飾りの恋の裏側

三条 よもぎ

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第3章 初勝利を目指して

第7話 精霊師の初仕事

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千代には侍女がつくため、城での生活は快適であった。
精霊師の仕事に専念して貰い、他国に行かないように経盛は精霊師を厚待遇で雇っていた。
朝食を終えると千代の部屋に暁秀がやって来た。

「早速だが、今日から精霊師として働いて貰うぞ。次の戦が迫っているから、1体でも多く土壌兵を備えておきたいんだ」

城の裏側にある山を目指して歩く途中、昨日と同じように暁秀の精霊師講座が始まった。
ツンデレ弟キャラかと思っていたが、初めて出来た後輩が嬉しいのか面倒見のいい面もあるようだ。

山の入り口には関所があり、暁秀は通行手形を見せて通して貰った。

「はい、これ。あんたの分。今日は初めてだから一緒に来たが、精霊師は基本、集中して仕事をするから1人で来るんだ。次からはこれを見せたら通れるから失くすなよ」
「分かりました。ありがとうございます」

小さな木札を受け取り、千代は手に持っていた巾着に仕舞った。
しばらく歩くと小さな小屋に辿り着き、入口には「千代」と書かれた札が立て掛けてあった。

「ここが千代の作業小屋だ。精霊師には1人1つずつ小屋が用意されているから、好きに使っていいぞ」

中に入ると壁には動かぬ土壌兵がたくさん並べられており、部屋の真ん中にはござが敷いてあった。

「わあ、土壌兵がたくさん!これ、全部を動かせるようにするんですか?」
「いつもなら経盛様から数の指示があるが、今回は初めてだから出来る数だけでいいと言われている」

それを聞いて少し千代は安心した。
ござの上に座るように言われ座ると、千代の目の前に人型の土壌兵を暁秀が持ってきて、向かいに座った。

「手本を見せるから見ていてくれ。まず土壌兵が動いている姿を想像しながら集中する。そして、土壌兵に念を込めながら手を翳す」

目を瞑る暁秀が土壌兵に手を翳すと、手から赤い光が降り注ぎ、土壌兵が次第に光を帯びてきた。
息を呑んで千代が見守っていると、やがて土壌兵が一際目映い光を放った後、パチンという音と共に動き始めた。

「わあ、本物の土壌兵だ!すごいですね!」
「まあ、これくらい朝飯前だ。慣れないうちは1体作るだけで体がへとへとになるから、千代は3日に1体を目標にやってみるといい」

小屋の外にある縄で囲まれた場所に、暁秀が作った土壌兵を置きに行った。
小屋に戻ってくると、次は馬型の土壌兵を持ってきた。

「次は千代の番だ。俺の真似だけでもいいからやってみてくれ」
「分かりました」

表情を引き締めた千代は目を瞑り、土壌兵に手を翳した。
最初は静寂が流れるだけであったが、馬型の土壌兵が動く姿を想像していると、手の先が温かくなってきた。
その頃、ほんのりと光り始めた千代の手を見て、暁秀は驚いたが、声を掛けると集中が途切れるため、固唾を呑んで見守っていた。
千代の手全体が温かくなった頃、パチンと音がしたため、千代が目を開けると、青い光を纏った馬型の土壌兵が動いていた。

「あんた、初めてで出来るなんて才能があるな!俺は1週間掛かったのに……」
「暁秀様の教え方が上手だったから出来たんです!ありがとうございます」

千代は体がどっと疲れ、その場で横になった。

「はしたなくてすみません……。体がとても疲れて座っているのもしんどくなって……」
「いや、気にせず休め。俺も慣れたとはいえ、さっきので疲れたから横になる」

寝転ぶ千代の横に暁秀も寝転び、体力が回復するまでそのまま休むことにした。
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