を信じて受肉させてくれ! 神様なんだろ!」

 これ以上の言い合いは無駄だと判断したベルメアは諦めた。

「分かった分かった。ステータスボード壊された時点で、あんたがどんな奴かは大体把握出来てたんだけどねぇ。けど、二回目の経過報告でないと無理よ」
「なんでだよ?! 一回目じゃ駄目なのか?」
「時間がね。明後日の明朝だから、あんたの転生先であるこの場所じゃ、条件的にレベル20到達は無理よ、敵が弱いから。二日間休みなしで戦い続けても不可能」
「他の場所へ」
 口答えしようとしたジェイクに、ベルメアは強引に詰め寄った。
「受肉させてやろうってんだから! これ以上口答えすんな! 説明面倒だろうがぁ!」
 ベルメアの凄みに圧倒され、ジェイクは素直に従った。
 一呼吸吐いてベルメアは落ち着いた。
「とりあえず、先の戦いでボロボロだから町で休んで体制を立て直しましょ。これから色々知ってもらわなくちゃならない事も多いんだから」

 ジェイクは素直に従い町へ向かった。
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