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三章 異界の空中庭園
Ⅷ 今後を考えて
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スビナとグレミアから魔力を流してもらい、ようやく動けるようになったルバート(ビンセントの身体のまま)だが、ボリーグレスの宿へ着くと緊張の糸が切れたようにベッドへ倒れてそのまま寝入ってしまった。
翌夕方、ルバートはようやく目を覚ます。
「えーっと……、ルバートでいいのかしら?」
エベックに聞かれ、気怠そうな様子を露わに「ああ」と返答される。
上体を起こすと、別室にいるグレミアとスビナをエベックが呼びに向かった。
一同が揃う頃、ルバートはビンセントの状態を感じ取れた。
「ルバート、ビンセントの容態は?」
グレミアに聞かれると馬車での怒りは治まっているものの、若干の緊張具合を感じ取れる。
「とりあえず生存はしている。が、まだ意識は戻る気配がない。あんな大技を使い続けたのだから当然だ」
異空間での出来事はエベックが既に説明し終えている。
「ビンセントがそのような大技を使える心当たりは貴方にないのですか?」
「無いな。むしろ俺様の方が聞きたいぐらいだ。おっと、一応言っておくが、魔力の業の影響で使えたのでもないからな」
二人の間で不穏な空気を感じ取り、スビナが気まずいながらも質問する。
「貴方から見て心当たりとなる”何か”は分かっていますか?」
「さあな。あの森でゾグマの塊にあてられたとも考えたが、それにしてもあの力が強すぎる。もっと自然に結びつける要因があるとすれば、ゾアがぬかしていた“素材”だろうな」
「災禍の根源である彼が言ったんですもの、確かに自然といえば自然だけど……それって、ビン様が昔から素材の素質があったから言ったことじゃないの?」
「おそらくはそうだろうな。ゾアが魔女からこの姿になった俺様を指していると思ったが、どうやら俺様の力量をも遙かに超える何かがビンセントの中には存在するのだろう。ゾアがあの力に着目しないはずが無い」
あまりに途方もない話にグレミアからため息が漏れた。
「埒が明きませんね。素材について調べるにも情報が少なすぎますし、何よりビンセントの容態がはっきりしません。ルバートが憑いてるから身体機能は問題ないでしょうが、大技の影響がどれほどの反動か、そしてどういった変化を起こすか、ソレを知ってから本格的に調べるしかないようです」
グレミアの話の区切りとばかりにスビナが提案した。
「あの、エベックさんからドーマの話を聞いてから考えたのですが、ガーディアンと接触するのはどうでしょうか?」
ガーディアン。その存在は”伝説上の英雄”であるとエベックとグレミアは認識している。
「スビナ、それは古代人が記した偶像の英雄ですよ」
「いえ違います。ガーディアンの伝説は不明瞭な点が多く情報や出現頻度が少ないので子供だましのように思われがちですが、確かに存在はします。巫術を用いた星読みでは、ガーディアンが現われる時期は確定していますし。伝説では、巫術がガーディアンと接点を持つのに最良の術とされ編み出された技ですから」
「へぇ~、そっち方面の術って秘密主義ばかりだから、そんな事実があったなんて驚きよぉ。ルバートは知ってたの?」
「当然だ。巫術は神や精霊などと繋がり、あらゆる植物の魔力に干渉する。いわばこの世界を感じ取り作用を及ぼす術だ。ガーディアンの伝承は突如この世界に召喚される現象。巫女なら出現の気を読めるのではないか?」
巫術に関して秘密とされている部分まで語られそうで、スビナは不安を抱いた。
「どこで知ったのですか。巫女の情報は秘匿されている事が多々あります。貴方の反応は全てを知っているように見えますが」
「巫女は魔女と反する存在だ。とりわけ【大精霊】など、魔女が反応を示さん筈もないだろ」
「魔女になった時、大精霊様の事まで知り得たというのですか」
「正確には“感じた”だ。世界に存在する魔力の流れを体感し、ガーディアンの存在に関する力のうねりを感じた。力の流れを読み、予測を立てるなどはそちらの専売特許だろ。大雑把に知った程度で細かくは知らん」
それでもスビナのルバートに対する猜疑心は薄れない。とはいえ、このまま疑っていても話が進まなく、とりあえずは腹の内に燻る思いを抑えた。
「本題に戻します。今から一月前後の期間、この世界のあちこちにガーディアンが現われると大精霊様から予言を賜りました。言い伝え通りでしたら、ガーディアンには我々が考えつかない力を備えていると伝えられてますが、何よりもゾアを相手にするなら協力してもらう方が良いかと思います」
「ですがスビナ、ガーディアンが必ずしも悪を成敗する存在とは限りません。言い伝えでは善良面だけが目立ちすぎ、我々に害をなす存在という可能性が皆無に等しい。一概に信じるのはどうかと」
ルバートは感心した。
「ほう。冷静に物事を見る目があるな」
「各国の魔女を倒した方々が全て善良ではなく、奇人変人などもいますので。……それに、貴方たちを見ていると……」
「ああ、そうよねぇ」
三人から見られたルバートから「やれやれ」と呟きが漏れた。
「話を戻します。ガーディアンの計画などは会ってみなければ分かりませんが、その力を欲する者達は数多くいます。見つけ次第交渉し、協力を得る方がよろしいかと」
エベックは腕を組み、小首を傾げた。
「そんなにあちこちでガーディアンを信じてるわけ?」
「公にはなっておりませんが、国によっては専属の巫女や星読みの術師などが調べています。ですので、会えれば、もしかすれば別の国の方々と争奪戦になる可能性も考えられます」
現状、ゾアと対抗する力不足は明白。そして近い将来ゾアの災禍も控えているなら、未知の力を備えているガーディアンの存在は必要と考えられた。
この時期にビンセントから謎の力が目覚めたのも気がかりでしかない。
「では、この一ヶ月で今後の事を計画し、手を考える期間といたしましょう。ルバート、貴方にも協力してもらいますよ」
「監視されるのも大所帯で行動する気も無いぞ。自由に行動出来る事を前提であれば了承しよう」
「無論です。ビンセントはともかく、私は貴方を完全に信用はしてませんので」
グレミアがルバートに向かって口を開くと、どこか重たい空気が漂った。
翌夕方、ルバートはようやく目を覚ます。
「えーっと……、ルバートでいいのかしら?」
エベックに聞かれ、気怠そうな様子を露わに「ああ」と返答される。
上体を起こすと、別室にいるグレミアとスビナをエベックが呼びに向かった。
一同が揃う頃、ルバートはビンセントの状態を感じ取れた。
「ルバート、ビンセントの容態は?」
グレミアに聞かれると馬車での怒りは治まっているものの、若干の緊張具合を感じ取れる。
「とりあえず生存はしている。が、まだ意識は戻る気配がない。あんな大技を使い続けたのだから当然だ」
異空間での出来事はエベックが既に説明し終えている。
「ビンセントがそのような大技を使える心当たりは貴方にないのですか?」
「無いな。むしろ俺様の方が聞きたいぐらいだ。おっと、一応言っておくが、魔力の業の影響で使えたのでもないからな」
二人の間で不穏な空気を感じ取り、スビナが気まずいながらも質問する。
「貴方から見て心当たりとなる”何か”は分かっていますか?」
「さあな。あの森でゾグマの塊にあてられたとも考えたが、それにしてもあの力が強すぎる。もっと自然に結びつける要因があるとすれば、ゾアがぬかしていた“素材”だろうな」
「災禍の根源である彼が言ったんですもの、確かに自然といえば自然だけど……それって、ビン様が昔から素材の素質があったから言ったことじゃないの?」
「おそらくはそうだろうな。ゾアが魔女からこの姿になった俺様を指していると思ったが、どうやら俺様の力量をも遙かに超える何かがビンセントの中には存在するのだろう。ゾアがあの力に着目しないはずが無い」
あまりに途方もない話にグレミアからため息が漏れた。
「埒が明きませんね。素材について調べるにも情報が少なすぎますし、何よりビンセントの容態がはっきりしません。ルバートが憑いてるから身体機能は問題ないでしょうが、大技の影響がどれほどの反動か、そしてどういった変化を起こすか、ソレを知ってから本格的に調べるしかないようです」
グレミアの話の区切りとばかりにスビナが提案した。
「あの、エベックさんからドーマの話を聞いてから考えたのですが、ガーディアンと接触するのはどうでしょうか?」
ガーディアン。その存在は”伝説上の英雄”であるとエベックとグレミアは認識している。
「スビナ、それは古代人が記した偶像の英雄ですよ」
「いえ違います。ガーディアンの伝説は不明瞭な点が多く情報や出現頻度が少ないので子供だましのように思われがちですが、確かに存在はします。巫術を用いた星読みでは、ガーディアンが現われる時期は確定していますし。伝説では、巫術がガーディアンと接点を持つのに最良の術とされ編み出された技ですから」
「へぇ~、そっち方面の術って秘密主義ばかりだから、そんな事実があったなんて驚きよぉ。ルバートは知ってたの?」
「当然だ。巫術は神や精霊などと繋がり、あらゆる植物の魔力に干渉する。いわばこの世界を感じ取り作用を及ぼす術だ。ガーディアンの伝承は突如この世界に召喚される現象。巫女なら出現の気を読めるのではないか?」
巫術に関して秘密とされている部分まで語られそうで、スビナは不安を抱いた。
「どこで知ったのですか。巫女の情報は秘匿されている事が多々あります。貴方の反応は全てを知っているように見えますが」
「巫女は魔女と反する存在だ。とりわけ【大精霊】など、魔女が反応を示さん筈もないだろ」
「魔女になった時、大精霊様の事まで知り得たというのですか」
「正確には“感じた”だ。世界に存在する魔力の流れを体感し、ガーディアンの存在に関する力のうねりを感じた。力の流れを読み、予測を立てるなどはそちらの専売特許だろ。大雑把に知った程度で細かくは知らん」
それでもスビナのルバートに対する猜疑心は薄れない。とはいえ、このまま疑っていても話が進まなく、とりあえずは腹の内に燻る思いを抑えた。
「本題に戻します。今から一月前後の期間、この世界のあちこちにガーディアンが現われると大精霊様から予言を賜りました。言い伝え通りでしたら、ガーディアンには我々が考えつかない力を備えていると伝えられてますが、何よりもゾアを相手にするなら協力してもらう方が良いかと思います」
「ですがスビナ、ガーディアンが必ずしも悪を成敗する存在とは限りません。言い伝えでは善良面だけが目立ちすぎ、我々に害をなす存在という可能性が皆無に等しい。一概に信じるのはどうかと」
ルバートは感心した。
「ほう。冷静に物事を見る目があるな」
「各国の魔女を倒した方々が全て善良ではなく、奇人変人などもいますので。……それに、貴方たちを見ていると……」
「ああ、そうよねぇ」
三人から見られたルバートから「やれやれ」と呟きが漏れた。
「話を戻します。ガーディアンの計画などは会ってみなければ分かりませんが、その力を欲する者達は数多くいます。見つけ次第交渉し、協力を得る方がよろしいかと」
エベックは腕を組み、小首を傾げた。
「そんなにあちこちでガーディアンを信じてるわけ?」
「公にはなっておりませんが、国によっては専属の巫女や星読みの術師などが調べています。ですので、会えれば、もしかすれば別の国の方々と争奪戦になる可能性も考えられます」
現状、ゾアと対抗する力不足は明白。そして近い将来ゾアの災禍も控えているなら、未知の力を備えているガーディアンの存在は必要と考えられた。
この時期にビンセントから謎の力が目覚めたのも気がかりでしかない。
「では、この一ヶ月で今後の事を計画し、手を考える期間といたしましょう。ルバート、貴方にも協力してもらいますよ」
「監視されるのも大所帯で行動する気も無いぞ。自由に行動出来る事を前提であれば了承しよう」
「無論です。ビンセントはともかく、私は貴方を完全に信用はしてませんので」
グレミアがルバートに向かって口を開くと、どこか重たい空気が漂った。
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