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第 零 話 知られざる逸史
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陰暦でも陽暦とも異なる現在と全く違った、歳月の数え年、天孫降臨暦九十九年。後数時間で百と言う数になろうとする頃の本州最北端、現在の青森県に属する弁天島。その島で今まさに天津の軍勢と国津の中で諦めず戦い続けた男の決着が付こうとしていた。
最後の一人となった国津が複数の天津の猛将達によって囲まれている様だった。
「天津甕星よ、大情誼がお悪い事ではなくて?いい加減に我々に討たれるがよかろうに」と見下すような視線を最後の国津に向ける天津側の皇位を冠する天照へ、嘆かわしいと言う、色の瞳と表情で、
「天照《あまてらす》、そなた等、天津は我々と同じ星外人であるはず。なぜ我々、国津やあまつさえこの地の土着の者達と共存出来ぬのだ?」と返す、甕星。
「知れた事を、弱者が強者に屈する。これは全ての宇宙の理、それが解からんのか甕星?」と天照の孫と記録には留められている邇邇芸命も之もまた傲慢な態度で大言したのだった。
「邇邇芸、そなた等は国津を討ち滅ぼして何とする!!再び、覇道を歩む積もりか?我々祖の犯した過ちを忘れ・・・」
「敗者が我々、勝者に語る口など無きにことにあらさられますぞ、大人しく討ち滅ぼされてくださいな」と月読が言うと天照は三人の戦士に向かって、
「武甕槌、建御名方、そして、経津主。あの将をお捉えして討ち滅し、その御霊を浄化させておあげなさい」
「御意に御座います」と武甕槌が、
「天照様の主の仰せのままに」と次に武甕槌の朋友の経津主が、そして、最後に、
「・・・、ギョイ」と逡巡に返す建御名方だった。
武甕槌、経津主、建御名方、その三武将は天照の命によりそれぞれ動き出し、天津甕星の周囲を三方に展開し、経津主は天児屋根と共に神の祝詞を謳い上げ始める。
経津主が唱えるものは魂振りの祝詞。それは同族の胆力を増大させる不思議な唄。
天児屋根が唱えるは魂鎮《たましず》めの祝詞。それは相手の闘争心を殺ぎ抑える安らぎの唄。
経津主はそれを武甕槌に向かって韻律の良い手拍子と共に謳い上げ、さらに天児屋根は天津甕星に向かってまるで幼子をあやし寝かしつけるような感じでそれを謡い始めた。
武甕槌は経津主その祝詞によって大気練成術と呼ぶ不可思議な力を昇華させ、武甕槌、彼自身の闘気と大気成分に含まれる元素を練り上げ十握剣、武甕槌の巨大な拳の十倍以上の長さもあるそれを布都御魂剣と言う肉体と魂を切り裂く神秘の剣へと神化(進化)させた。
建御名方は心言を唱え咎滅と言う御魂を恒久に封印する空間を切り開く霊剣を手に出現させる。
天照が天津甕星の前に現れる前、その戦士は幾数千数万もの天津の尖兵をあらぶる神気で一人、戦っていた。その凄まじい神気も今や天児屋根の祝詞で完全に鎮められてしまっている。だがしかし、それでもまだ甕星は一人ぐらいと対峙できる程の力を残していた。
その将に対して武甕槌と建御名方、二人の武人は慎重に間合いを詰めて行く。
詰め寄るその二人のうち一人に対して甕星は言葉を掛け、
「建御名方よ、ソナタはわが同族を裏切り、そなたの父であり、我々を束ねる大国主を手に掛け、あまつさえ兄である吾までも討ち滅ぼそうと言うのか?」
「兄上・・・・・・、神妙になされてください。どのような理想を掲げても大きな力の前では屈するより他は無いのです。選ぶ道は初めから私たちには与えられていなかっただけです」
「建御名方、躊躇いは許さぬぞ。・・・、甕星、それでは参る」
武甕槌はその言葉と共に一気に甕星と間合いを詰め、その大きな布都御魂剣を振り下ろした。
最後に残った国津の民の中の最強の戦士、甕星はその剣を気魄によって張られた護壁で防ごうとしたが天児屋根によって完全にその力を沈静化されてしまったため、その抵抗も虚しく、彼の肉体と魂を分断されてしまった。
建御名方は甕星が切り離されてしまった器に戻る前に咎滅剣で空間を切り裂きその魂を封じようとする。
「クッ、吾もこれまでか・・・、しかし・・・、しかし何時の日か我々、国津も主等も共存できる世が来る事を思いながら今はそなた達に討たれるとしよう」
「ウフフッ、戯言をその様な世が来るはず無かろうに。そなたがいなくなった後は土着供を一掃して全ては終わりで御座いまする。そして妾達の国をこの世界に創るのです」
「愚行な事を」
「言いたい事はそれだけかしら?それでは恒久な彼方へと滅しなさいっ!」
天照はその言葉と共に力を振るい、建御名方が切り開いた空間を大いなる陽の力によって閉じたのだ。
「みなの者ご苦労でありました。ですがまだ気を緩めぬよう。我々の次なる目的はこの地に巣食う邪神達を滅することでありまする」
「天照様の仰せのままに、御意でございまする」
主の前に集まる総ての天津軍勢がその言葉と共に頭をたれた。
その後、天津の民達により天孫降臨前にヤマトと呼ばれていた其の国は日出国と名を改め、その土地に根付いていた土着の民達を封印、もしくは魂を消滅させられる事によって完全に滅ぼしたのであった。それは我々の良く知っている。鬼、土蜘蛛等、山禍。妖怪と総称された天津とは違う姿をした者達の事だった。
その討伐に置いて建御名方は参じてはいなかった。それはなぜか?
事の真相は天津達の行動に耐えられなく、その元国津の戦士は天津甕星を打ち倒した後、自ら己の魂を器から切り離し、諏訪と呼ばれる地方の大きな湖に其の魂を封印したからであった。
天津と言う種族による天孫降臨、表向きによる国津の民からの日本国譲渡、国造り、そして朝廷や幕府を治めし者、天津の子々孫々達による長きに亘る祀ろわぬ邪心の神々の討伐によって日本と言う国が形成されていったのである。
だが、しかし、国津の民(山禍)の事や祀ろわぬ邪心の神々の討伐に付いて詳しく記述された文献は誰にも創られる事なくその時代と共に忘却の彼方へと捨て去られてしまっていた。何しろ、その真実が一般に知り広められる事はその時の権力者にとって余りにも不都合な故・・・。
そして、後世に生きる人々は本当の歴史と人々と人間等の始まりと言うのを知らないまま悠久の時を過ごしていたのである。
最後の一人となった国津が複数の天津の猛将達によって囲まれている様だった。
「天津甕星よ、大情誼がお悪い事ではなくて?いい加減に我々に討たれるがよかろうに」と見下すような視線を最後の国津に向ける天津側の皇位を冠する天照へ、嘆かわしいと言う、色の瞳と表情で、
「天照《あまてらす》、そなた等、天津は我々と同じ星外人であるはず。なぜ我々、国津やあまつさえこの地の土着の者達と共存出来ぬのだ?」と返す、甕星。
「知れた事を、弱者が強者に屈する。これは全ての宇宙の理、それが解からんのか甕星?」と天照の孫と記録には留められている邇邇芸命も之もまた傲慢な態度で大言したのだった。
「邇邇芸、そなた等は国津を討ち滅ぼして何とする!!再び、覇道を歩む積もりか?我々祖の犯した過ちを忘れ・・・」
「敗者が我々、勝者に語る口など無きにことにあらさられますぞ、大人しく討ち滅ぼされてくださいな」と月読が言うと天照は三人の戦士に向かって、
「武甕槌、建御名方、そして、経津主。あの将をお捉えして討ち滅し、その御霊を浄化させておあげなさい」
「御意に御座います」と武甕槌が、
「天照様の主の仰せのままに」と次に武甕槌の朋友の経津主が、そして、最後に、
「・・・、ギョイ」と逡巡に返す建御名方だった。
武甕槌、経津主、建御名方、その三武将は天照の命によりそれぞれ動き出し、天津甕星の周囲を三方に展開し、経津主は天児屋根と共に神の祝詞を謳い上げ始める。
経津主が唱えるものは魂振りの祝詞。それは同族の胆力を増大させる不思議な唄。
天児屋根が唱えるは魂鎮《たましず》めの祝詞。それは相手の闘争心を殺ぎ抑える安らぎの唄。
経津主はそれを武甕槌に向かって韻律の良い手拍子と共に謳い上げ、さらに天児屋根は天津甕星に向かってまるで幼子をあやし寝かしつけるような感じでそれを謡い始めた。
武甕槌は経津主その祝詞によって大気練成術と呼ぶ不可思議な力を昇華させ、武甕槌、彼自身の闘気と大気成分に含まれる元素を練り上げ十握剣、武甕槌の巨大な拳の十倍以上の長さもあるそれを布都御魂剣と言う肉体と魂を切り裂く神秘の剣へと神化(進化)させた。
建御名方は心言を唱え咎滅と言う御魂を恒久に封印する空間を切り開く霊剣を手に出現させる。
天照が天津甕星の前に現れる前、その戦士は幾数千数万もの天津の尖兵をあらぶる神気で一人、戦っていた。その凄まじい神気も今や天児屋根の祝詞で完全に鎮められてしまっている。だがしかし、それでもまだ甕星は一人ぐらいと対峙できる程の力を残していた。
その将に対して武甕槌と建御名方、二人の武人は慎重に間合いを詰めて行く。
詰め寄るその二人のうち一人に対して甕星は言葉を掛け、
「建御名方よ、ソナタはわが同族を裏切り、そなたの父であり、我々を束ねる大国主を手に掛け、あまつさえ兄である吾までも討ち滅ぼそうと言うのか?」
「兄上・・・・・・、神妙になされてください。どのような理想を掲げても大きな力の前では屈するより他は無いのです。選ぶ道は初めから私たちには与えられていなかっただけです」
「建御名方、躊躇いは許さぬぞ。・・・、甕星、それでは参る」
武甕槌はその言葉と共に一気に甕星と間合いを詰め、その大きな布都御魂剣を振り下ろした。
最後に残った国津の民の中の最強の戦士、甕星はその剣を気魄によって張られた護壁で防ごうとしたが天児屋根によって完全にその力を沈静化されてしまったため、その抵抗も虚しく、彼の肉体と魂を分断されてしまった。
建御名方は甕星が切り離されてしまった器に戻る前に咎滅剣で空間を切り裂きその魂を封じようとする。
「クッ、吾もこれまでか・・・、しかし・・・、しかし何時の日か我々、国津も主等も共存できる世が来る事を思いながら今はそなた達に討たれるとしよう」
「ウフフッ、戯言をその様な世が来るはず無かろうに。そなたがいなくなった後は土着供を一掃して全ては終わりで御座いまする。そして妾達の国をこの世界に創るのです」
「愚行な事を」
「言いたい事はそれだけかしら?それでは恒久な彼方へと滅しなさいっ!」
天照はその言葉と共に力を振るい、建御名方が切り開いた空間を大いなる陽の力によって閉じたのだ。
「みなの者ご苦労でありました。ですがまだ気を緩めぬよう。我々の次なる目的はこの地に巣食う邪神達を滅することでありまする」
「天照様の仰せのままに、御意でございまする」
主の前に集まる総ての天津軍勢がその言葉と共に頭をたれた。
その後、天津の民達により天孫降臨前にヤマトと呼ばれていた其の国は日出国と名を改め、その土地に根付いていた土着の民達を封印、もしくは魂を消滅させられる事によって完全に滅ぼしたのであった。それは我々の良く知っている。鬼、土蜘蛛等、山禍。妖怪と総称された天津とは違う姿をした者達の事だった。
その討伐に置いて建御名方は参じてはいなかった。それはなぜか?
事の真相は天津達の行動に耐えられなく、その元国津の戦士は天津甕星を打ち倒した後、自ら己の魂を器から切り離し、諏訪と呼ばれる地方の大きな湖に其の魂を封印したからであった。
天津と言う種族による天孫降臨、表向きによる国津の民からの日本国譲渡、国造り、そして朝廷や幕府を治めし者、天津の子々孫々達による長きに亘る祀ろわぬ邪心の神々の討伐によって日本と言う国が形成されていったのである。
だが、しかし、国津の民(山禍)の事や祀ろわぬ邪心の神々の討伐に付いて詳しく記述された文献は誰にも創られる事なくその時代と共に忘却の彼方へと捨て去られてしまっていた。何しろ、その真実が一般に知り広められる事はその時の権力者にとって余りにも不都合な故・・・。
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