クラスメイトのなかで僕だけ異世界転移に耐えられずアンデッドになってしまったようです。

大前野 誠也

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1:プロローグ

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 僕は子供の頃から体が弱かった。
 入退院を繰り返し、小学生の頃は学校に通った日数より、病院で過ごした日数の方が多かったぐらいだ。
 そんな僕だが、何とか高校に進学する事は出来た。出来たのだが、出席日数は留年ギリギリだ。
 この日も朝から体調が優れなかったが、休むと益々出席日数が危うくなるので、多少無理をして登校した。

 3時限目の数学の授業中、体調不良が悪化してしまい、少しでも楽な姿勢をとろうと机に突っ伏して瞳を閉じた。そしてそのまま意識を手放した。

 次に気が付いた時、そこは見知らぬ場所だった。
 石造りの立派な建物で床は大理石の様だ。天井は高く円形で、立派な天井画が描かれている。天井画としては珍しく、剣を持った騎士やドラゴンなどが描かれている。天井を支える幾本もの石柱には細部まで美しい彫刻が施されていた。
 僕は部屋の中央に寝かされており、僕の近くにはクラスメイトの女子が座り込んで此方を見ている。確か名前は……駄目だ思い出せない。特に話したことも無い間柄だ。その女子は心配そうな、それでいて怯えた様にも見える表情を浮かべていた。他のクラスメイト達は、遠巻きにこちらを見ている。全員何とも言えない不思議な表情を見せている。
 僕の近くにいるクラスメイトの彼女の後ろには見知らぬ初老の男性が立っていた。
 金糸で刺繍された煌びやかなローブを着たその男性の頭には王冠の様な物が戴かれていた。
 右手には杖を、左手には本を持っている。彼の後ろには全身鎧の騎士然とした人たちが6人ほどたっている。その誰もが腰にある剣の柄に手を掛けていて、今にも斬りかかって来そうなほど殺気立っている様に感じる。
 僕が身構えると先頭の初老の男性が口を開いた。

 「ふむ。成功の様だな」

 どう見ても日本人ではないその男性が発した言葉は流暢な日本語だった。
 この人物が僕の意識が無い合間にここに運んだのだろうか?いや、だとしたら他のクラスメイト達は?自らの意志で移動したのか?何故?
 僕の中に次々と疑問が湧いてくる。
 とにもかくにも、先ずはこの男性が誰なのかが気になる。

 あなたは誰ですか?そう聞こうとして開いた僕の口から発せられたのは、僕が意図したものとはまるで違うモノだった。

 「ア”ア”ア”~~~~~~~~(あなたは誰ですか?)」

 え?!
 何だ今のだみ声。まさか僕の声なのか?
 僕の唸り声を聞いた女子生徒が若干怯えてしまっている。

 「ア”ア”~~………」

 もう一度喋ろうとしても、結果は再起程と同じ。乾いた唸り声が漏れ出た。
 なんだ?どうなっているんだ?

 「ふむ、はやり話すことは出来んか。これでは【テイム】と大差ないか……使えんな」

 そんな男性の言葉を聞いた女子は、先ほど僕の唸り声を聞いた時より怯えだした。顔面蒼白とは正に今の彼女の事を言うのだろう。

 「そ、そんな!ま、待って下さい!!まだ他に出来ることが有るかもしれません!!」

 女子生徒が男性に縋りつくように叫ぶが、男は意に介さない様子だ。

 「そんなものを探している余裕はない。それに、貴様のスキルは貴族共に付け入る口実を作りかねん。よって貴様と、は追放だ」

 「待って!待っ―――」

 尚も縋りつこうとする女子生徒を振り切るように、男性は杖を翳す。すると男性の足元が光を放ち始めた。その光の形はまるで魔法陣の様に見える。
 さらに杖とは反対側に持っていた本が、パラパラと自動で捲れている。

 「【転送】!!ゴドン大森林奥部!!」

 男性が何やら叫ぶと、光は一気に膨れ上がり、眩しくて目を空けていられなかった僕は目を閉じた。
 
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