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chapter,5 Australia
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しおりを挟む――マイくんが婚約発表を控えている? そんなの、初耳なんだけど!?
グリーンライツの王氏がいうには、キャッスルシーの新社長はずいぶんなやり手で、鳥海の若き海運王を追い落とす勢いで近隣諸国の主要企業との連携を強めようとしているという。自国での経営を優先していた城崎清一郎のやり方を踏襲するものと思われていた二代目、城崎浬の攻めの姿勢は、世界の投資家たちをも巻き込み、新たな勢力として目がはなせないのだと王夫人が興奮しながら説明してくれた。
たしかにマイルは海外進出を計画していたが、すでに実行に移しているとは思いもしなかったマツリカである。そのうえ、婚約発表? お相手はどこの誰? ハロウィンの前に電話したときはそんなことひとことも言ってくれなかったのに……いや、それより噂ですよね、とあたふたするマツリカを見て、夫人は満足そうに笑う。
「ふふ。東京に戻ったらサプライズが待っているのかしらね」
そういって王夫人と別れたマツリカは、ひとつの可能性にいたって戦慄する。
――マイくんは、東京に戻ってきたあたしを無理矢理婚約者にして、既成事実をつくるつもりだ!
* * *
バタン! と勢いよく開いた扉を見て、カナトはおや、と顔をしかめる。
王夫妻と映画を観てきたマツリカは、なぜか困惑した表情でカナトの前に立っていた。
「マツリカ?」
「……カナト、ど、どうしよう」
「どうしようって?」
「あ、あたし。このクルーズが終わったら結婚させられちゃうみたい」
「結婚、させられちゃう?」
いや、たしかに俺はマツリカを花嫁にしたいけれど、結婚させられちゃうって、ナンダソレ。そんな強制的なことをするつもりはないぞ、と言おうとして、彼女の必死な瞳を前に凍りつく。
「マイくんが、あたしを妻に望んでるの……あたしはそれがイヤで、ずっと海外にいたの。だけどハゴロモの終着地は東京。西島さんもたまには里帰りしろって義父に連絡とってくれたけど……」
「ちょ、ちょっと待ておちつけマツリカ。マイルってのは義理の弟だろ? そう簡単に結婚させられるなんて」
「彼ならやりかねないの! きっとママの復讐をあたしと一緒にするつもりなのよ、あたしはそんなつもりでBPWに就職したわけじゃないのに。ただバパの痕跡を探したかっただけなのに!」
思わず泣き出しそうな彼女を前に、カナトは身を乗り出して抱きしめていた。
「だが、噂の段階だろう? 実際に東京に戻るまではわからないんだから、そんなに慌てるなよ」
「……ごめんなさい。ただ、キャッスルシーとも懇意にしている王夫妻からそのはなしをきいたから」
「信憑性が高いってことか? だけど、そんなことはさせないよ。マツリカは俺の恋人なんだから」
「でも、クルーズのあいだだけの、でしょう?」
不安そうに身を寄せてくるマツリカの髪をやさしく撫でながら、カナトは告げる。
「いや、今度は俺が、マツリカの男除けになってやるよ。クルーズが終わってからも、マツリカが困らないように」
「……もうじゅうぶん困っているんだけど」
弱々しく呟くマツリカの瞳を覗きこんで、カナトはくすりと笑う。
「ならば俺と婚約すればいい。相手が鳥海の若き海運王だとわかれば、向こうだって黙るはずだ」
「恋人のふりの次は、婚約者のふり? そんな、不誠実なことばっかりしていて大丈夫なの?」
「どこが不誠実か? 俺は困っているマツリカを救いたいだけだぞ」
「だ、だからそうじゃなくて」
東京についたら初恋の君が待っているのではないか、と声をあげようとしたマツリカの口を彼の手が塞ぐ。これ以上、よけいなことを口にするなと言いたいらしい。
「……マツリカ。キャッスルシーの不穏な動きに俺が気づいていないと思う?」
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