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国王候補
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スミカ軍団は、驚きの声を上げていた。
「な、なんですか、あの魔術!」
「すごい……ナエル様!」
エマも何が起きたのかわからず、私の服をぎゅっと引っ張る。
私は「後でね」と小さな声で言い、彼女の手をそっと離した。
「ナエル王子、二十! おめでとうございます!」
サリバン先生が結果を告げると、ナエルとカグラは顔を見合わせ、嬉しそうに笑った。
……けれど、その一方で、第二王子レクサルと騎士ジュリアン・セリオの姿は、いつのまにか観客席から消えていた。
後片付けはパーシーたちに任せ、私はナエル王子たち、エマ、ドノバンとともに、盗聴されないドノバンの部屋へと向かった。
「それじゃあ、ここからは――とても大切な話をします。これから話す内容は、他言無用です」
私は真剣な声で告げる。
「はい」
ナエルは背筋を伸ばし、膝の上に両手を置いてうなずいた。
「その前に聞きたいの。あの光魔術――いつから使えるようになったの?」
「実はこの前、ダンジョン探索の授業で……魔物に囲まれて。そのとき、突然頭に浮かんできて。僕、魔術の力は細かく調整できるんですが、どれも威力が弱くて……でも、あれを使ったら、魔物が倒れたんです」
「そんな話、聞いてませんよ! ナーシルの宝石で守られたっていうのは?」
カグラが怒りの表情を見せ、ナエルは萎縮して視線を落とした。
「あ、あれは……僕だけじゃなくて。同級生が囲まれてて……助けようとしたんです」
「カグラ、ちょっと黙ってて」
私は静かに言った。彼女の気持ちはわかる。でも、今はナエルから本当の話を聞くのが先だ。
「まず――ナエルの使ったのは光魔術じゃない。『聖魔術』よ」
「……聖魔術?」
そう。聖女と、選ばれた王族だけが扱える特別な魔術。
この術は学ぶものではない。術式は誰かから教わるのではなく、頭に“浮かぶ”。
そして他の誰かが唱えても、決して発動しない。
私の“ゲームの記憶”では、この力を使えたのは、ただ一人――聖女ソフィアだけのはずだった。
※
「あの聖女様と、第三王子ディナモス様が使うという……あれですかぁ? ナエル、すごい!」
エマが無邪気に声を弾ませる。
「ねえドノバン、あなたは使えるの? 使えたら結婚してあげるけど?」
冗談めかして言うと、ドノバンは絶望した顔で叫んだ。
「くそっ……ナエル! その聖魔術、俺に譲ってくれ!」
「冗談よ。できるわけないでしょ」
私は笑ってから真面目な顔に戻る。
「あなたは使えなくても、立派よ。――ところで、今の王族で使えるのは誰?」
「わからん。だが、第三王子だけだろう」
「もう一度言うわ。他言無用よ。――ディナモスは使えない。あの“聖剣”は、ソフィアの聖魔術よ」
「えっ!」
ドノバンの顔が強張る。
「それが……どうしたんですか?」
ナエルとカグラが首をかしげた。王国の事情をまだ知らない二人に、ドノバンが口を開いた。
「王位継承の条件は実力主義って言われてるが、実際には三つだ。
魔物討伐などで功績を残すこと。聖魔術を使えること。そして、聖女に認められること。政治力も支援者も関係ない」
「つまり……」私は言葉を継ぐ。
「ナエルが魔物討伐で成果を上げたら、ディナモスの対抗馬になるってこと」
部屋に静寂が落ちた。
聖魔術が使える――その事実は、すでに多くの人に知られてしまっている。
「どうしましょう……」カグラですら動揺している。
「これはナエルの意志の問題だ。目指すのか、目指さないのか? ちなみに俺は目指さない」
ドノバンは言った。
「だから、馬鹿みたいに遊んでるのね?」
私が聞くと彼は渋い顔になった。
「そうでもしないと、痛くも無い腹を探られてしまうからね」
「僕も、国王になるつもりなんて無いんです」
ナエルが震える声で言った。
「そう。でも周りはそう思わないし、あなたを担ぐ勢力も出てくるわよ!」
再び部屋に静寂が広がった。
「いずれにせよ、自分のことは自分で守れるくらい強くなるのが一番だ」
ドノバンが珍しくまともなことを言った。
「そうね! ネズミも退治できるし、ダンジョン探索をしましょう」
鬼が出るか、蛇が出るか。上手く罠に嵌めれる策を考えることにした。
※
ナイルから、大商会との会合の連絡があった。
参加メンバーは、私とナイル、エマとセバスチャンだ。ドノバンも同行したそうだが遠慮してもらった。
「立派な建物ね」
王城の北方、元王室の別邸だという歴史的建造物。それが、キノクニハウスだ。
「お待ちしておりました」
数十人の召使いたちが、屋敷の正面口に止まった私の馬車を迎え、まるで儀式のように一斉に頭を下げた。
王国の二大商人のうち、歴史のある紀伊國屋、新興で勢いのある伊勢屋。どちらも貴族の地位になっている。つまり、私より身分は上。まあ、伊勢屋は最近なったばかりだが。
出迎えの中心にいる二人の男。一人はカンクローの父、カンザブロー。カンちゃんを一回り大きなピンクの子豚にした感じ。
もう一人が、この屋敷のボス、ブンザエモンだ。
「マッチ棒!」
ひょろりとした細身にマッシュルームカットの男。
この男が、この世界の経済を操る男か?私は思わず笑いが込み上げた。
「な、なんですか、あの魔術!」
「すごい……ナエル様!」
エマも何が起きたのかわからず、私の服をぎゅっと引っ張る。
私は「後でね」と小さな声で言い、彼女の手をそっと離した。
「ナエル王子、二十! おめでとうございます!」
サリバン先生が結果を告げると、ナエルとカグラは顔を見合わせ、嬉しそうに笑った。
……けれど、その一方で、第二王子レクサルと騎士ジュリアン・セリオの姿は、いつのまにか観客席から消えていた。
後片付けはパーシーたちに任せ、私はナエル王子たち、エマ、ドノバンとともに、盗聴されないドノバンの部屋へと向かった。
「それじゃあ、ここからは――とても大切な話をします。これから話す内容は、他言無用です」
私は真剣な声で告げる。
「はい」
ナエルは背筋を伸ばし、膝の上に両手を置いてうなずいた。
「その前に聞きたいの。あの光魔術――いつから使えるようになったの?」
「実はこの前、ダンジョン探索の授業で……魔物に囲まれて。そのとき、突然頭に浮かんできて。僕、魔術の力は細かく調整できるんですが、どれも威力が弱くて……でも、あれを使ったら、魔物が倒れたんです」
「そんな話、聞いてませんよ! ナーシルの宝石で守られたっていうのは?」
カグラが怒りの表情を見せ、ナエルは萎縮して視線を落とした。
「あ、あれは……僕だけじゃなくて。同級生が囲まれてて……助けようとしたんです」
「カグラ、ちょっと黙ってて」
私は静かに言った。彼女の気持ちはわかる。でも、今はナエルから本当の話を聞くのが先だ。
「まず――ナエルの使ったのは光魔術じゃない。『聖魔術』よ」
「……聖魔術?」
そう。聖女と、選ばれた王族だけが扱える特別な魔術。
この術は学ぶものではない。術式は誰かから教わるのではなく、頭に“浮かぶ”。
そして他の誰かが唱えても、決して発動しない。
私の“ゲームの記憶”では、この力を使えたのは、ただ一人――聖女ソフィアだけのはずだった。
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「あの聖女様と、第三王子ディナモス様が使うという……あれですかぁ? ナエル、すごい!」
エマが無邪気に声を弾ませる。
「ねえドノバン、あなたは使えるの? 使えたら結婚してあげるけど?」
冗談めかして言うと、ドノバンは絶望した顔で叫んだ。
「くそっ……ナエル! その聖魔術、俺に譲ってくれ!」
「冗談よ。できるわけないでしょ」
私は笑ってから真面目な顔に戻る。
「あなたは使えなくても、立派よ。――ところで、今の王族で使えるのは誰?」
「わからん。だが、第三王子だけだろう」
「もう一度言うわ。他言無用よ。――ディナモスは使えない。あの“聖剣”は、ソフィアの聖魔術よ」
「えっ!」
ドノバンの顔が強張る。
「それが……どうしたんですか?」
ナエルとカグラが首をかしげた。王国の事情をまだ知らない二人に、ドノバンが口を開いた。
「王位継承の条件は実力主義って言われてるが、実際には三つだ。
魔物討伐などで功績を残すこと。聖魔術を使えること。そして、聖女に認められること。政治力も支援者も関係ない」
「つまり……」私は言葉を継ぐ。
「ナエルが魔物討伐で成果を上げたら、ディナモスの対抗馬になるってこと」
部屋に静寂が落ちた。
聖魔術が使える――その事実は、すでに多くの人に知られてしまっている。
「どうしましょう……」カグラですら動揺している。
「これはナエルの意志の問題だ。目指すのか、目指さないのか? ちなみに俺は目指さない」
ドノバンは言った。
「だから、馬鹿みたいに遊んでるのね?」
私が聞くと彼は渋い顔になった。
「そうでもしないと、痛くも無い腹を探られてしまうからね」
「僕も、国王になるつもりなんて無いんです」
ナエルが震える声で言った。
「そう。でも周りはそう思わないし、あなたを担ぐ勢力も出てくるわよ!」
再び部屋に静寂が広がった。
「いずれにせよ、自分のことは自分で守れるくらい強くなるのが一番だ」
ドノバンが珍しくまともなことを言った。
「そうね! ネズミも退治できるし、ダンジョン探索をしましょう」
鬼が出るか、蛇が出るか。上手く罠に嵌めれる策を考えることにした。
※
ナイルから、大商会との会合の連絡があった。
参加メンバーは、私とナイル、エマとセバスチャンだ。ドノバンも同行したそうだが遠慮してもらった。
「立派な建物ね」
王城の北方、元王室の別邸だという歴史的建造物。それが、キノクニハウスだ。
「お待ちしておりました」
数十人の召使いたちが、屋敷の正面口に止まった私の馬車を迎え、まるで儀式のように一斉に頭を下げた。
王国の二大商人のうち、歴史のある紀伊國屋、新興で勢いのある伊勢屋。どちらも貴族の地位になっている。つまり、私より身分は上。まあ、伊勢屋は最近なったばかりだが。
出迎えの中心にいる二人の男。一人はカンクローの父、カンザブロー。カンちゃんを一回り大きなピンクの子豚にした感じ。
もう一人が、この屋敷のボス、ブンザエモンだ。
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