転 神 ~ 人類の系譜・日本神話 編 ~

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第 十六 話 対 立、其の果てに

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壱 決戦の鼓動

 那波が加わった天津神が動くよりも先に琢磨率いる国津神が東京府新中央区の上空に其の姿を現していた。
「むむむむむむっ、この気の波動は皆様、国津の者達が私どもより早く動いたようです。ここにいては危険を感じますぞ。邇邇芸尊様、皆様をここから退かせる力を私に・・・」
〈霧島殿、皆を総転移させようぞ。良いかッ!〉
 誰よりも早く、国津神の襲来を察知した霧島新太郎はその場に居る同胞たちに其の事を伝え、邇邇芸神の力を持って皆を其の場所から野外へと転移させていた。そして、その彼の行動は危機一髪のものだった。
 成人の姿に変わっていた八幡七星―天津甕星の力が今まで天津神等が会議していた場所、其の空間を消滅させていたのだ。
「琢磨殿、残念ながら我の一撃はやつ等を捕らえる事は出来なかったようだ。・・・・・・、あそこに逃げたか。・・・、か弱き、そして護るべき者達の住む場所での戦いはさけるべきであろう」
「ウム、当然の事だな。よし、異転を使える者は私にその力を集めよ。生態系が崩壊、生物が消失している小笠原の島に天津等やつらを導く。よいな、みなよ」
 琢磨によって確固たる統制が取れていた国津側の行動は早く、天津側は体勢を立て直す間もなく、国津側の思惑通りに小笠原諸島の何処かへと強制送還されていた。更に其の地に落とされ た時、武達は勢力を分断させられるような感じで皆が一緒に集まっている事はなかった。
「はうぅ~~~、流石相手は軍人さんに降りちゃった神様です。とても動きが早いよォ~~~。・・・・・・、そこにいるのはエイちゃん?」
「ショウちゃん、怪我は無い?武さんたちを早く探さないと・・・・・・、それと遠くに出かけてしまっている皆様をお呼びしなければ私達、このままでは負けてしまいます。ショウちゃん、皆様をここへお呼びする力を私に貸してください」
「ウン、何とか大丈夫見たい。それとエイちゃん、そんなコト分かってるよ」
 母島と呼ばれる島のどこかに落ちていた照神は立ち上がると服のどの場所に埃や泥が付いてしまったか、まるで分かっているかの様にそれをポケットから取り出した和風刺繍の手巾で、汚れを払う。そして、両手をよく其の布で拭ってからその両手を妹の前に差し出していた。
 詠華も姉と似たように衣服についてしまった汚れを市松模様の手巾で払い、ウエット・ティッシュで手を綺麗にし、照神に手を絡める。
 その双子の姉妹は鏡合わせの様に向かい合いながら瞼を閉じ、何かを歌い始めた。そんな姉妹二人に彼女等の気の波を辿ってきた国津神の一人が攻撃を加え亡き者にしようとしていた。しかし、その男の放った一撃は彼女等の寸前で何者かによって掻き消される。
国津神おまえら等なんかに二人をらせるものかぁーーーッ!らいこぉおぉおぉおぅけんっ」
 伊勢野姉妹は武の到来が分かっていた様なのか迫り来ていた国津の一撃など無視して、詠唱を続けていた。それと那波も彼と一緒だった。
 国津の者は相手が武甕槌と裏切り者の建御名方、力では勝てないと分かるとその場から直ぐに引き上げ、大国主の所へと去って行こうとするが、
「逃すワケないぜっ、待ちやがれぇーーーッ!」
「武さん、ここへ皆様が集まります。私の傍から離れないでください。お願い致します」
「タケちゃん、行っちゃ駄目だよ。直ぐにみんな来るから」
 彼女等の言葉に武は動きを静止させ、手に纏わり付かせていた神気を解放していた。それから程なくして約四十一人、四十一神がその場に姿を見せた。しかし、その中に・・・・・・、経司がいるはずも無く・・・・・・。
「けいじ?経司はどこにいるんだ?大地、あいつは?経司を知らないか?」
「俺、今日、香取とは一緒じゃなかったけどな」
 しきりに辺りを見回し経司の姿を探す武。彼は幼馴染みがその場所にいない事に酷く不安を感じ、動揺していた。そして・・・、
「この神気の波は経司?・・・、何で・・・、何でおまえが国津神等そいつらと一緒にいるんだよっ!」
〈経津主、貴様っ!いったい何を考えておるのだッッ私達に背いて何を・・・〉
 天津神だけが分かる天照と月読の口寄せの術に経司は琢磨達を連れ、その場に姿を見せていた。
「武、今お前に語る舌を持ち合わせていない」
〈・・・、武甕槌殿、私の意志は既に経司殿が言葉にしています〉
 経司は武に言葉を掛けると鞘から抜刀し、それを冷たい瞳と一緒に幼馴染みに向けていた。それは敵になったという事が嘘ではないと強く示すように。そして、更に抜いたそれで武に攻撃を仕掛けるような構えも取っていた。

 その場にいる総ての天津神たちは驚きを隠すことが出来なかった、天津神の力の具現を二分するその内の一神が敵対する相手側に寝返っていた事に。そして、戦力が完全に整っていなかった天津神達を降ろした者等にとってその事実は相当な精神的痛手だった。
 だが、それでも国津側の武神、建御名方を宿した少女が天津側に加わってくれていたのがせめてもの救いでもあった。

 香取経司が武に仕掛けるよりも早く、上空に浮遊している諏訪那波が彼の兄、勇輔の目に留まると彼は雄叫びを上げながら手にしていた十握剣で彼女に斬りかかろうとしていた。それに気付いた那波は直ぐに応戦しようと霊剣を手に取るが刹那間に合わず、それを食らってしまいそうになる。
「ユゥーーーッスケェーーーーーーッ!おまえ、妹の那波ちゃんになんってコトするんだ。其れでも那波ちゃんの兄貴なのかよっ」
「武君、騒ぐナッ!裏切り者には然るべき罰を与えなきゃならないんだ。それがたとえ血を分けた大事な妹でも。那波もそれを理解した上で僕達のところからそっちへいったんだ。だから、邪魔をするナッ」
 武はその兄妹の攻撃の間合いに割り込んで、両腕を交差して勇輔の力任せな一撃を受け止めていた。そのため一時的に武の動きは止まってしまう。そして、それを狙うように瞬転してきた経司が上段から刀を振り下ろしていた。
「そうはさせません。・・・、どうして、アナタが?武さんの親友のはずの貴方、経司さんが」
「クッ、出来るな。流石は建御名方の転生か。・・・・・、那波さんには到底、俺の考えなど理解できんよ。俺は相手が女でも武器を持ちその進路を邪魔するなら容赦しない」
「そうですか・・・、それなら武さんをその手に掛けようとするなら、たとえ貴方が武さんの幼馴染みであって親友であっても私、諏訪那波が経司さんを討ちます」
「フンッ、小賢しい。出来るものならやってみろ」
 那波と経司の会話を聞いていた武は何かを一瞬迷っていた。それは幼馴染みを止めるべく、経司と戦うか?それとも兄妹同士での争いを止めるべく、勇輔と戦うか。
「那波ちゃん、経司を頼む・・・、出来れば・・・・・・」
 武はそう言葉に残すと前方へと勇輔を突き飛ばし、その飛ばした先に彼も向かって飛んで行く。
 以前、天津と国津が交えた戦いより、更なる壮絶な人々に神と崇められた者達の戦いが始まろうとしていた。そして、その勝敗の行方はいかような物なのか・・・。
 
弐 剣といかずちの神、武甕槌 対 ことばと海の神、事代主

 軽く五、六キロ先まで突き飛ばしていた勇輔のヤツを追いかけていったら俺は島の外、海上の上空に達していた。相当強い蹴りを食らわしていたのに勇輔はけろっとした表情を見せてくれる。
「武君、キミは経司君と戦うことより僕と戦う事を選んだんだね?武君にとってその判断はきっと後悔する事になるよ」
「残念だぜ、俺は今まで後悔なんってしたことが無いんだ。そんな言葉の意味なんて知らないぜ、これからもな」
「だったら今知るよ。那波は経司君に討たれ、キミは僕に殺られるって事をね」
「勇輔みたいにちゃらんぽらんなヤツに負けるかっ!」
 俺は両拳にいかずちを下ろし、それを勇輔に打ち込んでやろうと一気に間合いをつめそれを突きつけようとした。
「十握剣を握れない武甕槌の武君になんか僕は負けないよっやぁあぁぁあーーーッ!」
 瞬時に放った二回の攻撃を勇輔は簡単に剣で払いのけるとその返す刃で俺を斬り付ける。上手く身躱した積りだったけど剣先が俺の服を掠め切り裂いていた。
「クソッ、なんでだよ。何でユウスケがこんなに強いんだインチキだぜ」
〈武、可笑しいぞ。以前、勇輔からは事代主の魂だけしか感じられなかったのだが・・・、おかしい、その様なことありえるのか?〉
「武君も武甕槌も疑問に思っているみたいだね。だったらサービスして教えてあげるよ。僕は大地君、天児屋根と一緒で言葉を力に換えることが出来るんだ。大地君はそれで神降ろしなんって名前の力で高天原に居る神様を使役するけど・・・、ボクは神憑り、黄泉で眠るすべての御魂を僕の中に取り込んでそのままの力を借りるんだよ。僕の精神力が呼び寄せる御魂より強ければ、幾つでも同時に・・・、お喋りはここまで・・・、死んじゃってよ、武君」
 勇輔は言い切ると急に表情を変え、物凄い勢いで俺に襲い掛かってくる。その動きにはまるで無駄がなかった。ただ、ただ、俺は拳でその剣を払いのけ防戦する事しか出来なかった。
 俺が勇輔の剣を拳で払いのけるたびに閃光の波と爆音の轟きがその空間に広がっていた。高く上がった水柱が砕け、周囲に大粒の冷たい雨を降らせた。冬の荒れ狂う大海原がこれから始まる二人の激闘の狼煙を上げるようにそれ以上に激しく波打ちはじめる。
〈クッ、一体誰の力を借りているというのだ?この強さ、私の知る国津でも天津の者でも無いぞ〉
「武甕槌、マジで勝てないのか?つえぇ~~~よっ、今の勇輔はっ、最強の戦士なんだろう俺達」
「フフフッ、それは武甕槌が十握剣を握ってこそ口に出来る言葉なんだよ、武君。それを持たないキミなんて経司君、いや、今の僕の足元にも到底及ばないよ。だから、もう無駄に抵抗しないで眠って頂戴よ。・・・、ワレ、海原の大神オオカミ・・・」
〈しまったっ。武、上空へ逃げろ〉
 海面すれすれにいた俺に武甕槌がそう言ってくれたときは既に遅く、俺は勇輔の力に・・・。
「海の底に沈めえぇーーーーーーッ!しんっ、かいしょぉ~~~~~~っ(神海嘯しんかいしょう)」
 勇輔がそう叫んだ時、四方八方から俺を取り囲む様に言葉では表現出来ないくらい巨大な津波が押し寄せてくる。まさに神のなす力って奴。それに飲み込まれ極寒の海中深くへと引き摺り込まれてしまっていた。
 今、人で無い俺は何とか海中でも息は出来ていた。凍て付く様に冷たく、水圧で体が押し潰されそうな空間。冷たい海水はまるで四肢を縛る縄。全方位から圧し掛かる水の重さはまるで巨大な圧搾機。意識をしっかりと保ちそれらに抗う様、身を護らないと瞬く間に昇天してしまいそうな亜空間に俺は放り込まれてしまった。そうならない様に神気の鎧を身に纏い海上へ出ようと上昇を開始していた。だけど、海の中まで俺を追ってきていた勇輔にそれを阻止される。
〈武、海の中では私等にとって不利だ。事代主は海神とも呼ばれた国津。今の私達では・・・〉
「遅いよぉーーーッ、やぁーーーッ」
 海中でも異常な速さを見せる勇輔は剣を振れる間合いまで詰めてきた。少しだけ、まだ体に纏わり付いていた雷霊をヤツに向かって放出してやった。海中で雷撃を放つなんて、自爆行為に程近いけど、雷霊に魅入られたのは勇輔だけ。
「うぎゃぁーーーっ、クッ、ぼくの体が・・・・」
 電撃を喰らって硬直状態になった勇輔に一発拳を入れてから急上昇した。
「畜生、勇輔があんなに強かったなんて見くびっていた。・・・、昔も事代主、って神様はあんなに強かったのか?」
〈天孫の乱時、私はあの者とは剣を交えなかった。まさかこれ程の者とは・・・、だがソレモ私達がしんの力を発揮出来ない所為であろう事か〉
 武甕槌と会話を交えながら海面から上空まで上がり、濡れた全身を降って水気を払っていた。それが終わった時丁度、勇輔の奴も俺の目の見える範囲に姿を見せる。それからお互いに相手の出方を窺う様に距離をとっていた。
「武君、どうして抵抗するんだ。勝てないって事が分かっているのにどうして・・・」
「決まってるぜ、俺が負ければ勇輔、オマエ経司のところへ向かうんだろう?そして・・・、そんな事、させるものかよ。・・・・・・・・・、でも、どうして、どうして、勇輔は国津に力を貸すどうして那波ちゃんは俺達のところへ来てくれたんだっ」
「勘違いしないで欲しいよ。キミたちじゃなくて・・・、キミのために那波はそっちに行ったんだ。それとボクが戦う理由、それはボクが国津だからだ」
「どういうことなんだ?」
「駄目だよ、教えない。まあ、ボクに勝てたらその気になるかもね。絶対ありえないけど」
 那波ちゃんの兄貴は既に勝った様に、思い上がりな態度、悠然とした態度で俺にそんな言葉を吐いてきやがった。
「クソッ、勇輔のクセに、お前なんかに負けてたまるかよ。その言葉、俺が後悔させてやるぜ」
〈武・・・、媒体なしでどれだけの力が出せるか分からんが十握を出すぞ〉
「大丈夫なのか?そんなコトして俺の体は?」
〈今は天照、詠華の御光のもとだ。多少の無理くらいは可能であろう。利き手に神気を募らせ剣の形を心で想像し、それを拳に創造せよ〉
 俺は武甕槌の言葉どおり、剣の姿を想像してそれを形作りだそうと試みた。
「クククッ、武君。それは一体何の積りだい?ブッ細工な物なんか取り出しちゃって。十握剣の積りかい?フフフッ、あぁ~~~はっはっはっはっは。笑っちゃうくらい可笑しいよ」
 媒体と呼ばれるものが無い所為なのか、それとも俺自身の想像力が乏しい所為なのか奇妙な形の剣が右手に姿を見せていた。
 刀身がまるで乾燥した昆布や若布のような波打つ不定形の刃を宿らせた剣だった。
 見ている自分も、今俺の手が握っている剣の形が酷いなっと思うけど、俺達の戦いに其の形なんて意味が無い・・・、と思う。
 理由?人が知っている物理的な切れ味なんか必要ないんだ。だって俺が相手から削ぐのは霊力や神力といった不可視の力なんだから。
 勿論これで勇輔を切りつけるんだから怪我はするだろうけど、たいした事は無いはず・・・。「わっ、笑うな、勇輔ッ!今から俺の本気を見せてやる。後悔しても、もう遅いぜっ」
「そんな不恰好で紛い物の剣で僕が斬れるものカッ!返り討ちにしてあげるよ。そして、後悔するのもキミの方だ!」
 勇輔との間合いを計りながら、俺は武甕槌の意志の赴くまま剣に神気を募らせ天空に掲げていた。
「集まれぇーーーッ、雷霊ッ!ウヲォおおおぉオォォオオぉおぉぉ、らいこぉ~~~けんッ(雷光剣)」
「英霊、覇駈礪子ハーキュレス、その力をボクにぃーーーッ」
 俺が気合を掛けながら勇輔に上から下へ向かって行くと
彼は下から上へ猛加速で飛び上がってきた。
 それから、オレの持つ表現し難い形の乾燥昆布剣とヤツが持つ確りとした形の剣。
 赤紫と蒼い煌きを放ちながらが、天候が変わり本当に冷たい雨の降り注ぐ場の水気をすべて弾き、切り裂きながら燃え揺る剣の軌跡を作る。二人のどちらかの命を奪おうと体中心に向かって振り下ろされ様とした。多分、お互いのこの一閃が勝敗を決めるんじゃ無いかと、そんな凄まじい威力を持った二つの刀身がお互い吸い込まれるように衝突しよとしていた。
そして、
「ウグッ、ぼっ、ボクガァ~~~、そんな紛いな形の剣に・・・撃たれるなんって・・・」
 悔しそうに苦しそうに俺に向かってそう言ってくると上空から降下してゆく。そんな状態の彼を追いかけ、海面にぶつかる前に体を抱き捕らえた。
 ずっと昔、硫黄島と呼ばれていたその島の方まで戻り、海岸に勇輔を寝かせる。辺りには他の仲間達が戦っている時に放出する強い神気の波がここまで伝わってきていた。さらに空間が破壊されては再生され、消滅しては創造されると言う非常に異常な視覚的状況も確認できた。多分、俺達側と勇輔側の自然を治せる力がある連中が同じ仲間によって破壊されたそれを回復しているんだろう。
 直ぐにでも仲間たちのところへと戻って手助けしたかったけど、その前に勇輔に戦いの最中、語っていた言葉を聞き返す事にした。
「勇輔、約束だ。俺が勝ったぜ。話せよ、あの時に口にしていた言葉の答えを」
「そうだね・・・、ボクこんな性格で嘘をつくこともあるけれど・・・、約束だけは破ったこと無いから・・・」
 勇輔の奴はオレに切り裂かれた傷口を手で押さえながら、苦しそうな表情のまま、語り始めてくれる。
「一つ言っておくぜ、勇輔。ただ天津神に恨みがありましたって簡単な理由じゃ、納得しないぜ」
「キミのそんな心ぐらいボクは簡単に読めるよ・・・・・・・・・・・・・・・、天孫の戦って呼ばれる戦争で特殊な力のある国津と呼ばれた人達は天津と呼ばれる人達にちからだけを社と言う封印で閉じ込めた。でも、もうどれくらい前の昔になるんだろうね?天津きみ達がこの地を去ってから何箇所か国津ぼく等に施された封印は弱くなり始め、何時いつしか、封印の力は無くなり、それから解放され野に下る事が出来たのは・・・。でも、でもね、それでもみんながみんなじゃない。
 それから、そうできた者達は人と交わり、人間になり、ずっと今まで僕達の子孫を残して来た。そして今・・・、天津神と呼ばれるようになったキミ達は何の目的で降りてきたのかは知らないけど降臨と言う形で再び、姿を見せたんだよ。
 天津側と違って今の僕達、国津側の大半は過去の記憶を持たない、人々から事代主や建御名方と呼ばれていたそれら自身の生まれ変わりで、昔持っていた力に目覚める事を先祖返り、覚醒って琢磨様は言っていた。だから、ボクにとって天津が昔、僕等にしたことなんか恨んでなんかいない」
「じゃあ、だったらどうして?」
「でも、その昔とったキミたちの行為自体が許せるものじゃなかったんだ。それの所為でボクや那波は・・・」
「恨むと許さないって言葉何が違うんだ」
「馬鹿だね、武君は本当に。そんな事ボクじゃなくて武甕槌に聞いた方が直ぐに分かるのに」
「どォ~~~せ、オレは馬鹿だぜ。そんな事言われなくたって解かっているさ」
「しょうがないなぁ~~~、今回だけはサービスして教えてあげるよ、僕もう直ぐで逝ってしまいそうだけど・・・・・・、〝恨む〟って言うのは過去の不満や不快感を心に抱き続け、それの為に仕返しをすること、〝許さない〟は過失や罪を咎める事だよ。解かったかい?・・・・・・、それじゃ話を戻すね。
 ボクや妹がそれの生まれ変わりのためだったのか僕等には両親がいなかった。僕の肉親は那波だけ、那波の肉親はボクだけ・・・、生まれたときからずっと二人だけだった。物心付くくらいの時まではどこかのとっても小さな神社の巫女さんに育てられ、なんら人様と変わらない生活を送らせて貰っていたよ。・・・、でもね、その人が他界してしまってからはまた二人だけ。
 そして丁度その頃からボクも那波も不思議な力を持ち始めた。殆どみんなの周りでそれを使うことはなかったけど・・・、極稀に人命を助ける時にそれを使ったんだ。でも・・・、せっかく助けてあげたのに・・・、ボクも妹も周りから受ける視線はとても冷たい物だった。
 ボクはお調子者でこんな性格だったから余り気にしなかったけど・・・、那波は違った。妹はそれの所為でとても心を痛めていたんだ。どうして、同じ人なのにそんな目で見られなくちゃいけないのかってね。・・・、それはね、小学生の頃だったよ。地元の悪ガキ共が那波が持つ不思議な力を不気味がって、忌み嫌って取り囲んで虐めていたんだ。
 そして、それを助けたのは僕じゃなくて・・・・・・・・・、武君、キミなんだよ。覚えてなんかいないだろうけどね」
「小学生の頃?俺が那波ちゃんを助けたって」
 記憶力いい方じゃないけど俺は勇輔のその言葉にその頃の事を思い出してみた。すると一つだけ思い出したことがあった。それは家族で長野の親戚の所へ遊びに行った時、近所の公園でそんな事があったような気がするけど・・・、余り確証が無いぜ。
「東京出身のキミがどうして、その時に長野の茅野に居たのか知らないけど。那波にとってキミがしてくれた、それと僕も教えてはもらって無いけど、武君が妹に言ってくれた言葉がね、那波の心を救ってくれたんだ。だから那波はキミが武甕槌の神の適格者ですでにそれを降ろしている事を知った時にすごくショックを受けていたよ。
 初めの頃は琢磨様や僕の言葉に従っていてくれたけど・・・、結局・・・」
「オレがそんなガキの頃、口にした言葉なんって覚えちゃいないけど、大まかに那波ちゃんの事は理解できたぜ。・・・でも、勇輔の話のどこに二人が争わないといけない理由があるんだ?」
「最後まで言い切れるかな・・・、目がかすんできたよ。・・・、でも約束だから。那波は二度も僕ら国津を裏切った。一度目は思想の違いで・・・、もしも、もしも建御名方が裏切らなかったら国津は戦いに勝つことは出来なかったかもしれないけど負ける事もなかったかもしれない。過ぎてしまった時の流れ、歴史にもしもなんてありはしないんだけど・・・」
「武甕槌、そんなに建御名方って強かったのか?」
〈ああ、強かったぞ。経津主や天児屋根がいなかったら負けたいたやもしれんな〉
「サッ、差しで勝負したんと違うのか?・・・、それって卑怯じゃないのか?」
〈無論、勝負は一対一だ。だが、私は天照や彼等が傍にいてくれるとより強く私の力を発揮できるのだ〉
「武君、武甕槌との話はもう止めにしてくれないかい?ボクのお喋りが続けられないよ。・・・、それじゃ話し続けるね。僕等が天孫の戦に負けて天津がこの国の神として頂点に立った時にキミ達の主神が持つ思想、勧善懲悪と言う思想がこの日本に広まった。そして、それは選民思想でもあったんだ。選ばれた民って言うのは勿論、天津がつれてきた人と呼ばれる知能のある動物と、矢張り僕等が連れていた人と呼ばれる種。そして、選ばれなかった民とはこの地に住んでいた先住の神々ものたち、異種の力を持った者達だったんだ。天津の持つ思想が根付いてしまった頃は完全に人々は変わった力を持つものを恐れ、忌み嫌い迫害するようになってしまっていた。
 キミ達がそうゆう風にどんな種族とでも上手にやっていけない国にしてしまったコトが僕は許せなかった。それさえなければ僕や那波はみんなから嫌な視線を向けられる事がなかったかもしれないのに・・・、でも、もう良いや。僕の命もここで尽きちゃうみたいだね。次にまた生まれ変わりこの国に降りることが出来たなら・・・、もうそんな思いをせずにすむ日本になっていて欲しいよ。・・・・・・、ねえ、武君?那波はボクにとって誰にも渡したくないくらいに大事なんだ。だけど、武君、キミになら呉れてあげちゃ・・・っても・・・・・・良い・・・・・・かも・・・・・・・・・、だから・・・、な・な・・・み・・・を・・・・」
 勇輔は最後まで言葉を言い切る事無く、瞼を閉じ、ぐったりとしてしまった。
 俺は天津の戦士として、詠華さんにとって討つべき相手である国津、その一員の勇輔と戦って、その勝利を手に入れていた。
 だけど、国津を裏切って俺達の方に来てくれたけど、那波ちゃんにとって、たった一人の肉親、彼女にとって本当はすごく大切なはず兄を俺はこの手に掛けてしまった。
 鹿島武と言う一個人として、すごい罪悪感、後悔の念に囚われてしまう。勇輔の言っていた、俺が〝後悔〟って言葉を知るってことはこの事だったのか?
「ユウスケ?・・・、勇輔・・・、ゆうすけ、確りしろよっ!お前、嘘ついてんだろう?狸寝入りなんかしてくれているんだろう?俺をからかってるんだろう?ゆうすけ、ゆうすけ、ゆうすけ、ユウゥーーーーーーッスケェーーーーーーーーッ、目を開けてくれぇーーーーーーッ」
〈狼狽するな、武。勇輔とやら仮死状態ではあるが死んではおらぬ。私達が付けた傷を癒すため、仮眠を取っているだけだ。心配するな〉
「クッ、勇輔のやつ、演出しやがって騙されちまったぜ。・・・、でもこのまま俺がここから離れたら他の連中がこいつに止めを刺すかもしれない・・・、どうしよう?」
〈小さく私達の神気を纏わり付かせお互いの気で相殺し偽装しよう。木陰に隠して置けば他の者も直ぐには気付くことはなかろう〉
 武甕槌に言われたとおり、勇輔に俺の神気を纏わり付かせてやった。それから木の下に寝かし直して辺りにあった大きな木の葉等を掛けてやり、彼のその姿を隠していた。更にそれが終わると経司の持つ神気の波を辿って其方へと向かって行く。
「・・・、二人ともまだ戦っているようだ。早く止めないと・・・・・・、そして、経司を首絞めて、ぶん殴ってやってでも裏切った理由を話させてやるぜ」とそんな事を飛行中に呟いていた。
 
参 刀神経津主―経司の願い、そして、剣神建御名方―那波の想い

 武と勇輔が戦いを始めた頃と時を同じくしてそれらの親友と妹が場所を移動して睨み合い、手に持つ刃を交えようとしていた。その場所は硫黄列島の最南端。
「経司さん、・・・、どうして貴方ほどの人が武さんを裏切ったんですか?」
「フッ、甚だ可笑しいものだな、裏切り者の君からその様な言葉が聞けるとは・・・、情などと言う下らぬ感情で動く那波さんには俺の考えなど到底理解できないさ」
 那波より少々高い上空にいる経司は見下すような視線で彼女にそう言い放っていた。そんな彼に彼女は強く見返す様にして言葉を返し、
「確かに経司さんの言うとおり私の行動は貴方から見たら思慮の足らない物かもしれませんが・・・・・・、貴方には理解できないでしょう?私が・・・」
 那波はそこで口を動かすのを止め、俯き唇を噛み、剣を握らない手の拳を握り締めていた。
「フンッ、キミがどのようにしていままで人に目を向けられていたかと言うことだろう?同じ人として。・・・いや違うな、今の俺や那波さんは人であって人ではない人と神の間の存在、人間。普通に生きる者から見たら俺やキミは異質な存在でしかない。そして、人はその様な者達を己等の仲間から除けようとする。・・・、更にそれは俺が経津主を降ろす前にとっていた行動でもあったな」
「一体何を言っているのですか経司さん?私に何かを伝えて動揺を誘う積りなのですか」
「そんな事はしない、戦うなら清々堂々。それが俺の主義だ。・・・ただ、何も知らないで負けて逝くには口惜しいだろう?だから冥府の土産に少しだけ、俺の行動理由を教えやろうと思っただけだ」
「武甕槌ほどの力も無い、経津主の貴方が私に勝てるとでも思っているのですか?それは思い上がりです」
「それこそ思い上がりだな、那波さん。昔の経津主とこの香取経司に降りた経津主が同じだとは思わない事だ」
 那波はそれ以上の経司との言葉の遣り取りを中断させるように彼女の方から攻撃を仕掛けていた。彼女は瞬に空間を転じて彼との間合いを詰め、刹那の間に数え切れない程の剣閃を走らせていた。その急所を狙う正確さは目を瞑って針穴の間に糸を通すという次元ではなかった。だが、そんな彼女の斬撃も経司は少ない動きで然も当たり前の様に刀の峰で受け流す。
「建御名方の力とはその程度のものなのか?その程度なら受け流しながらでも話は続けられるな」
「それは余裕の積りですか?私はまだ一分ほども力を出してはいませんよ」
 那波はそう言葉にすると僅かだけその動きを速め、口にしたことが嘘で無い事を示した。そして、彼女の少し速まった動きの剣が経司の頬を掠める。
 掠められた頬から滴る僅かな血を親指で拭いながら経司は那波から間合いを取ろうと瞬転して距離を置こうとするが彼女もまた其れを追うように移動して、再び剣を振るう。
「経司さん、戦う気が無いのでしたらその刀を鞘に収めてください。そうすれば・・・・・・」
「そうすれば、なんだ?戦う事をやめてやろうとでも言うのか?見くびるな」
 経司は言葉と一緒に返す刀を彼女に向けた。其れが彼の最初の一太刀。彼の剣の閃きは彼女の胴元を捕らえようとしたが寸前に避けられて衣服が僅かばかりだけ裂けたくらいだった。その時点から本当の二人の力と力の激闘が繰り広げられ様とした。
 いつしか経司と那波、その二人の間に会話はなくなっていた。二人がいる空間から聞えてくるものは刀と剣が打ち合う甲高い音、神気と神気がぶつかり合い弾ける音、そんな声音とはまったく別な音だけが周囲に響き渡っていた。
 経司が刀に業火を纏わせると那波は対極となる力を、剣を局限な程に凍て付かせ其れを打ち消し、彼女が遠方から剣で雷撃を放てば彼は其れを発散させるように密度の濃い烈風を刀を振って出現さて、指向性放電を彼の軌道外へ拡散させていた。
 二人の力はお互いを捕らえる事も無く四散して行き、何かにぶつかればその場所を大きく燃やし、凍結させ、焦がし、根こそぎ薙ぎ払っていた。その規模は・・・・・・、言うまでもなく甚大であった。那波も経司も其れを気にも留める事無くして、持てる力を振るい続ける。
 二人が自然の倒壊を無視して力の限り、闘い続けるのはお互いの仲間に其れを復興できる力を有した者がいるのを知っていて、その仲間がその力を揮うと信頼しているからだった。
 だが、刀神も剣神も十分な力を出し切って戦っているわけじゃない。せいぜい四、五割程度の物でしかなった。
「其れが建御名方の持つ力か?本気を出して掛かってきたらどうだ」
「経司さん、それは貴方も同じ・・・」
 鍔迫り合いの状態に入ったとき二人は一瞬だけ、そんな会話をしていた。そして、言葉を交わし終えた二人は力任せに押し合い、その力に弾かれお互いに距離を開けてしまう。其れからは突き飛ばされた場所で手に持つ武器を得意な型に構え、相手の出方を窺う姿勢を造っていた。しばらくそのままの状態が続き、経司は心中で、
「経津主、このままで俺は彼女に勝てるか?」
〈無理です、経司殿。矢張り那波殿、建御名方殿は強い。ですが、那波殿が完全に力を引き出す前に仕留めてしまえば・・・、本来は私、経司殿が布都御魂を扱うのは無理難題な事なのです。私自身が其れであるから・・・。ですが今は・・・・・・。ただし、其れを行っている間、私との意志の疎通は取れませんし、経司殿は無防備となります。総ては経司殿判断で〉
「わかった。それでは試してみるか?どこまで俺が其れを使いこなせるか・・・」
「経司さん、何をぶつぶつと経津主と会話を交わしているのですか?どのような算段を企てましても貴方はけして私に勝つことは出来ないのですよ?どうして其れを理解してくれないのですか?」
「たとえ、己の負けが解かっていても成さなければならない事だってある」
「そうですか・・・、経司さんにそう命令するのは貴方に降りた経津主なのですね?貴方を動かすのはその天津の所為なのですね?でしたらワタクシ、諏訪那波がこの剣でその意志経司さんうつわから切り離して差し上げます」
 彼女はそう言葉にすると十握と呼ばれている霊剣を神霊剣、咎滅へと神格を上げさせていた。
「フッ、戯言を俺は香取経司、経津主、その両方だ。この刀で那波さん貴女の総ての想い断ち斬って見せよう」
 彼はそう言葉にすると握る刀に全神気を集中させ、其れを布都御魂へと神格上げする祝詞を唱え始める。
『我波刀神、経津主神。|経津波払刀討乃意、主波力成。我御魂尓返里手、総手乎絶都力尓帰須』
「俺の手に宿れッ!布都御魂ッ」
「・・・、どうして経津主である経司さんが・・・、いいえその様なこと、関係ありません。その様な見せ掛けの中途半端な力に私は負けません」
「見せ掛けかどうかはこれの切れ味を味わってから言ってもらいたいものだな、その言葉」
 彼は表面上冷静に口を動かしていたが、真の情はとても苦しいものだった。
(クッ、すべてのいのちを奪われつくされそうだ、この布都御魂と言うのは。早く決着をつけないと彼女に討たれるのではなく、これに俺の神気と魂の総てを食い尽くされてしまいそうだ)
 経司の握る布都御魂の刀身の輝きは蒼く、超新星の煌きの如く、其れに対して、那波の構える咎滅の刃は総ての光を飲み込むような程に暗く、闇黒な宇宙の様だった。
「ヤぁあああぁっぁあぁぁぁっぁぁッ!」
「ハァアぁああぁああぁあっぁぁああーーーっ」
 両者は気合の言葉と一緒にその場から神速移動して己等の刀剣の間合いまで詰め寄ろうとした。そして、その動きはお互いの勝敗を決める最後の一撃でもあった。
 総てを断つ蒼の炎が、総てを飲み込む暗き闇の輝きが二つの筋を作り、相手に吸い込まれるように奔っていた。
『ヅウガッ、ズシュッ』
 双方から一つずつ、二つの表現し難い、神の擬音が同時に周囲に響き渡る。
「フぅッ、フツぬシィ・・・・・・、俺のところへ戻ってき・・・て・く・・・・・・れ」
「サッ・・・、さ・・・、せ・・・ま・・・せんわ」
 相討ち、二人は互いに致命傷な程の大きな傷を、経司は片腕を切り落とされ、那波は胸元をざっくりと斜めに切られ露出した肌から血を流出させていた。しかし、経司の方は咎滅の力により、経津主が切り離され、その力の格差は神と人との差まで開いてしまう。
 それ程の傷を負いながらも経司は冷静に言葉を出していた。そして、彼が生きているのが不思議なくらいでもあった。
 経司の精神力が神と同等故なのか、その様な状態になっても切り離されてしまった経津主を再び取り戻そうと必死にその天津に呼びかける。それに対して、那波はその天津が再び、彼に戻らぬよう止めを刺そうと体に走る激痛を堪え、咎滅を振り上げていた。
 那波の其れよりも人に成り下がったはずの経司の動きの方が早く、彼は持っていた刀を彼女目掛けて投げつけていた。虚を衝かれた那波は其れを払いのける為に一瞬、無駄な動作をしてしまう。
「そんな人が鍛えたなまくら刀で君が傷つけられるわけが無いだろう。甘いな」
 言葉と一緒に経司はしてやったりと言う表情を浮かべ、切り落とされてしまった腕を拾い、かなり後方まで身を退いていた。そして、その間に今一度、彼の中に経津主が降り立っていた。更に其れを感じ取った彼は切られた腕をその接合部にあて、治癒し始める。
 那波は手遅れだった事を理解すると彼女もまた傷口に手を当て、血が流れ出すのを止め、自然回復するのを待った。
 両者のその傷を癒し終えた時、戦いが再開されるものと那波は思っていたがそうはならなかった。経司がその場から逃げようとする。
「どこへ行くというのですか?経司さん。逃がしはしません」
「矢張り俺ではキミに勝てないようだな・・・、だがもう十分に時間は稼げた。もう、那波さんと無駄に剣を交える時間は終わりだ」
「何を言っているのですカッ!」
いずれ、時がくれば解かるさ・・・、其れまでもう少しばかり時間が残っているようだな。少し話しに付き合ってくれないか?」
「経司さんに私とも武さんとも戦う意志がもう無いと言うのでしたら・・・」
「闘う前に言った言葉の言い掛け、俺が天津を裏切った理由・・・・・・・・・、天孫降臨と言う天津に行為が許せるもので無いと知ったからだ。その行いが人と言う種の本当のありようを捻じ曲げてしまった」
「其れが今の経司さんにいったい何が関係あるというのです?何故、裏切るという行為までいたるのです?私には理解できません」
「関係があるのは俺だけじゃない、那波さんだってそうだ。キミは天孫降臨の被害者だ。そして・・・、俺の妹、麻緒も亜由美さんも。・・・いいか良く聞けッ!人が人と異なる種を受け入れないように差別、迫害するように至らしたのは天孫降臨の後に天津が人にそう言う型にはめ込むような治政をとったからなんだぞ。どのような異種族とでも共存できるような教えを諭す様な悟りが人に広まっていれば那波さんだって小さい頃迫害を受けることはなかったはずでは?」
「どうして、其れを経司さんが知っているのです?其れを知っているのは勇輔お兄様だけなのに・・・どうして・・・・・・」
「その勇輔から聞いたからだ。那波さん、君が人から非難の目を浴びせられていたように、俺も人であったとき身近な本当は大切であるはずだった二人の家族にそんな目を向けていた。二人を酷く軽蔑していたんだ、憎いほどに、この世から消し去りたいほどにな。しかし、俺が経津主の後継者に選ばれて多くの事を知った時、総ては変わった。
 そして、気付いてしまった、妹も義母も二人とも純粋な人と呼ばれる種で無い事を・・・・・・、だから二人の力が覚醒しないように封印を施し、この戦いに巻き込まれないようにしていた。
 もし天津が歴史上において天孫降臨などとう神々こうごうしい聞こえだがな、そんな事をしなければ、国津が治政を取り続けていれば、日本と言う国に生まれ来る人々が異種族排除などと言う、その様な心を持って生まれてくる事など有りはしなかっただろう。・・・・・・、だがもう過ぎ去ってしまったこと、過去は変えられない。だが、これから国津側のする世直しで其れが変わってゆくのなら」
「経司さん・・・、それは理想でしかないのです。どんなに大きな理想を掲げても力はより大きな力に屈し、そういった思いはすべて力に掻き消されてしまうのです。天孫降臨、其れがその例です。どんなに講和な心を持ったとしても力を持つ強者が其れを望まなければ」
「キミには国津でありながら天津の思想が強く根付いてしまったようだな。・・・・・・、矢張り理解できないか?・・・、なら、死を持って総てを忘れてしまえ」
「えっ!?」
「甘かったな、戯言に付き合ってもらって感謝する。十分に神気を回復させることが出来た。那波さんの動きの癖はさっきの戦いですべて把握させてもらった。もう俺に負けはない」
「ソッ、そんなッ!今までのお話はそのための嘘だったのですかッ卑怯ですっ!」
「俺の言葉に嘘はない。あったとすれば、それはキミと戦わないといったことぐらいだ。武には悪いが勇輔との約束があるんでな。その身は俺が預かる、覚悟ッ!」
 経司はそう冷たく那波に言い放つと、初めて媒体なしで十握刀を出現させていた。更に彼が集めた局限の神気を解放する。その力は僅かの間なら素盞鳴尊と互角に戦えるのではないかと言うほどの気の流れであった。
「ただでは負けられませんっ!こんどこそ貴方からその身に宿る経津主を消し去って上げます。この命が尽き果てても」
 彼女もまた魂を燃やし尽くすような感じで全神気を解き放つ、その力の波は経司と大差ないように感じられた。
 また再び、その神々が争うというのか?周りは緊迫した空気に包まれる。そして、この度も二人はほぼ同時に無言のまま斬りかかっていた。
 二人が其れを振り下ろした後に作った表情は死ぬような苦痛ではなく、驚愕した顔だった。
「何とか間に合ったぜ。・・・・・・、経司も那波ちゃんも手加減って言うのを知らないのか?」
「たっ、武さん?・・・、どうしてその様な済ました顔が出来るのですか?痛々しく、私は胸が苦しくて・・・、ですから早くそのお怪我を・・・」
「武っ!クッ、一体俺は何をやっているのだ・・・・・・」
 突然現れた武は二人の間に入り、振り下ろされた二つの刃を受け止めていた。しかし、全身を護りで覆っていた神気すら貫き二つの刃は彼をバツの字に切り裂き両腕両足を・・・。そんな状態でも武は強がって二人に笑顔を見せていた。
「ハイ、ハイ、経司も那波ちゃんも二人ともそんな顔しない。俺は神様この程度では死なないぜ」
「何を馬鹿な事を言っている。俺達がいくら人じゃなくても致命傷を肉体が受ければそれは死に至るのだぞ、そんな事もわからないほど武、オマエは馬鹿なのか?」
「バカ、莫迦、言うな、経司。俺だって自分が馬鹿だ、ってコト少しは気にしているんだぜ」
「武さん、そんな事を言っていないで自然治癒促進のために神気を患部に集中してください」
「ゴメンしてくれな、那波ちゃん。俺ってそういうことできない神様みたいだぜ、ナッ、武甕槌」
〈許せ、私にはその様な力は持たされていない。だが・・・、経津主が力を貸してくれるならば其れも何とかなろう〉
〈武甕槌殿・・・、私を・・・、離反した私を咎めないのですか?私は・・・〉
〈オマエの事だ、何か深い思慮があって経司とそうしていたのであろう?私はお前の神友だぞ、そのくらいは理解して見せる〉
「そうだ、経司っ!俺にこんな事してくれやがったんだから早く治しやがれ、医者の息子だろ?」
「よくもまあ、その様な状態で減らず口を・・・・・・」
 経司は苦笑しながら彼の持つ神気を武に流し込み、何も出来ない那波は心配した表情のまま二人の様子を眺めているだけだった。
 武は経司に傷を癒してもらうと素早く幼馴染みの背後に回り、頭を取り首を絞めて、神気を放ちそれで拘束していた。
「さあぁ~~~、経司?俺達のところから向こうに行った理由を聞かせてもらおうか?ちゃんと馬鹿な俺の頭でも理解できて納得できる答えをくれよな」
「ぐっ、ぐるじいい、はっ、はなぜえぇ~~~、ごんなじょうだいではなぜるがぁーーーっ」
「逃げないか?」
 武のその問いかけに経司は不承不承に指の形を変えて受け入れていた。
「で?経司、お前は一体何を思って・・・」
「答えは天照のところへ向かえばわかる。・・・行くぞ」
 経司はそう言葉にすると天津主神の気を探ってその場から消えてしまった。そして、其れを追う武と那波。いったい経司の真意とは何なのであろうか?それは本当に詠華達に会えばわかることなのだろうか?・・・。
 
肆 大地の使命と沙由梨の正義

「サユサユ、いい身分だな?そんなに下僕どもを連れて」
「なに言ってんの馬鹿じゃない。みんなは仲間よ、絶対そんなものじゃないわ。大地、アンタたった一人でアタシたちを相手にする気?」
「残念、確かに俺独りだけど、一神じゃないぜ。それにその内仲間も来る。・・・・・・児屋根、もう迷うなよ。サユサユを倒してでも天津神おれたちが勝たないといけないんだからな」
〈僕は大地さま、貴方自身です。本当にあなた様に迷いがなければ僕だって迷ったりしません・・・〉
「いい答えだ、児屋根・・・、それじゃいっぱい降ろすぞぉ~~~」
「そんな事させないわよっ!みんなアイツを殺っちゃって」
「いいんですか?牧岡さんのお兄さんなんでしょう?」
「サユリさんがそっ、言うんだから構わないでしょう?彼女の言う通りにしましょう」
 沙由梨の周りにいる彼女の仲間達がそう言葉にすると一斉に攻撃を仕掛けに向かった。無論、沙由梨もその場から動く。
 一度に数人神が大地に十握剣を振り下ろそうと近付こうとしたがその殆どの者が数歩も手前で何かの力によって弾かれてしまっていた。その不可思議な領域から前進できた者もいたが誰一人として彼に一撃を食らわすことの出来る国津神はいなかった。
 大地は相手の事など無視して、一心不乱に祝詞を謳い上げていた。
『我、祝詞乃源霊、天児屋根。我、願宇波此地乃治。其礼乎治芽志武乃英霊、汝尓願宇波分乃平定。再天勅命下里手、汝等尓命逗・・・、武勇降来』
「出て来いッ!神武しんぶ健磐龍たけいわたつ大吉備津おおきびつ武内宿禰たけしうちのすくね崇神すじん景行けいこうの尊等ッ」
 牧岡大地と天児屋根神が祝詞を謳い終え、大地が英霊の名前を大きな声に出して呼び叫ぶと、天空より五色の光が射し、五人の武人達が彼に平伏ひれふす様に姿を見せていた。
「汝等に命ず、我等が敵、あの者らを討てよ。ただし、沙由梨だけは捕らえるだけでよいぞ。・・・・・・・・・、クックックっ、なんかこういう口調も面白かったりして」
〈大地様、その様な言葉遊びなどしないで彼等が力を発揮できるよう、その祝詞をお謳いください〉
 天児屋根の宿り主はその神に言われ、沙由梨率いる国津たちに戦いを挑み始めた英霊達に守護の祝詞を謳い始めた。
 周囲で互いに多くの同胞が持てる力を存分に振い戦っている。牧岡兄妹達がいたその場所が小笠原諸島の中で最も激戦区だった。
 神の力を持つ者同士等が戦えば、山は業々と焼け、地面には幾筋もの大きな亀裂が走り、周囲一帯の風は荒れ狂う。時には海岸から巨大な波も押し寄せて来たりもしていた。
 その破壊され行く、島の自然を修復する一人を牧岡大地は担っていた。彼は沙由梨たちに英霊を差し向けながらも別の天津神、山、海、風を司る三神を神降ろしの祝詞を謳い、呼び寄せていた。そして、それらに戦いによって傷付けてしまった自然の復興をさせてもいたようだ。
 神大市姫かみおおいちひめの力を授かった沙由梨も兄に攻撃を仕掛けると同時に仲間に的確な指示を向けながら国津神の力によって燃え上がる木々を消火させ、割れる地表を繋ぎとめ、荒れ狂う大気を宥め、押し寄せる波を受け流し、爆発した火山から吹き上がる灰をかき集めていた。
 その島々にいる国津と天津が神の力を持って戦えば其れと共鳴するように火山が咆哮していた。本土に住む人々がその山の噴火を見たら一体何を思うのだろうか?第三次世界大戦のときのように人類の終末を想像し、悲観するのだろうか?それとも・・・。
 だが、その火山の状態を人々が目にすることは出来ない。なぜなら、それは神の力によってその周囲全体の現象を覆い隠しているからだった。
「大地、アンタそうやって人を使ってあんた自身では闘おうと思わないの?卑怯者、臆病者ッ!」
「くぅそがぁっ生意気言ってんじゃねぇ、物事には役割ってもんがアンダッ!役割ってもんがな」
 大地は何神もの使役しているため今まで覆っていた守護結界が無くなり、彼に攻撃が届く範囲内に易々と侵入されてしまう。巧みに攻撃を躱すも、そろそろ限界に近付きつつあった。
「クッ、武、相棒の奴は何やってんだ。・・・、香取・・・、くっそったれぇーーーーーーッ!」
 そんな言葉を叫びながら、妹の攻撃を避けまくり、英霊たちに再びの力を与えるために謳い始める。だが、彼の神気が尽きてしまうのは時間の問題だった。
「へたっているよ、大地。それ以上の抵抗をやめて降参したらどうなの?悪いようにはしないわよ」
「バカいってんじゃねぇっ!まだいけるつぅ~~~のっ。テメら全員、俺の力で屈服させてやる」
「アンタみたいな考えの奴がいるから世の中平和になんないのよっ、何でそんな簡単なコトわかんないの、馬鹿大地」
「ダマレッ!サユサユお前みたいなガキに世の中の理なんって解かりッコネぇんだよっ」
「誰がガキよっ!大地と一歳しか違わないじゃない。大人面するな」
「その一年って言うのが人生経験では大きな差になるんだ、覚えて置けッ」
「何思い上がったこと言ってんの?大地がそんなんだから・・・、そんなんだから・・・・・・、バカ大チッ、死ンジャエェーーーーーーッ」
「チッ、かわせねぇぜっ!」
 大地は沙由梨から一撃を浴びさせられようとするが、英霊の一神が彼を庇うように助ける。
 一難去った大地は上空に上がって妹から逃げた。そして、しばらくまたお互い一歩も退かない戦いが続く。どのくらいの時が流れたのだろうか多くいた二人の同胞の殆どは倒れ、地に伏せていた。そして、牧岡兄妹も全身いたるところに傷を負っていた。
 大地も、沙由梨も、半死半生、それが今の二人の姿。だがまだ、両者の精神は折れて居なかった。地表に二の足を植え付け、にらみ合っていた。
 その二人はまだ戦う事を諦めていないような炎を瞳に燃やしていた。
「児屋根、俺の手自身でサユサユに引導くれてやる。どうにか力を出せないのか?」
〈御免なさい、僕に戦いの力はありませんから。・・・だけど・・・、だけど、若し僕自身が十握剣になれば少しくらいはお力になれるかもしれません・・・〉
「そんな事して大丈夫なのか、児屋根」
〈今までその様な事を試した事ありませんから・・・、解かりません。・・・ですけど、大地様が本当に其れをお望みなら、其れが僕の使命です〉
「大地、何アンタ自分に降りた神とこそこそ相談しているのよ。さっさと諦めちゃえばいいのに」
「さゆりっ、お前オレさまの妹だろ?オレが諦め悪いってのしんねぇのかよ。児屋根、心配スンナ。お前もサユサユのヤツも・・・」
〈大地様、どうか沙由梨様を・・・・・・、我波言葉、我乃言葉波総手乃形、言葉有里手形成須我願我久波力乃具現、変幻転身〉
 天児屋根神が宿り主の中で言葉を謳い上げるとその存在を大地の中から消し、彼の右手に十握剣になって出現した。
「コヤネッ、よくやった。・・・、おい、児屋根返事をしろよ?児屋根、こやねッチ、だんまりすんなって・・・・・・・・・、そういうことか。俺様の大事な此奴にこんな姿にさせちまった代償、お仕置きだけじゃすまないぜ、サユサユ」
「何いってんの?大地、あんたが無理して戦おうって思わなかったら天児屋根さんはそんな風にならなくても済んだんじゃない。お門違いよ」
「その生意気な口、直ぐに黙らせてやる。沙由梨、覚悟しやがれっ!」
「覚悟すんのは大地、アンタよッ!」
 その二人の動きは戦神たちと違って大雑把な動きだった。しかし、剣が弾け合うたび放出される力は辺りにある形ある物を形無き物に作り変えていた。
 体力的にも神気的にも沙由梨以上に少なくなっていた大地。しかし、その二人の戦いの結末は彼によって収束を見る。人生経験の差、其れが動きに現れ兄が妹を打ち負かす。
「・・・、何でこんなバカ兄貴に・・・」
「まだそんな口を聞くか?お兄様と言え、お兄様と」
「ここで大地に殺されちゃったって絶対そんなコト言わないわよ・・・、何やってんの?アタシは負けたのよ。さっさと止め刺したら?アタシは自分の意志で国津神になった女の子、あんた等天津神の敵なんでしょう?情けなんっていらないわよ、たとえ大地の本当の妹デモね。だから、さっさと殺っちゃってよ」
「ああ、そうしてやる、やってやるさ。覚悟しやがれ」
 大地は持っていた十握剣を振り上げ、本気で渾身の力で沙由梨の首に振り下ろしていた。しかし、彼女の頭が地面に落ちることは無かった。彼が手に持つそれは彼女の首筋を通過する前に跡形も無く消えてしまっていたのだ。
〈大地様、そこまでです。それ以上僕は僕の力を貸してあげませんよ〉
「児屋根・・・・・・・・・・・・・・・、サンクス。さぁあ~~~てぇ、サユサユ、お仕置きタイムの時間だ。たっぷりと苛めてやる」
「なによっ、その嫌らしい目は?なんか妄想してるでしょ。馬鹿大地、いぃぃいぃ~~~、だっ」
 大地はそんな言葉を妹に向けるが満身創痍のためその場から動けず、移動できない事を分かっているのか沙由梨は兄に向かって可愛らしい顰めッ面を見せていた。
「ねぇ、大地答えて、何でいつもそうやって力で押さえつけようとするの?どうして人を見下したような態度をとるの?誰のために、何のためにそんなに傷だらけになってまで戦うのよっ!天児屋根さん、オシエテッ」
「敗者が、偉そうな態度で偉そうな風に聞くなッ!それに何言ってんだか?オレ様は他人を見下しちゃなんかいねえよ。そんなヤツに気の置けるダチなんか出来るかっつぅうのっ」
 兄のその言葉に妹は苛々するように歯軋りし、へたっている場所に生えていた雑草を怒りに震う手で毟っていた。そして、彼の口から出る次の言葉を待ってもいた。
「力で捻じ伏せ様なんって思っちゃいねえ、力で統制してるんだ」
「そんな言葉、屁理屈よ。其れの所為でどれだけの人が犠牲になっていると思ってんの?」
「うるせえなっ、最後まで黙って聞けってよッ!沙由梨、お前が聴きてえ、って言ったんだろうが。・・・、いいか何か大きな事を成すには犠牲が付き物なんだ。大きな革変を望むんだったら争い無し、無血で成そうなんって理想だっちゅぅ~~~のっ」
「そんな風な考えを人に染み付けたのはアンタ等、天津神のせいじゃないッ!あんた等が・・・、あんた等が・・・」
「さっきからああ言えばこう云う、突っ込み入れんナッ!そうしたいんならオレ様の喋りを聞き終えてからにしやがれ」
 大地の言葉にまだ立つ事が出来ない沙由梨は悔しそうに地面を拳で叩きつけていた。そして、その苛立ちが地表につたわると小さな地揺れとそこに微かなひびが生じていた。
「女の苛々は生理に響くぜぇ~~~、クックックックック」
 兄の言葉にキレた妹は手元にあった拳ほどの大きさの石に可能な限りの神気を募らせ投げつけていた。ただ単に命中しないでそうなっただけなのか、それとも狙っていたのかその投射物は大地の耳朶みみたぶを掠め、その先にあった丘を崩し去っていた。そして、石の飛び去った方向を向いていた大地は其れを見ると真っ青な顔を作っていた。
「さっ、さゆり?てめぇマジでオレを殺す気?」
「大地が其れを望むんだったらね、其れの方が私達、国津にとってはうれしい事だけど・・・」
「やっぱぁ~~~、許しちゃ置けねえ、引ん剥いてやる」
〈大地様、いい加減にしてください。僕達の気持ちを伝えて沙由梨様をこちら側へ・・・〉
「云った所でこのクソ小生意気な娘の気持ちなんかか変わんねぇと思うけどオぉ、なんせ、俺の妹だからな・・・」
〈いいですか?聴いてください、沙由梨様。・・・、人様はですね、大きな秩序のある力で取り込みませんと人様同士で争い、大きな力でお護りして差し上げませんと悪鬼によってその命を摘まれてしまうのです。人の絶対数が多くなればなる程、法や道徳だけで統制は取れないのです。ですから、それをなしえる大きな力をもった存在が必要なのですよ〉
「何を偉そうにッ!人同士が争うようになったのはあんた達、天津神の所為じゃない。あんた達がアタシ達の祖先等と講和的じゃなかったから今まで続く、その子孫達が見えない形で無意味に争う事なんっていたんじゃない。・・・、みんなが其れを知らないであんた達みたいな連中を神様だって拝んでいるのって可笑しいわ、間違っている。天津神なんてそんな神様、必要なんって無い。あんた達を倒さないと人に本当の未来は来ないみたいね。・・・・・・、あんた達のやる事は正義なんかじゃないっ!本当の正義って何なのかあたし達、国津が大地、あんたに教えてあげるワッ」
 傷も癒え、神気も十分回復していた沙由梨は立ち上がり、消していた十握剣を再び手に握る。
「青臭ぇコト言ってんじゃねえよっ、何が正義だ。力なきものが正義を語るなッ!そんな事を言えるのは絶対的な力を持つ我等が主神天照大神だけだッ。オレ様にまだ刃向かうって言うのならもうマジで兄妹なんって関係ねえぇ、本当の道理って言うのをその身に刻んでやる。俺の天津神としての使命、主神の為の絶対勝利貫いてやるよっ。そして、こんどこそ絶対的な秩序で完全統制された人の世界を築いてやる」
「そんな傲慢な世界、人々になんか味合わせないわよ、今度こそ、あたし達で人と異なる者達とも一緒になれる協同調和の取れた平和な世界を作って見せるわっ」
 沙由梨の言葉を耳にした近くに倒れていた数人の同胞達が彼女の口にする正義に同調する様に立ち上がり、戦闘体勢をとっていた。大地の方の仲間も主神の勝利を願って再び起き上がる。
 その二人の間に戦いの幕が再び上がろうとしていた。だが・・・、
「牧岡君、ここに居たのですね?先生随分お探ししてしまったわ。詠華さん、天照大神様が苦戦しておりますの。大神様は磐戸七神わたしたちの力を必要としています。直ぐにお向かいしなければ・・・」
「沙由梨、命拾いしたな。お前との決着はオレ様の主神を助けてからしてやる。其れまで首洗って休んでろ」
「待ちなさいッ、逃がさないわよッ!」
 瞬転し様とする大地と彼の学校の教師、岸峰椿を追いかけようと試みた彼女だったがどの場所に移動したのか直ぐには察知できず、しばらく間が空いてしまう。結局、その二人の神気を正確に追うことが出来なかった。それゆえに他の仲間のところへ跳躍しながら移動するという手間を負い、沙由梨が大地の居る場所に到着しようとした時は何かの決着がつく寸前だった。
 
伍 国の政を司る者達

 小笠原諸島の島々で戦う二組の神々の多くはと言う力と力の争いだった。だが、ここ聟島《むこじま》に居た数人だけは異なっていた。ことばことばによる言い争い、知と智の策の攻防でもあった。そして、その者達は民衆の代表として現在の日本を動かしていた大臣たちでもあったのだ。
「貴様のように表面だけ良くへらへらとした者がこの国の代表などと・・・、須賀原、貴様のようなやからが政治など行うから国が駄目になってしまう」
「出雲さん、軍属風情のキミがまったく何を言うのかね?私の考える政策に口を出して貰いたくない物だよ」
「口が過ぎますよ、智弘君。貴方なんかより、琢磨君の方がよっぽどこの国の事を考えています」
「井齊さん、このような下らぬ者にキミほどの知識者が力を貸すなどとは・・・」
「それはこちらのセリフだ、須賀原ッ!貴様のような愚かな輩に天津の中でも最高の知恵者とよばれた思兼が降りてこようとは棚の上から何とやらだな。・・・・・・だが、貴様が何を策謀しようと我が同胞等、ワレ大国主と思兼、貴様以上の賢者、少彦名の博志君が居る我々に負けはないぞ」
「何をたわごとを言うかと思えば、天照大神様のご慈悲のもとにいる私どもが諸君等に屈するとでも思っているのかね?愚かな・・・」
 他の国津等の同胞達と違い、戦う力を持ち合わせていない大国主の力を取り込んだ出雲琢磨は言葉での戦いを天津神の同じように戦う力の無い者と交していた。そして、其れと同時に仲間たちによって形を変化させられて行く島々を元の形へと戻るように自然形成の力を振るってもいた。
 更に琢磨の相方、少彦名神として覚醒している井齊博志は会話を交えながら周囲にいる同胞が傷付けば直ぐにその場へと向かい治癒の力を使って其れを回復させ、また琢磨の所へと戻っていた。しかし、それだけではない、博志は彼の持つ叡智によって現首相を亡き者にしようと策謀をめぐらせ其れを実行していた。だが、相手も智謀に長けた者、そう易々と成功を収める事は出来ない。
 天津、思兼の神の知恵を手に入れた須賀原智弘も仲間を使いその二人を葬り、ここには居ない天照をどのように手助けし、天津甕星を消し去ってやろうかと算段を巡らせていた。
「聴けッ、須賀原よ。我々はあの大戦から生き延び、この国に住む民衆を寄りよき方向に導くために身を削って動いていた積りだった。そして、多くの其れを理解してくれた人々は賛同と共にこの国の復興に力を注いでくれた」
「だが、二百年の年月を隔てあの国から本当の独立を得た我が国家。第三次大戦から六十年経った今、貴様が執り行っている政治は何ダッ!一世紀前と何ら変わらんではないか。国民が血を流して、取り戻した安寧の上に見下すように胡座を掻き、手前勝手な政策で民衆を惑わし、その者達の手で創られ、謙譲された国税を私服の為に無駄に浪費しよってからに。あまつさえ貴様らが布いた魑魅魍魎や物の怪の対応策は一体なんだ?あれでは余計な混乱を人々に生み、それに従事する警官隊や国防の兵士達が無駄に命を落とすだけではないか、莫迦者がっ」
「それはあの時、国防の全権を持つキミが姿を晦ましていたからではないか・・・、どれだけあの時に私共は苦労に苛まされていると思っているのです。・・・・・・、それに軍人の出雲さんには分からんのだろうね、この地位に着き国政を動かす事の難しさが・・・、わたしが本当にキミが思うような事を望んでしているとでも思ったのかね?わたしとて国の民の事を考えて動いているのだよ。だが、私の周りに居る議員達がおのれ等の保身のために真の執政を阻害し、あらぬ方向に導いているのではないか?その事を井齊君、君も良く知っていよう」
「そのことは重々承知です。ですが貴方はこの国の首相、その様な連中を上手く扱ってこそ本当の政治家と言えるのです。この国の政治は西欧開化後、第二次世界大戦後から狂ってしまっている。・・・、いいえ少彦名の言葉を借りれば天津がこの世界に天孫降臨したこと事態がこの日本と言う国を狂わせてしまったのです。思兼ッ!貴方達はこのような世界にしてしまった日本を再び同じ道を歩むように仕向ける積りですカッ」
〈少彦名の生まれ変わりよ。この国の人々が今まで辿ってきた道をまた歩まぬよう、そうするために我等は再びこうして降りてきたのじゃ。今度こそ最良の道を歩まそうぞ〉
「それは貴様らの天津の欺瞞だっ!そうやってまたこの国の人々を一つの思想に固定し、講和の道を歩める者達を排除する積りか?また、そうやって今この国に居る日本人とは違う大戦の影響で外に帰れぬ異邦の者達を潰し、また昔のように人とは異なる種を滅する気か?・・・・・・、そんな事はもうさせぬ、もうさせぬぞッこれからこの国に住む日本人が歩む道、それは真の協和、其れこそがふさわしいのだ。貴様ら天津の者の好きにはさせぬ」
「琢磨君・・・、手加減はもう止めにしましょう。天津まで取り込み真の協和を図るのは無理そうです。ですからあの者達に対する情けは捨てて、本気で智弘君を倒し、早く天照を討ちましょう。そうしないと、この酷く澱んだ瘴気に人々が取り食われ、人同士が争い無駄に多くの命が散ってしまいます。それに、我々のまことの目的を果たすためにもこのような所で往生している場合ではありません、即急にご決断を・・・」
「そうだったな、我々に残された時間はそう多くない。思兼、いや須賀原智弘、貴様を黄泉などで眠らせはせぬ。奈落の底でその罪を永劫に償えッ!」
「我の声に答え来たれよ、力の英霊」
 出雲琢磨が声を出してそう叫ぶとどこからともなく淡い光に包まれた戦士達が何人も姿を現し、彼の指揮下で現首相に攻撃を仕掛けていた。
 琢磨自身、戦わないその理由は自然復興の力を一番に持つ彼が十握剣を手にして参戦すれば小笠原諸島など一瞬にして消滅してしまいそうな戦いが現在、島全体で繰り広げられていたからだった。
 悪心を持って世界を征服しようと思えば一日と経たずして実現できてしまいそうな巨大な力を持って、小さな島国、日本と呼ばれる国の中の更に小さな島、その様な場所で天津神と国津神と人に呼ばれる神々が対立し、戦っていた。
 果たしてこの戦いは一体いつまで続くというのであるか?彼等がその島々で刹那、一分、一秒争うごとに本土では瘴気によって摘まれてしまう人の命が・・・。
 
陸 二人の女神と星の名を持つ神

「天照よ、脆い物だな?今の汝の力はその程度か?その程度の力しか持たぬモノに我等が連れてきた民を委ねたのが間違いだったようだ。・・・・・・・・・いつまでその娘の中に隠れている積りだ、天津の最高指導者よ?我は人の子の言葉を聞きたくてこの様にして戦っているのではないぞ。今の汝、天照の考えが聴きたくてこうして手加減をして戦っているというのに。・・・・・・我が父殿は寛大なお方だ、汝等のした事を酷くは咎めておらぬ。だが、だがしかし我は違うぞ」
 中空で対峙する天津甕星と天照の化神である伊勢野詠華。現状を見る限り、彼女の側が劣勢を強いられている事は厳然たる事実だった。彼女自ら剣を握りて、戦いに参加しているわけではない。詠華は月読が降りた姉である照神と共に仲間等の傷を癒すために力を振るう事に尽力していた。数多くの仲間の防衛網を掻い潜り、詠歌の元へ辿り着いた天津甕星はすぐに襲いかかるのではなく、初めに己の裡に抱く憤りを語り始めたのだった。
 峻厳な表情で詠華よりも高い上空から彼女を見下ろす天津甕星。それに対して冷静且つ穏やか尚、揺るぎない相貌で彼に対して言葉を返す、彼女。
「私、伊勢野詠華が天照です。私の声、言葉が天照様のものです。其れが貴方には分からないのですか?天津甕星さんッ!」
「そうよ、エイちゃんはエイちゃんのとっても強い意思で其れを飲み込んじゃったの。だからエイちゃんは天照大神そのものなんだよ」
 妹に助勢するように言葉綴る姉、照神。だが何とも言いにくい事にこの闘争の中、彼女のその声質は差し迫ったこの状況に相応しくないほど緊張感が欠けている物だった。
 戦う気が削がれてしまいそうな照神の声も甕星を動じさせることは出来ない。
〈甕星、コノチに再び甦り、貴方は一体何を企てようと言うのです?わたくし達への復讐?でもし様とお考えなさっているのですか?愚かな事ですよ〉
「知れた事を。それでは聴かせて進ぜよう詠華と呼ばれる者よ、その片割れ照神と申したな?それと月読よ。・・・・・・、汝等が狂わした民を説き、人が人としてあるべき姿に帰すのだ。そして、そして、汝等が此地に再び、足を踏み入れぬよう恒久に幽閉してくれようぞ」
「それほどに私達が憎いのですか?天津甕星さん、貴方にとって。・・・・・・確かに人々は私の思ったような治政を私等が高天原にお戻りした時以来、私の子供達と人の子らはしていなかったようで・・・。それは私の不徳ゆえ、人々が私等と同等に優れていますと思っていたが故に・・・・・・」
 演技、それとも本心だろうか憂い顔、表情を翳らせその様に答える詠華の様相など甕星は気にも留めず、義憤を募り続けさせ、自己の言葉を続ける。
「不徳?その様な言葉で簡単に・・・、汝等が幼き人に植えつけた生き方を見よ。
この国の歴史を見よ。人と人お互いが利権のために親兄弟親類同種族を殺し、異種だけで無く同じ種までも踏み台にし、戦だらけの此国を、多くの屍の上に築き上げられたこの国を・・・、力を持って力を制すという愚かさを。特に己を特権階級の存在だと勘違いし、民を食い物にし続ける公人共の悪行卑劣な行動は目に余る。民あっての国であることを忘れた政。同等である種等と対等に渡り合わず、常に民に負担を掛けさせ続ける公人等の自己満足、手前評価だけの上辺外交。自国を自国の力で守れぬ、他人任せな国防・・・、さらに諸々の所業で生まれた多くの瘴気の流れを・・・・・・。一体汝等は何を願って此の星に降りたと言うのだ?今も目の届かぬ所で争いの絶えないこの国、この世界・・・。我等が生まれた星での愚行を繰り返すため我等や汝等が広大な宇宙の中で稀な邂逅と共に遭遇した新たな生命を保護し、この島に下ろしたのではないはずだぞ」
「私達、天津がこの地に幼い人と称した生命をお連れした頃は国津、貴方たちが既にこの国をお治めしてた。ですが・・・、この国に住んでいましたのは貴方等だけではなく、私達がお連れした幼き生命より、力があり高等で更に異種な力を持った方々が住んでいました。そして、その者達の生き方はまだ数が少ない生命を、人を喰らうものが多く、力無き人はそれらに抗う事が出来ず、ただ、その命を摘み取られてしまうだけでしたね?私等は勢力として余りにも少ない人をお護りしたかったのです。ですから・・・」
 甕星の弾劾を憂いの表情のまま真摯に聞き受け止め、それでもなお自己の主張をはっきりと返す詠華に間を置かずして彼は言い返す。
「だから、力を持ってその者達を屈服させるのではなく死滅させようとしたのか?愚行極まりない。何故、汝らはその力を庇護のためだけに使わなかった?なぜ、人と共に寄り添って生きてこなかった?その様な歴史を作らなかった」
「甕星さんも知っていましょう?今の私等は時を長く、この世界に干渉できません事を。ですから私等と交わった人の子を人間としてこの国の皇として人々をあらゆる禍から守護するために神器と共に遣わしたのです」
「なら、その皇とはどのような輩だ?その血を継承したものは今一体どこにおる?その皇がおったら、人が、この国の民はこの様にならなかった、これほど歪んだ瘴気をこの日本と言う国に覆い尽くさせなかったとでも言うのか、隠忍や蜘蛛らとうまくやって行けたとでも言うのか?。それだけではないぞ、氣仙きせん仏羅譜摩ぶらふま御麗譜澄おりふす結魅瓏ゆみる基督きりすと、他にも多くの・・・。その星外人等のこの国とこの国の民への侵攻(信仰)を許さなかったとでも言うのか?氣仙や仏羅譜摩は我々とは同種族、この地の民と触れある事を許されようが、基督、御麗譜澄や結魅瓏は完全な敵対関係にある者達ぞっ!その様な輩にこの国とこの国の民を蹂躙され、なんとも思わんのか、汝等は?」
「それらの星外人の侵攻が日本と言う国を日本人と言う者を更に狂わし、乱してしまったのだぞ。日本人が日本と言う国の良さを忘却の彼方へと追い遣ってしまっているのだぞ」
「ですから、今再びこうしてこの世界とこの国に降りて、その乱れを正そうというのではないですか?何故、其れの邪魔をしようとするのです」
「決まっておろう、汝らの考え、天津がやる事など同じことの繰り返し、この国と民に真の協和と平和はありえん、その愚行を見逃すわけが無いであろう?父殿が何をお考えなのか今の我、天津甕星には知れん。だが、汝らよりも遥かに優れた治政をしてくれようぞ」
「そのためには汝らは邪魔なのだ。おとなしく高天原へ帰れば昔の悔恨など我も消してくれよう。だが、そうでないと言うのならば先も申した通り、恒久に次元の狭間へと幽閉してくれる、我の監視の下でなっ!」
「退く気は有りません、私等、天津は今度こそ私等の子孫と共に人々を永遠の平和へと導くために天津と呼ばれる種が高天原から消え去ろうとも・・・、其れを成すために・・・、ですから退くわけにはいきません」
「そうよ、エイちゃんの言うとおり、私達はもう同じ過ち何って繰り返す積もり無いの。天津神わたしたちの存在がなくなっちゃっても絶対に今度こそはみんなが辛い思いをしないで生きてゆける世界を創造するために再び姿を見せたのよ。其れを邪魔するなら今回も貴方を討ち倒して見せます。月読、私達の見る先の世界の可能性に安寧を。・・・・・・・・・・・・覚悟してください、天津甕星」
「矢張り戦うというのか?たとえ我等、汝等が神と崇められようとこの・・・で戦う運命は変えられぬというのか・・・・・・、其れが我々を産みしモノの望みと申すならば・・・、汝等、覚悟せよ、今この場に武甕槌や経津主のおらぬ汝らに我を打ち倒すすべはない」
 今まで止まっていた戦いの動きが再び火を吹き始める。成人の姿に成長していた八幡七星の中に宿る天津甕星、少年の頃の肉体と違って彼の持つ力を十分に発揮で来ていた。その強さ、星を飲み込み超重圧に潰すが如く強大で、真に戦う事を知らない雄大な陽の力を持つ天照へと転神した詠華も、厳かなる陰の力を持った月読の力を賜った照神も防ぐ事しか出来なかった。
 天津神の中で唯一、治癒の輝きを持つ天照の詠華は天津甕星の攻撃を防ぎながら彼女が声にする聖歌と暖かな御光りによって見えない範囲に居る傷付く天津の仲間たちの其れを癒していた。
 照神は月読の持つ力、神眼を使い天津甕星の攻撃の出方を予測し、妹をそれから護っていた。だが、襲い繰るのは甕星だけではなくその神と同伴していた何人かの国津神もであった。
 周囲から複数の攻撃を予測しても其れを上手に躱すのは戦う事の経験が浅い、照神にとって非常に至難な事だった。
「うぅ~~~、タケちゃんなにやってるのかなぁ~~~、早く来てクン無いとエイちゃんも私も」
「このままではワタクシ・・・、武さん・・・・・・、早くお助けに来てください・・・」
 刹那な迷いや戸惑いを一瞬でも見せれば殺られてしまいそうな緊迫している戦いの空間に気が抜けてしまいそうなくらいだらしない声で呟く、伊勢野姉と切なそうな瞳と憂いを含んだ声でそう口にする双子の妹。彼女等が言葉にした人物は一体いつ登場してくれるのか?その二人を救う事が出来るのだろうか?いまだ戦いは果てしなく続く。この戦いが終息するには矢張りどちらか一方が完全に消え去るまで殺り合わないといけないのだろうか?どちらかが降伏するまで終わらないというのだろうか?それとも他に何か解決する道があるというのだろうか?その答えは・・・。
 
漆 天津、国津の歴史の真実

 武や経司達よりも詠華のところへ早く辿り着いたのは岸峰椿率いる磐戸七神と邇邇芸神を宿した霧島新太郎であった。それらの天津は詠華の持つ天照の力を更に強めようと試みたが国津側の猛攻が有り、昇華の儀式を執り行う事が出来なかった。
 どちらかと言うと天津が国津に押されている状態であった。だが、それでもいまだ決着はつかず無駄に時間と仲間等の血を流しているだけだった。
「甕星、まだ天照を討ち崩せぬか・・・、矢張り小娘の体に降りていても天津の主神格か・・・」
「天照よりも、あの月読の力を宿した娘に我が攻めを・・・」
「勇輔クンの気波が消えてしまっている。天津の者共に打ち倒されたとは信じがたいが・・・、彼の力なくして月読に対抗する事は難しいだろうな・・・」
 智弘との言葉だけでの戦いを止め、琢磨は甕星の傍まで移動してきて、その様な事を囁いていた。
 各々の仲間がそれら主神の前に続々と姿を見せ始める島一箇所の人口密度が上昇してゆく、そして、其れと比例するように戦いの中から生まれる破壊の力の熾烈さが一層と増していた。更にそれは崩壊の力が創造の力を上回り始める瞬間でもあった。
 更にそれは崩壊の力が創造の力を上回り始める瞬間でもあった。激化する戦いで今居る舞台の状況の変化に目を配れる余裕を持つ者等は誰一人居なかった。
小笠原諸島の海岸沿いが崩れ、高波が浸食し始める。木々草花、小動物等は業火に身を焼かれ、割けた台地に飲み込まれようとしていた。
 富士火山帯上にあり、火山活動も継続するも、今まで一度も噴火した事のない、諸島の孔が今にも其の口から怒りの咆哮を上げ様としていた。
「その肉体うつわと共に消え去され、アマテラスゥッ!」
 天津の隙と虚を突き、詠華を守護する者達の間を縫って七星の体を借りっぱなしの天津甕星は十握剣の刃を彼女に振れる間合いまで詰めていた。そして、其れを頭上から渾神の力を込めて振り下ろす。
『ズバァーーーンッ』
「クッ、汝は武甕槌、汝、また我の邪魔を・・・・・・、オノレェエぇーーーーーーーーーッ」
「アマツミカホシだっけ?うるせぇぜ、吼えるナッ!」
 甕星が振る降ろした剣の刃が天照の薄皮一枚まで達しようとしていた時、彼、鹿嶋武は現れた。甕星の刃を受け止めた手首の半分まで達し出血が酷いというのにも係わらず、生きている左腕の拳にありったけの雷霊を集めると武はそれを甕星の鳩尾に打ち付けていた。そして、雷撃を喰らった天津甕星はその力で十数キロ彼方後方まで吹っ飛ばされていた。それは僅か一秒にも満たない出来事だった。
「ハァ~~~、何とか間に合ったぜ」
「武さん、お助けに来てくれたのですね?有難う御座います・・・、其れよりもその怪我を」
 詠華は両手に暖かな光を集めると其れを武の患部に当てる。するとたちどころに傷はふさがり、その痕跡すら消え去っていた。
「うぅ~~~、タケちゃん、助けに来るのが遅いですよぉ。あと少しで私とタケちゃんのハッピー・ブライダルの未来が消えちゃうところでしたぁ」
「そんな未来なら願い下げだぜ、まったく。そんな妄想は夢の中だけにしておいてくれよ」
「ショウちゃん、私もそんな武さんと・・・、な未来は認めません」
「そうです、わたくしもその様な未来なんって許しません。武さんは・・・」
「オレはそんな未来の方が面白くていいがな」
「酷いよォ~~~、タケちゃんもエイちゃんもそこの貴女も、みんな酷いよォ。~~~わたしの味方はケイちゃんだけぇ?」
「経司、てめぇ・・・、やっぱお前はもうオレの幼馴染みでも親友でもない。オレの将来を脅かそうとする大悪魔だッ!ここで俺が斬って祓ってやる。・・・・・・、ってそんなコト言っている場合じゃなかったぜ、お前が俺に見せたかったのは詠華さんが殺られる瞬間だったのか?」
「ああ、そうだ俺は先輩の味方だ。それと武、それは違う・・・・・・」
「おまえらっ!オレ様を差し置いてなにクッチャベッテンダッ。武も経司も助けにくんのがおせぇんだよっ」
 数分ばかりの会話をその者達が交わしてた後、彼等の前に再び、天津甕星が姿を見せる。その神の再来に武は勇輔と戦ったときに見せていた形の悪い十握剣を出現させていた。
「なんだ、そのなまくらは?汝、その様なもので我が切れると思うてか、武甕槌、いや、その者の力を受け継ぎし者よ?」
「そんな事やってみなきゃ分かんないダロッ!・・・だけど・・・、だけど、なアッ、天津甕星!それとそっちの大将、大国主って言ったっけ?俺達は戦ってしか、相手を滅ぼしてしか、あぁああぁ、なんっていったらいいのかな、ああそうだ、俺達は和解できないのかッ」
「答えは簡単なコトだ、武甕槌神を宿した少年よ。貴様らを打ち倒す以外新しい道は無い・・・」
 武のその言葉に和解などあり得る筈もないと信じて疑わなかった両陣営、天津等も国津等の殆どの面々は訝しげな顔を作っていた。そして、彼のその問いを返したのは琢磨だった、とても冷静に。
 琢磨から答えを聞いた武は落胆の表情を浮かべる。
「だが、聴け、少年よ。ありえんだろうがな、もし天津の主神であるそこの娘の考えが変われば、我々が向かう答えも変わろうことはいうまでも無い」
 同様に琢磨が武に答えた答もまた皆の困惑させたのも事実。その言葉を聞いた武は宙に漂う詠華に振り向き直ぐに口を開いていた。
「なあ、詠華さん?俺達どうしても国津神と呼ばれる連中を総て倒してからじゃないとこの国を本当に救えないのか?オレ、あんまり頭の出来よくなくて先のことなんって全然見えないけど、なんかやっぱり、自分たちの言い分だけで相手を消し去っちまうなんって・・・・・・・・・、そんなの間違ってると思うぜ」
「武さん・・・、いいえ、わたくし天照は汝、武甕槌に問います。それは私の命に叛き、私達の下から離反するという意志の表れなのですか?」
〈主神、天照よ。武の言葉は私の意志、武の意思は私が心。天照がそう思うならそれでも構わぬ〉
「そうですか・・・、それでは今度は私、伊勢野詠華に武さんの言葉を聞かせてください。私たち天津と国津が和解する事、それは武さんの叶って欲しい願いですか?」
「ああ、そうだぜ。出来るなら俺は戦いたくない。理想論だってわかってる。でも・・・、でも、話し合うことで解決出来るなら、話で解決できるに越した事はないぜ・・・。
だけど、それでもやっぱ駄目って言うなら、裏切ったりなんかしない、俺はちゃんと詠華さんのために戦うぜ、こいつ等とも経司とも・・・・・・、だけど本当に叶うなら・・・、叶うなら・・・」
「私、伊勢野詠華は天津、天照大神として武甕槌に命じます。手にする其れを収め、私の変わりに大国主神と天津甕星に講和の手を握ってください。・・・・・・、それと一人の女の子として武さんにお願いが。・・・、あ・・・、その・・・、やっぱり何でもありません・・・」
 照神に睨まれた彼女は武に伝えようとした言葉を最後まで口にしないで諦めてしまっていた。
「天照大神、伊勢野詠華君。本当にキミは我々、国津との和解をするというのかね?その言葉に嘘はないか?」
「父上殿、騙されてはなりませぬ。これは思兼の画策に違いない」
「七星くん、大丈夫です。彼女の言葉に嘘はないようですよ。琢磨君、向こうがそう言っているのです。こちらをその懐の広さを見せて・・・・・・」
「甕星よ、我々の本来の目的を忘れるな。戦う事ではなく協和の道・・・、それに我々にはやらねばならぬ事も多く残っている。だが、残された時間は・・・、良いだろうその言葉、信じよう。・・・・・・少年よ、こちらへ」
 武は琢磨に呼ばれ上空から地上へと降り立ち、彼の前まで歩み寄った。
 鹿嶋武の方から出雲琢磨に右手を差し出す。それから握手は交わされ甕星とも同じ事をしていた。其れによって二神の間に仮初的な和平が結ばれる。
 詠華は天津神の最高指導者、天照大神としてではなく、伊勢野詠華と言う一人の少女として思慕する武の願いを受け入れていた。その彼女の決断の多くの天津の仲間達が呆気に取られていたのは言うまでも無く。・・・、しかし、天照の後継者である詠華の傾倒性、崇拝性は伊達ではなかった。武が国津の二人と手を握った後、彼女から口にした言葉に一人を除いて従っていた。
「勇輔はこうなる事が分かっていたのだろうか?・・・・・・、まあいい。これが俺の望む形。これを記念して、良い事をこの香取経司が一つだけこの国の特異な歴史を語ってやる」
「今から大凡五四〇年前この国は一時だけ一つの家系のよって十五代に亘って約二百六十年も確固たる平和な時代を築いていた。代々出る統治者総てが善良な執政をしていたとは言えないが。・・・、だがどうして、其れほどまで続いたか分かるか?その初代は人々の安寧を禍や外敵から護るために人と異なる種等の力を借りていた、家系が続く限り陽の光のもとの共存を認め約束する代わりにな」
「人に姿を変えた祀ろわぬ神々などと呼ばれた者達、其れが忍と呼ばれる種族だ。俺等が知る忍者とは似ているようで違うぞ。人に禍をもたらすモノには其れと同じ力を持つモノでと言う考えだったようだ・・・・・・、更に面白い事にその初代は天津と国津の血を半分に受けていたようだな。その二つの血の最も優良な部分を受け継いだから数百年も先の事を考えた治政を開く事が出来たのであろう。これが唯一、この国で天津の子孫と国津の子孫が争わなかった時代みたいだ」
「経司、いったいそんな昔の事いつ調べたんだ?ッて言うかよくそんなコト調べられたぜ」
「どうやって知ったか、調べたかは秘密だ。オレの専売特許なんでな」
 経司の口にした歴史の真偽はともかく、其れを耳にした一同は驚かずに居られなかったようだ。そして、其れを耳にした七星の中に宿る天津甕星はその様な時代が一時でもあったのかと心做こころなしか喜びを見せているようだった。
「経津主をその身に宿した汝よ、その言葉に嘘はないか?」
「俺はその時代に生きた人間ではない。ゆえに真実かどうか完全な確証は無い。だが、俺が調べた物に偽りが無ければそれは事実だろう」
「そうか、汝は経津主の後継者に認められし者ゆえ、その言葉を信じよう。我が悲観するほど天津が統治した後の世も悪政ばかりではなかったようだな・・・・・・。其れを我に知らせてくれた汝に敬意を評して我々天津と国津の事を教えて進ぜよう。どうせ汝等の中に居座っている天津共は我々が一体どんな存在なのか直隠ひたかくしにしているだろうからな、我等国津と違って」
〈天津甕星、我々の存在の事などどうでも良かろうて〉
〈そうですよ、僕等の存在のコトなんか大地様たちに伝えたところで・・・〉
〈この者達に其れを教えて何とする?無駄な混乱を招くだけじゃぞ〉
「天津甕星さん、私達が神社などで拝んでいます天津神や国津神とは一体なんなのですか?幾ら問いかけましても私の中の天照はその事を教えてはくれないのです」
 天津の何神かは甕星の口にしようとする事に動揺し其れを止めるような言葉を出していた。しかし、其れを制すように天津の主神を降ろしている詠華が聞き返していた。
「汝らの主神を降ろしている娘がそう言っているではないか?其れを汝らに逆らう事が出来ようなら我はこの口を閉ざしてやろう?・・・・・、フッ、出来まいて。では言葉にするぞ、我等、国津も天津も元は同じ星で生まれた天国津人あまくにつびとと言う種族、生き物だ。この地球と呼ばれる星とは別の場所のな」
「今から数千万年前の昔、汝らと同じような形をして伊邪那美いざなみと呼んでいた星に住んでいた。我々はこの世界と似ている様でまったく異質の文明を築き上げ、諸星系を支配するのではなく協和と言う形で治めていた・・・。しかしどの程の頃であろうか堕亞落だあらくと名乗る我々とはまったく違う文明を持った種との接触により、我々は天津、国津と名乗り分け、お互いに争うようになってしまったのは。・・・・・・・・・、そして、その争いの火種は諸星系にまで及び、我々が大いなる太陽―伊邪那岐いざなぎの超新星消滅により、我々の生まれた恒星系は消え去り、その戦いは終息した。そして、その争いの中でたった一握り、我々はこの様な特殊な力を持ち生き延び・・・、この星に至ったのだ。さらに面白い事を教えてやろう。汝らが仏などと呼んでいる物それらも又、我々と同じ恒星系に生きた者達、この世界では仙人と呼んでいるのだな、それらも我々と母星系は同じだ」
「御麗譜澄の絶対神などと抜かしておる贅須ぜいす、ヤツも我々と似たような力を手にして神などと称し、その者が庇護する以外は邪神などと称しているようだが元は我々とは違う銀河の簒奪者でしかない。そして、基督は・・・・・・。だが面白いな、この地球と言う星は。我が知る連中が我々よりも先にこの星に降りていたのだから・・・」
 天津神を降ろしていた武達一同は甕星が言葉にして語った事を耳にして、それぞれ何かを思っていたようだ。そして、その事実に驚きの表情を作っていた者も少なからず居た。経司はその事を聞いて好奇心の眼差しを造っていた。
「おい、コヤネッ!結局お前等って侵略者とちゃうんか、こんにゃろう!しかも同族同士で争っていたって言うのか?俺、沙由梨に偉そうなコト言っちまったけど・・・、はぁ~~~」
〈侵略者なんって酷いですよ。・・・、ですが御免なさい、大地様〉
「まあ良いや、お前が俺に降りて来てくれたことでオモロイ体験一杯出来た事だし、それにまだまだお前の力を借りてやらなきゃならない事いっぱいあるみたいだしな」
「何言ってんだか、この莫迦兄貴は。わかったアンたちがド・レ・ホ・ド・の悪者かってコト」
「サユサユ、てめえぇっ!俺様のこと悪く言うのはいいけど、児屋根にそんな暴言するのは許さねえぜ」
「大地、沙由梨ちゃん。せっかく仲良くしよう、って言うのに喧嘩なんかしようとスンナよ」
「うっせえぇ、武。俺とサユサユの兄妹ゲンカに首突っ込むな」
「武、やらせておけ。直ぐに仲直りするさ」
「経司・・・、そうだな。どうせ俺が口挟んだところで大地が納得する事なんって無いぜ」
「分かってるじゃないか、ア・イ・ボ・ウっ!」
 大地のその返しに武は苦笑するばかりだった。そして、大地がどこからか大きな張り扇を取り出し其れで沙由梨を殴った瞬間、その場に素盞鳴尊の化身―八坂徹、櫛名田姫の鹿嶋美姫、其れと火之迦倶槌を宿した男が姿を見せた。
「やっと捕らえたぞ、貴様ら国津も天津もまだ同族で争う積りか・・・、一体これは・・・?」
「武、経君、これはどう言う事なの?私と八坂さん、それと彰吾さんにちゃんと分かるように説明して頂戴」
「徹よ、落ち着き素に戻りなさい。私達がここへ到着する前に何らかの決着が付いたのでしょう」
 突然現れたその三人に説明をしたのは美姫から乞われた武ではなく、国津と天津の両主神、琢磨と詠華だった。その二人に八坂徹は素盞鳴尊として言葉を返していた。
「姉上よ・・・、今は詠華と呼んだほうが良いのか?お前は本当に偽り無く、大国主らと手を結ぶのだな?偽り無く」
「大国主の出雲琢磨さんも言葉にした通り、私達は私達の本来の目的のため手を取り合う事にしたのです。・・・、其れが武さんの望みですから・・・」
「フッフッフッフッフッ、あぁ~~~はっはっはっはっはっはははぁ、これは面白いぞ。俺より強情な姉上の心を変える武甕槌、貴様の主は面白い力の持ち主だな」
〈私の最高の後継者だ。当然であろう〉
「何訳のワカンねぇこと言ってんだ、武甕槌?まったく」
「素盞鳴、それ以上余計な言葉を口にすれば、国津の方々と争うのをやめましたが、貴方となら闘いますよ」
「姉上、そう怒るな、怒るな。俺は感謝しているぞ、貴様、武とやらにな。余計な戦いと余計な命を摘まずに済んだ事にな」
「櫛名田姫、祝いにこの者達に大事なコトを伝えてやれ」
「ハイ。・・・、皆様、驚くくらい大変な事を温羅王と名乗るものから聞いたのです。蟒蛇オロチが甦ろうとしているのです」
「月読を宿した少女よ。貴様も何かを感じ取っていたのではないか?そうだろう、月読」
「ウン、そうだけど・・・」
「何も答えずとも良い、誰にも告げてはいけないのはそれは貴様のその力を持つ事の制約。ここには見えないが事代主もそうであったな。・・・、重大な事を教えてやったんだ。貴様らの協力した手で蟒蛇の復活を止めてみせろ。其れが出来たのなら俺は貴様らが交わした其れが嘘で無い事を信じてやる」
「ツエェからってまったく偉そうにしやがって、実際強いのは知ってんだけどよ」
〈あわゎわわぁわゎ、大地様、なんと恐ろしい事を口にするのですか・・・、おっ、お許しください素盞鳴尊さま〉
 大地は素盞鳴尊の言葉が終わった頃に沙由梨との喧嘩をやめそんな事を口にしていた。そして、彼に宿る天児屋根は継承者の非礼を詫びる様にそう言葉にしていた。
「俺は今気分がすこぶる良い、そんな些細なこと気にはせんぞ、天児屋根。・・・、こうして戦う事が無くなったのだ、この様な所でダラダラとしていないで本土に戻り、本来の役目を果たせよ。いくぞ、櫛名田姫、火之迦倶槌」
 素盞鳴尊は言葉を残しその二人を連れ、本州のどこかへと消えて行ってしまった。経司はその三人を追いかけようと動き出そうとしたが武によって阻止される。
 小笠原で今まで国津と天津が戦っている間、その三神が本土を荒らす、あやかし達と戦っていたのであろうと気付いた者達はそう多くは無かったようだ。
 此れにて一先ず、天津と国津の戦いは終わりを見せた。しかし、彼等のあやかしとの戦いは今しばらく続くようだ。
 国津側は別として、果たして天津側は蜘蛛神や鬼神たちとも共存の道を歩む事を選ぶ事が出来るのだろうか?・・・その先の未来を知っているのは月読の神を宿した伊勢野照神と事代主の生まれ変わりの諏訪勇輔の二人だけだった。更にその二人が見る近い将来の可能性は一緒の物であるのであろうか?そして、蟒蛇と呼ばれるモノの復活をとめることが出来るのであろうか?・・・・・・、彼等の未来はまだまだ不安定のようだ。
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