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出会い②
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失礼します。と言いながら桐生は色白で、細くて長い指で玲の足に触れた。
店のものとは違う、良い香りが桐生からしてドキドキしてきた。
同作一つ一つの所作が洗練されていて、ただ動いているだけで見惚れてしまう。
「えっと…ここはお抹茶も出しているんですね。僕、一度はちゃんとしたものを飲んでみたくて。あと自分で点てるのも興味がありますが、敷居が高そうで。」
緊張のあまりつらつらと言葉が続く。
すると桐生が嬉しそうに顔を綻ばせた。
「えぇ、私が点てております。そうですね、お茶はマナーが厳しいイメージですが最近は気軽にできる体験なんかも増えてきているんですよ。」
「そうなんですね!このお店はおしゃれだし、若い人も入りやすいんじゃないですか?」
「若い人が気軽に挑戦できるお店を目指しているので、そう思ってもらえると嬉しいですね。」
はい、出来ましたよ!と言われて足を恐る恐る床につける。
多少の痛みは感じるものの、会社に帰るくらいはできそうだ。
「ありがとうございます。これなら帰る事は出来るかも。」
「良かった。でも無理はなさらないでくださいね。」
その後、現在位置と駅の方角を教えてもらった。
お茶代を…と言ったのだが、怪我をさせてしまったのは私の方ですから。と受け取ってもらえなかった。
「もしタクシーを使われるのであれば、一度大通りに出てください。」
そうだ。と桐生がぽんと手を合わせた。
「よろしければ今度またいらしてください。もし興味があるのでしたらお抹茶の体験をしてみませんか?これでも許状を持っているんですよ。」
許状とは、お茶を教える事ができる資格のようなものらしい。
とは言え厳密なルール等はないから、お守りみたいなものですよ。と桐生は付け加えた。
「興味を持ってくださる若い方が中々いなくて…。ウチは会費制にはしていなくて一回か、通いたい方は回数券にしているんですが…。」
確かにおばあちゃんが着物を着て正座してるイメージだな。
けど入会金とか契約しなくていいなら気軽に始めやすくて魅力的だ。
「本当ですか!あ、でも着物とか服装ってどうするんですか?自分のなんて勿論持っていないし、レンタルは汚しちゃいそうだし、そもそも僕みたいな小柄な人間が着ても似合わなさそうだし…」
桐生とは10cm以上は身長差があるのではないだろうか。同世代から見ても小柄で童顔な自分は30歳にしては幼く見られがちだ。
「服装は普通にTシャツとか…気にせず動きやすい格好でいいですよ。着物の方も居ますが、皆さん体験の際はラフな格好で来ていますね。でも、川瀬さんは着物だってきっと似合うと思います。むしろ僕なんかは背が高いから昔のお下がりを頂いたりしても丈が短くて結局着れない事が多いですし。」
そうか、昔の人は小柄なんだっけ。
桐生よりもチビな自分の方が着物向きという訳だ。
スタイリッシュに着こなす桐生を見ているととてもそうは思えない。
きっとかっこいい人は何を着てもかっこいんだ。
ぜひ一度体験をお願いします。と予約をして名残惜しみながら店を後にした。
会社に戻った玲は上司に報告し怪我で早退をする事にした。
玲の会社は激務だが、みんな気の良い人ばかりで足を心配してくれた。
おう、帰れ帰れ!無理するなよ。急ぎの案件があれば言って。などと皆声をかけてくれる。
整骨院へ向かう途中の電車で、窓に映る惚けた自身の顔を見て驚いてしまった。
ある意味、怪我をしていて良かったのかもしれない。
午後は集中できず、今日出会った和装の男で頭がいっぱいだったのだから。
店のものとは違う、良い香りが桐生からしてドキドキしてきた。
同作一つ一つの所作が洗練されていて、ただ動いているだけで見惚れてしまう。
「えっと…ここはお抹茶も出しているんですね。僕、一度はちゃんとしたものを飲んでみたくて。あと自分で点てるのも興味がありますが、敷居が高そうで。」
緊張のあまりつらつらと言葉が続く。
すると桐生が嬉しそうに顔を綻ばせた。
「えぇ、私が点てております。そうですね、お茶はマナーが厳しいイメージですが最近は気軽にできる体験なんかも増えてきているんですよ。」
「そうなんですね!このお店はおしゃれだし、若い人も入りやすいんじゃないですか?」
「若い人が気軽に挑戦できるお店を目指しているので、そう思ってもらえると嬉しいですね。」
はい、出来ましたよ!と言われて足を恐る恐る床につける。
多少の痛みは感じるものの、会社に帰るくらいはできそうだ。
「ありがとうございます。これなら帰る事は出来るかも。」
「良かった。でも無理はなさらないでくださいね。」
その後、現在位置と駅の方角を教えてもらった。
お茶代を…と言ったのだが、怪我をさせてしまったのは私の方ですから。と受け取ってもらえなかった。
「もしタクシーを使われるのであれば、一度大通りに出てください。」
そうだ。と桐生がぽんと手を合わせた。
「よろしければ今度またいらしてください。もし興味があるのでしたらお抹茶の体験をしてみませんか?これでも許状を持っているんですよ。」
許状とは、お茶を教える事ができる資格のようなものらしい。
とは言え厳密なルール等はないから、お守りみたいなものですよ。と桐生は付け加えた。
「興味を持ってくださる若い方が中々いなくて…。ウチは会費制にはしていなくて一回か、通いたい方は回数券にしているんですが…。」
確かにおばあちゃんが着物を着て正座してるイメージだな。
けど入会金とか契約しなくていいなら気軽に始めやすくて魅力的だ。
「本当ですか!あ、でも着物とか服装ってどうするんですか?自分のなんて勿論持っていないし、レンタルは汚しちゃいそうだし、そもそも僕みたいな小柄な人間が着ても似合わなさそうだし…」
桐生とは10cm以上は身長差があるのではないだろうか。同世代から見ても小柄で童顔な自分は30歳にしては幼く見られがちだ。
「服装は普通にTシャツとか…気にせず動きやすい格好でいいですよ。着物の方も居ますが、皆さん体験の際はラフな格好で来ていますね。でも、川瀬さんは着物だってきっと似合うと思います。むしろ僕なんかは背が高いから昔のお下がりを頂いたりしても丈が短くて結局着れない事が多いですし。」
そうか、昔の人は小柄なんだっけ。
桐生よりもチビな自分の方が着物向きという訳だ。
スタイリッシュに着こなす桐生を見ているととてもそうは思えない。
きっとかっこいい人は何を着てもかっこいんだ。
ぜひ一度体験をお願いします。と予約をして名残惜しみながら店を後にした。
会社に戻った玲は上司に報告し怪我で早退をする事にした。
玲の会社は激務だが、みんな気の良い人ばかりで足を心配してくれた。
おう、帰れ帰れ!無理するなよ。急ぎの案件があれば言って。などと皆声をかけてくれる。
整骨院へ向かう途中の電車で、窓に映る惚けた自身の顔を見て驚いてしまった。
ある意味、怪我をしていて良かったのかもしれない。
午後は集中できず、今日出会った和装の男で頭がいっぱいだったのだから。
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