月が綺麗だから、これっきりにしないでね

さしみ

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失恋のはじまり

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愛してる。この感情は厄介だ。

思考回路を狂わせ、正しい判断が出来なくなる。

分かっているのに防衛本能で信じてしまう。
信じたほうがよっぽど危険で傷つくのに。

きっと彼にとってはただの遊びで、私はただの日常生活に与える刺激物でしかない。

右手首に彫られているタトゥーが私の左手首の傷に重なる。

口を大きく開かない私の首を空いている方の手で締め上げ呼吸機能を低下させ無酸素状態にしようとする。
苦しくて口を大きく開けると、君の滑った舌が蛇のように入ってきて唾液が混ざり合う音がした。

私はただの日常生活に与える刺激物でしかない。

だから多少乱暴をしても構わないのだろう。
むしろ乱暴にしてなんぼなんだろう。

君の手が首から離れ舌も口から出ていく。
やっと吸えた酸素に眉をしかめていると、耳元で君が囁く。

「可愛い」

それから、

「好きだよ」

って。


私にとって麻酔でしかない言葉に頭がふわふわしてきた。
どこか遠くで『嘘』と呟くもう一人の自分がいるけど、そんな声は空耳かな?くらいで処理される。

痛みも苦味も悲しさも感じない今の状況にただ酔いしれ君に抱きつく。
この瞬間が大好きだ。

だから毎回思う。
ずっと頭と心が麻痺していればいいのに、って。

キスをして、胸を触ってきて、濡れた私の大切な場所に手を滑らせていく君の顔がいやらしい。
下着の中に君の指先が潜り込んだ瞬間、君スマホが着信音を鳴らして震えた。

一気に引き戻される。






薄暗いオレンジ色の部屋だけど、ハッキリと見えた。
チラッと鳴るスマホを見て気にする君の顔が。

その顔、あんまり好きじゃない。

この時間だけでいいから独占させてほしい。
私以外を頭の中で思い浮かべないで。

ーーーなんて、本命でもないたかがセフレが図々しく思う。

しばらく鳴り続けてスマホは大人しくなり画面に着信1件と表示されているのが見えた。

静かになった部屋に私と君がぽつり布団の中で重なり、君が私を抱き締める。
頭を二回撫でた。

君がそうやって頭を二回撫でる時は、本命の女の顔がチラついたりした時だって知ってる。

目を閉じると君の香りがした。
目の前は真っ暗なのに、あまり楽しそうにしていない君の顔が見えた気がした。

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