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弐
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しおりを挟む「命に別状はないっておっしゃってましたが、あのあと高熱を出されてまた臥せってしまったのですよ。女房たちに世話を任せているが、できれば義仲を見舞いに来させたい。款冬姫さまに夢中なのは仕方ないが、放っておくのもいかがなものかと」
「だが、義高さまの件でふたりはまだ喧嘩してるんじゃなかったか?」
義仲と葵の間に生まれた息子、義高はいま鎌倉の源頼朝のもとにいる。頼朝の娘である大姫の許嫁扱いだが、どちらかといえば人質だ。
義高が人質になった経緯を思い出し、四人は沈黙する。
「……で、でも。あれから半年以上経つし、そろそろ和解もできるんじゃ」
「そう簡単にはいかない。義仲は葵さまに息子を鎌倉へ渡すよう強要した上に、自分の正妻となる款冬姫を自分のものにするために女房として邸に送り込んでいるんだ。ふつう側室が正室の女房になるなんてありえねーだろ」
「そこは葵さまだから……」
四天王は義仲のまわりの女たちについて把握はしているが、必要以上の情報は持っていない。巴は兼平と兼光の妹だから四天王とも顔見知りだが、間諜だったり参謀だったりする葵については四人とも知らないことの方が多いのである。
実際に顔を合わせることはあっても、しょっちゅう変装をしており、どれがほんものの葵なのか彼らはいまだに理解できていない。変わらないのは長い黒髪だけで、それ以外は服装が男物の狩衣だったり女房装束だったりするし、顔も目をおおきくしたり肌の色を変えたりと常に化粧をしている。さらに声色まで変えられるというのだからおそろしい。
ただ、京に入ってからはずっと女房装束で小子の傍に仕えていたので、極端な変化はしていないはずだ。
「……葵さまは義仲の頼みをきいてあげたってことだろうな。となると病を発症したのはやはりあのときか」
「心の臓に負担がかかりすぎたのでしょう。彼女も何をしでかすかわからないところがありますから……やはり義仲さまにお見舞いされるよう申し上げた方がよさそうですな」
年長の行親の言葉に、他の三人も素直に頷く。
「ならば巴の協力もいるな」
「ええ、葵さまのお見舞いに義仲さまが款冬姫さまも一緒に連れていかれるのは避けた方がよろしいでしょうし」
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