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試練の始まり
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試練開始当日の朝。
まだ空気が冷たい薄曇りの空の下、私たちは地図に記された開始地点へとたどり着いた。胸の奥がじわりと熱くなる。
「まあ、結果は見えているけど、観戦させてもらうよ!」
肩に乗っていた鷹の姿のティア様がひときわ鋭く鳴き、大空へ舞い上がる。その翼が切り裂く風の音が大きく轟き、耳に残った。
今回のドノバン隊は、ドノバン、私、セバスチャン、ガンツの四人だ。
「こういう時のために冒険者を続けてきたんだ!」
ドノバンが自信たっぷりに言うと、思わず笑ってしまう。
「へえ。じゃあ、少しは強くなったのかしら?」
「お嬢、任せておけ! みんなの代表なんだ。不様な真似なんてできねぇ」
昨夜、同行者を誰にするかで揉めていたのを私は知っている。
「セバスチャンの他に実力のある一人だけ」
私の宣言が原因だが、今回ばかりは何が起こるか予測できない。私も、庇えないかもしれない。だから最低限だ。
エマは学校があると小さく手を振って出ていった。少し名残惜しそうに。
「他の王子たちの動きはどうかしら?」
「ああ、奴らから報告が戻ってきている」
ドノバンの諜報部隊はすでに暗躍していた。
ダンジョンに近い方の森の入り口から攻撃を仕掛けるのは、ナエル王子とレクサル王子だ。
レクサル王子は、支援貴族の子息まで集めた大部隊で、もう進軍を始めているらしい。
「まだ開始の合図が来てないのに……?」
「一緒に魔物を追い込まないと、ダンジョンじゃなくてこっちに向かってしまうのにな」
焦りなのか、それとも顕示欲か。ルール無視とは酷いものだ。
ナエル王子には、故郷から帝国訛りの兵が送られてきているという。
「帝国が手を回したのかもしれない」
ナーシル砂海連邦と帝国は昔から関係が深い。
だが、ナエル隊は規則を守り、まだ動かない。おそらくカグラが許可を出していないのだ。
「リリカ、もっと驚くべき情報がある!」
「まだ何かあるの?」
「魔物を囲む四つ角のうち、最後の角に……王国軍がいるらしい」
「え……?」
「しかも、その中にハインリヒ王子、ディナモス王子……聖女までいる」
背筋に冷たいものが走った。
これは“王になるための試練”では済まない。もっと大きな何かが動いている――胸の奥で、確信のようなものが刺さった。
私がドノバンと視線を交わしたその時、遠くで狼煙が立ち昇り、号砲が大地を震わせた。
「よし、開始だ!」
「ドノバン、あなたは後方。私を護衛して」
最終目標はダンジョンボス討伐。
だがまずは、地上に溢れた魔物の殲滅からだ。
ドノバンは温存し、セバスチャンとガンツが切り込み隊を務める。
「お嬢、この盾、めちゃくちゃ使えるぜ!」
ガンツが魔物の突進を受け止めると、衝撃音が周囲の空気を震わせた。
受けた魔物が一瞬たじろぎ、体を僅かに後退させる隙を、セバスチャンの刃が鋭く切り裂いた。
「うん、よかった。ブンザエモンに頼んだ甲斐があったわ」
あの魔術盾は本来とても高額なものだったが、私の最上位ポーションと交換で手に入れたものだ。
「ポーションを手に入れて、すごく喜んでいましたよ。効果も確認済みですし、侯爵の件は宣伝にもなる……良い取引だったと言っていました。これからもよろしく、と」
ガンツが笑う。
私もつられて微笑んだ。抜け目のない商人の顔が浮かぶ。
魔物の気配を探りながら、私たちは慎重にダンジョンの入口へと進む。
入口に近づくほど、出現する魔物は上位種で大型になり、一撃で倒すことは容易ではない。
「なかなか一撃じゃ倒せませんね……」
セバスチャンも苦戦している。
「焦る必要はないわ。ドノバン、出てもいいわよ」
「待ってました、リリカ様! 俺の出番だ!」
現れたのは一つ目の巨人。全身を鎧のような硬い皮膚が覆い、さらに再生能力まで持っていた。
「ドノバン、いきましょう」
「よっしゃあ! 喰らえ!」
ドノバンは巨人の攻撃をかわし、跳躍して上段から剣を叩きつける。
セオの魔剣が私の魔術を帯び、鎧を容易く切り裂き、炎が全身を包む。
巨人は叫び、真っ二つに倒れた。
「ドノバン、凄いわ! さすが」
「いやいや、これはリリカ様のおかげだろ!」
「ふふ、二人で力を合わせた結果よ」
実戦で付加魔術が成功した達成感もあって、私たちは気をよくした。
獲物を探って森を徘徊したせいで、ダンジョンの入口に着いたのは夜が深まる前だった。
入口にはテントが並ぶ前哨基地のキャンプ地が整えられていた。
クルミが駆け寄ってきた。
「やっと来たのね!」
「だって、全ての魔物を討伐しろって」
私は、遊びすぎて門限を忘れた子供のように思え、思わず言い訳を口にした。
「もう、討ち漏らしが無いと私の仕事が無くなっちゃう!」
「なんだ。それなら、魔物を無視して進むんだった」
私たちはくすりと笑った。
「さ、夕飯にしましょう! ミオ様も待ってるわ」
「でも、こんなにアテンドしてもらって良いのかしら?」
「問題ないわ。試練とは関係ないし、他のパーティはすでに食事を済ませ、警戒もせずに寝てるわよ」
「はあぁ……ありえない」
「でもダンジョンに入るのは到着順だから、リリカはゆっくり寝れるわよ! 色々話しをしようね」
いや、クルミと同じテントなんて、寝不足確定じゃん。寝るの大切、魔力にも美容にも……。
まだ空気が冷たい薄曇りの空の下、私たちは地図に記された開始地点へとたどり着いた。胸の奥がじわりと熱くなる。
「まあ、結果は見えているけど、観戦させてもらうよ!」
肩に乗っていた鷹の姿のティア様がひときわ鋭く鳴き、大空へ舞い上がる。その翼が切り裂く風の音が大きく轟き、耳に残った。
今回のドノバン隊は、ドノバン、私、セバスチャン、ガンツの四人だ。
「こういう時のために冒険者を続けてきたんだ!」
ドノバンが自信たっぷりに言うと、思わず笑ってしまう。
「へえ。じゃあ、少しは強くなったのかしら?」
「お嬢、任せておけ! みんなの代表なんだ。不様な真似なんてできねぇ」
昨夜、同行者を誰にするかで揉めていたのを私は知っている。
「セバスチャンの他に実力のある一人だけ」
私の宣言が原因だが、今回ばかりは何が起こるか予測できない。私も、庇えないかもしれない。だから最低限だ。
エマは学校があると小さく手を振って出ていった。少し名残惜しそうに。
「他の王子たちの動きはどうかしら?」
「ああ、奴らから報告が戻ってきている」
ドノバンの諜報部隊はすでに暗躍していた。
ダンジョンに近い方の森の入り口から攻撃を仕掛けるのは、ナエル王子とレクサル王子だ。
レクサル王子は、支援貴族の子息まで集めた大部隊で、もう進軍を始めているらしい。
「まだ開始の合図が来てないのに……?」
「一緒に魔物を追い込まないと、ダンジョンじゃなくてこっちに向かってしまうのにな」
焦りなのか、それとも顕示欲か。ルール無視とは酷いものだ。
ナエル王子には、故郷から帝国訛りの兵が送られてきているという。
「帝国が手を回したのかもしれない」
ナーシル砂海連邦と帝国は昔から関係が深い。
だが、ナエル隊は規則を守り、まだ動かない。おそらくカグラが許可を出していないのだ。
「リリカ、もっと驚くべき情報がある!」
「まだ何かあるの?」
「魔物を囲む四つ角のうち、最後の角に……王国軍がいるらしい」
「え……?」
「しかも、その中にハインリヒ王子、ディナモス王子……聖女までいる」
背筋に冷たいものが走った。
これは“王になるための試練”では済まない。もっと大きな何かが動いている――胸の奥で、確信のようなものが刺さった。
私がドノバンと視線を交わしたその時、遠くで狼煙が立ち昇り、号砲が大地を震わせた。
「よし、開始だ!」
「ドノバン、あなたは後方。私を護衛して」
最終目標はダンジョンボス討伐。
だがまずは、地上に溢れた魔物の殲滅からだ。
ドノバンは温存し、セバスチャンとガンツが切り込み隊を務める。
「お嬢、この盾、めちゃくちゃ使えるぜ!」
ガンツが魔物の突進を受け止めると、衝撃音が周囲の空気を震わせた。
受けた魔物が一瞬たじろぎ、体を僅かに後退させる隙を、セバスチャンの刃が鋭く切り裂いた。
「うん、よかった。ブンザエモンに頼んだ甲斐があったわ」
あの魔術盾は本来とても高額なものだったが、私の最上位ポーションと交換で手に入れたものだ。
「ポーションを手に入れて、すごく喜んでいましたよ。効果も確認済みですし、侯爵の件は宣伝にもなる……良い取引だったと言っていました。これからもよろしく、と」
ガンツが笑う。
私もつられて微笑んだ。抜け目のない商人の顔が浮かぶ。
魔物の気配を探りながら、私たちは慎重にダンジョンの入口へと進む。
入口に近づくほど、出現する魔物は上位種で大型になり、一撃で倒すことは容易ではない。
「なかなか一撃じゃ倒せませんね……」
セバスチャンも苦戦している。
「焦る必要はないわ。ドノバン、出てもいいわよ」
「待ってました、リリカ様! 俺の出番だ!」
現れたのは一つ目の巨人。全身を鎧のような硬い皮膚が覆い、さらに再生能力まで持っていた。
「ドノバン、いきましょう」
「よっしゃあ! 喰らえ!」
ドノバンは巨人の攻撃をかわし、跳躍して上段から剣を叩きつける。
セオの魔剣が私の魔術を帯び、鎧を容易く切り裂き、炎が全身を包む。
巨人は叫び、真っ二つに倒れた。
「ドノバン、凄いわ! さすが」
「いやいや、これはリリカ様のおかげだろ!」
「ふふ、二人で力を合わせた結果よ」
実戦で付加魔術が成功した達成感もあって、私たちは気をよくした。
獲物を探って森を徘徊したせいで、ダンジョンの入口に着いたのは夜が深まる前だった。
入口にはテントが並ぶ前哨基地のキャンプ地が整えられていた。
クルミが駆け寄ってきた。
「やっと来たのね!」
「だって、全ての魔物を討伐しろって」
私は、遊びすぎて門限を忘れた子供のように思え、思わず言い訳を口にした。
「もう、討ち漏らしが無いと私の仕事が無くなっちゃう!」
「なんだ。それなら、魔物を無視して進むんだった」
私たちはくすりと笑った。
「さ、夕飯にしましょう! ミオ様も待ってるわ」
「でも、こんなにアテンドしてもらって良いのかしら?」
「問題ないわ。試練とは関係ないし、他のパーティはすでに食事を済ませ、警戒もせずに寝てるわよ」
「はあぁ……ありえない」
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