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chapter,2
04. 聖女ジゼルフィアと裏切りの魔術師(前編)《1》
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聖女ジゼルフィアの懐妊が国民に報されたのは第一王子リシャルトとの静謐な結婚式からまもなく半年に入るところであった。まだ安定期に入る前のため、ジゼルフィアが姿を見せることはなかったが、おめでたいことだと民衆は歓迎している。
だが、その一方でマヒ・デ・フロート家の病弱な令嬢が王子の子を無事に出産できるのかという疑問の声もあがっていた。
「結婚してから聖女様は一度も王城の外を出ていないそうだよ。リシャルト様は我々に妃となったお方を紹介してくださらないのかしら」
「あのリシャルト様も魔力が大きいからと、めったに王城の外へ出ないじゃないの。その魔力を持つ子どもを懐妊されたということは聖女様もタダ者ではないということじゃない?」
「精霊魔法が使えなくなるわ、魔物は現れるわ、不穏なことばかり続くけど、これで少しは世の中明るくなればいいわねぇ」
城下を偵察していたシュールトは民衆の反応を見ながらため息をつく。おめでたい報告とは裏腹に、空模様は雨が降りそうな曇り空だ。
――そうか、兄上は種なしではなかったのか。
王城からの報告に、シュールトはひとまずホッとしたが、それでも疑問は残ったままだった。
いくら聖女ジゼルフィアが病弱で王城に籠りっぱなしだからといって、表に出さないのはおかしい、本当に彼女はリシャルトの子どもを身ごもったのだろうか、と。
「シュールトさま?」
「ああ、すまぬ。すこし考え事をしていた」
「花鳥公国との国境についてでしょうか」
「……そう、だな」
冥穴から飛び出した魔物が精霊の少なくなっている国々を狙って暴れている昨今、魔法の王国と呼ばれているハーヴィックは辛うじて難を逃れている。それでも隣国からこちらへ侵入してくる魔物もいるし、魔物が現れたことで治安が悪くなっている地域も存在している。
王国騎士団で騎士団長を担っているシュールトは王命により真っ先に危険な場所へ行くことが多い。作物を荒らす熊のような魔物はヒトの味を覚えると人間を容易く襲うようになる。その結果、襲った人間の姿を模して新たな食糧を探しにさ迷うという悪循環が始まる。さらに上位の魔物となると人間のふりをして言葉を操ることもある。身近な人間を装い新たな犠牲者を生む卑劣な行為はけして許されるものではない。
シュールトは場合によってはかつて自国の人間であった姿の魔物とも対峙しなくてはいけないのだ。できれば人間を襲う前に仕留めるのが手っ取り早いが、隣国に出没している魔物は人間の味を覚えてしまったらしく、被害も惨いことになっていた。
主の言葉に第一の側近であるホーグ・イセニアは明るい声で言い返すが、シュールトの表情は暗いままだ。
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