身代わり聖女は「君を孕ますつもりはない」と言われたのに死に戻り王子に溺愛されています

ささゆき細雪

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04. 聖女ジゼルフィアの初夜(前編)《2》

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「怖い? そうですね。わたくしの方こそお聞きしたいですわ。あなたに抱かれるのは怖いことかしら?」

 花が綻ぶような悪戯っぽい表情で、ジゼルフィアがリシャルトの碧い瞳を見上げる。野に咲く花のような逞しさと美しさを持つジゼルフィアを見て、リシャルトの鼓動が跳ねる。

「――君とは一度、“魔女の森”で逢っているよな?」
「ええ。あのときリシャルトさまは精霊たちに逃げられてましたね」
「俺が持つ魔力が異質だったからなんだな……でも君は俺の傍にいても魔法酔いすることもなかった」
「わたくし、魔法酔いしない体質なんです」

 強大な魔力を跳ね返すわけでもなく、その身で受け取り中和してしまう聖女だけが持つ大精霊の祝福のちからのひとつとして、魔法酔いしない体質というものもあるのだとジゼルフィアはリシャルトへ説明する。リシャルトですら押さえ込むのに苦労する魔力を聖女となる者は容易く受け入れるというが、ここまであっさり種明かしをされると自分が恐れていることは実は何一つ存在しないのではないかと錯覚してしまいそうになる。

「だから安心してください。拘束具がなくてもわたくしは魔力を受け止められるし、あなたが危惧するほど弱くはありませんの」
「――! だが、デ・フルート家の人間は短命で、生まれつきか弱いものだと聞いている」
「たしかに熱を出しやすいとか、疲れやすいとか、魔法を扱う代償のような形で体力を削っているので、周囲からはそのように見られていると思います。現にわたくしも子供時代はしょっちゅう熱を出して呆れられたものです」
「それなのに俺との子を望むのか」
「だってそれが聖女となったわたくしの使命ですよ。ハーヴィックの歴代の聖女は皆、王位継承者が持つ狂暴になりかねない霊獣の魔力を飼い慣らし、王国を守護するため後世へ引き継ぐ器としてこの身を差し出したのですから」
「ジゼ」
「アルヴスの精霊たちが姿を消したことで冥穴は綻び、魔物が大陸を荒し始め、その結果、隣国花鳥公国ヴェロニカ・バードの女君主は破滅の魔女として断罪されて姿を消しました。現在は軍事政権が勢力を握っており、いまも魔法で対抗する我が国を敵視しております。そこへ今回の第一王子と聖女の婚姻です。向こうとしては面白くないですよね?」
「……それは君の予言かい?」
「いいえ。憶測にすぎません。ですが旧大陸アルヴスが抱えている現状を俯瞰すると、ハーヴィックだけがこのままの状態を保てるとは到底思えないのです。リシャルトさまが持つ魔力と聖女のちからが隣国の脅威となっているのは事実でしょう。魔物をけしかける程度ならかわいいですが戦争屋が絡むとなると……」
「もういい。結婚初夜に血腥い話をするな」

 やれやれと苦笑いしながら、リシャルトはジゼルフィアの唇に蓋をする。なおも語りたそうにしていたジゼルフィアは目を丸くして彼の唇を受け止める。
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