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第7章 切り開く未来
第23話 敵か味方か
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「いってらっしゃい」
「ああ、いってくる」
紅羽城へ向かう景臣を見送った千代は、1人そわそわとしていた。
知久が受け入れてくれるか分からない不安。
その心を紛らわすかのように、千代は畑仕事や掃除に勤しみ、景臣の帰りを待っていた。
夕方になり、がたがたと荷車の音と馬の鳴き声が外から聞こえ、千代は家の外に出た。
「景臣くん、おかえりなさい」
「ただいま。いい知らせだ、聞いてくれ!知久様が千代の城仕えを認めてくれて、匿ってくれるそうだ」
「安心したわ!今日はずっと不安で落ち着かなかったの。景臣くん、本当にありがとうね」
景臣からの知らせを聞き、千代の顔が明るくなった。
そんな千代を見て、景臣は微笑んでいた。
「明日、千代を連れてくるように言われたから、一緒に城に行こう」
「ええ、分かったわ。もうすぐ夕飯が出来るから、食べながらお話を聞かせてね」
その夜、知久が千代の行方を心配していたことや、経盛への仕返しに千代を雇うと知久が拗ねていた様子などを景臣から聞いた。
喧嘩しながらも知久が経盛を気にしているのを知り、いつか経盛の元へ送り返されるのでは、という不安を感じながらも、今は知久の世話になろうと千代は決めた。
翌朝、千代は景臣と共に紅羽城へ来ていた。
「失礼します」
「どうぞ」
知久に会うのは紫雲城での宴ぶりであった。
「瑠璃姫が無事でよかったよ。行方不明と聞いて、拐われたんじゃないかと心配していたよ」
「ご心配をお掛けして申し訳ありません」
「そんなに畏まらなくて大丈夫だよ。経盛には瑠璃姫を追いかけるのをやめるように伝えておくよ。僕はあんまり戦をしないし、誰かさんみたいに精霊師をこき使わないからこの国でのんびりしてね」
知久の優しい言葉に千代は感動していた。
前世の記憶から知久を信用出来ない人と思っていて申し訳ないな。
千代の中で知久の印象が変わった瞬間であった。
「本当にありがとうございます。私の我が儘でご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「ううん、気にしないで。経盛の人の気持ちを考えないところに僕も怒っているから」
最近の経盛は勢力拡大することばかり考えていて、他への気遣いが蔑ろになっている話に千代も共感した。
それからしばらく雑談をしていると、知久があることを思い出した。
「そうだ、千代に会いたいって人が他にもいるんだ。呼んでくるからちょっと待っていて」
「分かりました。お待ちしております」
景臣もこのことは聞いていなかったため、2人で誰だろうと思いながら待つこと数分。
やがて、戻ってきた知久の後ろには見覚えのある黒髪の男性が立っていた。
「お久しぶりです、千代殿。初めまして、景臣殿」
「日向様がどうして……」
そこにはこの前の戦の相手、日向が立っていた。
知久に嵌められたと疑念が浮かび、千代は頭が真っ白になった。
「ああ、いってくる」
紅羽城へ向かう景臣を見送った千代は、1人そわそわとしていた。
知久が受け入れてくれるか分からない不安。
その心を紛らわすかのように、千代は畑仕事や掃除に勤しみ、景臣の帰りを待っていた。
夕方になり、がたがたと荷車の音と馬の鳴き声が外から聞こえ、千代は家の外に出た。
「景臣くん、おかえりなさい」
「ただいま。いい知らせだ、聞いてくれ!知久様が千代の城仕えを認めてくれて、匿ってくれるそうだ」
「安心したわ!今日はずっと不安で落ち着かなかったの。景臣くん、本当にありがとうね」
景臣からの知らせを聞き、千代の顔が明るくなった。
そんな千代を見て、景臣は微笑んでいた。
「明日、千代を連れてくるように言われたから、一緒に城に行こう」
「ええ、分かったわ。もうすぐ夕飯が出来るから、食べながらお話を聞かせてね」
その夜、知久が千代の行方を心配していたことや、経盛への仕返しに千代を雇うと知久が拗ねていた様子などを景臣から聞いた。
喧嘩しながらも知久が経盛を気にしているのを知り、いつか経盛の元へ送り返されるのでは、という不安を感じながらも、今は知久の世話になろうと千代は決めた。
翌朝、千代は景臣と共に紅羽城へ来ていた。
「失礼します」
「どうぞ」
知久に会うのは紫雲城での宴ぶりであった。
「瑠璃姫が無事でよかったよ。行方不明と聞いて、拐われたんじゃないかと心配していたよ」
「ご心配をお掛けして申し訳ありません」
「そんなに畏まらなくて大丈夫だよ。経盛には瑠璃姫を追いかけるのをやめるように伝えておくよ。僕はあんまり戦をしないし、誰かさんみたいに精霊師をこき使わないからこの国でのんびりしてね」
知久の優しい言葉に千代は感動していた。
前世の記憶から知久を信用出来ない人と思っていて申し訳ないな。
千代の中で知久の印象が変わった瞬間であった。
「本当にありがとうございます。私の我が儘でご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「ううん、気にしないで。経盛の人の気持ちを考えないところに僕も怒っているから」
最近の経盛は勢力拡大することばかり考えていて、他への気遣いが蔑ろになっている話に千代も共感した。
それからしばらく雑談をしていると、知久があることを思い出した。
「そうだ、千代に会いたいって人が他にもいるんだ。呼んでくるからちょっと待っていて」
「分かりました。お待ちしております」
景臣もこのことは聞いていなかったため、2人で誰だろうと思いながら待つこと数分。
やがて、戻ってきた知久の後ろには見覚えのある黒髪の男性が立っていた。
「お久しぶりです、千代殿。初めまして、景臣殿」
「日向様がどうして……」
そこにはこの前の戦の相手、日向が立っていた。
知久に嵌められたと疑念が浮かび、千代は頭が真っ白になった。
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