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二章 魔眼の病とかつての英雄
Ⅷ ゾアの目的
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ビンセントの身体がゾグマの塊へぶつかると、塊の暴風が容赦なく身体へ当たり続けた。それは、無数の石つぶてが暴風内で飛び交っているようであり、当たる風全てが痛い。
「――があああああああ!!」
辛うじて身体が原型を保ち傷を抑えられているのは、ルバートの魔力の業が薄い衣のように纏わり付いているからである。しかしいくら護られていても、浴びせ続けられる衝撃に耐えきれず身体が壊れるか、魔力の業が尽きて身体が瞬く間に粉々となる。
(――俺様に代われビンセント!)
「……だ、めだ……ぐぅっ! 殺させない……仲間は」
(言ってる場合か馬鹿者!)
ビンセントの全身全霊の抵抗が影響してしまい、ルバートが主導権を握れたのは左手のみであった。しかしそれで十分である。
ルバートは左手を真上突き上げ、空中に赤い炎が燃えさかる槍を出現させた。
【具象術】
高度な物体再現の技。再現出来たとしても長時間維持する事が困難であるため、使用出来る用途は限られている。
出現させた槍でゾグマの塊越しにランディスを貫く計画だった。
(――何?!)
ルバートが驚いたのは、上空に出現させた槍の数である。たった一本を出現させた筈が、数にして十二本の、同形状の槍が浮遊している。今のルバートが本調子であっても同時に五本出現させるのが限界。だから、この異変にはさすがに驚きを隠せなかった。
「やめろルバートぉぉぉ!」
ビンセントはルバートが行おうとすることを察した。だが十二本の出現に驚くルバートの心情までは読めていない。
(ええい、かまわん!)
槍を一斉に落とし、ゾグマの塊へ突き刺した。
「やめろぉぉぉぉ!!!」
ビンセントの叫びも虚しく響き渡る中、槍が塊内へ深く突き刺さり、まるで風船が破裂するかの如くはじけ飛び、辺り一帯に暴風が吹き荒んだ。
離れたところで防壁を構えていたグレミア、スビナ、エベックは、まるで全魔力を吸い取られるかと思われる程に暴風に全力をもって抗った。
しばらくしてようやく風が止むと、塊の本体であったモノが姿を現した。それは、黒と紫の靄が混じって纏わり付いているようである。
本体に十二本の槍が深々と刺さり、刺さり具合を見るからに本体は無事ではいないと窺える。
「……くっそ……ランディス」
疲弊しつつもビンセントは悔しがる。しかしあの状況、こうしなければ自分は死んでおり、ランディスを殺さなければ町の住民にあの奇病が降りかかる。
冷静に物事を考えるとどうしてもやるせなく、ルバートを責めることは出来ない。何も出来ない自分に対する悔しさなのかもしれない。
(気を抜くなよビンセント。ゾアにしてやられた)
「何がしてやられた……だ……」
ルバートの言葉の指すものは、靄が払われたランディス本体にあった。なんと、深々と突き刺さった槍は、身体に届かず砕け散っていたのである。
ランディスは動いている。手を握っては開きを繰り返して動作確認をしている。
「うむ。なかなかに良い身体だ。さすがは十英雄と謳われた者といったところか」
声は紛れもなくゾアであった。
「ゾ……ア、なの、か? ランディスをどうした!」
「吠えるな。何も殺したわけではない。それに貴様らも同様の事をしているだろ? つべこべ言われる筋合いはない」
「ふざけ――……お前さんは少し黙っておれ」
突然ビンセントからルバートへと代わる。
「理解出来んな。感情の昂ぶる本体と強引に入れ替えなどすれば、貴様の負担は大きいだろ? 見捨てればいいものを。よほど気に入ってるのか?」
「さあな。まあ気にするものでもない。今のでビンセントはかなり疲弊した。少しの無理も大して俺様に影響はないのでな」
「とはいえ、実体化して現われんということは……さてはルバート、貴様もなかなかに疲弊しているだろ」
見事に見抜かれた。現状では挑発的な軽口もたたけない。
ゾアはルバートの様子が愉快に思い、口元に笑みを浮かべた。
「図星か……。まあいい。我もこうして大技を終えた後で貴様らと似たようなものだ。こう見えてようやく『動けるだけ』と言っておこう。今は貴様らが攻撃してこんかぎり何も出来ん」
「先の”筋書き”云々という話が関係してると見るが、……何をしようとしているか教えて貰えると有り難い」
「どうということはない。”災禍の舞台作りの役”を真っ当するだけだ」
怪訝な表情でルバートは見る。
「こう見えて縛りがきつくてな。我は我なりに苦労性なのだぞ。だが……」卑しい眼で見る。「貴様らも“素材”として申し分ない。素晴らしい災禍を演出してくれよ」
疑問しか残らない発言の後、ゾアの周りにゾグマの竜巻が出現した。
ルバートが防壁で防ごうとするが、魔力が切れていて踏ん張るのが精一杯であった。幸い、竜巻はゾアの姿を隠すだけであって、害はない。
「時期が来るまで生き延びろよ素材共」
捨て台詞を吐かれ、竜巻が消えるとゾアも消えた。
ルバートも限界に達したのか、主導権がビンセントと代わる。
「おいルバート! どういうことだ!」
(すまんな……話は……後……だ)
声が切れた。
ビンセントは不安に思うもルバートの存在は感じるため、消えていない事は窺えた。
間もなくしてビンセントにも急激な疲労と眠気が襲い、抗えずに気を失った。
「――があああああああ!!」
辛うじて身体が原型を保ち傷を抑えられているのは、ルバートの魔力の業が薄い衣のように纏わり付いているからである。しかしいくら護られていても、浴びせ続けられる衝撃に耐えきれず身体が壊れるか、魔力の業が尽きて身体が瞬く間に粉々となる。
(――俺様に代われビンセント!)
「……だ、めだ……ぐぅっ! 殺させない……仲間は」
(言ってる場合か馬鹿者!)
ビンセントの全身全霊の抵抗が影響してしまい、ルバートが主導権を握れたのは左手のみであった。しかしそれで十分である。
ルバートは左手を真上突き上げ、空中に赤い炎が燃えさかる槍を出現させた。
【具象術】
高度な物体再現の技。再現出来たとしても長時間維持する事が困難であるため、使用出来る用途は限られている。
出現させた槍でゾグマの塊越しにランディスを貫く計画だった。
(――何?!)
ルバートが驚いたのは、上空に出現させた槍の数である。たった一本を出現させた筈が、数にして十二本の、同形状の槍が浮遊している。今のルバートが本調子であっても同時に五本出現させるのが限界。だから、この異変にはさすがに驚きを隠せなかった。
「やめろルバートぉぉぉ!」
ビンセントはルバートが行おうとすることを察した。だが十二本の出現に驚くルバートの心情までは読めていない。
(ええい、かまわん!)
槍を一斉に落とし、ゾグマの塊へ突き刺した。
「やめろぉぉぉぉ!!!」
ビンセントの叫びも虚しく響き渡る中、槍が塊内へ深く突き刺さり、まるで風船が破裂するかの如くはじけ飛び、辺り一帯に暴風が吹き荒んだ。
離れたところで防壁を構えていたグレミア、スビナ、エベックは、まるで全魔力を吸い取られるかと思われる程に暴風に全力をもって抗った。
しばらくしてようやく風が止むと、塊の本体であったモノが姿を現した。それは、黒と紫の靄が混じって纏わり付いているようである。
本体に十二本の槍が深々と刺さり、刺さり具合を見るからに本体は無事ではいないと窺える。
「……くっそ……ランディス」
疲弊しつつもビンセントは悔しがる。しかしあの状況、こうしなければ自分は死んでおり、ランディスを殺さなければ町の住民にあの奇病が降りかかる。
冷静に物事を考えるとどうしてもやるせなく、ルバートを責めることは出来ない。何も出来ない自分に対する悔しさなのかもしれない。
(気を抜くなよビンセント。ゾアにしてやられた)
「何がしてやられた……だ……」
ルバートの言葉の指すものは、靄が払われたランディス本体にあった。なんと、深々と突き刺さった槍は、身体に届かず砕け散っていたのである。
ランディスは動いている。手を握っては開きを繰り返して動作確認をしている。
「うむ。なかなかに良い身体だ。さすがは十英雄と謳われた者といったところか」
声は紛れもなくゾアであった。
「ゾ……ア、なの、か? ランディスをどうした!」
「吠えるな。何も殺したわけではない。それに貴様らも同様の事をしているだろ? つべこべ言われる筋合いはない」
「ふざけ――……お前さんは少し黙っておれ」
突然ビンセントからルバートへと代わる。
「理解出来んな。感情の昂ぶる本体と強引に入れ替えなどすれば、貴様の負担は大きいだろ? 見捨てればいいものを。よほど気に入ってるのか?」
「さあな。まあ気にするものでもない。今のでビンセントはかなり疲弊した。少しの無理も大して俺様に影響はないのでな」
「とはいえ、実体化して現われんということは……さてはルバート、貴様もなかなかに疲弊しているだろ」
見事に見抜かれた。現状では挑発的な軽口もたたけない。
ゾアはルバートの様子が愉快に思い、口元に笑みを浮かべた。
「図星か……。まあいい。我もこうして大技を終えた後で貴様らと似たようなものだ。こう見えてようやく『動けるだけ』と言っておこう。今は貴様らが攻撃してこんかぎり何も出来ん」
「先の”筋書き”云々という話が関係してると見るが、……何をしようとしているか教えて貰えると有り難い」
「どうということはない。”災禍の舞台作りの役”を真っ当するだけだ」
怪訝な表情でルバートは見る。
「こう見えて縛りがきつくてな。我は我なりに苦労性なのだぞ。だが……」卑しい眼で見る。「貴様らも“素材”として申し分ない。素晴らしい災禍を演出してくれよ」
疑問しか残らない発言の後、ゾアの周りにゾグマの竜巻が出現した。
ルバートが防壁で防ごうとするが、魔力が切れていて踏ん張るのが精一杯であった。幸い、竜巻はゾアの姿を隠すだけであって、害はない。
「時期が来るまで生き延びろよ素材共」
捨て台詞を吐かれ、竜巻が消えるとゾアも消えた。
ルバートも限界に達したのか、主導権がビンセントと代わる。
「おいルバート! どういうことだ!」
(すまんな……話は……後……だ)
声が切れた。
ビンセントは不安に思うもルバートの存在は感じるため、消えていない事は窺えた。
間もなくしてビンセントにも急激な疲労と眠気が襲い、抗えずに気を失った。
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