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♯10
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タクリスが「家に行きたい」と言い出したため、タクリスと共に帰宅した。
帰宅してすぐにテュータと共に風呂へ直行。生臭くて鼻が使えなくなりそう……。
「ったく。世話焼かせんなよなぁ。テュータ。服も一緒に洗わなきゃじゃねぇか」
そう言ってテュータの髪をたっぷりの泡で洗う。真っ白のはずの泡が、すぐに真っ赤になってくるんだけど。カムバック黄色い髪。
ざっぱぁ。
お湯で流してもなかなか取れない。なんで……。
「おいエリュス」
風呂の扉の向こうから、悩んでいる俺にタクリスが言葉をかける。
「服はもう洗ったか?」
「え? もう洗った。けど血取れなかった……」
そう返答する。すると、タクリスは変なことを聞いてきた。まったく俺には想像できないことをポロっと。
「お前、服、お湯で洗ったか?」
「……え? うん。洗った」
「それだとお前、血固まって取れなくなんぞ」
……え? なんだって? 固まるの? 血が?
「衣服についた血液は、普通は水で洗うんだぜ。エリュス」
「え! 嘘! なんで教えてくんなかったのさぁ!」
チキショオ! そうだったのかよおおお! せっかくの真っ白い服が今じゃ赤黒い服になっちまったじゃねぇかよおおお!
「オレが言わなかったのも悪かったが、ポンコツでもそれくらいは知っとけよ」
「ポンコツだから知らないんじゃないの!?」
「いや威張んなよ」
「エリュス。はやくあらいおわって。おなかすいた。ぽんぽんぺこぺこ」
赤色を帯びた泡にまみれたテュータから、飯と風呂を終了させろの要求がきた。すいませんねぇ! ほんとに!
「新しい服でも買ってやりゃいいじゃねぇか。いつも一緒の服じゃ女子は泣くぜ。経験上な」
「経験上……? それって付き合っ――」
「ぽんぽんぺこぺこ!」
テュータの鉄拳が飛んできた。ぶほぁっ! コノヤロオ俺がどんな思いしてお前を洗ったと思ってやがる! ちぃとは考えろよ! まったく……!
飯は作るけどよ!
一緒に風呂から出てきた。およそ1時間は風呂にいたことになるな。外はどっぷり夜景色である。フクロウも呆れてるぜきっと。
部屋に行くと、そこには机に手を置いた状態でじっと待機しているタクリスがいた。なにしてんの?
そして一言。
「腹減った」
うーんこっちも駄々こねやがんのか? 問題人物が2人に増えた。いや、3人か(俺含め)。
髪を乾かし終えたテュータも、開口一番。もちろん。
「オムオム」
でしょうね……。もうツッコむ気力もねぇよ……。
「つーかさ。お前、ロリの服、明日買いに行ってやれよ。ちゃんと。卵料理ばっかに金つぎ込まねぇで、いっぱい買ってやれよ」
「……わかってるよ……」
とりあえずテュータの服は、一応俺の小さい時の服が偶然残っていたから、それを着させた。青っぽいつなぎに、よれよれになりかけの白いTシャツ。両者ボロっこい。
「買うっつってもなあ……どんなの買えばいいんだよ、女子の服なんて……」
俺がテュータの服の好みが分からないのをいいことに、タクリスがにまぁっと笑い、
「なんだったらお姫様みたいなドレス買ってもらいたいよなぁ。すっげぇ高いの」
「どれす! テュータどれすほしい! エリュス買って!」
「あとは……前みたいなのもいるだろ~。あと、寝巻きもいるよなぁ~。あ、靴! 靴も買ってもらえ~。ドレスと一緒に可愛い靴。すっげぇ高いの」
「くつ! テュータくつほしい! エリュス買って!」
「ま、ま、待て待て! そんな買えねぇよ! 俺ほぼニートに近いやつなんだよ!?」
そうだ! 俺も今着てる服以外持ってないんだよ! 寝巻きなんてタンクトップとトランクスオンリーだし! ネグリジェとか、ローブとか、そうそう着られねぇよ!
「「えー」」(不満)
「お・ま・え・ら!」(怒)
テュータに便乗してタクリスも、買ってほしいアピールをする。こいつら……。
俺に金たかるのプロかよ! 1回目だけど! まだ!
「もうやめ! この話! 明日の話は明日にするの! もう飯にする!」
「オムオム!」
テュータの目がキラキラになる。
今日という今日はテュータの無邪気さに救われたぜ……。ありがとう無邪気……。
「オレもオムライスがいいな。久しぶりにお前の飯食いたい」
タクリスの便乗はこういうところで使ってほしい……。切実に……。
「お前ら……頼ってくれるのは嬉しいけど、まさか俺だけ働かせるつもりなのかよ」
「うん。だってエリュス飯しか作れねぇじゃん。しかも卵料理だけ」
「いぇす。テュータをいたわれ」
「テュータ。お前は6歳のくせに老人みたいなこと言うな」
前もこんなくだりなかったか……? 老人くだり……。
呆れながら台所へ行こうとすると、テュータが椅子から降りて俺についてきた。
何? 手伝ってくれるの? そう淡く期待したその時、
「いたわれっ!」
振り返った瞬間に特攻してきてみぞおちに直行。
「ぶごおおあ゛っ! な、なにひたのおまえっ!」
俺の上にまたがるテュータはすっごく怒っている。え、なんでなんで!?
「あーあーあー。ご近所いなくてよかったなぁコレ。テメェの声すげぇ響く」
苦笑しながら耳をふさぐタクリスにさらにイラっとする。悪かったなうるさくて!
「い・た・わ・れ!」
一文字一文字に合わせてぽかぽか殴ってくるテュータ。6歳児とは思えない力の強さなんだけれど!? オマエ本当に幼女か!? どすどす内臓に響くんですけど!? 五臓六腑がHELPだしてます!!
「わかったからどいてくれ! 飯作るし布団やるし風呂も貸切っていいから! 頼む! どいて! オムライス作るから! いたわるから!」
「オムオム」
オムライスに免じて許してくれた。有り難うオムライス。このご恩は一生忘れません。
「じゃあオレもいたわって?」
「タクリスは却下」
「お買い得の27歳だけど」
これも前に聞いたんだけど……。
「買わん。却下っつってんじゃん」
台所にもう一回戻って手を洗う。タクリスは黙ったまま突っ立っている。
すると、
《魔能力開放》
そうつぶやいた。
(まずい。やらかした……!)
タクリス=サヴァンスタ。
こいつは普段落ち着いてるっちゃあ落ち着いているが、怒ったときに必ず自身の魔能力を使って相手を謝罪させる、とてつもなく面倒な魔法使いであり、勇者であるのだ。
……とぅーびーこんてにゅーっ!
帰宅してすぐにテュータと共に風呂へ直行。生臭くて鼻が使えなくなりそう……。
「ったく。世話焼かせんなよなぁ。テュータ。服も一緒に洗わなきゃじゃねぇか」
そう言ってテュータの髪をたっぷりの泡で洗う。真っ白のはずの泡が、すぐに真っ赤になってくるんだけど。カムバック黄色い髪。
ざっぱぁ。
お湯で流してもなかなか取れない。なんで……。
「おいエリュス」
風呂の扉の向こうから、悩んでいる俺にタクリスが言葉をかける。
「服はもう洗ったか?」
「え? もう洗った。けど血取れなかった……」
そう返答する。すると、タクリスは変なことを聞いてきた。まったく俺には想像できないことをポロっと。
「お前、服、お湯で洗ったか?」
「……え? うん。洗った」
「それだとお前、血固まって取れなくなんぞ」
……え? なんだって? 固まるの? 血が?
「衣服についた血液は、普通は水で洗うんだぜ。エリュス」
「え! 嘘! なんで教えてくんなかったのさぁ!」
チキショオ! そうだったのかよおおお! せっかくの真っ白い服が今じゃ赤黒い服になっちまったじゃねぇかよおおお!
「オレが言わなかったのも悪かったが、ポンコツでもそれくらいは知っとけよ」
「ポンコツだから知らないんじゃないの!?」
「いや威張んなよ」
「エリュス。はやくあらいおわって。おなかすいた。ぽんぽんぺこぺこ」
赤色を帯びた泡にまみれたテュータから、飯と風呂を終了させろの要求がきた。すいませんねぇ! ほんとに!
「新しい服でも買ってやりゃいいじゃねぇか。いつも一緒の服じゃ女子は泣くぜ。経験上な」
「経験上……? それって付き合っ――」
「ぽんぽんぺこぺこ!」
テュータの鉄拳が飛んできた。ぶほぁっ! コノヤロオ俺がどんな思いしてお前を洗ったと思ってやがる! ちぃとは考えろよ! まったく……!
飯は作るけどよ!
一緒に風呂から出てきた。およそ1時間は風呂にいたことになるな。外はどっぷり夜景色である。フクロウも呆れてるぜきっと。
部屋に行くと、そこには机に手を置いた状態でじっと待機しているタクリスがいた。なにしてんの?
そして一言。
「腹減った」
うーんこっちも駄々こねやがんのか? 問題人物が2人に増えた。いや、3人か(俺含め)。
髪を乾かし終えたテュータも、開口一番。もちろん。
「オムオム」
でしょうね……。もうツッコむ気力もねぇよ……。
「つーかさ。お前、ロリの服、明日買いに行ってやれよ。ちゃんと。卵料理ばっかに金つぎ込まねぇで、いっぱい買ってやれよ」
「……わかってるよ……」
とりあえずテュータの服は、一応俺の小さい時の服が偶然残っていたから、それを着させた。青っぽいつなぎに、よれよれになりかけの白いTシャツ。両者ボロっこい。
「買うっつってもなあ……どんなの買えばいいんだよ、女子の服なんて……」
俺がテュータの服の好みが分からないのをいいことに、タクリスがにまぁっと笑い、
「なんだったらお姫様みたいなドレス買ってもらいたいよなぁ。すっげぇ高いの」
「どれす! テュータどれすほしい! エリュス買って!」
「あとは……前みたいなのもいるだろ~。あと、寝巻きもいるよなぁ~。あ、靴! 靴も買ってもらえ~。ドレスと一緒に可愛い靴。すっげぇ高いの」
「くつ! テュータくつほしい! エリュス買って!」
「ま、ま、待て待て! そんな買えねぇよ! 俺ほぼニートに近いやつなんだよ!?」
そうだ! 俺も今着てる服以外持ってないんだよ! 寝巻きなんてタンクトップとトランクスオンリーだし! ネグリジェとか、ローブとか、そうそう着られねぇよ!
「「えー」」(不満)
「お・ま・え・ら!」(怒)
テュータに便乗してタクリスも、買ってほしいアピールをする。こいつら……。
俺に金たかるのプロかよ! 1回目だけど! まだ!
「もうやめ! この話! 明日の話は明日にするの! もう飯にする!」
「オムオム!」
テュータの目がキラキラになる。
今日という今日はテュータの無邪気さに救われたぜ……。ありがとう無邪気……。
「オレもオムライスがいいな。久しぶりにお前の飯食いたい」
タクリスの便乗はこういうところで使ってほしい……。切実に……。
「お前ら……頼ってくれるのは嬉しいけど、まさか俺だけ働かせるつもりなのかよ」
「うん。だってエリュス飯しか作れねぇじゃん。しかも卵料理だけ」
「いぇす。テュータをいたわれ」
「テュータ。お前は6歳のくせに老人みたいなこと言うな」
前もこんなくだりなかったか……? 老人くだり……。
呆れながら台所へ行こうとすると、テュータが椅子から降りて俺についてきた。
何? 手伝ってくれるの? そう淡く期待したその時、
「いたわれっ!」
振り返った瞬間に特攻してきてみぞおちに直行。
「ぶごおおあ゛っ! な、なにひたのおまえっ!」
俺の上にまたがるテュータはすっごく怒っている。え、なんでなんで!?
「あーあーあー。ご近所いなくてよかったなぁコレ。テメェの声すげぇ響く」
苦笑しながら耳をふさぐタクリスにさらにイラっとする。悪かったなうるさくて!
「い・た・わ・れ!」
一文字一文字に合わせてぽかぽか殴ってくるテュータ。6歳児とは思えない力の強さなんだけれど!? オマエ本当に幼女か!? どすどす内臓に響くんですけど!? 五臓六腑がHELPだしてます!!
「わかったからどいてくれ! 飯作るし布団やるし風呂も貸切っていいから! 頼む! どいて! オムライス作るから! いたわるから!」
「オムオム」
オムライスに免じて許してくれた。有り難うオムライス。このご恩は一生忘れません。
「じゃあオレもいたわって?」
「タクリスは却下」
「お買い得の27歳だけど」
これも前に聞いたんだけど……。
「買わん。却下っつってんじゃん」
台所にもう一回戻って手を洗う。タクリスは黙ったまま突っ立っている。
すると、
《魔能力開放》
そうつぶやいた。
(まずい。やらかした……!)
タクリス=サヴァンスタ。
こいつは普段落ち着いてるっちゃあ落ち着いているが、怒ったときに必ず自身の魔能力を使って相手を謝罪させる、とてつもなく面倒な魔法使いであり、勇者であるのだ。
……とぅーびーこんてにゅーっ!
応援ありがとうございます!
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