完結 断罪された悪役令嬢に、引きこもり廃ゲーマーが転生。ゲーム終了後の貧乏平民からの無双。リリカ・ノクスフォードのリベリオン

織部

文字の大きさ
68 / 128

国王候補

しおりを挟む
スミカ軍団は、驚きの声を上げていた。
「な、なんですか、あの魔術!」
「すごい……ナエル様!」

エマも何が起きたのかわからず、私の服をぎゅっと引っ張る。
私は「後でね」と小さな声で言い、彼女の手をそっと離した。

「ナエル王子、二十! おめでとうございます!」
サリバン先生が結果を告げると、ナエルとカグラは顔を見合わせ、嬉しそうに笑った。

……けれど、その一方で、第二王子レクサルと騎士ジュリアン・セリオの姿は、いつのまにか観客席から消えていた。

後片付けはパーシーたちに任せ、私はナエル王子たち、エマ、ドノバンとともに、盗聴されないドノバンの部屋へと向かった。

「それじゃあ、ここからは――とても大切な話をします。これから話す内容は、他言無用です」
私は真剣な声で告げる。

「はい」
ナエルは背筋を伸ばし、膝の上に両手を置いてうなずいた。
「その前に聞きたいの。あの光魔術――いつから使えるようになったの?」

「実はこの前、ダンジョン探索の授業で……魔物に囲まれて。そのとき、突然頭に浮かんできて。僕、魔術の力は細かく調整できるんですが、どれも威力が弱くて……でも、あれを使ったら、魔物が倒れたんです」

「そんな話、聞いてませんよ! ナーシルの宝石で守られたっていうのは?」
カグラが怒りの表情を見せ、ナエルは萎縮して視線を落とした。

「あ、あれは……僕だけじゃなくて。同級生が囲まれてて……助けようとしたんです」
「カグラ、ちょっと黙ってて」
私は静かに言った。彼女の気持ちはわかる。でも、今はナエルから本当の話を聞くのが先だ。

「まず――ナエルの使ったのは光魔術じゃない。『聖魔術』よ」
「……聖魔術?」
そう。聖女と、選ばれた王族だけが扱える特別な魔術。

この術は学ぶものではない。術式は誰かから教わるのではなく、頭に“浮かぶ”。
そして他の誰かが唱えても、決して発動しない。
私の“ゲームの記憶”では、この力を使えたのは、ただ一人――聖女ソフィアだけのはずだった。



「あの聖女様と、第三王子ディナモス様が使うという……あれですかぁ? ナエル、すごい!」
エマが無邪気に声を弾ませる。

「ねえドノバン、あなたは使えるの? 使えたら結婚してあげるけど?」
冗談めかして言うと、ドノバンは絶望した顔で叫んだ。

「くそっ……ナエル! その聖魔術、俺に譲ってくれ!」
「冗談よ。できるわけないでしょ」
私は笑ってから真面目な顔に戻る。

「あなたは使えなくても、立派よ。――ところで、今の王族で使えるのは誰?」
「わからん。だが、第三王子だけだろう」

「もう一度言うわ。他言無用よ。――ディナモスは使えない。あの“聖剣”は、ソフィアの聖魔術よ」
「えっ!」
ドノバンの顔が強張る。

「それが……どうしたんですか?」
ナエルとカグラが首をかしげた。王国の事情をまだ知らない二人に、ドノバンが口を開いた。

「王位継承の条件は実力主義って言われてるが、実際には三つだ。
魔物討伐などで功績を残すこと。聖魔術を使えること。そして、聖女に認められること。政治力も支援者も関係ない」

「つまり……」私は言葉を継ぐ。
「ナエルが魔物討伐で成果を上げたら、ディナモスの対抗馬になるってこと」
部屋に静寂が落ちた。

聖魔術が使える――その事実は、すでに多くの人に知られてしまっている。
「どうしましょう……」カグラですら動揺している。

「これはナエルの意志の問題だ。目指すのか、目指さないのか? ちなみに俺は目指さない」
 ドノバンは言った。
「だから、馬鹿みたいに遊んでるのね?」

 私が聞くと彼は渋い顔になった。
「そうでもしないと、痛くも無い腹を探られてしまうからね」
「僕も、国王になるつもりなんて無いんです」
ナエルが震える声で言った。

「そう。でも周りはそう思わないし、あなたを担ぐ勢力も出てくるわよ!」
再び部屋に静寂が広がった。
「いずれにせよ、自分のことは自分で守れるくらい強くなるのが一番だ」

 ドノバンが珍しくまともなことを言った。
「そうね! ネズミも退治できるし、ダンジョン探索をしましょう」
 鬼が出るか、蛇が出るか。上手く罠に嵌めれる策を考えることにした。



 ナイルから、大商会との会合の連絡があった。
 参加メンバーは、私とナイル、エマとセバスチャンだ。ドノバンも同行したそうだが遠慮してもらった。

「立派な建物ね」
 王城の北方、元王室の別邸だという歴史的建造物。それが、キノクニハウスだ。
「お待ちしておりました」

 数十人の召使いたちが、屋敷の正面口に止まった私の馬車を迎え、まるで儀式のように一斉に頭を下げた。

 王国の二大商人のうち、歴史のある紀伊國屋、新興で勢いのある伊勢屋。どちらも貴族の地位になっている。つまり、私より身分は上。まあ、伊勢屋は最近なったばかりだが。

 出迎えの中心にいる二人の男。一人はカンクローの父、カンザブロー。カンちゃんを一回り大きなピンクの子豚にした感じ。

 もう一人が、この屋敷のボス、ブンザエモンだ。
「マッチ棒!」
 ひょろりとした細身にマッシュルームカットの男。

 この男が、この世界の経済を操る男か?私は思わず笑いが込み上げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

処理中です...