11 Girl's Trials~幼馴染の美少女と共に目指すハーレム!~

武無由乃

文字の大きさ
38 / 43

第三十四話 矢凪龍兵

しおりを挟む
 俺たちが緊張した面持ちで天城ビル内へと踏み込むと、そこに待っていたのは異界のような空間ではなく、なんの変哲もない正面フロアーだった。
 俺は思わず拍子抜けして肩を落とす。いや、もちろん警戒を緩めるつもりはない。
 そもそも、異常なことが無いわけでもないからな。
 どういうことかというと、そのフロアーには全く人のいる気配、そもそも人がいたであろう気配すらなかったからである。
 それは、まるでゴーストタウン――いや、もっとひどい、人が生活していた痕跡すらも感じられないのだから。
 そこはまさしく廃墟だった。
 俺は、自分の中に芽生えた小さな不安を誤魔化すように頭を振って気持ちを切り替える。
 そうして、気を引き締め直してからフロアーを見渡すと、そこには先程までは無かったはずの大きな机があり、その上には極めて古風な黒電話が置かれていた。
 俺達は顔を見合わせてお互いの意思を確認し合うと、その黒電話の受話器を手に取る。そして、ゆっくりとそれを自身の身に当てた。
 ――すると突然、聞き覚えのある声が耳に届く。

『司郎君だね?』
「ッ!?」

 その声を聞いた瞬間、俺の心に緊張が走った。
 何故なら、その声の主は他ならぬ――、

「矢凪、龍兵……なのか?」

 そう、その声は間違いなく、あの男の声だったからだ。

『ようこそ……わが城へ、司郎君……』
「……ご招待にあずかったから、みんなで押しかけてきたぜ」
『フフ……それはそれは、君の事だから少女たちは置いてくると思っていたが?』
「まあ……俺の彼女達は、これで結構喧嘩っ早い連中ばかりでね」

 その、俺の言葉にかなめが反応する。

「喧嘩っ早いは余計よ……。まあ、喧嘩しに来たのは事実なんだけど」
「……」

 俺はそんなかなめの言葉を聞きながら、その隣にいる涼音を見る。すると彼女は無言のまま小さく首を縦に振った。
 どうやら、この黒電話には特に罠らしき力は付与されていないらしい。

『おやおや……、それは随分と物騒なお嬢さん達だね』
「そりゃあ、こちとらあんたを倒さなきゃ、確定で死亡だしな……。俺の事を心配してあんたに喧嘩腰になるのは仕方あるめえ?」
『うむ……確かにその通りだ』
「……で? 姫ちゃんは無事なのか?」
『それは、安心してくれたまえ……。私は特に彼女自身には興味がないからね……、ただある場所で眠ってもらっているだけだ』
「う~~ん、その言葉を信じたいところなんだが……、そもそもどうして、あんたがこんなことをしているのかを教えてくれないか?  アンタの行いは神としての約束事に違反してるって聞いたぜ?」
『ふむ……、それは当然、いちいちうるさい神どもに対抗するためだよ』
「なるほど……やっぱり、そのために力が必要ってことか?」
『ああ、そうだとも。私のかつての……そして現在の行いは、神々にとっては違反行為とみなされている。今までも何柱かの神と戦い……それらを退けてきたのだ』

 そう語る矢凪の声からは、なんの感情も読み取ることはできない。おそらくは、彼にとって火の粉が降りかかったから振り払っただけの事なのだろう。
 しかし、それでもやはり疑問が残る。なぜなら――。

「アンタの過去は一部だけだが教えてもらったよ……。初めは俺に似てると思った……、でも先を聞くうちにソレは間違いだと気づいた。……ハッキリ言ってヒデエ話だったぜ」
『……』

 かつて一人の少年がいた――、
 俺と同じく親に捨てられ、幼くして愛情する者に裏切られる経験をしたその少年は、とある家族に引き取られる――。
 その両親は彼を愛し、その両親の実の娘――、彼にとっては義理の妹である少女も彼を兄として愛した。
 ――だがある日、その両親は交通事故で他界、義理の妹と二人きりの家族になってしまう。
 その先でも不幸は続く――、
 学校でできた友人には裏切られ――、
 心を許していた、親友だと思っていた相手からは蔑まれ――、
 愛した彼女は他の男のもとへと奔った――、
 ――そして、そのすべては、義理の妹が仕掛けた行いであったのだ。

 奪われ――失い――、そして裏切られるばかりの人生――。
 そんな彼はある日、いるのかどうかわからない神に祈ったのである。

「もう一度……、もう一度だけ、愛されたい」

 ――と、
 そしてその夢は叶えられた。――誰でもない天城比咩神の手によって。
 ――そう、彼はハーレムマスターの試練に挑んだのである。
 その過程で多くの冒険を経て、12人の少女――、すなわち女神の心までも射止めた彼は、その「愛されたい」という夢を叶えたはずであった。

「……その先、神としての力を得たアンタは、その少女達……、女神を含めた12人をどこかに連れて行った。彼女らを外界から隔離したんだ……、そんな事しなければ他の神に狙われることもなかったのに……」
『……何が言いたいのかね?』
「おそらく姫ちゃんも、そうやって行方不明になった少女たちを救おうとして……、お前に対抗する存在を生み出すために、俺とハーレムマスター契約をしたんだよな? ……そこまで、周囲に敵をつくってまで彼女らを隔離した理由はなんだ?」
『……そんなことはわかり切った話だろう? 神としての力を維持するためだよ』
「……」
『そして、邪魔な神々に対抗できる……最強の力をこれから得ることが出来るわけだ』
「……そうして、自分の好きなように生きるっていう事か?」
『その通りだ……、私は今まで奪われてきた……、失ってきたのだ。ならばこれからは私が奪う番なのだよ』

 俺はその言葉を――、真実ではないと感じた。
 何か大事なことを彼は隠している――と。

「まあいいや……、そういう話なら、テメエを遠慮なくぶっ飛ばしてやるぜ」
『よかろう……、では、そのまま歩いてくるのは面倒だろうから。私が直々に君たちを招待しよう』

 その言葉と共に、周囲が一瞬暗転する。俺が手に持っていたはずの電話の受話器も忽然と消えてしまっていた。

「?!」

 そして、再び視界に光が広がり――、

「さあ司郎君……手合わせ願おうか?」
 
 その巨大な空間に矢凪龍兵の声が響く。
 そこは、天城ビル最上階――、会長の机の置いてある大部屋だったのである。
 俺は――、そして俺の背後にいる少女たちは、彼を睨みながら警戒姿勢をとる。
 
 ――かくして、最後の敵である矢凪龍兵との相対が始まる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

処理中です...