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20:初の宝箱
しおりを挟む特に代わり映えしない道を進む。2階層、3階層、4階層と進み、ここまで特に問題はない。1気になる事があるとすれば、未だ宝箱が1つも無い事だろうか。
『死神さん。このダンジョンの宝箱は全て取りつくしてしまったんですか?』
『……ダンジョンの宝箱は定期的に湧きなおす……取りつくされることはない……』
「ご都合主義ね~、神様が定期的に入れに来ているのかしら」
『そんなまさか』
『……仕組みは知らん……ダンジョンコアが無くなればダンジョンが消失することから……ダンジョンコアが生み出しているという説があるがな……なんでも……人間や魔物の死骸から得たエネルギーで生み出している……だったか?……』
「それが本当なら、誰も魔物を狩らずに、尚且つ人間も倒されずに宝箱だけ漁っていたら、宝箱は生まれないってこ?」
『……さてな……人間に発見されたダンジョンは人間が群がる……学者が試そうとして試せる事ではない……我も……そんな事を試そうとは思わんしな……』
それはそうだろう。宝箱が増えるならともかく、減るのでは試す旨味が無い。
「理屈はどうあれ、定期的に宝箱が湧くなら、そりゃ領主とかからしたら、踏破なんてされたくないわよね」
『貴重な財源って感じだね』
「冒険者とかも集まって街も活気づくし、万々歳って感じね」
『……一応……デメリットも存在している……』
『あ、分かった!スタンビートの可能性でしょ』
よく漫画やラノベであるやつだ。
ダンジョン内の魔物が増え過ぎてダンジョンの外に溢れ出すやつ。
『……この世界に来たばかりにしては良く知っているな……その通りだ……まぁ、実際は……冒険者共が嬉々としてダンジョンに潜るので……人間に発見されたダンジョンでは先ずお目にかからんな……可能性があるとすれば……人間では対処が難しいランクのダンジョンだが……』
「ここのAランクみたいな?」
『……Aは踏破が不可能なだけだな……高ランクの冒険者が定期的に1~4階の魔物を間引けばスタンビートは起こらん……問題はSランクだな……人間では浅い階層の敵を間引く事すら難しいだろうな……』
「そんな時はどうするの?」
『……入り口を封印する……国宝級の魔道具を用いてな……我が知っている限り……現在封印されているダンジョンの入り口は4つだな……』
「臭い物には蓋って感じね」
『封印出来るだけマシだけどね――あ、あれ!』
僕の視界に入ってきたのはまさしく宝箱。大きさは僕の腰位まであり、結構大きい。
『……ダンジョンの宝箱には罠が仕掛けてある場合が多い……少し離れていろ……』
死神が無造作に宝箱に近づき、宝箱を掴んで開けようとした。が――どうやらあかない様だ。
『……む、鍵が掛かっているな……』
『お!それじゃあ、僕の【鍵開け】の出番ですね!』
『……ああ、頼む……ただし開錠しても蓋を開けるなよ……我は状態異常無効のスキルがあるから問題無いが……何があるか分からんからな……』
『【鑑定】のスキルで罠の有無とか分からないんですか?』
……
僕の質問に死神が黙ってしまった。
暫く沈黙が続いて、死神が発した言葉は意外なものだった。
『……試した事が無かったな……なるほど……スキルレベルMAXの【鑑定】ならば……或いは……どれ…試してみるか……【鑑定】』
「……どう?」
『……宝箱、施錠状態、罠なし……とあるな……中身までは分からんようだ……』
『おお!分かったんですね。罠なしなら安心して【鍵開け】できますね』
僕は初めて使うスキルに少しわくわくしながら宝箱に近づき、【鍵開け】を使う。
宝箱からカチリと音がした。
どの様に開くのか楽しみだったのだが、存外呆気ない結果だ。
『鍵が開いたみたいです。それじゃ、中身を確認しますね』
宝箱を開けるなと言われていたが、罠が無いとわかっているなら問題ないだろう。
僕は再びわくわくしながら宝箱を開けた。
『え~っと……短剣ですね』
大きな宝箱に短剣が一つ。
違和感が凄いが、思い出して見れば、ゲームの宝箱などは大体こんな感じだった。
『……どれ……【鑑定】……』
死神が短剣に向かって【鑑定】を使う。
死神は結構何かにつけて【鑑定】を使う癖があるようだ。
その割には宝箱には使っていなかったようだけど。多分自身に罠の殆どが無効だから気にしなかったのだろう。
『……ただのミスリルのナイフだな……魔法的な効果はない……売れば高く売れるだろう……取り敢えず小娘の腰にでも着けておけ……素手よりはマシだろう……いや……大差ないか……』
「高くってどれぐらい?」
『…知らん……我は人間の店など……アンデッドになってから使っていないのでな……我が人間だった頃は結構な高値だったというだけだ……』
「貴方が人間だったころって、何年前なの?」
『……さてな……とうに忘れたよ……』
死神はそれだけ言うと、こちらに背を再び向け進みだした。
さぁ、次はいよいよフロアボスがいるという5階層だ。気合を入れなおそう!
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