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西暦2088年
流転する運命~ルテンスルウンメイ~
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「……、お父さん」
「どうした? サクラ――」
「なんで私はモモじゃないんだろう?」
「……、別に彼女になる必要はあるまい?
お前はお前で大事な私の――」
「それじゃダメなの――。サクラじゃダメなの――。
私には未来が見えるのに――、暗闇しか見えないよ――、お父さん」
西暦2088年8月2日――。もう十数回目になる実戦演習が行われた。
その直前、実験体”桜華”は、自分の管理官である”鷲見 東一郎”一等陸佐と、上記のような会話を行ったという。
それは、まさしくこの実験体の精神が壊れかけていた証であり、その後の事態を引き起こす予兆でもあった。
◆◇◆
西暦2088年8月18日――。
東京都、太平洋上の群島にある極秘研究施設――。
「桃華――。ロ号第二十七番実験体。
本日をもって、管理官を”国松 勇希”二等陸尉から、”藤原 俊夫”二等陸佐に移管する」
「……」
その言葉を憮然とした表情で聞く国松二等陸尉。
黙って何も言わない彼に痺れを切らして、上官である向坂三等陸佐は強い口調で怒鳴った。
「何をしている?! 復唱せんか!!」
「……なぜですか」
「なに?」
望んだ答えではないその国松の言葉に、向坂は眉根をゆがめて睨んだ。
「もしかして、まだ理解しておらんのか?」
「理解できません!! モモの管理官は私です!!!」
「それは今日までの事だ。初めからそう言う予定だったのだ」
「そんな事――」
『聞いていない』――、国松はそう言いたかったが、そもそも所属組織である国防軍の決定を、一士官に過ぎない自分が変えられるはずもなく、ただ隣に立って困惑した顔をする男に憎悪の目を向ける事しかできなかった。
「――あの? いいですか?」
「ああ!! すみませんお手間をとらせてしまって。この馬鹿のせいで――」
「いいえ――。実は私、何も知らされずこの場に連れてこられてしまって、何が何やらわからないんですが?」
「それは――、上層部にも困ったものですな。
極秘の事とは言え、ある程度前から知らせておいてもよかったと思うのですが」
向坂はそう言って頭を下げる。
その頭を下げた相手というのが――、
「本当に申し訳ありません。藤原大隊長――」
理解が追い付かずにただ困惑の顔をする”藤原 俊夫”その人であった。
正直、この場に自分がいることも理解できないが、隣から強烈な憎悪の目を向けられていることが、最も理解に苦しむ事態であった。
(俺、何かしたかな?
もしかして――先月のモモちゃんに関する何かなのかな?)
藤原は先月の愛らしい少女”モモ”の顔を思い出す。
現在隣にいて自分をにらんでいる男は、その少女との出会いの後に遭遇した人物である。
――どうやら自分は、いらんことに首を突っ込んでしまったらしい、――と今更ながらに思った。
しかし、藤原はなぜか後悔の心は起きなかった。心の奥には、もしかしたらもう一度、あの少女に会えるかもしれないという期待があったからである。
(あの娘――、桃華っていったよな)
藤原は、あの時の少女の笑顔と、そのあとの寂しげな顔を思い出す。その顔が幼くしてこの世を去った自分の妹”美夏”の顔と重なっていた。
トントン……。
――と、不意に辞令を聞いているその管理長官室の扉が叩かれた。それを聞いて向坂が笑顔を藤原に向けた。
「どうやら、彼女が来たようです」
「え?」
その向坂の言葉に、うっすらと期待の感情が生まれる藤原。そして、それは期待通りであった。
「入れ――」
向坂のその言葉を合図に扉が開かれる、そこにいたのは――。
「モモ――」
不意に藤原からそんな言葉がこぼれた。
「ロ号第二十七番実験体、”桃華”ただいま参りました」
しかし、そこにいたのはあの時の少女ではなかった。
もちろん、見た目はあの時の少女に見える、そしてもしかしたらその通り”桃華”なのかもしれない。しかし、
「モモ?」
「……」
桃華は藤原のその言葉を聞いても、無表情でただその場に佇むだけである。
藤原は、彼女の表情を見て嫌なものを感じた、そして――、
(この娘――、さっきロ号第二十七番実験体って言ったのか?)
そのセリフの中の実験体という言葉が、なぜか心に突き刺さって抉ってくる。
藤原はその時になってやっと、自分が立っている場所の違和感に気付いた。
「これは――、実験体?」
「そうです。彼女が実験体”桃華”で――、
これからあなたの管理下に入ることになります」
藤原は少し眉根を怒らせて向坂に言う。
「この娘は――、実験体? ここはいったい何をしている施設なんですか?
このような小さな少女に一体何を……」
その顔を見て何かを察した向坂は、少し笑顔を消して言った。
「ああ藤原大隊長、何か勘違いをしていらっしゃるかもしれませんが……、
”それ”は正確には人ではなく兵器です、要するにアンドロイド達と同じ存在なのですよ」
「アンドロイド? アンドロイドなら、人にここまで似せるのは違法行為だったハズです」
「いえいえ――、それは比喩表現というやつでして――」
「アンドロイドではない? ――まさか」
その段になって、藤原の心を刺す違和感の正体をはっきりと自覚した。
「クローン? もしくは――」
「その娘は、遺伝子を合成培養して生まれた人造人間ですよ」
「――」
その向坂の言葉に、藤原は息をのむしかなかった。
――そして、次に湧き上がってきたのは激しい嫌悪感であった。
無論、それは桃華に対してではない。
「あなた方――、一体何をしているんだ?」
目を怒らせてそう向坂に詰め寄る藤原。それを見て向坂は小さく苦笑いをした。
「――藤原大隊長。あなたも国防軍の一員なら、軍隊というものが綺麗ごとだけでは動かない組織だって理解できていらっしゃるのでは?」
「だからって貴様ら――」
なおも詰め寄ろうとする藤原に、国松が嘲るような表情をした。
「ほら!! 無駄ですよ!!
こいつに管理官は務まりません!!!
やはりモモの管理官は私しかありませんよ!!!」
その表情を見て、藤原の心の中の何かが切れた。
(こいつら――、なんなんだ。
揃いも揃って狂っているのか?
桃華は――、モモは物じゃないぞ!!!)
その感情の爆発に突き動かされて、国松の胸ぐらをつかもうとする藤原。
――しかし、それはできなかった。
ドン!!!
突然藤原は、自分の体が浮いて天地がひっくり返るさまを見た。
いや正確には、何者かに腕をつかまれて放り投げられ抑え込まれていたのである。
(え?)
それを行った者が誰か理解して少し頭が冷えてくる。
――そう、藤原を投げ飛ばしたのは、とうの”モモ”自身だったのである。
「な、なん――」
「黙って”おじさん”――」
「!!」
その桃華の言葉に少し懐かしいものを感じる藤原。桃華は少し困ったような表情で藤原を見た。
「せっかくカツラギが”おじさん”を指名してくれたのに――、
無駄にしないでよ、もう――」
「へ?」
「いいから、この場は引き下がって」
「……でも」
「でもじゃない。
それともこのまま、私に腕を折られたいの”ザコおじさん”――」
その言葉に少しカチンときた藤原だが、無理に笑って桃華を見つめた。
「一瞬見た時はどうしたのかと心配だったけど。
相変わらずでうれしいですよ”お姫様”――」
その顔にかすかな笑顔を返す桃華。
「わかったよ。ザコはザコらしく君に従う」
「ありがと”おじさん”――」
桃華はそう言うと、大人顔負けの力で藤原を立ち上がらせる。
その力の強さにさすがの藤原も、彼女が人造人間であることを理解せざるおえなかった。
「なんとも騒がしいことだな」
不意に藤原は何とも懐かしい声を聴いた。
「え? 鷲見さん?」
「久しぶりだな――藤原」
部屋の扉に背をつけて立っているのは、かつて”小笠原 弓嗣”と共に自分を助けてくれた”鷲見 東一郎”であった。
「鷲見さん――、ここにいるってことはまさか」
「そのまさかだ。俺は実験体”桜華”の管理官を務めている」
「え? でも、鷲見さんの階級は――」
「そこの向坂より上だな――。
それはお前も同じだろ?」
「はい――」
「そこにいる向坂は、実験体が一定の訓練を終えるまでの予備管理官を監督するのが仕事だ。
俺たち正式な管理官に命令する権限はない」
「そう――なんですか?」
その藤原の疑問に、向坂は苦笑いで答えた。
「そこの娘――”桃華”だったか?
彼女はやっと”外の世界”へ自由に出る権利を得たんだよ。
もちろん完全な自由ではないがな――」
「自由――」
その鷲見の言葉を聞いて、再び桃華を見る藤原。そんな藤原に桃華が笑顔で返事をした。
「そうか――」
藤原はまだ自分が何に関わっているのかわかってはいない。
しかし、桃華の笑顔が、それが決して間違っていない事なのだということを理解させた。
「これからよろしく”おじさん”」
満面の笑顔でそうつぶやく桃華に、藤原は少し困った笑顔を向けるのだった。
「どうした? サクラ――」
「なんで私はモモじゃないんだろう?」
「……、別に彼女になる必要はあるまい?
お前はお前で大事な私の――」
「それじゃダメなの――。サクラじゃダメなの――。
私には未来が見えるのに――、暗闇しか見えないよ――、お父さん」
西暦2088年8月2日――。もう十数回目になる実戦演習が行われた。
その直前、実験体”桜華”は、自分の管理官である”鷲見 東一郎”一等陸佐と、上記のような会話を行ったという。
それは、まさしくこの実験体の精神が壊れかけていた証であり、その後の事態を引き起こす予兆でもあった。
◆◇◆
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東京都、太平洋上の群島にある極秘研究施設――。
「桃華――。ロ号第二十七番実験体。
本日をもって、管理官を”国松 勇希”二等陸尉から、”藤原 俊夫”二等陸佐に移管する」
「……」
その言葉を憮然とした表情で聞く国松二等陸尉。
黙って何も言わない彼に痺れを切らして、上官である向坂三等陸佐は強い口調で怒鳴った。
「何をしている?! 復唱せんか!!」
「……なぜですか」
「なに?」
望んだ答えではないその国松の言葉に、向坂は眉根をゆがめて睨んだ。
「もしかして、まだ理解しておらんのか?」
「理解できません!! モモの管理官は私です!!!」
「それは今日までの事だ。初めからそう言う予定だったのだ」
「そんな事――」
『聞いていない』――、国松はそう言いたかったが、そもそも所属組織である国防軍の決定を、一士官に過ぎない自分が変えられるはずもなく、ただ隣に立って困惑した顔をする男に憎悪の目を向ける事しかできなかった。
「――あの? いいですか?」
「ああ!! すみませんお手間をとらせてしまって。この馬鹿のせいで――」
「いいえ――。実は私、何も知らされずこの場に連れてこられてしまって、何が何やらわからないんですが?」
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極秘の事とは言え、ある程度前から知らせておいてもよかったと思うのですが」
向坂はそう言って頭を下げる。
その頭を下げた相手というのが――、
「本当に申し訳ありません。藤原大隊長――」
理解が追い付かずにただ困惑の顔をする”藤原 俊夫”その人であった。
正直、この場に自分がいることも理解できないが、隣から強烈な憎悪の目を向けられていることが、最も理解に苦しむ事態であった。
(俺、何かしたかな?
もしかして――先月のモモちゃんに関する何かなのかな?)
藤原は先月の愛らしい少女”モモ”の顔を思い出す。
現在隣にいて自分をにらんでいる男は、その少女との出会いの後に遭遇した人物である。
――どうやら自分は、いらんことに首を突っ込んでしまったらしい、――と今更ながらに思った。
しかし、藤原はなぜか後悔の心は起きなかった。心の奥には、もしかしたらもう一度、あの少女に会えるかもしれないという期待があったからである。
(あの娘――、桃華っていったよな)
藤原は、あの時の少女の笑顔と、そのあとの寂しげな顔を思い出す。その顔が幼くしてこの世を去った自分の妹”美夏”の顔と重なっていた。
トントン……。
――と、不意に辞令を聞いているその管理長官室の扉が叩かれた。それを聞いて向坂が笑顔を藤原に向けた。
「どうやら、彼女が来たようです」
「え?」
その向坂の言葉に、うっすらと期待の感情が生まれる藤原。そして、それは期待通りであった。
「入れ――」
向坂のその言葉を合図に扉が開かれる、そこにいたのは――。
「モモ――」
不意に藤原からそんな言葉がこぼれた。
「ロ号第二十七番実験体、”桃華”ただいま参りました」
しかし、そこにいたのはあの時の少女ではなかった。
もちろん、見た目はあの時の少女に見える、そしてもしかしたらその通り”桃華”なのかもしれない。しかし、
「モモ?」
「……」
桃華は藤原のその言葉を聞いても、無表情でただその場に佇むだけである。
藤原は、彼女の表情を見て嫌なものを感じた、そして――、
(この娘――、さっきロ号第二十七番実験体って言ったのか?)
そのセリフの中の実験体という言葉が、なぜか心に突き刺さって抉ってくる。
藤原はその時になってやっと、自分が立っている場所の違和感に気付いた。
「これは――、実験体?」
「そうです。彼女が実験体”桃華”で――、
これからあなたの管理下に入ることになります」
藤原は少し眉根を怒らせて向坂に言う。
「この娘は――、実験体? ここはいったい何をしている施設なんですか?
このような小さな少女に一体何を……」
その顔を見て何かを察した向坂は、少し笑顔を消して言った。
「ああ藤原大隊長、何か勘違いをしていらっしゃるかもしれませんが……、
”それ”は正確には人ではなく兵器です、要するにアンドロイド達と同じ存在なのですよ」
「アンドロイド? アンドロイドなら、人にここまで似せるのは違法行為だったハズです」
「いえいえ――、それは比喩表現というやつでして――」
「アンドロイドではない? ――まさか」
その段になって、藤原の心を刺す違和感の正体をはっきりと自覚した。
「クローン? もしくは――」
「その娘は、遺伝子を合成培養して生まれた人造人間ですよ」
「――」
その向坂の言葉に、藤原は息をのむしかなかった。
――そして、次に湧き上がってきたのは激しい嫌悪感であった。
無論、それは桃華に対してではない。
「あなた方――、一体何をしているんだ?」
目を怒らせてそう向坂に詰め寄る藤原。それを見て向坂は小さく苦笑いをした。
「――藤原大隊長。あなたも国防軍の一員なら、軍隊というものが綺麗ごとだけでは動かない組織だって理解できていらっしゃるのでは?」
「だからって貴様ら――」
なおも詰め寄ろうとする藤原に、国松が嘲るような表情をした。
「ほら!! 無駄ですよ!!
こいつに管理官は務まりません!!!
やはりモモの管理官は私しかありませんよ!!!」
その表情を見て、藤原の心の中の何かが切れた。
(こいつら――、なんなんだ。
揃いも揃って狂っているのか?
桃華は――、モモは物じゃないぞ!!!)
その感情の爆発に突き動かされて、国松の胸ぐらをつかもうとする藤原。
――しかし、それはできなかった。
ドン!!!
突然藤原は、自分の体が浮いて天地がひっくり返るさまを見た。
いや正確には、何者かに腕をつかまれて放り投げられ抑え込まれていたのである。
(え?)
それを行った者が誰か理解して少し頭が冷えてくる。
――そう、藤原を投げ飛ばしたのは、とうの”モモ”自身だったのである。
「な、なん――」
「黙って”おじさん”――」
「!!」
その桃華の言葉に少し懐かしいものを感じる藤原。桃華は少し困ったような表情で藤原を見た。
「せっかくカツラギが”おじさん”を指名してくれたのに――、
無駄にしないでよ、もう――」
「へ?」
「いいから、この場は引き下がって」
「……でも」
「でもじゃない。
それともこのまま、私に腕を折られたいの”ザコおじさん”――」
その言葉に少しカチンときた藤原だが、無理に笑って桃華を見つめた。
「一瞬見た時はどうしたのかと心配だったけど。
相変わらずでうれしいですよ”お姫様”――」
その顔にかすかな笑顔を返す桃華。
「わかったよ。ザコはザコらしく君に従う」
「ありがと”おじさん”――」
桃華はそう言うと、大人顔負けの力で藤原を立ち上がらせる。
その力の強さにさすがの藤原も、彼女が人造人間であることを理解せざるおえなかった。
「なんとも騒がしいことだな」
不意に藤原は何とも懐かしい声を聴いた。
「え? 鷲見さん?」
「久しぶりだな――藤原」
部屋の扉に背をつけて立っているのは、かつて”小笠原 弓嗣”と共に自分を助けてくれた”鷲見 東一郎”であった。
「鷲見さん――、ここにいるってことはまさか」
「そのまさかだ。俺は実験体”桜華”の管理官を務めている」
「え? でも、鷲見さんの階級は――」
「そこの向坂より上だな――。
それはお前も同じだろ?」
「はい――」
「そこにいる向坂は、実験体が一定の訓練を終えるまでの予備管理官を監督するのが仕事だ。
俺たち正式な管理官に命令する権限はない」
「そう――なんですか?」
その藤原の疑問に、向坂は苦笑いで答えた。
「そこの娘――”桃華”だったか?
彼女はやっと”外の世界”へ自由に出る権利を得たんだよ。
もちろん完全な自由ではないがな――」
「自由――」
その鷲見の言葉を聞いて、再び桃華を見る藤原。そんな藤原に桃華が笑顔で返事をした。
「そうか――」
藤原はまだ自分が何に関わっているのかわかってはいない。
しかし、桃華の笑顔が、それが決して間違っていない事なのだということを理解させた。
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