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第1章 落葉襲来 編
第1話「籠の鳥、渡り鳥」
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4/19(金)
「じゃあなー!航!」
「おう、じゃあな」
新学期も始まって2週間、俺、西条航は友人の三木田巧と俺達が通う名執高校の校門で解散した。
校門の桜は早くもほとんど散ってしまい、地面には薄いピンクの絨毯が出来ていた。
春風で桜の花びらがまた一つずつ散っていくが、風に舞う桜もそれはそれで綺麗だった。
三木田と教室で駄弁っていたので、学校中から吹奏楽の楽器や運動部の掛け声など様々な音が合わさって不協和音のようになるが、不思議と悪くないと感じるものだ。
そんな心地のいい不協和音も門を離れていくうちに聞こえなくなっていく。しばらく周りも新学期で浮かれた学生が多い中を歩くと、なんの変哲もない閑静な住宅街に着く。
ここ名執市のこの住宅街は本当にどこにでもあるような住宅街で、特段大きな建物があるわけでもなく、目立った商店があるわけでもないが、子供が多いのが印象的だ。
この時間だと子供が走り回っており、子供の頃を思い出しながら帰宅するのが早くも日課になっていた。
住宅街の中にある公園を抜けると、すぐに自宅のマンションに着く。公園は滑り台に砂場、ブランコ、ベンチ、小さなアスレチック、遊具がある子供に人気なスポットだ。
しかし、その公園に着くと何やら見慣れない少女がベンチに力なくうつ伏せに寝転がっていた。
白髪のわりには肌は若々しく、きめ細やかな白い肌であった。
が、こいつはうつ伏せになって贅沢にベンチを占領していた。
白を基調とし、青が所々にある一般的なセーラー服に紺色のミニスカートといった出で立ちで寝転がっているものだから目のやり場に困り、目を逸らす。
程よい肉付きの太ももが丸見えだ……。
全く最近の若者は……と随分と老人のようなことを考えながら帰路につく。
「ただいまー」
自宅に戻っても誰もいない。
当たり前の日常だ。朝も晩も一人だ。
高校入学と共に孤児院を出てからたった二年目だが、この孤独に早くも慣れてしまっている自分が悲しい。
マンションに住んでおり、金銭的にも厳しいため、冷蔵庫、テーブル、椅子、布団といった最低限の物しかない。
「夕飯買ってくりゃ良かったな……」
家についてから今さらであるが課題が多く出ていることを思い出す。課題をこなすため、料理などしてられない。
夕飯を買いにコンビニに行かねばならないことは分かりつつも制服のまま床に寝転がってだらだらとスマホをいじり、時間が経っていく。この街で1人で過ごすようになってから自由な時間が出来た分、こうしてダラダラと過ごす時間が増えてしまった。
この街は交通の便も悪くなく、買い物をするのにも商店街やショッピングモールがあり、暮らしやすい。
唯一、不満というか不思議なことがあるとすれば学校の裏山にある『巫女石』と呼ばれる石だ。高さは3mくらいで幅は4mくらいのとにかく大きい石だ。
石にはしめ縄が巻かれており、巫女石という名前にうなずける。
しかしこの巫女石、いつからあったかは分からず、巷では話題作りのために作ったのだという説が有力になっている。学校掲示板を、なんとなく開いてみると巫女石は今日も笑いのネタにされておりすっかり学園のアイドルだ。
巫女石の前で告白すれば巫女石のご加護で恋が実るだとか、巫女石が運命の人に引き合わせてくださるだとかまた新たな噂が出回っていた。こうして変な噂や迷信は広まっていくのだろうなと、ついつい掲示板のくそスレを追っていたら随分と暗くなっていた。20時……腹も空いてきたので買いに行く決心が固まりマンションを出ていく。
自宅を出るとまだやや肌寒い。春になったと言えどまだ4月。
夜になれば冷えるが、昼間は少々暑いと感じるときもある。上着を羽織ってくれば良かったと後悔しつつ、鼻腔をくすぐるのは周囲の家庭料理の匂い。
魚を焼いた匂いや、肉じゃがの匂いなど家庭的な料理の匂いが空腹感を増長させる。
そうなるとコンビニへ向かう足取りも徐々に早くなっていき、マンションを出てすぐにコンビニへ向かうために公園に着く。公園は暗闇に包まれていたが、僅かながらに照らす電灯に虫が寄り付いて少し不気味だ。
昼間とは違う世界を見渡していると昼間の少女がまだベンチに寝転がっていた。しかし、おかしい……。昼間から微塵も動いていない。体勢もいっしょだ。
不安になり早足に駆け寄り少女の体を揺する。
「おい!大丈夫か!おい!」
体は少し冷たいが、少し肩が動いた。こんな時なのに綺麗な白い肌にドキリとしてしまう。
だが、こうしてはいられない。少女をおぶさり、一目散に家へ向かう。足取りは公園に来たときより早く、心臓が破けるかと思うほど走り、冷たい空気が肺に入ってくるのを感じた。
だが足取りを止めることなく加速していく。家に向かう途中少女は背中で何かを呟いていたが分け目もふらず自宅へ向かった。
自宅へ着くなり布団に少女を寝かせて暖をとらせる。何があったかは分からないが、体が冷えきっていたのは確かだった。
先程は暗闇で分からなかったが、よく見てみればかなりの美少女であった。
明るいところに来てより一層際立つ白い肌に髪。長い髪は綺麗なストレートで鋤いてもキレイに指が通りそうだった。
身長はさほど高くないが出るところは出ており先程おぶさっていた時もその胸を意識してしまった。
そして何よりまずいのは見知らぬ少女を家に連れ込んでしまったということだ。普通に考えれば犯罪では?。普通警察を呼ぶところだ。何を思って家に連れ込んだのだろうか。
自分でもよく分からないが、こうなってしまった以上はしっかりと目を覚ますまで暖をとらせよう。その後のことは少女が起きてから考えよう。
等と考えているうちに、少女の瞼が僅かに動いて目を開く。
青く吸い込まれるような瞳だ。思わず見つめてしまうが、意識の確認をすぐさまとる。
「お、目を覚ましたか!」
「……ここは…」
「ああ、俺の家だ。」
まだ意識が朦朧としているのか少女の呂律は回らないが、意識はあるようだ。
だが、焦点はいまいちあっていない様子だ。
「すみません……」
「お、おい、まだ動くなよ!」
少女は起き上がろうとするも、すぐに布団に倒れてしまう。
「だから無理するなって……」
「い、いえ。これ以上ご迷惑をお掛けするわけには……」
なお手をついて立ち上がろうとする少女だが、ふらふらとしている。
「無理してもしょうがないだろ。そんな状態じゃここを出ていってもすぐに倒れて別の誰かのお世話になるだけだ。しばらく休んでいけ。」
「………分かりました…。」
少女は納得がいかないといった風に口を少し尖らせ、布団にくるまると背を向けてしまう。
にしても腹が減った…。少女を1人置いて家を空けるわけにはいかないし、何か作ろうと冷蔵庫の中を見ても当然ながら大したものが入っていない。
少女のこともあるので雑炊でも作ることにしよう。一日の疲れが溜まっているが、すぐさま作ってしまいテーブルに二人分置く。慣れない料理なので30分ほどかかってしまった。味の保証もまるでないが食えないものじゃない。……はずだ。
「おーい。起きれるかー?」
返事はないな…。寝てるみたいだ。
しかし、かなり弱っていたようだし、ここは食べさせた方がいいよな。
枕元まで行き、雑炊を運んでいく。
「起きれるか?飯作ったぞー」
軽く肩を揺さぶると少女がこちらにゆっくりではあるが振り向く。
「すみません…。」
「いちいち謝らないでくれ。ありがとうでいいんだよ、こういう時は。」
「ありがとうございます」
少女が僅かに微笑む。その微笑みに思わずドキリとしてしまう。今日一日の疲れだとかもうどうでもよくなってしまう。というか吹き飛んだ。比喩ではなく不思議と力が湧いてきた。
「ほら食べな」
少女は差し出された雑炊を受け取ろうと起き上がろうとするが、まだ起き上がれないようだ。
しょうがない。
「!?」
「悪いな我慢してくれ」
座椅子などがあれば良かったのだが無いものはしょうがないので、俺が少女の背もたれになるように少女の脇を掴んで寄り掛からせる。少女の体が柔らかく、ついつい女体を意識してしまい恥ずかしいことこの上ないが、寝たまま食べさせるわけにはいかない。
「手は……動かせないよな…」
立ち上がれないほど弱っている少女に自分で食べろというのも酷な話だ。
既に俺と少女の顔は真っ赤であった。スプーンで雑炊を少女の口元に持っていくが少女は中々口を開かない。
「あ、あの……その…」
「恥ずかしいよ!俺も恥ずかしいけどしょうがないだろ!?食わなきゃ体力つかないぞ」
少女はしばらく固まっていたが、やがて頬を赤らめて顔を背けて食べ始める。
一口毎にお互いに恥ずかしがっては手を止めたり、顔を背けたりしていた。
結局慣れることはなく、なんの罰ゲームか分からないようなこっ恥ずかしい時間はその後20分も続いたのであった。
食後またすぐに少女が寝てしまったので俺も食事を済ませて風呂に入る。風呂に入っている間も胸や肌の感触を思いだし、下半身に血流が集まる。
少女を背負った時の程よい大きさの胸の感触、弾力。脇を掴んで背もたれにさせた時の感触。下心で助けたわけではないが、俺も年頃の男子。意識するなという方が無茶というものだ。
しばらくその感触を反芻していると湯船の熱気のせいか頭がぼーっとしてきた。いや、単にやましいこと考えてるせいだな…。
だが繰り返し思いだされるのはあの感触だ。風呂をすぐに出てこの幸せを放り投げるのが惜しくなり、目を瞑って幾度もその感触を再び思い出し、風呂を上がる頃にはすっかり一物が膨張していたので少女のところに戻る前に軽く脱衣所で体を冷やしていると、何やら物音がリビングから聞こえる。
もしかしてもう起きたのかと思い、一物の昂りも収まってきたことだし服を着てリビングへ向かう。リビングへ向かう途中に感じたのは重苦しい空気。足取りも少し重く、呼吸し辛い。先程までこんなことはなかった。
嫌な予感がし、リビングへ早足で向かう。重苦しい空気を振り払うように早足で向かった先にいたのは紫のローブを着た少し肌が浅黒い長身のスキンヘッドの男だった。身長は俺より高く、190cmくらいはあるだろうか。リビングの入り口に立ち、こちらに視線を向けてきたスキンヘッド。
「そこに寝ておられるのが宮瀬 紅葉様か。世話になったな」
「あ、はい?」
どうやら口調からして親というよりその少女の召し使いのようなものらしい。
そして分かったのは少女の名前が宮瀬 紅葉ということ。
「えと、宮瀬さんの使用人さんなんですかね?」
「……ふむ、その様なところか」
一瞬逡巡したが確かにそう答えた。
彼からは違和感のようなものを感じたが、不思議と受け入れていた。
「では、お世話になりました」
彼はそう言って宮瀬に近づいていく一歩二歩と 。いや、よく考えればおかしい。よく考えなくてもおかしい。勝手に部屋に入ってきているのになぜ違和感がなかったのか。普通に考えれば不審者ではないか?そしてその足取りは宮瀬さんを起こさないようにゆっくりゆっくりと……
「宮瀬さん!」
咄嗟に声が出たのと同時に宮瀬さんは飛び起きスキンヘッドから距離をとる。
「シナン!」
「紅葉様、ワガママを言わずついてきてください」
「……い、嫌です!」
な、何が起こっているかまるで分からない…。どうやらシナンというこの男が宮瀬さんを連れていこうとしているようだが。しばらくシナンと宮瀬さんが睨みあっていたが、先に口を開いたのはシナンの方だった。
「仕方ないですね…」
やれやれといった風に男は懐から緑の本を出して何やら呪文らしきものを唱えた。宮瀬さんは止めようと床を蹴るが、スキンヘッドが呪文を唱え終わる方が早かった。呪文を唱えるとその男と駆け出していた宮瀬さんは発光して一瞬にして消えた!?
「な!?」
何が起こったのか分からず唖然とする。突然の出来事に理解が追い付かない。
しかし、驚いたのも束の間、戸惑っている間に宮瀬さんとシナンはすぐさま一瞬の発光と共に姿を現した。
シナンはほぼ無傷だが宮瀬さんは制服も所々破けて、綺麗な肌は傷つき流血も僅かにし、突っ伏していた。
何が起こったか全く理解できない。
理解しようとすら思わなかった。だが
「てめぇ!!」
俺は激昂し、シナンに殴りかかっていた。しかし、あっさりと片手で受け止められそのまま腕一本で宮瀬さんの隣に投げられ、派手に転がる。
「ぐはっ!」
思わず声をあげて転がる。肺を打ちつけ呼吸ができなくなる。
なんて力だ。とても人間とは思えない。俺の体重は70kg。それを片手で軽々放り投げるなんて可能だろうか。いや、そんなことはどうでもいい。確実に迫ってくる死の恐怖がより意識を鮮明にさせた。
「さあ、紅葉様帰りますよ」
しかし、男は俺には目もくれないでゆっくりと宮瀬さんに近づいてくる。何もできない自分に苛立ちを覚え、拳を握りしめる。
「……お願い時間を稼いで」
「ど、どうやって!」
まだ意識があるらしい宮瀬さんが言葉を振り絞る。
「彼程度の魔力では時空魔法を使えばそんなに長くはこちらにはいられないはず……だから時間を稼いで…」
「よ、よくわからないけど時間を稼げばいいんだな!でもあれにか?」
先程圧倒的な力量差を見せつけられている。宮瀬さんだって見ていたはずだ。
時間稼ぎすらままならないだろう。
「大丈夫。私を信じて立ち向かって」
正直出会ったばかりの人間に信じろと言われても無理だ。無理なんだ。
普通なら。
だが宮瀬さんの眼差しは俺をその気にさせた。
「分かった!どれくらい稼げばいい?」
「多分三分くらい……」
三分か。正直あいつ相手じゃ10秒ももたないだろうがやるしかない。俺は立ち上がるとシナンをしっかりと視界に捉える。
「紅葉様を助けていただいた恩もある。最後に話す時間くらいはくれてやったがもういいのか?」
「ああ、問題ねぇよ」
スイッチが入り言葉に怒気がこもり、言葉も荒くなる。
拳に力を込めると自分のものとは思えない力が湧いてきた。体の芯から力が涌き出てくるような不思議な感覚だ。
次第に自分の周りに緑のオーラがゆらゆらと出始める。
「な、なんだ!?」
「紅葉様!?まだ時空魔法を使えるなんて!?」
よく分からんが相手が戸惑っている今が好機。右足で床を蹴るとその勢いのままシナンに殴りかかる。シナンは咄嗟に回避を試みるが間に合わず腹に右ストレートが入り、そのままテーブルまでぶっ飛び大きな物音をたてる。
「……え」
瞬発力、パンチ力ともに俺のもの、いや人間のものではない。圧倒的な力はシナンに相当なダメージを与えたのだろうか、シナンはようやく起き上がる。
「くはっ……なんという力か…」
シナンは目に見えて弱っているがまだ戦う意志があるらしく再び拳を構える。
「もう止めなさいシナン!」
緊張感が走る中に宮瀬の声が響き渡る。その声に俺もシナンも思わず固まる。
「大分力を使っているはずです!まだ今なら写本とあなたの魔力でエデンへ帰れるはずです。」
「くっ、いずれ帰ってきていただきますからね。フンッ!」
悔しそうに言い放ったシナンは先程の緑の本を掲げると再び光に包まれ、消えた……。
「なんとかなったのか……?」
「ええ……」
「宮瀬さん!!」
宮瀬さんはその場に意識が急に途切れたように倒れこんでしまう。途端俺も疲労感に襲われる。気だるい体に鞭を打ちなんとか宮瀬さんを布団に寝かせて俺は床に倒れこんだ。
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あとがき
~登場人物~
西条 航 176cm 70kg
黒髪短髪で少し目付きが悪い少年。
一度視野が狭くなると中々抜け出せないところがあり、普段は冷静だが時として直情的になる。
宮瀬 紅葉 156cm 47kg
白い長髪、透き通るような碧眼が特徴の少女。年は航と同じくらいであるが、少しだけ幼さが残る顔立ち。
三木田 巧 172cm 58kg
短髪で髪がツンツンとした茶髪の航の悪友。入学してすぐに航とつるみ始めた。性格的には普段はおとなしい航とは一見合わないように思えるが、何となくでここまでお互いにきている。
シナン 191cm 82kg
浅黒い肌にスキンヘッドが特徴的。
航達に敗れてエデンへ帰還した。
お読みいただきありがとうございます!不定期の更新になりますが、よろしければまた見てやってください。
「じゃあなー!航!」
「おう、じゃあな」
新学期も始まって2週間、俺、西条航は友人の三木田巧と俺達が通う名執高校の校門で解散した。
校門の桜は早くもほとんど散ってしまい、地面には薄いピンクの絨毯が出来ていた。
春風で桜の花びらがまた一つずつ散っていくが、風に舞う桜もそれはそれで綺麗だった。
三木田と教室で駄弁っていたので、学校中から吹奏楽の楽器や運動部の掛け声など様々な音が合わさって不協和音のようになるが、不思議と悪くないと感じるものだ。
そんな心地のいい不協和音も門を離れていくうちに聞こえなくなっていく。しばらく周りも新学期で浮かれた学生が多い中を歩くと、なんの変哲もない閑静な住宅街に着く。
ここ名執市のこの住宅街は本当にどこにでもあるような住宅街で、特段大きな建物があるわけでもなく、目立った商店があるわけでもないが、子供が多いのが印象的だ。
この時間だと子供が走り回っており、子供の頃を思い出しながら帰宅するのが早くも日課になっていた。
住宅街の中にある公園を抜けると、すぐに自宅のマンションに着く。公園は滑り台に砂場、ブランコ、ベンチ、小さなアスレチック、遊具がある子供に人気なスポットだ。
しかし、その公園に着くと何やら見慣れない少女がベンチに力なくうつ伏せに寝転がっていた。
白髪のわりには肌は若々しく、きめ細やかな白い肌であった。
が、こいつはうつ伏せになって贅沢にベンチを占領していた。
白を基調とし、青が所々にある一般的なセーラー服に紺色のミニスカートといった出で立ちで寝転がっているものだから目のやり場に困り、目を逸らす。
程よい肉付きの太ももが丸見えだ……。
全く最近の若者は……と随分と老人のようなことを考えながら帰路につく。
「ただいまー」
自宅に戻っても誰もいない。
当たり前の日常だ。朝も晩も一人だ。
高校入学と共に孤児院を出てからたった二年目だが、この孤独に早くも慣れてしまっている自分が悲しい。
マンションに住んでおり、金銭的にも厳しいため、冷蔵庫、テーブル、椅子、布団といった最低限の物しかない。
「夕飯買ってくりゃ良かったな……」
家についてから今さらであるが課題が多く出ていることを思い出す。課題をこなすため、料理などしてられない。
夕飯を買いにコンビニに行かねばならないことは分かりつつも制服のまま床に寝転がってだらだらとスマホをいじり、時間が経っていく。この街で1人で過ごすようになってから自由な時間が出来た分、こうしてダラダラと過ごす時間が増えてしまった。
この街は交通の便も悪くなく、買い物をするのにも商店街やショッピングモールがあり、暮らしやすい。
唯一、不満というか不思議なことがあるとすれば学校の裏山にある『巫女石』と呼ばれる石だ。高さは3mくらいで幅は4mくらいのとにかく大きい石だ。
石にはしめ縄が巻かれており、巫女石という名前にうなずける。
しかしこの巫女石、いつからあったかは分からず、巷では話題作りのために作ったのだという説が有力になっている。学校掲示板を、なんとなく開いてみると巫女石は今日も笑いのネタにされておりすっかり学園のアイドルだ。
巫女石の前で告白すれば巫女石のご加護で恋が実るだとか、巫女石が運命の人に引き合わせてくださるだとかまた新たな噂が出回っていた。こうして変な噂や迷信は広まっていくのだろうなと、ついつい掲示板のくそスレを追っていたら随分と暗くなっていた。20時……腹も空いてきたので買いに行く決心が固まりマンションを出ていく。
自宅を出るとまだやや肌寒い。春になったと言えどまだ4月。
夜になれば冷えるが、昼間は少々暑いと感じるときもある。上着を羽織ってくれば良かったと後悔しつつ、鼻腔をくすぐるのは周囲の家庭料理の匂い。
魚を焼いた匂いや、肉じゃがの匂いなど家庭的な料理の匂いが空腹感を増長させる。
そうなるとコンビニへ向かう足取りも徐々に早くなっていき、マンションを出てすぐにコンビニへ向かうために公園に着く。公園は暗闇に包まれていたが、僅かながらに照らす電灯に虫が寄り付いて少し不気味だ。
昼間とは違う世界を見渡していると昼間の少女がまだベンチに寝転がっていた。しかし、おかしい……。昼間から微塵も動いていない。体勢もいっしょだ。
不安になり早足に駆け寄り少女の体を揺する。
「おい!大丈夫か!おい!」
体は少し冷たいが、少し肩が動いた。こんな時なのに綺麗な白い肌にドキリとしてしまう。
だが、こうしてはいられない。少女をおぶさり、一目散に家へ向かう。足取りは公園に来たときより早く、心臓が破けるかと思うほど走り、冷たい空気が肺に入ってくるのを感じた。
だが足取りを止めることなく加速していく。家に向かう途中少女は背中で何かを呟いていたが分け目もふらず自宅へ向かった。
自宅へ着くなり布団に少女を寝かせて暖をとらせる。何があったかは分からないが、体が冷えきっていたのは確かだった。
先程は暗闇で分からなかったが、よく見てみればかなりの美少女であった。
明るいところに来てより一層際立つ白い肌に髪。長い髪は綺麗なストレートで鋤いてもキレイに指が通りそうだった。
身長はさほど高くないが出るところは出ており先程おぶさっていた時もその胸を意識してしまった。
そして何よりまずいのは見知らぬ少女を家に連れ込んでしまったということだ。普通に考えれば犯罪では?。普通警察を呼ぶところだ。何を思って家に連れ込んだのだろうか。
自分でもよく分からないが、こうなってしまった以上はしっかりと目を覚ますまで暖をとらせよう。その後のことは少女が起きてから考えよう。
等と考えているうちに、少女の瞼が僅かに動いて目を開く。
青く吸い込まれるような瞳だ。思わず見つめてしまうが、意識の確認をすぐさまとる。
「お、目を覚ましたか!」
「……ここは…」
「ああ、俺の家だ。」
まだ意識が朦朧としているのか少女の呂律は回らないが、意識はあるようだ。
だが、焦点はいまいちあっていない様子だ。
「すみません……」
「お、おい、まだ動くなよ!」
少女は起き上がろうとするも、すぐに布団に倒れてしまう。
「だから無理するなって……」
「い、いえ。これ以上ご迷惑をお掛けするわけには……」
なお手をついて立ち上がろうとする少女だが、ふらふらとしている。
「無理してもしょうがないだろ。そんな状態じゃここを出ていってもすぐに倒れて別の誰かのお世話になるだけだ。しばらく休んでいけ。」
「………分かりました…。」
少女は納得がいかないといった風に口を少し尖らせ、布団にくるまると背を向けてしまう。
にしても腹が減った…。少女を1人置いて家を空けるわけにはいかないし、何か作ろうと冷蔵庫の中を見ても当然ながら大したものが入っていない。
少女のこともあるので雑炊でも作ることにしよう。一日の疲れが溜まっているが、すぐさま作ってしまいテーブルに二人分置く。慣れない料理なので30分ほどかかってしまった。味の保証もまるでないが食えないものじゃない。……はずだ。
「おーい。起きれるかー?」
返事はないな…。寝てるみたいだ。
しかし、かなり弱っていたようだし、ここは食べさせた方がいいよな。
枕元まで行き、雑炊を運んでいく。
「起きれるか?飯作ったぞー」
軽く肩を揺さぶると少女がこちらにゆっくりではあるが振り向く。
「すみません…。」
「いちいち謝らないでくれ。ありがとうでいいんだよ、こういう時は。」
「ありがとうございます」
少女が僅かに微笑む。その微笑みに思わずドキリとしてしまう。今日一日の疲れだとかもうどうでもよくなってしまう。というか吹き飛んだ。比喩ではなく不思議と力が湧いてきた。
「ほら食べな」
少女は差し出された雑炊を受け取ろうと起き上がろうとするが、まだ起き上がれないようだ。
しょうがない。
「!?」
「悪いな我慢してくれ」
座椅子などがあれば良かったのだが無いものはしょうがないので、俺が少女の背もたれになるように少女の脇を掴んで寄り掛からせる。少女の体が柔らかく、ついつい女体を意識してしまい恥ずかしいことこの上ないが、寝たまま食べさせるわけにはいかない。
「手は……動かせないよな…」
立ち上がれないほど弱っている少女に自分で食べろというのも酷な話だ。
既に俺と少女の顔は真っ赤であった。スプーンで雑炊を少女の口元に持っていくが少女は中々口を開かない。
「あ、あの……その…」
「恥ずかしいよ!俺も恥ずかしいけどしょうがないだろ!?食わなきゃ体力つかないぞ」
少女はしばらく固まっていたが、やがて頬を赤らめて顔を背けて食べ始める。
一口毎にお互いに恥ずかしがっては手を止めたり、顔を背けたりしていた。
結局慣れることはなく、なんの罰ゲームか分からないようなこっ恥ずかしい時間はその後20分も続いたのであった。
食後またすぐに少女が寝てしまったので俺も食事を済ませて風呂に入る。風呂に入っている間も胸や肌の感触を思いだし、下半身に血流が集まる。
少女を背負った時の程よい大きさの胸の感触、弾力。脇を掴んで背もたれにさせた時の感触。下心で助けたわけではないが、俺も年頃の男子。意識するなという方が無茶というものだ。
しばらくその感触を反芻していると湯船の熱気のせいか頭がぼーっとしてきた。いや、単にやましいこと考えてるせいだな…。
だが繰り返し思いだされるのはあの感触だ。風呂をすぐに出てこの幸せを放り投げるのが惜しくなり、目を瞑って幾度もその感触を再び思い出し、風呂を上がる頃にはすっかり一物が膨張していたので少女のところに戻る前に軽く脱衣所で体を冷やしていると、何やら物音がリビングから聞こえる。
もしかしてもう起きたのかと思い、一物の昂りも収まってきたことだし服を着てリビングへ向かう。リビングへ向かう途中に感じたのは重苦しい空気。足取りも少し重く、呼吸し辛い。先程までこんなことはなかった。
嫌な予感がし、リビングへ早足で向かう。重苦しい空気を振り払うように早足で向かった先にいたのは紫のローブを着た少し肌が浅黒い長身のスキンヘッドの男だった。身長は俺より高く、190cmくらいはあるだろうか。リビングの入り口に立ち、こちらに視線を向けてきたスキンヘッド。
「そこに寝ておられるのが宮瀬 紅葉様か。世話になったな」
「あ、はい?」
どうやら口調からして親というよりその少女の召し使いのようなものらしい。
そして分かったのは少女の名前が宮瀬 紅葉ということ。
「えと、宮瀬さんの使用人さんなんですかね?」
「……ふむ、その様なところか」
一瞬逡巡したが確かにそう答えた。
彼からは違和感のようなものを感じたが、不思議と受け入れていた。
「では、お世話になりました」
彼はそう言って宮瀬に近づいていく一歩二歩と 。いや、よく考えればおかしい。よく考えなくてもおかしい。勝手に部屋に入ってきているのになぜ違和感がなかったのか。普通に考えれば不審者ではないか?そしてその足取りは宮瀬さんを起こさないようにゆっくりゆっくりと……
「宮瀬さん!」
咄嗟に声が出たのと同時に宮瀬さんは飛び起きスキンヘッドから距離をとる。
「シナン!」
「紅葉様、ワガママを言わずついてきてください」
「……い、嫌です!」
な、何が起こっているかまるで分からない…。どうやらシナンというこの男が宮瀬さんを連れていこうとしているようだが。しばらくシナンと宮瀬さんが睨みあっていたが、先に口を開いたのはシナンの方だった。
「仕方ないですね…」
やれやれといった風に男は懐から緑の本を出して何やら呪文らしきものを唱えた。宮瀬さんは止めようと床を蹴るが、スキンヘッドが呪文を唱え終わる方が早かった。呪文を唱えるとその男と駆け出していた宮瀬さんは発光して一瞬にして消えた!?
「な!?」
何が起こったのか分からず唖然とする。突然の出来事に理解が追い付かない。
しかし、驚いたのも束の間、戸惑っている間に宮瀬さんとシナンはすぐさま一瞬の発光と共に姿を現した。
シナンはほぼ無傷だが宮瀬さんは制服も所々破けて、綺麗な肌は傷つき流血も僅かにし、突っ伏していた。
何が起こったか全く理解できない。
理解しようとすら思わなかった。だが
「てめぇ!!」
俺は激昂し、シナンに殴りかかっていた。しかし、あっさりと片手で受け止められそのまま腕一本で宮瀬さんの隣に投げられ、派手に転がる。
「ぐはっ!」
思わず声をあげて転がる。肺を打ちつけ呼吸ができなくなる。
なんて力だ。とても人間とは思えない。俺の体重は70kg。それを片手で軽々放り投げるなんて可能だろうか。いや、そんなことはどうでもいい。確実に迫ってくる死の恐怖がより意識を鮮明にさせた。
「さあ、紅葉様帰りますよ」
しかし、男は俺には目もくれないでゆっくりと宮瀬さんに近づいてくる。何もできない自分に苛立ちを覚え、拳を握りしめる。
「……お願い時間を稼いで」
「ど、どうやって!」
まだ意識があるらしい宮瀬さんが言葉を振り絞る。
「彼程度の魔力では時空魔法を使えばそんなに長くはこちらにはいられないはず……だから時間を稼いで…」
「よ、よくわからないけど時間を稼げばいいんだな!でもあれにか?」
先程圧倒的な力量差を見せつけられている。宮瀬さんだって見ていたはずだ。
時間稼ぎすらままならないだろう。
「大丈夫。私を信じて立ち向かって」
正直出会ったばかりの人間に信じろと言われても無理だ。無理なんだ。
普通なら。
だが宮瀬さんの眼差しは俺をその気にさせた。
「分かった!どれくらい稼げばいい?」
「多分三分くらい……」
三分か。正直あいつ相手じゃ10秒ももたないだろうがやるしかない。俺は立ち上がるとシナンをしっかりと視界に捉える。
「紅葉様を助けていただいた恩もある。最後に話す時間くらいはくれてやったがもういいのか?」
「ああ、問題ねぇよ」
スイッチが入り言葉に怒気がこもり、言葉も荒くなる。
拳に力を込めると自分のものとは思えない力が湧いてきた。体の芯から力が涌き出てくるような不思議な感覚だ。
次第に自分の周りに緑のオーラがゆらゆらと出始める。
「な、なんだ!?」
「紅葉様!?まだ時空魔法を使えるなんて!?」
よく分からんが相手が戸惑っている今が好機。右足で床を蹴るとその勢いのままシナンに殴りかかる。シナンは咄嗟に回避を試みるが間に合わず腹に右ストレートが入り、そのままテーブルまでぶっ飛び大きな物音をたてる。
「……え」
瞬発力、パンチ力ともに俺のもの、いや人間のものではない。圧倒的な力はシナンに相当なダメージを与えたのだろうか、シナンはようやく起き上がる。
「くはっ……なんという力か…」
シナンは目に見えて弱っているがまだ戦う意志があるらしく再び拳を構える。
「もう止めなさいシナン!」
緊張感が走る中に宮瀬の声が響き渡る。その声に俺もシナンも思わず固まる。
「大分力を使っているはずです!まだ今なら写本とあなたの魔力でエデンへ帰れるはずです。」
「くっ、いずれ帰ってきていただきますからね。フンッ!」
悔しそうに言い放ったシナンは先程の緑の本を掲げると再び光に包まれ、消えた……。
「なんとかなったのか……?」
「ええ……」
「宮瀬さん!!」
宮瀬さんはその場に意識が急に途切れたように倒れこんでしまう。途端俺も疲労感に襲われる。気だるい体に鞭を打ちなんとか宮瀬さんを布団に寝かせて俺は床に倒れこんだ。
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あとがき
~登場人物~
西条 航 176cm 70kg
黒髪短髪で少し目付きが悪い少年。
一度視野が狭くなると中々抜け出せないところがあり、普段は冷静だが時として直情的になる。
宮瀬 紅葉 156cm 47kg
白い長髪、透き通るような碧眼が特徴の少女。年は航と同じくらいであるが、少しだけ幼さが残る顔立ち。
三木田 巧 172cm 58kg
短髪で髪がツンツンとした茶髪の航の悪友。入学してすぐに航とつるみ始めた。性格的には普段はおとなしい航とは一見合わないように思えるが、何となくでここまでお互いにきている。
シナン 191cm 82kg
浅黒い肌にスキンヘッドが特徴的。
航達に敗れてエデンへ帰還した。
お読みいただきありがとうございます!不定期の更新になりますが、よろしければまた見てやってください。
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