呪法奇伝Ascension~金鱗龍嬢仙奇譚~

武無由乃

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幕間 天鳳真君と凜花女仙の仙境バンザイ! その二

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 ――富士赫奕仙洞ふじかくやくせんどう、中央部統括室にて。

天鳳真君「今回は、妖怪仙人に関するお話をしよう!」
凜花女仙「……たしか、天鳳真君様は昔れっきとした妖怪仙人であったと聞きましたが」
天鳳真君「え……ああ、まあそんな事もありましたっけ? ……そこら辺は、ほおっておいて――。この世界では、人間、妖怪、仙人、神――、はすべて霊質から違う存在なのです」
凜花女仙「……。ふむ、霊質から違う……ですか。それは魂魄の部分が違うと考えて良いと?」
天鳳真君「そのとおりですね。……これらの内の人間は、物質世界に寄った存在であり、いわゆる遺伝子に種としての機能を支配されます。そしてそれ以外は、霊質寄りの存在ゆえに、遺伝子の制限を受けずに種の機能が成立しています」
凜花女仙「人間は細胞内の遺伝子――、その影響を受けるがゆえに、生まれてくる子どもは遺伝子にそった存在として生まれ。それ以外は違う――と?」
天鳳真君「その通り。人間と、妖怪諸々は、明確に姿が違ったりするでしょう? でもその間に子どもが生まれることがあります。それは、人間以外は遺伝子の支配を受けないからです」
凜花女仙「では……、仙人になった人間というのは、要するに異種族に変じたと言ってよいのですか?」
天鳳真君「そのとおりです。そして、それは妖怪にも適用されます。すなわち先程の区別、人間、妖怪、仙人、神、のうち――、仙人は正確には、人間からの仙人、妖怪からの仙人、そして希少である神格からの仙人、すべてが含まれるのです」
凜花女仙「ふむ……、妖怪からの仙人はわかりますが、神格からの仙人ですか?」
天鳳真君「無論……神祇じんぎ様がたは仙人にはなりません。この場合は、妖怪から神格、神格から仙人、というルートを辿った、例えば小玉玄女殿などです。だから正確には、妖怪からの仙人にも含まれる存在ではあります」
凜花女仙「では暉燐教主様も?」
天鳳真君「あちらは完全な神格になる前に仙人になったので、明確に小玉玄女殿とは進んだルートが違いますね」
凜花女仙「暉燐教主様は、龍神と言っても、正確には龍の神ではない――と?」
天鳳真君「この世界では、神格と成るための特例を満たさねば神格とはみなされません。即ち【神性】――、日本呪法界一般における【神位特効しんいとっこう】と呼ばれる機能、権能です」
凜花女仙「【神位特効しんいとっこう】とは確か――、中層領域の術師における解釈では、神が神として獲得している特別な力であり――それ自体は自然現象とみなされる、でしたね?」
天鳳真君「その通り――、日本仙道における解釈では、世界の管理機能のうち適性が高いものを【神格となった霊的生命】が特別に獲得したもの――、で、世界の管理機能であるがゆえに、いわゆる適正のある神格でなければ扱えない――、いわゆる【異能複製能力】などによってコピーできず、そもそも【異能消去能力】などによって消去もできない、特別権能となっています」
凜花女仙「小玉玄女様は【玄大玉】内に神性を封じているんでしたね? そして暉燐教主様が扱う【偽龍玉】は――」
天鳳真君「アレはまさしく【偽】龍玉です。龍神が正式な神格となった際に獲得する【神性】を、宝貝の機能で仮想に再現しているもので、そもそもが半龍で彼女に龍神に似た仮想権能行使能力を与えるものです」
凜花女仙「では、彼女の能力は龍神本来の能力より――」
天鳳真君「ふふふ……、そこが今回のポイントですよ」
凜花女仙「え? それはどういう?」
天鳳真君「この世界では――、神と仙人はほぼ同格の存在です。要するに泠煌ちゃんは半龍としての生涯を選べば、その資格がないゆえに永遠に神格にはなれないのです。しかしながら仙道として――、仙人としての生涯を選べば【神格が持つ能力と同等の権能】を獲得できるのです」
凜花女仙「ああ……なるほど」
天鳳真君「泠煌ちゃんはすでに仙人になっていますので、すでに龍神とは霊質から違う存在になっています。でも生まれが龍神であるがゆえに、その機能を利用して【龍神の神性】を再現できる、ということ。で――、ここまで聞いて分かる通り、小玉玄女殿の【玄大玉】は正式な神性、泠煌ちゃんの【偽龍玉】は偽物の神性、ということになります」
凜花女仙「あ……では――」
天鳳真君「そうです――、泠煌ちゃんが使用する権能は、いわば道術や宝貝の延長の存在であり、場合によって【異能複製能力】および【異能消去能力】の効果を受けてしまうのですね」
凜花女仙「……それは、今後の戦いで結構危険な話になるのでは?」
天鳳真君「ふふふ……、さて、どうなるでしょうね?」

 天鳳真君は怪しく笑ってから凜花女仙に言う。

天鳳真君「では――、気を取り直して。これ以降は、作中に出てきた宝貝の解説といきましょう!」


 ◆◇◆


●風尖刀:機能等級:Ⅰ
解説:
 使用者の周囲近接範囲に飛翔する短剣型宝貝。
 中距離まで(天命数によってわずかに変化する)の目標に風撃を飛ばす。その先は風がほつれるために超長距離攻撃は出来ない。
 風撃は術とみなされ使用者の天命数によって、ダメージは拳で殴った程度から狙撃銃の弾丸まで変化する。

●鳳炎灯:機能等級:Ⅰ
解説:
 使用者の周囲近接範囲に飛翔する灯明皿型宝貝。
 中距離まで(天命数によってわずかに変化する)の目標に炎撃を飛ばす。その先は炎が消え去るために超長距離攻撃は出来ない。
 炎弾は術とみなされ使用者の天命数によって、その射出弾数大幅に増えてゆく。ダメージはほぼ一定であり風尖刀の風撃より高くならない。

●風迅輪:機能等級:Ⅰ
解説:
 低空を地面に足をつけずに高速移動するための靴型宝貝。
 風をまとって足がつくスレスレ低空を滑るように移動可能となる。ただし、高空を飛ぶことは出来ない。
 いわゆる高速移動を付与するだけなので、使いこなすにはそれなりの訓練が必要である。
 優れたものが扱えば天命数によって増加してゆく機動性を最大限に発揮できる。

●被甲紫衣:機能等級:Ⅰ
解説:
 紫の衣の外観の服型宝貝。
 身につけたものに対物理、対術、双方の耐久能力を付与する。要するにRPG等のHPのようなものを得る宝貝である。
 その耐久能力は天命数によって大幅に変化してゆくが、一度それが減ると回復には時間がかかるために、絶対防御とはいかない。
 無論、得られるのはあくまでダメージへの耐久能力であるために、組み付いての拘束などには対抗出来ない。

●黒剣:機能等級:Ⅲ
解説:
 仙界最強クラスの攻撃宝貝。巨大な黒い両刃大剣。
 使用者の周囲近接範囲に飛翔し、常に共にあって【龍断閃】という名によってその権能を発揮する。
 その威力は前方一直線限定ではあるが、施設を粉砕し深い谷を生み出すほどであり、まさに圧倒的、絶対的破壊力を行使できる。
 無論ではあるが、それを一回使用ごとに凄まじい天命数の削減が起こり、普通の仙人では一撃すら使用はできない。
 次撃の再装填は結構早いために、天命数が高い者が扱えば恐ろしい脅威となる。

●絶甲天衣:機能等級:Ⅲ
解説:
 被甲紫衣の完全上位互換。
 被甲紫衣をはるかに超える耐久性能を付与すると共に、自身に対するあらゆる害(拘束等)を無効となす対抗性能を得る。この対抗性能は耐久性能が消えると一緒に機能しなくなる。
 耐久性能の回復量も、本人が望めば天命数を大幅に削って即座に回復することが可能であり、それ故に天命数が高い者が扱えばほぼ絶対防御と化す。
 それだけに、ただ機能を維持するだけで天命数が削れてゆく。

●風天輪:機能等級:Ⅱ
解説:
 風迅輪の完全上位互換。
 基本性能は変わらないが、高空まで飛翔することが可能である。
 菩典老は戦士ではないために完全に使いこなしてはおらず、ほぼゆっくり飛行するにとどまっている。

●玄大玉:機能等級:Ⅱ(特殊)
 その内部に収まった【小玉玄女】の本質である神性を開放することによって、自身を中心とした数十㎞範囲内に【玄毛亡獣の狩猟場】を特殊結界として展開する。
 その瞬間、空の太陽や月は玄く塗りつぶされ、特殊結界内のすべての存在も玄い闇に囚われ、何人も生き残ることの叶わない【理不尽な死】が与えられる。
 ただし、そうなるのは【玄毛亡獣の玄毛】に守られていない命だけであり、その絶滅をもって特殊結界は開放される。
 特殊結界内での死は絶対であり、まさに理不尽極まりないものである。たとえ道術や宝貝で守ろうと、訪れる死に変わりはないのである。
 この宝貝を起動後、【小玉玄女】は完全な行動不能に陥って、会話すら容易ではない疲労に襲われる。これは数日間続き、その間彼女はまさに戦闘不能になるのだ。
 すなわちまさしく【最後の切り札】であり、当然軽々しく使えるような代物ではない。なにより【殺戮が大嫌いな】性格がその力をセーブしている。
 この宝貝の機能である特殊結界は内包された彼女自身の【神性】によるものであり、この宝貝自体の機能等級は効果に比べて低めである。

●偽龍玉:機能等級:Ⅱ~Ⅲ(特殊)
 前述の【玄大玉】を参考に生み出された仮想神性再現宝貝。再現する龍神権能によって天命数への負担が変化する。
 機能等級を見れば分かる通り、再現する権能によってはそうとう天命数に負担がかかる為に、そう軽々しくは扱えないものである。
 再現できる龍神権能は、名称だけ示すと以下のとおりである。
 【龍身顕現りゅうしんけんげん】【火眼金晴かがんきんせい】【水旺治定すいおうちてい】【奉天勅定ほうてんちょくてい】【萬転身ばんてんしん】【皇佐貴人おうさきじん】【萬地守護ばんちしゅご】【豊穣来福ほうじょうらいふく】【飛翔ひしょう・強化】【放電ほうでん放水ほうすい・強化】。
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