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喰うか食われるかなので必死ですっ!
しおりを挟む――反則級の奇襲……あるいは暗殺スキルだ
まあ、型にハメれば確実に先手は獲れるってわけね。
とはいえ、圧倒的にステータスの差があるので先手を取ったところで、99パー勝てない。
不意打ちで死角飛びかかって噛みついたとしても、ひきはがされてそこで終わりだ。
なら、どうするか?
――人間であること……考えることができるという力を最大限に利用するしかないでしょ?
と、いうことで餌を持って入ってきたゴブリンをアイテムボックスの中から観察する。
うん、まだゴブリンは私が消えたことに気づいていない。
油壷とか、雑多に置かれている資材やら穀物やら藁の中で寝てるとでも思っているんだろう。
でも、残念だね。
私は既にアイテムボックスの雲隠れを解いて、開いているドアから外に出てるよ。
向かう先は固定型の松明の台だ。
そして私は仕込みを既に終えている部屋に向けて、松明の台を思いっきりに体当たりした。
台は倒れ、火の粉が飛び散る。
そのまま私は地面に落ちた松明を咥えて、中に向けて放り投げる。そう――
――事前に蓋を外した油壷に向けてね
「ワン!」
と、叫ぶと弟君もこっちに出てきた。
で、私と弟君で間髪入れずに棚を押す。
――おりゃあああああ!
ま、このくらいの連携なら種族念話で何とかなるってことだね。
何を隠そう、対ゴブリンのために毎日コミュニケーションで絆も深めてきたわけだし。
そう、今まで私たちを閉じ込めていた牢屋のカギ代わり……棚で出入り口に蓋をする。
瞬く間に火は広がり、牢屋の中は煉獄の火炎に包まれた。
「グギっ! グギギギギャアアアアアアー!」
良し、効いてる!
火は凄い勢いだし、このまま決着してくれたらありがたい。
でも、まあそうはならないだろうけどね。
「ギャアアアアアアアアアアアア!」
断末魔にも思えるゴブリンの悲鳴が上がり、私は後ろを振り返らずに調理場内を駆けまわる。
そして、目当てのものはすぐに見つかった。
そのまま牢屋の前へと戻ったところで、ドゴンという音と共にゴブリンのコックが棚を蹴飛ばして出てきた。
まあ、攻撃力がクマ並みだからね。私たちで押せるような棚で閉じ込められ続けるとは最初から思っていない。
火傷はしてるけど、まだまだ元気な感じだ。
そうして血走った目でゴブリンは私たちを探し始める。
「アアアアアアアアアアアアア!」
怒りの咆哮をあげてるけど、弟君は既に調理場の隅に隠れてるし、私は――
――アイテムボックスの中だ
すぐそこにいるんだけど、見えないよね?
で、ゴブリンは私たちを探すべく調理場へと進もうとして、私に背中を見せた。
そこで雲隠れを解いて、私は咥えた≪包丁≫と共に加速を始める。
――狙いは頸動脈
どうよ!?
道具を扱うのは――人間やゴブリンだけではないのだよ!
ってか、ここで仕留めきれなければ、後は賭けになる。
願いと共に背後から駆け寄り、そのまま跳躍。
文字通り、包丁の刃で風を切ってゴブリンの首筋に到達。
シュパっと音が鳴り、確かな手ごたえ。いや、口ごたえか。
ズザザと私はゴブリンを追い越して着地する。
そのまま振り返り――絶句した。
確かに私の包丁はゴブリンの頸動脈にガッツリと命中したんだけど……出血が少ない。
包丁を見ると錆びていて……くっそ、刺身包丁なら話は違ってたんだろうけど、やっぱり研ぎって大事だ。
ゴブリンは私の咥えた包丁を凝視する。
次に燃え盛る牢屋を見て「信じられない」としばしのフリーズ。
いや、そりゃあまあ信じられないでしょうよ。逆の立場だったらこんなの私でも驚きまくるし。
って、まあ固まってくれてる間に準備を整えよう。
――ここから先は賭け。この策が抜かれたら後は蹂躙されるしかない
そう思いながら、私は調理台の上に陣取ってゴブリンを睨みつけたのだった。
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