大陸アニマ〜そのペンギンと紡ぐ世界〜

garato

文字の大きさ
13 / 32

13話〜黒い戦気

しおりを挟む

模擬戦が始まった。

 試験合格者だけあって、どの組も動きが良かったが。
「木剣っていっても、いろんな種類の物があるんだな」ペン汰は、木剣の方に興味が湧いていた。

「みんな、動きは良いんだけどなぁ。
 戦気をしっかり纏えてないんだよなぁ。」

 元々ペン帝国でも、国の文化や歴史を知り、精神性学び深める事で戦気の力を貰うことが出来る事をしっていた。しかし、いつの頃からか家柄や血統により力を貰い受けるという考えが刷り込まれていた。

「おかしいんだよな。都会の子は、僕みたいな田舎の子より勉強する機会は多いはずなのに。
 なんで蒼気があんなに薄いんだろ」
 ペン汰は、首を傾げながら観戦していた。

 そのなかで、しっかり蒼気を武器まで纏わせている者がいた。
「あっ!クロウさん!」
 クロウは、蒼気を武器まで纏わせて青色の気が体の周りを揺らいでいる。クロウが使うのはハンティングソードに似た木剣。
「流石にしっかり気を纏えているなぁ。でも、相変わらず冷たい目だ」
 

クロウの相手は短剣使いのようだが、クロウの半分にも満たない蒼気で力の差は歴然だった。

 試合が始まった。
 クロウが、ゆっくり相手の方へ歩き出す。
「クロウさん!あまりに無防備だ」
 クロウは、構えもせずただ相手との距離を詰めている。
 しかし、相手は構えたまま後退りしている。
格が違うと言わんばかりの態度。

 互いの蒼気が触れ合う。手を伸ばせばとどく距離。
 まだ打ち合わない。とてつもない緊張感で辺りが凍りついたような雰囲気になる。

 クロウが構えをとった瞬間。
「はっ…はやい」
クロウの剣は腹部へ。横型の一閃が入っていた。
一瞬の出来事に相手は、前屈みになる。
そこへすかさず縦型一閃。
「危ない!」ペン汰は、身を乗り出して叫ぶ。ペンダントが光っている。
 係は、「終わりだクロウ!やめろ」と止めに入る。
 だが、全く躊躇せずクロウは木剣を振り下ろす。
 ドゴッ。木剣は後頭部へ直撃し、相手は倒れ込む。

「……黒い戦…気…」ペン汰何度も目を擦ってクロウをみる。ペンダントは光り続けている。
「なんだ?一瞬黒い戦気がクロウと相手を包んだように見えた」
「今は、消えている」ペンダントの光も消えた。

 相手の失神により試合は終わった。係がすぐに医務室へ運ぶ。
場は、騒然となる。
 係がすごい形相で、クロウに駆け寄る。
クロウを掴もうとした瞬間。

 バシッ。先ほどの軍服にコートを着た男が2階から飛び降りて係の手をはたく。

「お前如きが息子に触るな」男は冷たい目をしている。
「あ、貴方はゼノ様」係が敬礼する。
「模擬戦とはいえ、真剣勝負だ。
 戦闘をするとなれば、当然あのような事故も起こるだろう。
 ……まさか、考えていなかったとは言わせないぞ」
 クロウ同様冷たい目のゼノからは、圧倒的な威圧感が漂う。蒼気も滲ませていた。

「やっぱりあの人…クロウのお父さんだったのか」ペン汰のペンダントが淡く光るが、ペン汰は気付いていない。

「申し訳ありません。しかし、最後の1撃は…」と係が言い切る前に、
「なんだと…」ゼノが口を挟む。すごい形相で睨んでいる。
すると、スーツの兵が2階から降りてくる。

「ゼノさん、部下が申し訳ありません。
 確かに戦闘をする以上、事故は起きる可能性があります。
 止められなかった我々に落ち度があるのは認めます」
 スーツの兵は、ゼノを睨む。
「しかし、貴方がこの場に立つことの許可は降りていない。
 早々に、貴方がいるべき場所へお戻りください」
 と2階の観覧席を指さす。

ゼノも睨み返すが、観覧席の隊長達の中に複数の蒼気が上がっているのを見ると「ふんっ」と観覧席に戻って行った。

 スーツの兵は、笑顔に戻り話し始める。
「トラブルは起きましたが、模擬戦を続けましょう。
 クロウ君は、控え室へ」クロウは、表情一つ変えない。

 重い空気のまま、次の試合が始まる。
重い雰囲気のせいか、その後の試合は、動きが硬かった。

「やっぱり、あの後じゃ思うように動けないよね。
 残念だなぁ…
 そろそろ僕の番だね。戻って準備しよう」
 ペン汰は控え室に戻る。

 控え室に、クロウの姿はない。
「クロウさん、いないのか…なんだか、やっぱりあの目が気になる。蒼気も少し澱んでいる?混ざっている?感じがする」
 とペン汰が考え込んでいると。

「ペン汰!何を浮かない顔をしている」とレインが話しかける。
「さっきのトラブルは…仕方がない。だが、私たちの試合とは何も関係ないでしょ?
 ラストを飾るいい試合にしましょう!」
レインは、爽やかな笑顔をみせている。

「そうだね!僕たちは、ぼく達の出来る最高の試合をしないとね」ペン汰は、気持ちを切り替えた。

 お互い準備も終わり、係が呼びに来る。
「最後の試合です。2人とも頑張ってください!」

 2人は並んで闘技場に入る。

「準備はいいですね!それでは……はじめ!」

 2人は、一気に蒼気を練り上げる。
 蒼気の量は、ややペン汰が上。しかし。
「綺麗な蒼気だ、淀みなく全身から武器に伝わってる」
レインは、自信に満ちた顔で「私が今までの鍛錬で練り上げてきたもの。綺麗でしょ?」
ペン汰がうんうんと頷く。

「貴方の気もなかなかね!積み上げられた努力が見える」レインは、薙刀型の木剣をクルクルッと振るう。

「行くよ」というと、一瞬でペン汰の目の前に突きが飛ぶ。
 ペン汰は、レイピア型の木剣を上手く使い上部へ払う。
「さすが!でもね」というと、レインは払われた薙刀の力に逆らわず、クルッと体ごと回転してペン汰の右腹部へ横から一閃。
 しかし…これを読んでいたペン汰は、体を右に回しながら、払った剣をクルッと手首から時計回りに回転させてガードする。
と、同時に体の回転を利用して左足で蹴りを放った。
 左回転をしていたレインは、そのまま回転して、ペン汰の右側方に回り込む形で蹴りを避けた。

「な、なんだ今の動きは、受験生の動きじゃない。
 蒼気を使いこなしている」と、観覧席から感嘆の声が聞こえる。

初手が互角だった2人は、お互いに一旦距離を置く。
「思ったよりやるわね」とレインが楽しそう笑顔で話す。
「レインさんも、すごいよ。流れるような動きだ」
 ペン汰も楽しくなっているようだ。

 2人は、しばらく互角の打ち合いを続けた。

 一方、観覧席では、
「2人とも、蒼律剣術の律がしっかり身についているな。体の動きをしっかり律し自分のリズムを崩していない」
 スーツの兵は関心している。
 
「これはもう、訓練生のレベルを超えているな」と第一蒼律部隊長のリュウがつぶやく。
 
「レインの薙刀は、見事という他ない。薙刀使いなら是非うちが頂こう。それに女性だしな」と第三蒼律部隊長のヒルデが他隊長を牽制する。
 
「うちにも薙刀使いはいるぞ。それに、女性だから女性部隊に入るという決まりはないだろう。第三部隊だけの特権ではないわ」と第二部隊長のゲンが睨みをきかせる。
 
「だが…驚くべきは、ペン汰君だ。ただでさえ距離感が掴みにくい薙刀相手に上手く間合いを詰めている。レイピアの扱いが堂に入っている」とリュウがワクワクした顔をしている。

 その傍で「ちっ。貴様らは見る目がないな…あんな道化共。クロウとは比べ物にならんわ」とゼノが不機嫌そうにしている。
「特別戦略部隊長様は、息子さんがお気に入りのようだな」とゲンが呟く。
 ゼノがゲンを睨む。

「まあまあ、みなさん。我々が出来るのは、スカウトだけですからね。複数のスカウトが来れば、どの部隊に入るかは、彼らが決める事。変な圧力はかけないでくださいね」とスーツの兵

「わかっている」と隊長達。
 観覧席でも、違う戦いが繰り広げられていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...