詩集 始まりの時

宿命

夢にまで見たあの景色
北極の彼方、北斗七星
もしも望みが叶うなら、俺はフランスに生まれたい
寒い夜、古代からつづく回廊
俺は一人、幻覚を見る
亡霊(ぼうれい)はささやく
「小僧、お前は呪われた宿命だ。お前の星は悪い、地獄が来る。誰にも体験できない地獄が」

そんなことには慣れているよ。
俺の望みは天獄(てんごく)だ。
この世の誰にも体験できない呪いだ
この呪いはいずれやって来る
この俺をほろぼしに、この俺を捕らえに
それにしても、俺の星は悪い
まるで悪夢だ、北極の天体は俺を凝視する
この俺の運命が呪われたものならば・・・・
俺はそれを滅ぼそう
俺以外の犠牲者が出ないように
ああ、それにしても黒いシチリアが俺を待っている
暗黒大陸が、黒いダリアが・・・・・
俺は暑いうなだるような夢にうなされる

どうしてだ妖精よ、一度は俺を救ってくれたあなたが
なぜに俺を放置する？
「あなたは悪運が強い。いずれは太陽神を越えましょう。あなたの呪いはいずれ解けます。みんなあなたを心配していますから・・・・」

ああ、精霊よ、あざやかな記憶よ、君たちに・・・・
またもう一度会えるなら・・・・・
俺は罪を償おう
いずれ、また、暖かい季節がやって来る
星の巡りは暖かい
この星は、この太陽は、この俺は
なぜあるのだろう？



俺は俺をもう一度越えたい
そのためには・・・・
どんな毒薬でも、どんな体験でも、どんな修行にでも付き合おう

黒いシベリアが待っている
そこでは剣(つるぎ)を持った兵士達が
互いに互いの背骨を攻撃しあっている
黒い大地よ、よく聞け
俺の言葉を、よく聞け
黒い大地よ、アフリカよ
俺は俺の魔法の言葉を殺した
いい夜だった。俺は剣で俺の奴隷を全員殺した
いい夜だった。本当にいい夜だった
俺は天を掴みたかった
天上の言葉を
モーツァルトのような調べを・・・・・


俺は俺の分身を殺した
俺は旅にでた
昔の俺を取り戻しに・・・・


精霊は居なかったのか？
精霊よ、精霊よ
俺の呪いは誰にも解けぬ
不気味な黒い渦は、俺の体を駆け抜け
空に呪いの十字架を描く
精霊よ、精霊よ・・・・・
俺は俺の呪いを解く
そうしていずれは
あの太陽神をも追い抜く
雷(いかずち)がなんだ、嵐がなんだ
水の精よ、どうか俺に一筋の哀れみを・・・・