CRoSs☤MiND ~ 過ぎ去りし時間(とき)の中で ~ 第 二 部 隼瀬 香澄 編 ♀ 理想と現実 ♂

Digital&AnalogNoveL

文字の大きさ
16 / 21
第 四 章 イン・ザ・リアル

第十六話 ちょっとだけの休息

~ 2004年8月26日、木曜日 ~

 私も宏之も精神的に参っていて誰かに気を遣うなんて出来る筈なのに、それなのに昨日、彼は私に嬉しい事を言ってくれたわ。
 それは今日、私の誕生日を二人だけでしてくれるって事。
 祝いでもして少しでも私の心の中の靄を拭い去りたいんだって彼は言ってくれた。
 そんな彼の心遣い、涙が出るほど嬉しかった。
 仕事が終わると待ち合わせの場所の小料理屋『風月』と言う所に向かった。
 会社からそのお店は近かったので歩いて一五分足らずで到着。そしてその玄関口ですでに宏之が待っていた。
「香澄、仕事お疲れさん、それじゃさっそく中に入ろうか」
 宏之はそう言ってからお店の引き戸を開けて中に入るように促してくれた。
「有難う、宏之」
 それから中に入り彼を待つ、彼が中に入ると私を導くようにカウンター席に移動して行った。
 しばらく席に座って落ち着くと宏之が私に言葉を掛けてくれる。
「何のシャレも効いてないこんなとこ、だけど香澄、誕生日おめでとう」
「アリガト、アンタとだったら別にどこでも気にしないわ」
 好きな人に祝ってもらえるなら本当の何所でも良かった。
 それに洒落たレストランとかよりこう言った心が落ち着ける場所の方が私の性にあっているわ。
「お化け屋敷でもか?」
 宏之がそんな事を言うから、私の手が反射的に動こうとしてしまう。だけど、やっぱり止められなかった。
 条件反射だ物仕方がないわ。
 だって、そう簡単に自分の性格が変えられたら、誰だって苦労しないもの。
「ぶっ飛ばすわよ」
〈ホントォーーーにこの男は。アタシがせっかく良い気分に浸り始めたって所なのに焼入れたるわ〉
『ドカッ※』
「いってなぁ、手加減しろよ。それとその手の早さ何とか何ネェのか?」
「あんたがどうしようもない事、言うからでしょ、自業自得よ」
「へい、へいそうでしたね。なぁ、香澄ヤッパ誕生日祝ってもらうのって嬉しいのか?」
「当然よ、好きな人と一緒ならなおさら」
「大切な仲間達とは?」
「そんなの聞かなくたって分からないのアンタ?」
「確認しただけ!」
 宏之は私達のもっとも親しい仲間内の事を言っているのだろうと思った。
 何となく溝が出来始めてしまった私達みんなの関係。
 宏之だって辛い事いっぱいある筈なのにそれでもみんなの事を考えてくれている・・・。
 そんな彼の気持ちがたまらなく嬉しくて私も凄く嬉しい気分になった。
 宏之とビール中ジョッキで乾杯すし、一気に飲み干した。
 その一杯目で私は酔ってしまったわ。
 私ってアルコールに弱いくせにどうしても止められないのよね。
 日本酒よりどちらかと言うとビールの方が好きかな?他のみんなはどうなんだろう。
 私の幼馴染みの詩織は何でも来いって感じだけどパーティードレスとか着たらカクテルとかマジで似合いそうね、しかも酒豪。
 それとタメを張れるのは綾くらいかな?
 慎治なんかもどんなお酒で飲みそうだけど適量とか考えていそうね。
 貴斗なんかどうだろうか?なんか私以上に駄目っぽいような気がするわ。でも彼が飲むなら外国産のワインやウィスキーとか似合いそうかも?それとも日本酒?・・・、
 そういえば以前、慎治のおかげで一回だけ貴斗と飲む機会があったわ。
 春香以外の仲間内+余所者二名で・・・、だけど残念ながらあんましそのことを覚えていないのよ、私。
 そんな事を考えつつ私の隣の人は・・・?と思って彼を覗いてみた。
「どぉ~~~、したのぉ?ひろぉゆきぃそんなぁ顏しちゃってぇ」
「ハハッ、なんでもネェよ」
 口元にジョッキの淵を付けながら宏之は何かを考えているようだった。
 完全に酔っている訳じゃないからそれくらい私にも理解できたわ。
 唯、彼が考えていた事は・・・、多分、悪い事じゃない気がする。
 思案を止めたのか?宏之も一杯目のジョッキをグゥイッと飲み干した。
 それを確認した私は追加のビールを注文していた。
「ニャハッ、ビール、ついかぁ~」
「アッ、俺もお願いします。板前さぁ~~~ん、それとネギマとツクネ、マグロの兜煮の追加もお願い」
「へぇい、わかりやした」
 もう後はじゃんじゃん頼んで飲んでの繰り返し、アルコール摂ってたらなんだか嫌な事全部吹き飛んだって感じだった。
 飲み過ぎた所為で私は酔い潰れ寝てしまっていた。

*   *   *

 どれくらい時間が経ったのかな?体に心地よい振動を感じていた。
 ウトウトしていた目を開け自分の状況を確認してみた。
 酔い潰れて寝てしまった私を背負い宏之が夜道を歩いていた。
 酔いの気分も丁度晴れ私はしっかりとした声で彼に言葉を掛ける。
「有難う、宏之」
「香澄、起きちまったのか?もう少し寝てりゃぁいいのに。まぁ目っ、覚めちまったもんは仕方ない。その声だと酔い醒めてるなら自分で歩けよ」
「イジワルゥ、宏之、もう少しこのままでいさせてくれたって良いじゃないの」
 彼に甘えたかった。だからこの好意を止めて欲しく無くてそう彼に拗ねていた。
「はい、ハイ、俺は意地悪です」
 宏之はそう口に出して言うけど止めていた進行を再び開始する。そしてまた私の身体に心地よい波が押し寄せた。
「ネェ、宏之、アタシ達これからもずっと一緒よね?」
「あぁ、もちろんだ」
 私の言葉を即答で彼は返してくれた。
 その返答がどんな意味でも今の私にとってこの上なく嬉しい気持ちにさせてくれる。
 嬉しさの余り宏之のうなじに顔を埋めスリスリと猫の様に顔を動かした。
「くすぐったいから止めろって」
「ニャァ~~~」
 それから今一度彼の背中の上で眠りに就く。
 彼の背中から伝わる暖かさ・・・、誰かさんに似ている。
 今、私がこんな幸せな気分に浸っている中、別の場所では大変な事態になっているのを私も宏之も知らない。でもそれは多分、吉兆。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。