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終 章 良友に恵まれし私へ、皆に感謝を
終 話 選ぶべき未来
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自分の気持ちに整理を付けられないまま毎日を過ごしていた。
図書館に行っていたけど、勉強は手に付かず唯、悩んでいる事のほうが多い。
八神君にあって、香澄ちゃんとあんな言い合いをして以来宏之君とも貴斗君とも会う事を止めていたの。
こんな気持ちのままじゃ二人に合わす顔なんてないから。
~ 2004年11月10日、水曜日 ~
今日も新しい一日が訪れていた。
図書館に向って、いつものように同じ場所で勉強をしてからいつものように帰宅していたの。
家に帰ると私は一通の手紙をママから渡されたの。その手紙を渡されたときママの表情は心配の色を浮かべていた。
理由は私の所の宛先だけで宛名のない手紙だったからとても不審に思ったのだと思うの。
部屋に戻り貴斗君と詩織ちゃんの二人が私の眠っている間に向かえた誕生日の時にプレゼントしてくれたアンティークなブックマーカーセットに付いていたペーパーナイフでその手紙の封を切っていた。
それをプレゼントしてくれたのは二人だと教えてくれたのは妹の翠。
それを選んでくれたのは貴斗君だという事も教えてくれた。
眼鏡ケースサイズの綺麗な彫刻が施されている木箱。その中に真紅の絨毯で丁重に金属造りの三種のブックマーカー、ペーパーナイフ、それと斬新な細工が施されたルーペが収まっている。
貴斗君のセンスの高さを物語っているそんなプレゼントでした。
以前、詩織ちゃんから〝貴斗君に何かプレゼントするのは大変〟だと言うのを聞かされた事があるの。
彼が選んだそのプレゼントを見れば何となく分かるような気がする。
彼自身の審美眼?センス?が高いから一般常識レベルのものでは喜ばないのかもしれないと言う事だと思う。
詩織ちゃんと貴斗君からもらったプレゼントの思い浸りから戻り、さっき開封した封筒から便箋を取り出していた。
封筒に描かれている絵柄事態はシンプル。でもどこにでもありそうで、なさそうな封筒でした。
その中から取り出し、開いた手紙の内容を確認・・・、凄く簡素、シンプルだった。
内容は次のように手書きではなくタイプしてあったの。
『11月11日、5時30分PM』
『聖陵大学付属学園高等部、高台の大きな木の下で待つ』
『時間厳守、遅れないで欲しい』
『藤原貴斗』
そう書いてあった。だけど直ぐに疑問に思ったの。
どうして、彼からこんな手紙が送られて来たのかな?
指定して来た場所は私が宏之君に告白した場所、そして、詩織ちゃんが貴斗君に告白した場所でもあるの。
それと日付11月11日、明日の日付が書かれていた。
彼はまだ病院から退院出来る状態でないのに、どうして?でも、隠し事は多そうだけど、彼はけして嘘をつくような人ではない事を私も彼を取り巻く人達も知っている。
期待と不安、焦燥と安堵、希望と絶望、悲しみと喜び・・・、・・・、・・・、そして矛盾。それら色々な感情が私の心の中を埋め尽くそうとしていた。だけど、明日になれば何かが変わる・・・、
誰かが私が想う本当の気持ちを促してくれるなら、
誰かが私の背中を押してくれるなら、
誰かが厳しく何かを言葉にしてくれるなら・・・・・・、
一つの決断が出来るかもしれない、
今よりも少しだけ前へ歩み出せるかもしれない、
その言葉の意味を考えて何か今の私に答えを出せるかもしれない。そんな風に思えたの。
早く明日になってそのすべての感情を解き放ちすべてを解決したい。そう願いを込めていた。
~ 2004年11月11日、木曜日 ~
色々な想いを胸に貴斗君が手紙に書いていた指定の場所へと向かっていたの。そして今約三年ぶりに高校時代、通学に通っていた坂を私は一生懸命上っていた。
「ハァー、ハァー、ハァーハァー、アァ~~~ん、ひどいよ、貴斗君か弱い女の子にこんな急な坂道を登らせ高台の丘まで来い、なんって」
息を切らせながら、そう独り言をしていた。
早く出てきて正解だった。私の今の体ではまだこの坂を登るのに少々骨が折れてしまう。
既に日は沈み、澄み切った空に煌々と輝く星々とお月様が蒼々と辺りを照らしていた。
坂をようやく上りきりまだ目標の場所まで続く道をテクテクと進んでいた。
それから約15分掛けて約束の場所に辿り着いたの。
「ハッ、ヤッと着いたァ、はぁああぁ~、もうヘロヘロぉ~~~っ!」
そう言葉にし、それから大きく深呼吸をした。
まだ、貴斗君は来ていないみたい。約束の時間まで後一〇分あるから当然かもしれないね。
大きな木の下に座り、ここの丘から見えるネオン、煌く街並みを眺めていた。
ここに最後に来たのは三年前の8月15日、ミンナでお祭りの花火を見たときの事だったの。
お祭りの終局に私の大事な人達と私を囲んで仲睦まじく写真を取った場所。
目の前に見える景色は変わっていない。でも、あれからみんな変わってしまった。
変わってしまった現実の輪を私は壊すような行動を取っていた。
本当にもう昔みたいには戻れないの?
初めてここの場所に訪れたころの事を私の瞳を閉じて思い出してみたの。
* * *
私、涼崎春香と、今でも親友でありたい二人の女の子、藤宮詩織ちゃんと隼瀬香澄ちゃん。
私はその二人と偶然、この聖陵学園高等部で顔を合わせることになったの。
妹の翠がいたから、二人と会う機会は多かったほう。
でもね、高校受験をしなくちゃいけない年の中学三年生のころはその勉強で手一杯で二人に会うことはほとんどなかったし、会うことが出来てもお互い、どの高校へ進学するのかって言うお話は全然持ちあがらなっかた。
一年生のクラス分けの時に、掲示板の名前の中、私と同じクラスに二人の名前が有った時は同姓同名かなって思っちゃったけど教室に向かい二人の顔を見た時、二人とその教室で再会した時は本当に驚いちゃった、三人して。そして、私は運命って物を感じたの。
これから始まる高校生活は今までと何かが違うかもしれないかもって。
それから、柏木宏之君が同じ学校に通っていたのを知ったのは半年以上も過ぎた体育祭の時だったの。
宏之君はダークホース。運動部に所属していなかった彼、彼以外のクラスの生徒は彼のその運動能力をまったく知らなくて、眼中にはなかったみたい。
でもね、彼は上級生をも物ともしないで、団体戦の競技も個人戦の競技も上位に食い込ませ、高等部初の一年生クラス一位を手に入れたの。
あの時の宏之君すごく・・・。
だけどね、彼から聞いたことなのだけど、そうなったのはクラスのほとんどが運動の得意な子が集まっていたみたいだし、八神君の一年生とは思えないみんなをまとめる力があったから、成し遂げられたって教えてくれたのを覚えている。
宏之君と始めて、面と向かってお話をすることが出来たのは二年生になってからだった。
それは中間テストが終わったその日。
「ねぇ、詩織ちゃん?テストやっと終わったね。どう、うまくいった?」
「さあ、どうでしょうか?出来るだけの努力はしましたけど、結果が出るまではなんともいえません。そう言います春香ちゃんこそどのような感じだったのでしょうか?」
「まったく学年トップの詩織ちゃんが何を口にするのかと思えば、すっごく嫌味ないいかだよぉ、あははははあぁ・・・、私はちょっとみすちゃったところがおおくて、気がついた時にはテスト時間終了だよぉ~・・・。ねぇ、さっきまで香澄ちゃんも居たけど、どこいっちゃたのかなぁ?」
「あっ、えぇぇえとですね・・・、ねぇ、春香ちゃんも今日は部活お休みになっているのでしょう?もし、これからお時間がありましたら、わたくしとご一緒してほしい所があるのですが、どうでしょうか?」
「うん、全然大丈夫だよ、それじゃ、いこっか」
私はそう詩織ちゃんに答えて、机の上に乗せていた学生鞄を両手で持って彼女より先に歩みだす。
「ねえ、それで詩織ちゃん今からどこへ向かうの?」
「この学校で一番素敵な場所。これだけ広い敷地の学校ですから皆さんが知らないすごく、落ち着く場所があるのですよ。それに・・・クスッ」
「えっ、何々その笑いは?」
「さぁあぁ~~~って、どのようなことでしょうねぇ。いいからついてきてください」
詩織ちゃんに言われて一緒に校舎から出て歩くこと十五分近く、私たちは関係者以外立ち入り禁止のロープが張られた旧校舎を超えようとしていた。
「えぇぇ、詩織ちゃん?本当にいいの?立ち入り禁止って書いてあるのにぃ」
「いいのですよ、わたくしは」
「優等生の詩織ちゃんがそんなこと言うなんてちょっとがっかり」
「それは周りの方々が勝手に押し付けているわたくしの理想像ではなくて?それに春香ちゃんだってこのさきっ・・・おっといけませんこと、わたくしとしたことが・・・」
詩織ちゃんは態とらしく言いかけの言葉を彼女の口元を手で押さえそれ以上いわないような行動をとったの。
私は彼女のその言葉の誘導につられて、口が滑ってしまう。
「あうっ、もしかして、詩織ちゃん。私がこの先に足を踏み入ったことあるの知ってたの?」
「はて、さて、私にはいったいどのようなことなのかさっぱりと分かりません。クスッ」
「どうして、そこで笑うの詩織ちゃん。もぉ」
彼女の向かう先、その道の先に私はどんな世界があるのか知っていた。
この聖陵学園のある三戸市の中心を一望できる芝生がきれいに整えられた高台の丘に出る事を。そして、それだけじゃなくて・・・。
小さな雑木林を抜けると視界が開け、一面の小さな緑ととても大きな木が聳え立っていた。
その木の下に背中を大樹に凭れ掛けさせて、首だけ高台の下を向けている男子学生が居た。
学生は私達の足音に気づきこちらを振り向くの。
「うぅん?君たちは・・・?・・・???えっと、確か、そっちはふじみや・・・しおりさんと・・・きみは・・・」
男子学生の言葉はそこで止っちゃった。
私は全然予期していなかったその男子学生を目の前にしちゃって顔を赤くしちゃってカチコチになってしまったの。
そんな私の耳元で詩織ちゃんがささやく。
「わたくしが、あなたをここにお連れした意味が分かるのであれば、あなたの気持ちをはっきりと彼にお伝えしたほうがよろしくてよ。それでは私は退散しますのでごゆっくりと、クスっ」
固まっている私に詩織ちゃんはそんな事を囁くとそんな私を独り残して元来た方向へ去ってしまったの。
目の前の男子学生はそんな彼女のことも気に留めないで黙ってしまっていた。
しばらく、その広い空間に静寂が訪れてしまうの。でも、その沈黙を先に破ったのは私の方だった。
「あっ、あああ、あのぉ、詩織ちゃんと違って柏木君が私の事なんか知らないと思うけど、二年A組のすっ、すすすず」
「すずさきはるかさん、っであっていたか・・・、間違って居たらごめん」
宏之君は私の方を見ていなかったけど、そう口にしてくれた。
彼が私のことなんて知らないだろうけど、名前だけでも知っていてくれたなんて・・・、それだけで、どうしようもなく嬉しかった。たったそれだけのことなのに・・・、胸が篤くなっちゃって、両手で顔半分以上を隠して、顔を真っ赤にして泣いちゃったの。
そんな私を見た彼は・・・。
「えぇっ、何で泣くんだよっ?俺、君の名前まちがいちまったのか?そんくらいでなくなよっ、むちゃくちゃ気分ブルーになっちまうぜ」
「ちっ、ちがうの、違うの、柏木君。わたし、わたし、柏木君が、その、柏木君が私の名前なんか知らないと思っていた私のことなんか全然知らないって思っていた柏木君がうれしくて・・・」
「はぁぁあん?そんくらいでなくなよ、泣いている君を見ると何か俺が悪いことしたように思えちまってなんかいやだぜ。だから、泣くなって、なっ、なあぁって」
「なっ、泣いたりしてごめん、ごめんね、柏木君。でも、でも、どうしても止ってくれないの、ごめんね」
その私の言葉で宏之君は背を向け、左手を制服のポケットに入れ、右手の肘を木に付けた状態で体の面を街の方へ向けてしまったの。
嫌われちゃったのかな?とおもったけど、本当に嫌われてしまったのなら、ここか直ぐ去っていたはず。
だから、勇気を持って止ってくれない涙を無理やり塞き止め、彼に伝えたい私の気持ちを言葉にするの。
「あっ、ああぁぁあのぉ、きっ、聞いてくれるだけで言いです、だっ、だから、聞いてください。おねがいします」
宏之君は返事を返してくれなかったけど、私は言葉を続けた。
「あなたとこうしてお話しするのは初めてだけど、ずっと前から、ずっと前、この学校に入学する前からあなたを知っていました・・・。でも、この街で、それは偶然かもしれなかったけど、あなたには何度も出会っていたの」
「私はちゃんと柏木君のこと覚えていたのに・・・、・・・、覚えていたのに、柏木君、あなたは、その度、私を見る表情は私を見るのが初めてのような顔でした・・・、・・・、・・・、・・・。この学校に柏木君が居るんだって知った時は本当にね、本当にすごく嬉しかった。」
「・・・、・・・、・・・、でも、あの、その、あんまり私、男の子とお話しするのが得意じゃなくて・・・・・・、今までずっと、何度も、柏木君に声を掛けようと思ったんだけど、今までずっと出来なかった・・・。でも、今なら、今なら、私の気持ちはっきりと伝えられます・・・。その、すっ、好きです。」
「柏木君のことが好きです。もっ、もし、もし、かっ、かしわぎくんが、だっ、だれともつきあっていなくて、そっ、そのかのじょが・・・いないなら・・・、ああぁぁっっ、あの、・・・あぁああ、あの・・・、わっ、私のこっ、ここぉおおおぉおお・・・・こいびと、ああっぁぁぁ、えぇぇええとそのおつきあいしてくださいっ!」
背中を向けている彼に対して見えないけど頭を下げて、そう彼にお願いをしていた。
私はその姿勢のまま、彼の言葉を待った。でも、直ぐに彼が返事をしてくれることはなかった。
どのくらいの時間私はその格好でいたのかわからない。
長かったの、それとも短かったのか。
それでも、彼は言葉を返してくれることはなかった。
柏木君が言葉を返してくれないって事は駄目だったんだなって解釈しちゃった私はまた涙を流してしまったの。そして、姿勢を戻し再び、私のほうから彼に言葉を向けていた。
「やっぱり、むりだよね。いきなりこんな事を言われても、迷惑だよね。ごめん・・・、うくっ、ひく、うぅうううう・・・・」
そこで、初めて彼が背を向けた状態で私に言葉を掛けてくれる。でも、その言葉を聞いた瞬間、すべてが終わってしまったのかなと先走りしてしまいそうになったの。
だって、言い方がすごくずるいんだもん・・・。
「ああ、いきなりそんな事を言われても、迷惑だぜ。答えに迷うからな。確かに俺は君の名前と周りの連中が言う定評しか知らない。そんな君から付き合ってくれって言われてもな・・・、まだこっちが答えを返しても居ないのに泣かれちまうのは、すごく答えを返しづらいじゃないか・・・。今から俺が君に伝える答え、君が望むものじゃないかもしれない。でも、それでも、涙流されるのはつらいぜ。だから、そんな泣いている君の顔なんて見たくないから、背を向けちまったんだ・・・、・・・、・・・、いきなり、君の彼氏なんて出来ない。君の事を何も知らなくて、君と付き合うことになって、何も知らない事を言い訳に、君を傷つけたくないから、だから、君のそれには答えられないぜ・・・、・・・、・・・、でも、でもな、友達からだったらいい。その先どうなるか知らないけど、俺が君の事を良く知って、俺がどんなやつか、ちゃんと理解してくれて、それでも君の気持ちが変わらないなら・・・、その時は・・・」
宏之君はそう言葉にしてから私のほうに振り向いてくれた。
すごく、すごく、健やかな笑みを表情に浮かべながら、まるで太陽のように・・・。私は先走っていた。
何もまだ彼の事をわかっていないのに行き成り彼氏になってくださいなんていうのはおかしかった。だから、彼の言葉が心に沁み付いちゃって余計に涙が出ちゃったの・・・。
柏木君のことをちゃんと知ってからでも遅くない。
だって、私のこの彼が好きだ、って言う気持ちはたぶん、実際の彼がどんな男の子であるか知ったとしても変わらないはずだから。
「はぁぁあ???だから、なんでなくんだよっ!あぁぁぁああ、わけわかんえねぇええぇぜっ」
両手で頭を押さえてたじろぐ、宏之君。
泣いちゃっている私。そんな私たち二人を陰で見守っていた三人がこの場を収集させようと姿を見せたの。
「よぉっしゃ、俺の賭け勝ちだな、隼瀬、後でなんかおごれよな。おっと、始めまして宏之のダチやっている八神慎治ってもんだけど、いごよろいくな」
「こんな大事なことで賭け事をしようなんて慎治、あんた腐ってるわよ」
「香澄、八神さんはご冗談でそう申しているのですよ、そうでしょう、八神さん」
「まあな、でも、これでいいじゃねえの。お互いに何も知らないで付き合うよりはお友達から始まったほうがな。よかったな、これで俺もお前もこの学校の名声女子三人とお友達になれたって訳だ・・・、やぁあ、俺ってマジ、ラッキー。それと涼崎さんもめちゃ、ラッキーなほうだぜ。なにせ、こいつ、何でかしんねぇけど、ほとんど女の子の顔なんて覚えないし、名前なんて、片手の指で数えられる子ほどしか覚えてなんだよな」
八神君は名声女子三人って口にしたけど、いったいどんな意味なんだろう?
でも、香澄ちゃんや詩織ちゃんの登場で頭が混乱しちゃっていて、彼が言葉にしたことは私の耳には届かなかった。
「しっ、慎治、よけいなこというんじゃねぇぜ。ちっ」
「へぇ、そうだったんだぁ、じゃあ、あたしたちってあんたにとって特別なんだぁ?良かったわね、春香、ククッ。でも、あたしの仕掛けた作戦も完璧じゃなかったわね。友達を通り越して行き成り恋人になってだもん、あんたがそんな大それた事を告白するなんて全然、考え付かなかったわ。せいぜい、お友達程度だと思ってたのに」
すべては香澄ちゃんの企てたことだった。
「もぉぉおお、香澄ちゃんと詩織ちゃんの馬鹿、ばか、ばか、ばか、ばかかああぁぁぁ、とっても、とっても心臓ばくばくしちゃってそのせいで死んじゃうかとおもっちゃったじゃない・・・」
「はい、はい、ごめんね。だまってこんなことやったりして。デモね、あんたのことだから、いつまでたってもこの手のこと成長しなそうだから、ちょっと、ああ、かなりかな。荒療治ってやつ、強引な手口だったけど、ゆるしてね」
「お許しくださいね。でも、これもすべてあなたのためを思ってやったことなのですから。ですが、私としては結果が悪い方向へ行かないかととても心配で何度もこの場に出てしまいそうになったのですよ」
「まあ、いいじゃん、お友達になれたんだから。この場所もいいところだけど、なあ、今から俺たちでどっか遊びにいこうぜ。まあ、これで宏之は多くの野郎を敵に回したわけってか」
「はははっ、そうね、いえているわ、それ。さてと、慎治の言うとおり、どっかいきましょう。ここも学校の敷地だけど、この丘下る時に抜け道があってそのまま街に続いているわ」
香澄ちゃんがそういうとそのまま丘を下り始める。
それに続くように八神君、期待していたけど、宏之君が手をつないでそこから走り出してくれることはなかった。
がっくりとしている私の手を引いてくれたのは詩織ちゃん。そして、
「今は私で、お許しください。ですが、いつかきっと、この手は柏木さんと・・・」
詩織ちゃんは微笑を返し、みんなが向かった先に私を連れ出した。
そこらら、私と宏之君、みんなの思い出の一ページが始まったの。
高校生での大切な思い出の一ページ目が。
それから、色々な思い出を振り返り、決心した。それは、記憶の中の思い出に浸りながら街を眺めてくると誰かが来る気配を感じたの。
貴斗君が来たのだと思って私は驚かないようにゆっくりと振り返り声を掛けようとした。
「・・・・・!?」
どうして?酷く動揺してしまったけど何とか表に出さないように彼女に挨拶をする。
「今晩は、詩織ちゃん」
「コンバンは、春香」
私だと判った彼女はそう挨拶を返してくれた。
「そろそろ、彼、来ると思うわよ」
動揺を隠すように自分の腕時計で時間を確認し、自分に〝頑張っていつも通りにね〟と言い聞かせてから彼女に微笑むようにそう言葉をかけていたの。
その言葉に呼応するように新しい影が詩織ちゃんと私の方に向かって伸びてきた。
「二人とも、呼び立ててすまない」
「貴斗君、そんな事ないわよ」
声で誰だか理解したのでそう彼に言葉を交わしていた。
彼の今日の目的は多分・・・、詩織ちゃんと私の何かを決定付けるものだと思った。
そう思ったから一瞬だけ詩織ちゃんの方を向いた。
「呼び立ててすまないが二人とも、俺の口を挟まないで聴いてくれ」
彼の言葉に出来るだけ冷静に微笑みで返した。
「詩織、今まで、迷惑を掛け大変申し訳なく思っている」
貴斗君、詩織ちゃんに謝っている。それは彼女の気持ちに答えられないから?それとも・・・。
「それと・・・、春香、君にも謝罪のしようがないくらい済まないと思っている」
〈それはもう過ぎてしまった事だから謝らなくっていいって言ったのに〉と心の中で思い更に心の中で自己完結をしようと思ったのに、
「いいの、もう事故の事は気にしていないから」と口に出てしまっていた。
「その事だけではない・・・、春香、君はわかっている筈だ」
彼のその言葉から彼が何のために私と詩織ちゃんを呼び出したのか理解した。だから・・・。
「君の心の奥にくすぶっている想いに、それは、俺に対してではなく」
「違う、今の私が必要としているのは貴斗君なの」
〈ワタシを突き放そうとしてくれるの?そうでしょう、貴斗君。私の本当の想いを信じろ、っていうのね?〉
「心配ない、アイツも未だ、君を必要としている。それと・・・、後のこと香澄のことは心配するな。お前が気にする必要は、何一つない」
〈貴斗君、アナタは本当に宏之君を信頼してくれているんだね。でも、そんな言い方酷いよ。香澄ちゃんはどうなってもいい訳なの?そんな・・・。それでも貴方がそういってくれるなら〉
「意固地にならず素直になれ」
〈素直な気持ち?本当の気持ち?〉
「そして、心のそこから俺が必要としているのもキミじゃない」
私は下を向いたまま双眸を閉じ、脳裏に私の好きな人が一体誰であるのかを浮かべた。それは、
図書館に行っていたけど、勉強は手に付かず唯、悩んでいる事のほうが多い。
八神君にあって、香澄ちゃんとあんな言い合いをして以来宏之君とも貴斗君とも会う事を止めていたの。
こんな気持ちのままじゃ二人に合わす顔なんてないから。
~ 2004年11月10日、水曜日 ~
今日も新しい一日が訪れていた。
図書館に向って、いつものように同じ場所で勉強をしてからいつものように帰宅していたの。
家に帰ると私は一通の手紙をママから渡されたの。その手紙を渡されたときママの表情は心配の色を浮かべていた。
理由は私の所の宛先だけで宛名のない手紙だったからとても不審に思ったのだと思うの。
部屋に戻り貴斗君と詩織ちゃんの二人が私の眠っている間に向かえた誕生日の時にプレゼントしてくれたアンティークなブックマーカーセットに付いていたペーパーナイフでその手紙の封を切っていた。
それをプレゼントしてくれたのは二人だと教えてくれたのは妹の翠。
それを選んでくれたのは貴斗君だという事も教えてくれた。
眼鏡ケースサイズの綺麗な彫刻が施されている木箱。その中に真紅の絨毯で丁重に金属造りの三種のブックマーカー、ペーパーナイフ、それと斬新な細工が施されたルーペが収まっている。
貴斗君のセンスの高さを物語っているそんなプレゼントでした。
以前、詩織ちゃんから〝貴斗君に何かプレゼントするのは大変〟だと言うのを聞かされた事があるの。
彼が選んだそのプレゼントを見れば何となく分かるような気がする。
彼自身の審美眼?センス?が高いから一般常識レベルのものでは喜ばないのかもしれないと言う事だと思う。
詩織ちゃんと貴斗君からもらったプレゼントの思い浸りから戻り、さっき開封した封筒から便箋を取り出していた。
封筒に描かれている絵柄事態はシンプル。でもどこにでもありそうで、なさそうな封筒でした。
その中から取り出し、開いた手紙の内容を確認・・・、凄く簡素、シンプルだった。
内容は次のように手書きではなくタイプしてあったの。
『11月11日、5時30分PM』
『聖陵大学付属学園高等部、高台の大きな木の下で待つ』
『時間厳守、遅れないで欲しい』
『藤原貴斗』
そう書いてあった。だけど直ぐに疑問に思ったの。
どうして、彼からこんな手紙が送られて来たのかな?
指定して来た場所は私が宏之君に告白した場所、そして、詩織ちゃんが貴斗君に告白した場所でもあるの。
それと日付11月11日、明日の日付が書かれていた。
彼はまだ病院から退院出来る状態でないのに、どうして?でも、隠し事は多そうだけど、彼はけして嘘をつくような人ではない事を私も彼を取り巻く人達も知っている。
期待と不安、焦燥と安堵、希望と絶望、悲しみと喜び・・・、・・・、・・・、そして矛盾。それら色々な感情が私の心の中を埋め尽くそうとしていた。だけど、明日になれば何かが変わる・・・、
誰かが私が想う本当の気持ちを促してくれるなら、
誰かが私の背中を押してくれるなら、
誰かが厳しく何かを言葉にしてくれるなら・・・・・・、
一つの決断が出来るかもしれない、
今よりも少しだけ前へ歩み出せるかもしれない、
その言葉の意味を考えて何か今の私に答えを出せるかもしれない。そんな風に思えたの。
早く明日になってそのすべての感情を解き放ちすべてを解決したい。そう願いを込めていた。
~ 2004年11月11日、木曜日 ~
色々な想いを胸に貴斗君が手紙に書いていた指定の場所へと向かっていたの。そして今約三年ぶりに高校時代、通学に通っていた坂を私は一生懸命上っていた。
「ハァー、ハァー、ハァーハァー、アァ~~~ん、ひどいよ、貴斗君か弱い女の子にこんな急な坂道を登らせ高台の丘まで来い、なんって」
息を切らせながら、そう独り言をしていた。
早く出てきて正解だった。私の今の体ではまだこの坂を登るのに少々骨が折れてしまう。
既に日は沈み、澄み切った空に煌々と輝く星々とお月様が蒼々と辺りを照らしていた。
坂をようやく上りきりまだ目標の場所まで続く道をテクテクと進んでいた。
それから約15分掛けて約束の場所に辿り着いたの。
「ハッ、ヤッと着いたァ、はぁああぁ~、もうヘロヘロぉ~~~っ!」
そう言葉にし、それから大きく深呼吸をした。
まだ、貴斗君は来ていないみたい。約束の時間まで後一〇分あるから当然かもしれないね。
大きな木の下に座り、ここの丘から見えるネオン、煌く街並みを眺めていた。
ここに最後に来たのは三年前の8月15日、ミンナでお祭りの花火を見たときの事だったの。
お祭りの終局に私の大事な人達と私を囲んで仲睦まじく写真を取った場所。
目の前に見える景色は変わっていない。でも、あれからみんな変わってしまった。
変わってしまった現実の輪を私は壊すような行動を取っていた。
本当にもう昔みたいには戻れないの?
初めてここの場所に訪れたころの事を私の瞳を閉じて思い出してみたの。
* * *
私、涼崎春香と、今でも親友でありたい二人の女の子、藤宮詩織ちゃんと隼瀬香澄ちゃん。
私はその二人と偶然、この聖陵学園高等部で顔を合わせることになったの。
妹の翠がいたから、二人と会う機会は多かったほう。
でもね、高校受験をしなくちゃいけない年の中学三年生のころはその勉強で手一杯で二人に会うことはほとんどなかったし、会うことが出来てもお互い、どの高校へ進学するのかって言うお話は全然持ちあがらなっかた。
一年生のクラス分けの時に、掲示板の名前の中、私と同じクラスに二人の名前が有った時は同姓同名かなって思っちゃったけど教室に向かい二人の顔を見た時、二人とその教室で再会した時は本当に驚いちゃった、三人して。そして、私は運命って物を感じたの。
これから始まる高校生活は今までと何かが違うかもしれないかもって。
それから、柏木宏之君が同じ学校に通っていたのを知ったのは半年以上も過ぎた体育祭の時だったの。
宏之君はダークホース。運動部に所属していなかった彼、彼以外のクラスの生徒は彼のその運動能力をまったく知らなくて、眼中にはなかったみたい。
でもね、彼は上級生をも物ともしないで、団体戦の競技も個人戦の競技も上位に食い込ませ、高等部初の一年生クラス一位を手に入れたの。
あの時の宏之君すごく・・・。
だけどね、彼から聞いたことなのだけど、そうなったのはクラスのほとんどが運動の得意な子が集まっていたみたいだし、八神君の一年生とは思えないみんなをまとめる力があったから、成し遂げられたって教えてくれたのを覚えている。
宏之君と始めて、面と向かってお話をすることが出来たのは二年生になってからだった。
それは中間テストが終わったその日。
「ねぇ、詩織ちゃん?テストやっと終わったね。どう、うまくいった?」
「さあ、どうでしょうか?出来るだけの努力はしましたけど、結果が出るまではなんともいえません。そう言います春香ちゃんこそどのような感じだったのでしょうか?」
「まったく学年トップの詩織ちゃんが何を口にするのかと思えば、すっごく嫌味ないいかだよぉ、あははははあぁ・・・、私はちょっとみすちゃったところがおおくて、気がついた時にはテスト時間終了だよぉ~・・・。ねぇ、さっきまで香澄ちゃんも居たけど、どこいっちゃたのかなぁ?」
「あっ、えぇぇえとですね・・・、ねぇ、春香ちゃんも今日は部活お休みになっているのでしょう?もし、これからお時間がありましたら、わたくしとご一緒してほしい所があるのですが、どうでしょうか?」
「うん、全然大丈夫だよ、それじゃ、いこっか」
私はそう詩織ちゃんに答えて、机の上に乗せていた学生鞄を両手で持って彼女より先に歩みだす。
「ねえ、それで詩織ちゃん今からどこへ向かうの?」
「この学校で一番素敵な場所。これだけ広い敷地の学校ですから皆さんが知らないすごく、落ち着く場所があるのですよ。それに・・・クスッ」
「えっ、何々その笑いは?」
「さぁあぁ~~~って、どのようなことでしょうねぇ。いいからついてきてください」
詩織ちゃんに言われて一緒に校舎から出て歩くこと十五分近く、私たちは関係者以外立ち入り禁止のロープが張られた旧校舎を超えようとしていた。
「えぇぇ、詩織ちゃん?本当にいいの?立ち入り禁止って書いてあるのにぃ」
「いいのですよ、わたくしは」
「優等生の詩織ちゃんがそんなこと言うなんてちょっとがっかり」
「それは周りの方々が勝手に押し付けているわたくしの理想像ではなくて?それに春香ちゃんだってこのさきっ・・・おっといけませんこと、わたくしとしたことが・・・」
詩織ちゃんは態とらしく言いかけの言葉を彼女の口元を手で押さえそれ以上いわないような行動をとったの。
私は彼女のその言葉の誘導につられて、口が滑ってしまう。
「あうっ、もしかして、詩織ちゃん。私がこの先に足を踏み入ったことあるの知ってたの?」
「はて、さて、私にはいったいどのようなことなのかさっぱりと分かりません。クスッ」
「どうして、そこで笑うの詩織ちゃん。もぉ」
彼女の向かう先、その道の先に私はどんな世界があるのか知っていた。
この聖陵学園のある三戸市の中心を一望できる芝生がきれいに整えられた高台の丘に出る事を。そして、それだけじゃなくて・・・。
小さな雑木林を抜けると視界が開け、一面の小さな緑ととても大きな木が聳え立っていた。
その木の下に背中を大樹に凭れ掛けさせて、首だけ高台の下を向けている男子学生が居た。
学生は私達の足音に気づきこちらを振り向くの。
「うぅん?君たちは・・・?・・・???えっと、確か、そっちはふじみや・・・しおりさんと・・・きみは・・・」
男子学生の言葉はそこで止っちゃった。
私は全然予期していなかったその男子学生を目の前にしちゃって顔を赤くしちゃってカチコチになってしまったの。
そんな私の耳元で詩織ちゃんがささやく。
「わたくしが、あなたをここにお連れした意味が分かるのであれば、あなたの気持ちをはっきりと彼にお伝えしたほうがよろしくてよ。それでは私は退散しますのでごゆっくりと、クスっ」
固まっている私に詩織ちゃんはそんな事を囁くとそんな私を独り残して元来た方向へ去ってしまったの。
目の前の男子学生はそんな彼女のことも気に留めないで黙ってしまっていた。
しばらく、その広い空間に静寂が訪れてしまうの。でも、その沈黙を先に破ったのは私の方だった。
「あっ、あああ、あのぉ、詩織ちゃんと違って柏木君が私の事なんか知らないと思うけど、二年A組のすっ、すすすず」
「すずさきはるかさん、っであっていたか・・・、間違って居たらごめん」
宏之君は私の方を見ていなかったけど、そう口にしてくれた。
彼が私のことなんて知らないだろうけど、名前だけでも知っていてくれたなんて・・・、それだけで、どうしようもなく嬉しかった。たったそれだけのことなのに・・・、胸が篤くなっちゃって、両手で顔半分以上を隠して、顔を真っ赤にして泣いちゃったの。
そんな私を見た彼は・・・。
「えぇっ、何で泣くんだよっ?俺、君の名前まちがいちまったのか?そんくらいでなくなよっ、むちゃくちゃ気分ブルーになっちまうぜ」
「ちっ、ちがうの、違うの、柏木君。わたし、わたし、柏木君が、その、柏木君が私の名前なんか知らないと思っていた私のことなんか全然知らないって思っていた柏木君がうれしくて・・・」
「はぁぁあん?そんくらいでなくなよ、泣いている君を見ると何か俺が悪いことしたように思えちまってなんかいやだぜ。だから、泣くなって、なっ、なあぁって」
「なっ、泣いたりしてごめん、ごめんね、柏木君。でも、でも、どうしても止ってくれないの、ごめんね」
その私の言葉で宏之君は背を向け、左手を制服のポケットに入れ、右手の肘を木に付けた状態で体の面を街の方へ向けてしまったの。
嫌われちゃったのかな?とおもったけど、本当に嫌われてしまったのなら、ここか直ぐ去っていたはず。
だから、勇気を持って止ってくれない涙を無理やり塞き止め、彼に伝えたい私の気持ちを言葉にするの。
「あっ、ああぁぁあのぉ、きっ、聞いてくれるだけで言いです、だっ、だから、聞いてください。おねがいします」
宏之君は返事を返してくれなかったけど、私は言葉を続けた。
「あなたとこうしてお話しするのは初めてだけど、ずっと前から、ずっと前、この学校に入学する前からあなたを知っていました・・・。でも、この街で、それは偶然かもしれなかったけど、あなたには何度も出会っていたの」
「私はちゃんと柏木君のこと覚えていたのに・・・、・・・、覚えていたのに、柏木君、あなたは、その度、私を見る表情は私を見るのが初めてのような顔でした・・・、・・・、・・・、・・・。この学校に柏木君が居るんだって知った時は本当にね、本当にすごく嬉しかった。」
「・・・、・・・、・・・、でも、あの、その、あんまり私、男の子とお話しするのが得意じゃなくて・・・・・・、今までずっと、何度も、柏木君に声を掛けようと思ったんだけど、今までずっと出来なかった・・・。でも、今なら、今なら、私の気持ちはっきりと伝えられます・・・。その、すっ、好きです。」
「柏木君のことが好きです。もっ、もし、もし、かっ、かしわぎくんが、だっ、だれともつきあっていなくて、そっ、そのかのじょが・・・いないなら・・・、ああぁぁっっ、あの、・・・あぁああ、あの・・・、わっ、私のこっ、ここぉおおおぉおお・・・・こいびと、ああっぁぁぁ、えぇぇええとそのおつきあいしてくださいっ!」
背中を向けている彼に対して見えないけど頭を下げて、そう彼にお願いをしていた。
私はその姿勢のまま、彼の言葉を待った。でも、直ぐに彼が返事をしてくれることはなかった。
どのくらいの時間私はその格好でいたのかわからない。
長かったの、それとも短かったのか。
それでも、彼は言葉を返してくれることはなかった。
柏木君が言葉を返してくれないって事は駄目だったんだなって解釈しちゃった私はまた涙を流してしまったの。そして、姿勢を戻し再び、私のほうから彼に言葉を向けていた。
「やっぱり、むりだよね。いきなりこんな事を言われても、迷惑だよね。ごめん・・・、うくっ、ひく、うぅうううう・・・・」
そこで、初めて彼が背を向けた状態で私に言葉を掛けてくれる。でも、その言葉を聞いた瞬間、すべてが終わってしまったのかなと先走りしてしまいそうになったの。
だって、言い方がすごくずるいんだもん・・・。
「ああ、いきなりそんな事を言われても、迷惑だぜ。答えに迷うからな。確かに俺は君の名前と周りの連中が言う定評しか知らない。そんな君から付き合ってくれって言われてもな・・・、まだこっちが答えを返しても居ないのに泣かれちまうのは、すごく答えを返しづらいじゃないか・・・。今から俺が君に伝える答え、君が望むものじゃないかもしれない。でも、それでも、涙流されるのはつらいぜ。だから、そんな泣いている君の顔なんて見たくないから、背を向けちまったんだ・・・、・・・、・・・、いきなり、君の彼氏なんて出来ない。君の事を何も知らなくて、君と付き合うことになって、何も知らない事を言い訳に、君を傷つけたくないから、だから、君のそれには答えられないぜ・・・、・・・、・・・、でも、でもな、友達からだったらいい。その先どうなるか知らないけど、俺が君の事を良く知って、俺がどんなやつか、ちゃんと理解してくれて、それでも君の気持ちが変わらないなら・・・、その時は・・・」
宏之君はそう言葉にしてから私のほうに振り向いてくれた。
すごく、すごく、健やかな笑みを表情に浮かべながら、まるで太陽のように・・・。私は先走っていた。
何もまだ彼の事をわかっていないのに行き成り彼氏になってくださいなんていうのはおかしかった。だから、彼の言葉が心に沁み付いちゃって余計に涙が出ちゃったの・・・。
柏木君のことをちゃんと知ってからでも遅くない。
だって、私のこの彼が好きだ、って言う気持ちはたぶん、実際の彼がどんな男の子であるか知ったとしても変わらないはずだから。
「はぁぁあ???だから、なんでなくんだよっ!あぁぁぁああ、わけわかんえねぇええぇぜっ」
両手で頭を押さえてたじろぐ、宏之君。
泣いちゃっている私。そんな私たち二人を陰で見守っていた三人がこの場を収集させようと姿を見せたの。
「よぉっしゃ、俺の賭け勝ちだな、隼瀬、後でなんかおごれよな。おっと、始めまして宏之のダチやっている八神慎治ってもんだけど、いごよろいくな」
「こんな大事なことで賭け事をしようなんて慎治、あんた腐ってるわよ」
「香澄、八神さんはご冗談でそう申しているのですよ、そうでしょう、八神さん」
「まあな、でも、これでいいじゃねえの。お互いに何も知らないで付き合うよりはお友達から始まったほうがな。よかったな、これで俺もお前もこの学校の名声女子三人とお友達になれたって訳だ・・・、やぁあ、俺ってマジ、ラッキー。それと涼崎さんもめちゃ、ラッキーなほうだぜ。なにせ、こいつ、何でかしんねぇけど、ほとんど女の子の顔なんて覚えないし、名前なんて、片手の指で数えられる子ほどしか覚えてなんだよな」
八神君は名声女子三人って口にしたけど、いったいどんな意味なんだろう?
でも、香澄ちゃんや詩織ちゃんの登場で頭が混乱しちゃっていて、彼が言葉にしたことは私の耳には届かなかった。
「しっ、慎治、よけいなこというんじゃねぇぜ。ちっ」
「へぇ、そうだったんだぁ、じゃあ、あたしたちってあんたにとって特別なんだぁ?良かったわね、春香、ククッ。でも、あたしの仕掛けた作戦も完璧じゃなかったわね。友達を通り越して行き成り恋人になってだもん、あんたがそんな大それた事を告白するなんて全然、考え付かなかったわ。せいぜい、お友達程度だと思ってたのに」
すべては香澄ちゃんの企てたことだった。
「もぉぉおお、香澄ちゃんと詩織ちゃんの馬鹿、ばか、ばか、ばか、ばかかああぁぁぁ、とっても、とっても心臓ばくばくしちゃってそのせいで死んじゃうかとおもっちゃったじゃない・・・」
「はい、はい、ごめんね。だまってこんなことやったりして。デモね、あんたのことだから、いつまでたってもこの手のこと成長しなそうだから、ちょっと、ああ、かなりかな。荒療治ってやつ、強引な手口だったけど、ゆるしてね」
「お許しくださいね。でも、これもすべてあなたのためを思ってやったことなのですから。ですが、私としては結果が悪い方向へ行かないかととても心配で何度もこの場に出てしまいそうになったのですよ」
「まあ、いいじゃん、お友達になれたんだから。この場所もいいところだけど、なあ、今から俺たちでどっか遊びにいこうぜ。まあ、これで宏之は多くの野郎を敵に回したわけってか」
「はははっ、そうね、いえているわ、それ。さてと、慎治の言うとおり、どっかいきましょう。ここも学校の敷地だけど、この丘下る時に抜け道があってそのまま街に続いているわ」
香澄ちゃんがそういうとそのまま丘を下り始める。
それに続くように八神君、期待していたけど、宏之君が手をつないでそこから走り出してくれることはなかった。
がっくりとしている私の手を引いてくれたのは詩織ちゃん。そして、
「今は私で、お許しください。ですが、いつかきっと、この手は柏木さんと・・・」
詩織ちゃんは微笑を返し、みんなが向かった先に私を連れ出した。
そこらら、私と宏之君、みんなの思い出の一ページが始まったの。
高校生での大切な思い出の一ページ目が。
それから、色々な思い出を振り返り、決心した。それは、記憶の中の思い出に浸りながら街を眺めてくると誰かが来る気配を感じたの。
貴斗君が来たのだと思って私は驚かないようにゆっくりと振り返り声を掛けようとした。
「・・・・・!?」
どうして?酷く動揺してしまったけど何とか表に出さないように彼女に挨拶をする。
「今晩は、詩織ちゃん」
「コンバンは、春香」
私だと判った彼女はそう挨拶を返してくれた。
「そろそろ、彼、来ると思うわよ」
動揺を隠すように自分の腕時計で時間を確認し、自分に〝頑張っていつも通りにね〟と言い聞かせてから彼女に微笑むようにそう言葉をかけていたの。
その言葉に呼応するように新しい影が詩織ちゃんと私の方に向かって伸びてきた。
「二人とも、呼び立ててすまない」
「貴斗君、そんな事ないわよ」
声で誰だか理解したのでそう彼に言葉を交わしていた。
彼の今日の目的は多分・・・、詩織ちゃんと私の何かを決定付けるものだと思った。
そう思ったから一瞬だけ詩織ちゃんの方を向いた。
「呼び立ててすまないが二人とも、俺の口を挟まないで聴いてくれ」
彼の言葉に出来るだけ冷静に微笑みで返した。
「詩織、今まで、迷惑を掛け大変申し訳なく思っている」
貴斗君、詩織ちゃんに謝っている。それは彼女の気持ちに答えられないから?それとも・・・。
「それと・・・、春香、君にも謝罪のしようがないくらい済まないと思っている」
〈それはもう過ぎてしまった事だから謝らなくっていいって言ったのに〉と心の中で思い更に心の中で自己完結をしようと思ったのに、
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「その事だけではない・・・、春香、君はわかっている筈だ」
彼のその言葉から彼が何のために私と詩織ちゃんを呼び出したのか理解した。だから・・・。
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〈貴斗君、アナタは本当に宏之君を信頼してくれているんだね。でも、そんな言い方酷いよ。香澄ちゃんはどうなってもいい訳なの?そんな・・・。それでも貴方がそういってくれるなら〉
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